それはどこかの一室、豪華な調度品に囲まれた部屋だ。
部屋には二人の人物がおり、一人は幼いながらも整った顔立ちの少年、もう一人は布の服を纏った男。
っていうか、アレキサンダーとギリシア人みたいな人だった。
「それで、アキレウスはヘクトールを引きずり回したんですか?」
「彼は怒りが収らなかった、なんて意見もあるがね。人によっては戦意を挫くためという意見もある。少なくとも、戦略的に優れた男であるのは事実だよ」
それはイリアスなんて呼ばれてるトロイア戦争のことだろうか。
ローアイアスとか使ってるのかな、ゲイボルグで粉砕されるあれ。
俺はまた夢かとこの時点で納得する。
場面は変り、外に移った。
周囲は案山子や武器が有り、修練場って奴かもしれない。
アレキサンダーはそんな場所で地面に座りながら、兵士のような男と話していた。
「海ですか、しょっぱい湖なんでしょ?」
「私は見たことないですが、そのはずです」
「オケアノスか、いつか見てみたいな」
それは若かりし日の思い出だろうか。
俺はそんな彼に言いたい。
その先は(マッチョになってしまう)地獄だぞ。
そんなツッコミを最後に夢から覚めた。
「……ハッ!?」
「僕を召喚、コイツは14回攻撃出来るんです、この意味が分かるかな?」
「そんな……私のモルディガイが」
「しかもダメージは喰らわない!攻撃、攻撃、攻撃」
「うわぁぁぁぁぁぁ!」
朝からスマホ片手に、アレキサンダーとパラケルススが何やら騒いでいた。
くそぉ、アーシアさんが寝室で寝てるからリビングのソファーで寝ていたのが仇になったか。
それにしても、アレキサンダーはゲーマーになる性を背負っているのかね?
今度ゲーセンに連れて行ってやろう。
「本当にこんなことあるんでしょうか?」
「間違いないです。曲がり角でぶつかってパンツを見られます、本に書いてありますから」
「転校生って大変なんですね」
こっちはこっちでなんだと思ったら、ラブコメ漫画をアーシアとマシュが真剣に読んでいた。
いや、教科書みたいに使ってノートとか取ってるけど、そんな漫画みたいなことは現実にはないよ。
あれから数日後、転入手続きを終えたアーシアとマシュは学校に通えることになった。
法律とかどうなってるんだろうなぁ、悪魔がどうにかしたんだろうかと思う今日この頃である。
確か原作だと、フェニックスが来て堕天使が来て和平があって、その後はどうなるんだろう。
こうなるんだったらもっとアニメ見ておくんだった。
取りあえず、アシーアさんには悪魔に気を付けるように言った。
アーシアさんも了解はしてくれたが、正直どうだろうか。
うーん、まぁ最悪何かあったら対処すれば良いだろう。
教室にやって来た俺は席に座ってワクワクしていた。
何故なら、昨日練習していたマシュの自己紹介が見れるからである。
「おーい、席に着けー。今日は転校生を紹介するぞ」
「おー、男ですか女ですか」
「女の子だ」
よっしゃぁぁぁぁ!と盛り上がる男子、でもお前達誰が来るか知ってるだろ?
ほら、ヒソヒソと女子がこっち見てるだろ、分かるだろ。
「よーし入ってこい」
「失礼します」
「他のクラスじゃねぇ、俺たちのクラスだ!ワンチャンあるぞ」
うんうん、あるあ……ねーよ。
マシュは俺の嫁、まだ告白もしてないけどな。
お前ら手を出すんじゃねぇぞ。
「マシュ・キリエライトです。出身は……イギリスです。趣味は最近写真を撮り始めました。よろしくお願いします」
ちょっと忘れかけてたが、やったぜ。
こうしてマシュは無事に転入できた。
アーシアさんは、いやアーシア先輩は無事に転入出来ただろうか。
女子の粋な計らいにより、マシュは俺の隣になった。
マシュなら今俺の隣にいるぜって言ったら、男子から殺意の視線が送られた。
安心しろ、俺はまだ付き合えてない。
放課後、アーシア先輩を迎えに教室に行ったのだがいなかった。
「先生が教えてくれた場所だとここの筈なんだけどな」
「いませんね」
「先に帰るはずはない。なのにいないというのは、オカルト研究部に連れてかれた?」
だって、あっちから帰ろうって言ったんだぞ。
なのに、こうなるってことはつまり転生者君が何かしたのかな。
だって、クラスメイトだし何かしてそう。
「取りあえず行ってみるか」
「知ってます、フラグって奴ですね」
「いやいや、そんなタイミング良く騒動が起きるはずがないだろ」
そう思っていた頃がありました。
ブワッと鳥肌が立つ。
なんか、来たわ。なんか、旧校舎にいるわ。
「あー、なるほどな」
確かフェニックスが来る前夜に夜這いされるんだっけ。
そうなると、タイミングが分かるからアーシア先輩を巻き込める訳か。
何かしらで殺して、助ける為にみたいな感じで悪魔化するつもりかな?
「どんだけ原作通りにしたいんだよ、助けに行くか」
「了解です」
身体を魔術で強化して、旧校舎に向かっていく。
近付けば近付くほど、俺の感知に引っ掛かる。
魔力を垂れ流してるのかもしれない。
パラケルススに軽く教わった程度の低レベルなのに分かるんだから相当だな。
オカルト研究部の前まで来て、ドアを蹴り破る。
一度やってみたかったんだ、緊急事態って言い訳できるし合法だわ。
「そぉい!」
「きゃぁぁぁ!?」
蹴飛ばした扉に、何やら巻き込まれる人達がいた。
うわぁ、この部屋人口密度多すぎ。
「何だ貴様ぁ!」
「すんません、まさかこんなに人がいるとは知らず」
そうだった、俺のハーレム凄いやろって沢山出してた所だった。
まぁいいや、さっさとアーシア先輩を連れ出そう。
「おい、待て!」
「マシュ」
女の子の一人が何やらしそうだったので、マシュに頼む。
すると、案の定攻撃するつもりだったらしい。
まぁ、その攻撃もマシュの盾によって防がれたけどな。
「部屋には入れないから何とかして」
「了解しました」
「人間風情が、調子に乗るなよ!」
ホストの身体が自然発火する。
何だこの兄ちゃんフェニックスって分かっててもビックリするんだけど。
「ライザー様、この場で暴れられるのはお止めください。流石にこれ以上は看過出来かねます」
「ふん、命拾いしたな人間」
お前がな、ウチのマシュはアレだから自分に無敵付けてタゲ集中からの撲殺できるからな。
さて、俺に敵意メラメラで睨み付けてくる転生者君が鬱陶しい。
「やめましょうよ兵藤先輩、アーシア先輩を巻き込むなんて面倒なこと」
「どういうこと一誠?」
「さぁ、俺にも分かりません。巻き込んじまったのは謝るよ、まさかこんな事が起きるなんて思わなかったからな」
白々しいな、そう思いながらアーシア先輩を確保する。
オロオロしてるけど大丈夫そうだ。
別にアーシア先輩を彼女にしたくて口説くのはいいけどさ、悪魔に転生させるのはちょっと可哀想でしょう。
「すみません、一誠さんに誘われて遊びに来てたら、まさかこんなことになるなんて」
「そうですね、じゃあ帰りましょうか」
「おい待てよ人間」
呼び止められたので、首だけ後ろに向けてホストを見る。
いわゆるシャフ度って奴だ、カッコイイだろ。
えっと、なんだっけなぁ。
「ライ……ライザーさん?」
「貴様もレーティングゲームに参加しろ、舐めた真似しやがったんだからな」
どういうことなの、これが修正力って奴なの?
転生者は巻き込まれるって呪いでも掛かってるの?
「えっ、やだ」
「どうした、臆したか?臆病者め」
「あぁ、うん実はそうなんだ。それじゃあ、俺はこれで」
「気が変った。だったら、その女達を置いていけ、それで許してやろう」
「はぁ?」
今、何て言った?