バカは異世界で何を為す   作:2×3=

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初投稿です。
文章表現や状況描写など、拙い面は多々あると思いますが、皆さんに指摘してもらいながら成長できたら良いな、と思っています。
なので評価していただけると嬉しいです。
辛口もドンと来い、です!
よろしくお願いします!


第1話

(ここは、どこなんだろう?)

 大きい滝を背に、僕はそんなことを考えるのだった。

 

 

 

 直前まで、友人たちとくだらない掛け合いをして笑っていた、と記憶している。

 それが、今はどうだ。

 咲き誇る多様な草花――まるで、今の季節に盛りを見せる主なものは、全て揃っている

といわんばかり。

 空気も水も澄んでいるためか、日本ではそんなにお目にかかれないような虫もちらほら

と見かける。

 と。一つの可能性が脳裏を掠めた。

(誘拐……?)

 しかし、少し考えればその線が消えることは明白だった。

 思わず息を呑んでしまうほどの原風景を残す場所に一人捨て置く必要がないし、何より

僕がさらわれる理由がそもそも見つからない。

(家がお金持ちなわけでもなし。恨まれるようなことをした覚えも…………なかったら良

いなぁ)

 人間、どこで恨みを買っているか分からないものである。

「と、とにかく」

 気分を入れ替えるためにも声に出して、自分に言い聞かせる。

「まずは、ゆっくり出来そうなところを探さなきゃ」

 幸い、この場は行き止まりのようで選べる道は一本しかない。

 前向きに、歩き出した。

 

 

 不自然に穴の開いた岩に気付かないまま。

 微かな残滓――マナが、不自然に纏わりついたことに気付かないまま。

 

 

 

(ついてる)

 そう思ったのは、久しぶりだった。

 なんせ、歩き始めて五分で村と思しき光景が遠目に映ったのだ。

 獣道に入る手前。堅い植物が強引に刈り取られたかのような跡に疑問を感じるが、これ

のおかげで労せず村にたどり着けそうだ、と感謝して道を進んでいく。

 けれど、希望的観測はすぐに疑問に変わった。

(兎?)

 とにかく形容しがたい、見たこともない生き物が僕の目に映ったのだ。

 僕は世界の生態系に詳しいわけでもないから断言はできないけど、こいつは違う(・・・・・・)と本能

が囁く。

 人気の無い所で運よく今日まで発見されることが無かったのかもしれない。そんな考え

が浮かんだけれども、すぐにそれを否定するように(かぶり)を振る。

(新種の生物なんかじゃあ、ない)

 視線を左右に飛ばしてみれば同じようなのが、二、三。特徴的な黄色い体躯が見え隠れ

している。

 そして、次の瞬間にはまた別の疑問が頭をもたげる。すなわち、人を襲うものか否か、

である。

 

 好奇心は、猫を殺す。

 正体不明の生き物に飛び掛かられながら、真っ先に僕の頭に思い浮かんだのはそんな言

葉であった。

 大げさとも思えるほどに後方に飛び退り(すさり)ながら、息を詰め相手の出方を伺う。

 が、いつまで経っても襲い掛かってこない。それどころか、無邪気に飛び跳ねている。

 そんな様子を見て、ある考えに思い至った。

(こいつら、こっちが目に見える範囲に居ても一定距離内に近づかなければ、襲って来な

い……?)

 予想が正しいかどうかを確認するべく、距離を置きつつそのまま道なりに進んでいく。

 

 拍子抜けするほど、あっさりと進めた。

 何度か、後ろから襲ってこないだろうかと気にしつつ、道の先にいる同じやつら――今

度は二体――も同じようにやり過ごす。

 そうして、それを繰り返し二十分。

 漸く先ほど見た、村と思しき場所にたどり着いた。

「ふぅ、これでやっと休める。それにしても、ここはどこなんだろう?」

 張り詰めていた神経を緩めると、思わずそんな呟きが口から漏れ出た。

 兎にも角にも、ここの人たちに聞いてみれば解決するだろう。

 そう思って、歩き出した。

 この先、僕を待ち受ける困難の連続に気付くことなんて、露さえないまま。

 暢気に鼻歌すら交じえて。

 

 

 

『もう余所者は、懲り懲りだ!』

『出てけ、この世の悪!』

『またモンスターが増えるというの!?』

 

 それが、見知らぬ僕を見た村人たちの反応であった。

 覚えの無い悪意を幾人にも()てられ、わけも分からず萎縮してしまった僕に止

めを刺したのは、村長と名乗るおじいさんの言葉だった。

『出来るだけ早くこの村を出て行ってくれないか』

 提案ですらないその言いように、抗議したけれど聞き入れられることは無かった。

 だけど、不思議と納得してしまった。

 異物――僕という存在がこの村に触れたときの空気は、一言で表すなら"異常"だった。

 背景は察せないけど、おそらくキーワードは"余所者"。

 そして、もう一つ。重要な情報。

 詳しいことは全く掴めないものの、この辺には"モンスター"と呼ばれる存在がいる、と

いうこと。

 言葉の端々から聞こえてきた限り、それはとてつもなく危険な雰囲気を思わせた。

 そんなものが闊歩する場所を、ろくに持ち物さえなく歩く僕。

 嫌な未来しか想像できなかった。そして、それはそう遠くないうちに直面する悪夢。

「――――」

 一瞬にして、目の前が塞がれたような錯覚を覚えた。

 人々の流れに押されて、村の出入り口へと急き立てられる。

 その光景は僕に、大昔の刑執行のシーンを重ねさせた――数百年も前の、見たことすら

ない場面を目の前に。

 

 一歩歩くごとに不安は絶望へと変わっていく。そんな思いすら抱きながら村を後にする

――そのギリギリ手前。

「待ちたまえ!」

 そんな声が聞こえた。

 胡乱に思いつつ、顔を向ける。大声を張り上げたのは、村長だった。

 村人も彼の顔を見つめる。誰も声は発さない。

 生暖かい風が頬を撫ぜる。早く、この空気を終わらせてほしかった。

 と。それまで様々な感情を押し殺したように黙り込んでいた村長が、ようやっと口を開

いた。

「一晩――その間だけ私の家で過ごしなさい」

 静かだった場が騒ぎ始める。パニック寸前の者さえ現れ出す。

 それを収めたのもまた、村長であった。

「皆の者。これは決定だ。迷惑は掛けない」

 そう言って、彼は深々と頭を下げた。

 

 いろんな感情が頭を巡る。感謝もあるが、多くは負の方向に偏っている。

(だけど……)

 僕は、一度頭の中をリセットするような意識で思い直す。

 のっぴきならない事情が、この村にはあったのだろう。いや、今もそれは覆っている。

 それをこの人は、崩した。崩してもらった。

 それならば。

(僕に出来る精一杯を)

 

「すみません。でも、お願いします!」

 

 納得はしていない。

 けれど、村長の人徳だったのだろう。

 一日だけの滞在は、暗黙のままに許されたようであった。

 だから、僕も尋ねたりはしない。それが、僕に出来る唯一の恩返しだった。

『すまんの』

 どういった想いから、村長がそんなことを言ったのかは分からない。けれど、僕はどの

世界にも共通の真理を学んだ気がした。

 

 

 

 翌朝。

 約束どおり、僕はこの村を発つ。

 予測していた通り、村人は誰一人としてこの場にいない。僕もそのことについて、怒り

はしない。

 村の中央にぽっかりと開いている大きな穴を横目に歩を進めていく。

 出入り口に立ち、一度村を振り返る。

 

「気を遣わせたの」

「うわっ!」

 横合いから声を掛けられ、身をびくつかせる僕。

 村長だった。

「わしに出来るのはこれだけだ」

 そう言って、手渡されるずだ袋。重そうだ。

「少ないが、路銀じゃ」

「え!? …………良いんですか?」

 無言で押し付けられ、それならば、と受け取る。

「これを言うのが許されるなら――」

「??」

「気を付けてくだされ」

「っ! ありがとうございますっ!」

 ずだ袋を手に僕は走り出す。金属の合わせ鳴る音が腕を通して伝わる。

 重い。

 ひたすらに。

 そう、思ったんだ。

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