バカは異世界で何を為す   作:2×3=

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タグに、『独自解釈』『両原作の詳細説明なし』を追加しました。

ふと思った。読む人限定されますね、これだと。
書きたいものを書くだけ
そう思うも、やはり「やってしまった」感はある。初投稿ですからね。

それでも読んでくださる方に。
四話目どうぞ


第4話

 あれから、僕はまともにプリムと会話することができなかった。

 言うまでもなく、ラビの件が原因である。

 

 そんな僕らだが、モンスターが居るという事実は変わるはずもなく。プリムが最低限だ

けを相手にし、一路歩を進めていくこと三時間。

 僕らは、パンドーラにたどり着いた。

 

 門をくぐる。都市内部は小川が外周をなぞるように流れていて、建物の密集具合からこ

の世界に来て初めて訪れたあの村より栄えているのが一目で分かる。

 左手には城も見える。川の範囲から離れた、すなわち街外れに位置するその城はここか

らでもその威容はありありと伝わってきた。

 

 感心するのを一区切り終えると、場を再び沈黙が覆う。

 

「短い間だったけれど、楽しかったわよ」

 先に口を開いたのは、彼女だった。

「僕も。楽しかった……」

 心にしこりが残ったとはいえ、それは僕の問題であって彼女に責はない、それ以前にプ

リムは僕の恩人である。

 ぐっ、と拳を握り締める。

「その、さ」

 心持ち下がっていた顔を上げ、プリムと目を合わせる。

「気付かせてくれて、ありがとう」

 まだ整理はつかない。けれど、知っているだけでも大違いだとは思う。

「それと」

 プリムには分からないかもしれないけど、と心の中で前置いて続ける。

「同行してくれたこと、本当に感謝してる。道案内とかそういうのじゃなくてさ」

 上手く言葉にできなくて、もどかしい。こういう時、自分の頭の悪さに辟易する。

 

「どういたしまして」

 それでも、プリムには伝わったみたいだった。

「貸し一で手を打っとく」

 そう言って悪戯めいた笑みを浮かべる彼女の顔は、やはり魅力的だった。

 自慢できることでもないだろうけど、プリムに借りがあるのは誇らしくさえあった。

 

「それじゃあ」

 締めの言葉。急ぎの用があるのかもしれない。長引かせちゃいけないよね。

「うん。じゃあ、また今度!」

 

 一歩目を踏み出していたプリムが、不意を突かれたように立ち止まる。振り向いて。

 

「アハ。そうね、ええ。また今度(・・・・)!」

 とびっきりの笑顔を置き去りにして、今度こそ彼女は駆け出して行った。

 

 

 

「さてと」

 呟き、周りを見渡す。

「まずは、今晩の宿と当面の仕事を探さなきゃ」

 塞ぎこみ掛けた心を鼓舞するように、意気揚々と歩き出した。

 

 

 当てなどあるはずもなく歩き始めて数分。宿屋が思ったより早く見つかったため、その

付近に絞って見て回った。さすがに一日で街全部を見て回るのは無理がありそうだったか

らだ。

「う~ん、やっぱり日雇いになるかな」

 散策した場所を順に頭で追っていく。何もかも行き当たりばったりで先の計画など皆無

であることを考慮してもそれが一番だし、ある程度街を見て回ってみてやはりそれしかな

いと思ったのだ。

「と、なると」

 ある建物を見やる。

「飲食店が良いかな」

 目を向けた先は、フォークとナイフが描かれた看板を下げた店。見てる限り忙しいのは

間違いないが、賄いを食べれる可能性があるからだ。

(お金、節約しないといけないしね)

 

 思い立ったが吉日。店へと向かう。

(アポなしだからちょっと心配だけど。それにしても賑わってるな~)

 昼飯時のピークの時間帯は過ぎてるだろうに、店内から聞こえてくる賑やかな声の多さ

に感嘆を覚える。

 カランカラン

 ドアについた飾りが音を鳴らす。

「すみませーん」

 シンと静まる店内。大声を出したわけでもないのに、示し合わせたかのように音が削げ

落ちた状況にたじろぐ。しかし、引き返すにもタイミングを失ったようで、とりあえずも

う一度だけ同じように言ってみた。

 それでもやはり話しかけようとしてくる人はおらず、近くにいる人どうしで顔を見合わ

せて小声で何事かを交わしている。

「いかがなされましたか?」

 その声に、助かったと思いつつ、声を掛けられた方向を見る。

 スタッフ専用であろうセクションから出てきた、何枚もの皿を両手に持った店員が丁寧

に尋ねてくる。用件を伝えるべく口を開こうとした瞬間、それ(・・)に気づき思わず金縛りに

あったかのように固まる。

 店員は、言わずとも事態を把握したのか。

「申し訳ありません。本日、当店は貸切でございまして――」

 丁寧に説明してくれるが、当の僕はそれどころではなかった。

 彼の持つ料理皿の一つ。そこに幼いラビの丸焼きが乗せられていたのだ。あの瞬間が、

コマ落としのようにして次々と流れていく。

「あ、はい。……そうでしたか。それ、では」

 何とか、喉の奥から言葉を絞り出し、そそくさとその場を後にする。

 途端、店内がざわめきを取り戻すのが外からも聞こえたが、対照的に僕の内心は冷えて

いった。

 そんなことはない。頭では分かっていても、深いところは納得していなかった。

 ラビが僕を怨嗟の篭った目で見た。どうしても、そんな気がしてならなかった。

 

 気づけば、僕は街の外へと走り出していた。

 

 

 

 † †

 

 

 

「あれ? 今のアキかしら?」

 ものすごい勢いで街中を走り出した男の子の後ろ姿には、見覚えがあった。三時間ほど

前まで一緒に行動していた彼、なはず。

(何かあったのかしら?)

 青年の尋常でない様子に不安を覚え、彼が走り去る前まで居た場所に視線を向ける。

(飲食店。別に、おかしいところは……あら?)

 見れば、『本日貸切』という札がドアには下げられていた。

(祝い事でもあったのかしら? って、そうじゃないわ)

 思考がそれた。

(いえ!)

 しかし、脇に脱線したのが、思わぬ閃きに至った。

(アキって文字読めなかったわよね、確か。それに、祝い事で出される料理っていった

ら……)

 仔ラビの丸焼き!

 大筋に納得がいき、事態の重さに気付く。

(罪悪感に襲われたのね!?)

 こうしちゃいられない!

 私も彼の後を追うようにして、走り出した。

 

 

 

 街を出てすぐに、アキは見つかった。ラビの群れに追われていたからだ。

「なに、してるのよ!?」

 アキに襲いかからんとしていたラビを蹴り、あらぬ方向へと押しやられたのを確認する

と、私はそのまま彼と並走し始めた。

「ぅ、はぁはぁ。……ありがとう、プリム」

「礼は後! それよりパートナーは、どうしたのよ!?」

 俯くアキ。どうしたというのだろうか。言葉に詰まるのはよくある彼だけど、今のアキ

は悲壮感すら漂わせている。

「……いんだ」

「え?」

「喚べないんだ! 召喚獣が!」

 焦燥に身を焦がしながら、「サモン!」と何度も(わめ)くアキ。

 そこに飛び掛かるラビ四体。

「ちっ」

「う、うわぁ!?」

 いくら最弱とはいえモンスターにカテゴライズされていることに違いはなく、四体も同

時に捌くのは私でも不可能だ。

 だから一体を足蹴にしつつ、私が庇ってあげられる位置にアキを押しやった。

 衝撃。身構えていても三方からの襲撃は、いささか以上にダメージが大きい。ラビは存

外重いのだ。

「プリム!?」

 自分の楯になって傷を負った私を案じて、アキが叫ぶ。身を捩り、苦労しつつもラビの

密集地帯から逃れ、その場を瞬時に後にする。足の速さはこちらが勝るので、それに集中

すれば離れることは容易だ。

(後は……)

 振り向く。アキも私の後をちゃんと走ってきている。

 ふぅ~、っと一息。

「ヨシイアキヒサ!」

 一喝した。

 

「は、はい!」

 私の大音声に背筋を伸ばす彼。そんな彼が、らしい(・・・)と思いつつ。私のやり方で伝える。

「一つ! 状況は悪くても取り乱さない!」

 身体は十全ではない。

(それが、どうしたっての!)

 アキの肩を掴んで、強引に邪魔にならない方へと移動させ、追いついてきたラビが体当

たりしてくるのを最小限の動きでかわしていく。

「一つ! 安全地帯の確保を最優先として行動する!」

 攻撃を避けながら溜めていた力を放出するようにして、ラビを蹴り飛ばす。何度かバウ

ンドしながら飛んでったラビが、その巨体で以て群れの前面を巻き込む。

 群れのボスだろうか。混乱を背に、ひときわ大きい個体が前に出て、そのまま近づく素

振りを見せる。タイマンを張るつもりのようだ。

「一つ」

 直線的に向かってこない――それどころか、時折フェイントすら交える大将ラビ。その

ラビらしからぬ動きが、あるいはその座につかせているのかもしれない。翻弄されないよ

うに見極め、機を窺う。

 とはいえ、自分よりウエイトのある相手だ。()し掛かろうとしてくるのを()なし続ける

のにも限度はある。そのことを悟られないように立ち回りつつ、あたかも余力を残してい

るかのように振る舞うことで相手の冷静さを少しずつ奪う。

(そろそろね)

 手早く自分の周囲を確認し、位置取りを調整する。

 後ろ足が、何かに躓く。そこそこ大きな石だ。

 焦る――表情を顔に貼りつける。躓いたのは意図した結果で、それを以て膠着した状況

を相手に破らせるための最後の布石。

 ラビは跳ねた。少し距離があるにもかかわらず。常ならばとらないであろう行動を選択

した。

 そして、私にはそれだけで充分だった。

 地面に尻餅をつく寸前。後ろ手で一瞬身体を支え、次いで着いた左足と連動させるよう

に重心を右半身から左半身へ移し、右腕を振るようにして地面から離すことで自身を横に

跳ばす。

 元々寸足らずで迫っていたため、僅かに稼いだ距離でも相手の攻撃を避けるのには事足

りなかった。

 見せられた隙に跳びかかったその巨体は、予期せぬ大地との衝突に、すぐに身動きが取

れない状態だ。

 着地した後、ひそめるようにして貯めていた力をはき出すようにしてたたきつける。

 これ以上ないくらいきれいに決まった三連撃は、一つの結果をもたらした。すなわち、

群れの瓦解。

「絶対に諦めない」

 アキに振り向きつつ、そう締め括った。

 

「ふう」

 ため息を一つ。座り込む。もちろん女の子座りだ。

「授業は、おしまい。光栄に思いなさい。私直々のレクチャーは、まず受けられないわ

よ」

 友人に「男の子のような笑い方ね」と言われたスマイルを見せつける。

 私の茶目っ気交じりの言い方に、しかしアキは真摯に対応する。

「うん、そうだね。ありがとう」

 彼の顔を見て、安心した。

「お前だって、中途半端な僕と一緒に戦いたいとは思わないか、そりゃ」

「サモン」。アキが、そのワードを発した瞬間。光が集い始める。

「えっ、あれっ!?」

 驚く様子から察するに、彼が意図したことではないようだ。けれど、私は彼以上に驚い

ていた。何故なら…………

 

 Fクラス 吉井明久  日本史 67点  2/3  マナエネルギー 1

 

 アキの分身の頭上、突如現れる記号。一部分だけ私にも理解できる箇所。

 "マナ"。

 まるで彼に収束するかのような光の奔流は、紛れもなくそれであったから。

 

 事態は、それだけに止まらなかった。

 ボスがやられるのを目の当たりにして野生へと四散したラビが。いや、近くにいたので

あろうモンスターたち――すなわちバドフラワーとマイコニドまでもが、一斉に押し寄せ

てきたのだ。

 異常事態だ。

 モンスターにはある一定の徘徊区域があって、そこから外れることはまずない。それな

のに、この場に集結する動きを見せている。

(マナに、寄ってきたの!?)

 彼らの習性を仔細に把握してはいないが、そうとしか考えられない。

 なんにせよ。

(彼だけじゃ、対処しきれない……!!)

 立ち上がり、アキのもとへと駆け寄る。最初のモンスターの一陣は当然だが、先ほど

去ったばかりのラビの大群だ。逃げるにしても一方向しかないうえ、そちらを進めば先に

は街がある。無論、自分の住む街にこれほどの脅威を持ち込むつもりは毛頭もない。

(けれど、私だけじゃ……あの数は相手にできない!)

「アキ! ……あたしと一緒に……戦える?」

 逡巡。

(やっぱり、ダメ……か。いや、それも)

 分かっていたことだ。自分を納得させようとした、その時。

「プリム」

 下げていた視線を上げるアキ。

「モンスターは、人間にとって害ある存在なのは間違いないんだろうね」

 何が言いたいのだろうか。正義、善悪を語るというのであれば……

「誰から見ても正解なんて多分ない。だから、僕は」

 一語一語噛みしめるように。

「僕なりに、自分だけの思いを貫くよう、動く」

 君の邪魔はしない。そう結んだ。

 力んでいた体をゆっくり弛緩させる。

「それは、どういう……」

 真意を訪ねようとしたが、それは叶わない。時間切れ(タイムアップ)だ。

 黄色い団体がおいでになった。

「後は、行動で示すことにするよ。――どんな結果であろうと。僕は受け止める!」

 強い決意。何を根幹に彼がそれを抱いたのかは分からない。

 けど。

(知る必要もないか)

 道に迷っていた彼が、一筋の軌道を視野に入れることに成功した。その事実がある。何

の問題があろうか。

「いや、何の問題もないよ」

 小さく声に出して、私も戦闘態勢に入る。

 

「やっぱり」

 目の前に焦るようにして跳んできたラビ二体を、着地した瞬間を狙って足払いをかける

ようにして左右に飛ばしながら呟く。知覚領域を鋭敏にさせつつ視線の先にはアキ――の

相棒。

 姿形は変わってないのだが、どこか違って見える。雰囲気が以前と異なるのだ。

(アキが変わったからともとれるけど)

 今だって俊敏な動きで、迫り来る三体のラビを躱しつつ木刀で痛痒を与えている。

(ん、俊敏?)

 ちっこいアキの速度は、お世辞にも素早いと言えるようなものではなかったはず。それ

が、今目の前に展開されている光景はどうだろうか。私と比較してもそう劣らない。

 足元を見やる。思わず笑みがこぼれる。

(ふふっ、なるほど。男は足元からってわけね)

 履いている靴が変わっていた。学生然とした安っぽい革靴から、薄っすらとした光沢が

映えるシックな本革のものへと。

 変化の理由に納得した私は、眼前のモンスターに集中する。もちろんアキは素人だから

そっちにも気を向けてはいるが、心配ないだろう。

 そうして、私は街の――人にとっての脅威を殴り、或いは蹴り飛ばしていった。

 

 

 

 † †

 

 

 

 どれだけの時間が経っただろうか。

 気づけば、僕とプリムは息も絶え絶え。地面に身を預けるかのようにへたりこんでい

た。

(もう大丈夫かな?)

 周りを見渡し、誰ともなく一度頷いて、召喚獣(相棒)を引っ込める。

 すると、僕が相手した、ボロボロだが死に至ってはいないモンスターたちがぞろぞろと

森へと帰っていった。

 

「ねぇ」

「うん」

 多分プリムの言いたいことは――

「どうして……殺さなかったの?」

 やっぱり。それを聞かれると思っていた。

「僕は、そうすべきだと思ったから」

 ただ、プリムたちこの世界の住人と僕の価値観は、おそらく大きく異なるはず。棘にな

らないよう言葉を尽くして説明に努める。

「プリムが間違ってるって言うんじゃないよ。でも、僕は自分の考えに従った。だからと

言って相手を否定することなんてできない。相手にも考えはあるんだから」

「だから、僕は自分を押し通して、その結果が見たい。結果を望むなら行動するしかな

い。他ならぬ僕自身が。全力で」

 上手く言えた、通じたかどうかはわからない。でも、それでいい。語り過ぎる類ではな

い。そう思うから。

「……ーよ」

「へっ?」

「だから! さっき襲ってきた奴らも、あなたを殺しかけたゴブリンと同じモンスター

だって言ってんの!」

 自分の考えを否定されたと感じたのかもしれない。それでも、僕には言葉で自分を表現

することしかできない。

「それでも、僕はやる。犠牲をゼロにすることはできなくても、それを目指す気持ちで」

「僕は、やり通す」

 

 長い沈黙。お互いに視線をそらすことなく、真っ向から意思をぶつけ合う。

 

「そう」

 そっけない一言。均衡を破ったのはプリムだった。彼女は続ける。

「それなら、見せてもらおうじゃない」

 ほっと、一息。

「でも、アキ。あなたは結果を見るって言ったけれど、どこを終着点と言うのかしら?」

 つくのは、早かったようだ。

 意地悪い笑みで、プリムは尋ねてきた。

「うっ、それは……」

 痛いところを突かれた。彼女の言うとおりだ。

「なんてね、冗談よ」

「へっ?」

 不意にプリムが遠くを見るような仕草を見せた。どこか、厳かな雰囲気を纏っていた。

「あなたに、聖剣にまつわる伝説を教えるわ」

 

 運命の歯車が、動き出す。




文中にあった、食堂の存在や仔ラビの丸焼き=祝い事の際に食べる、っていうのは捏造設定です。

文字数を少々増やしました。
展開が遅くなるのをおそれて、です。あまり変わらないかもしれませんが(笑)
一話あたり6000字ちょっとを目指していこうかと。
以降、大幅に文字数が変遷しそうでしたらその都度、後書きにでも記して報告させていただきます。
これからもよろしくお願いします。
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