「聞きたいことがあるんだけど」
出発の準備をしているときに、木下さんがそう切り出した。
「召喚獣について、かな?」
「えぇ。それに、マナについても」
召喚獣については、この世界でも喚べるってことしか言ってなかったはずだ。だから、
昨日のウェアウルフ戦での再召喚や召喚獣の頭上に表示される情報に疑問を抱いたのだろ
う。
学園のと違って、召喚にフィールドを必要としない。
召喚の際の教科は、おそらくランダムに選ばれている。
「この二点が、大きい違いかな。質問は?」
首を横に振る。これで充分なようだ。
「で、マナについてなんだけど……」
先ほどより真剣な面持ちで、聞き入る体勢をとる木下さん。
「僕もよく分からない」
僕の言葉に肩を落とす木下さん。彼女には申し訳ないが、どうしようもないことだ。
「あ、いや。僕も来たばっかりだからさ」
「そ、そうよね。ゴメンナサイ、取り乱したみたいね」
「あー、っと。そうだな、見てもらった方が早いか。
Fクラス 吉井明久 英語 43点 1/3 マナエネルギー 1
相変わらず人様に見せられないような点数だなぁ。
軽く自嘲しながら、相棒の足元を指す。
「あら? ……言っちゃなんだけど、靴に服装が合ってない気がするわね」
結構分かりやすいみたいだ。木下さんの発言に相槌を打って。
「ここら辺がよく分からないんだけど、僕がマナを取り込んだみたいで、それが召喚獣に
反映されたんじゃないかってプリムは言ってた」
移動速度が少し早くなるから、結構重宝してるんだ。
そう補足する。
「1/3っていう表記は、何かしら?」
「これは、召喚獣の点数が無くなっても問題ない残り回数を示してるんだと思う。断定は
できないけど」
納得したのか、ふんふんと頷いている。と、何かに気付いたような様相を呈した。
「後一回しか召喚できないかもしれないのは、まずいんじゃない?」
的確すぎる指摘に思わず
「でも、補充試験を受けられる当てもないしなあ」
まぁ、当てがあったところで受けたくないのが本音だけれど。
「それもそうね」
「それに、僕の学力が上がるわけじゃないから、点数もそれ相応にしかならないだろうし
ね」
「…………私も確認した方がよさそうね――
Aクラス 木下優子 世界史 318点
「私のには、表示されないみたいね……」
「僕が表示されたのは、一度実際に点数を完全に消費した時だったよ。ただ、同じような
設定が施されているかどうかは判断しようがないと思う」
「サンプルが少なすぎる、か」
「うん」
マナについて説明できることはないけれど、聖剣の伝説やプリムの話を聞いて感じ取っ
たことを口に出す。
「プリムは、マナが枯渇している最中にあってそれを身に宿した僕の存在意義に、何かし
ら考えるところがあるみたい」
口ぶりから、そう察せられた。
ただ、一緒に来てほしかったのかもしれない、という言葉は伏せておく。
「でも、昨日はすんなり去っていった。そこらへんが疑問なんだけど……」
「そう。ん、でも考えてみれば分かりそうなことではあるんじゃないかしら」
「え! どういうこと?」
「プリムさんがディラックという人を助けるということは、活性したモンスターを鎮めて
いく――世界を平和にするのと同義であるとみていいわ。そして、それにはマナの剣とい
うのが必要。このことからマナは必要不可欠であるはずよ。ここまでは良い?」
「うん、それは僕も把握してる」
「でも、プリムさんはマナを宿せる可能性のある吉井君を連れて行くことはしなかった」
連れて行く。その単語に反応しそうになるのを、意志で抑える。
「そこなんだ。どうして――――」
「他に、可能性を持つ人がいたとしたら?」
脳裏に電流が走った。
確かに、その考え方なら辻褄が合う。
「でも、一体誰が――――」
「そうね。絶対とは言えないけれど……例えば、聖剣を抜いた人」
僕は、ただただ驚いていた。
(すごい。僕が伝えた僅かな情報から、ピースを合わせていってる…………)
一気に、目の前に道が開かれたような気分だ。
「まあ、もしかしたらまだマナの剣を持てる人物を探してる段階で、同行者は腕の立つ人
でしかない可能性も十二分にあるけどね」
そっか、そういうケースもあるか。
「なんにせよ、知る必要があるわね」
「うん。じゃあ、とりあえずパンドーラに戻ろっか」
行きで大まかな道を把握しているので、帰りに要する時間は半分以下まで削ぎ落とすこ
とが出来そうである。
小川に架かる小橋からパンドーラの街を視界に捉え、そう判断する。
二人そろって寝坊し宿を出た時間が遅くなったため、残念ながら昼飯時は過ぎてしまっ
ているが、太陽を頭上に感じれるぐらいの時間には着けるだろう。
彼女が声を掛けてきたのは、そんなことを考えている時であった。
「ねぇ、吉井君。生き残るっていう最低限の目標を達成するために、召喚獣の操作を練習
しようと思うの」
木下さんほどの高得点を有する人が、操作性にも優れていたら生存率は一気に高まる。
時間がかかるだろうけど、いつになったら帰れるか分からない以上、デメリットというほ
どのものでもない。
「僕は、良いと思うよ」
出来るに越したことはない。そう思っての発言だったのだが、僕の返答に木下さんは満
足していないようだ。まるで、他人事じゃない、というような目でこちらを見ている。
「他人事にしてもらいたくないんだけど……」
あ、当たった。とはいえ、彼女が何を望んでいるのかには皆目見当がつかない。
思慮を巡らす僕の前で、目はせわしなく左右に泳ぎ、口は開きそうになっては閉じると
いうことを繰り返す木下さん。よほど言いづらいことなのだろうか。
「吉井君に教えてもらいたいのよ」
漸く口をついて出てきた言葉は、そのようなものであった。
「あぁ、そんなこと…………って、僕!?」
「あなた以外に誰がいるのよ」
ジト目で視る木下さんに、たじろぎながら。
「う~ん、僕としては断る理由もないから手伝うけど。前も言ったように、難しいし中々
上達するものじゃないよ。それでも良いのなら」
「えぇ、私も一朝一夕で出来るようになるとは思ってないわ」
決まりね。そう言いながら差し出された手を、おずおずと握る。
「よろしくね」
「あ、うん。こちらこそよろしく」
「そういえば、何で吉井君は召喚獣の扱いに長けてるの? 私たちは、まだ一年だから召
喚する機会も殆どなかったはずだけど」
「あ~っと、なんというか、あまり褒められた話じゃないんだけど……」
「?」
口ごもる僕を、けがれのない目で見つめる木下さん。
平時なら迷いなく歓迎するその視線が、今の僕には痛い!
「えと、僕って観察処分者じゃん? その罰、じゃないけど教師の雑用――主に力仕事を
力のある召喚獣を利用して、任されるんだ」
「ふ~ん、後にも先にも君にしかつけられないであろう肩書きは名ばかりじゃないってこ
とね。……あら? でも、召喚獣って物理干渉は行えないんじゃないの?」
「あぁ、
バックがあるから僕個人としては、あまり喚びたいものじゃないんだけどね」
何かさりげなく罵倒されたような気がしたけど、気のせいだよね。
「え? ってことは、召喚獣の五感を吉井君も共有するってこと!?」
「あ、全部じゃなくて何割かなんだけ――――」
途切らせざるを得なかった。急に俯いた木下さんが、同じような勢いで顔を上げたから
だ。
「昨日、モンスターに殴られたよね? あたしを庇ったせいで……」
愕然、沈痛。
彼女が顔に浮かべていたのは、そのような感情であった。
このままでは、自分を責めてしまうであろう。それは、あまりに忍びなかった。
「いや、違う。木下さんは僕の出した指示に従っただけだ。あれは、タイミングを間違え
た僕の失態だよ」
それに痛いのは、普段から鉄人に殴られてるのと同じことだしね。
おどけるように付け加えて、ハハハと笑ってみせる。
(僕のミスなのだから、責任を感じなければいいんだけど)
ちら、と反応を窺うと、目線が彼女のそれと交錯した。何か言いたげな表情を乗せてい
たのは束の間、柔らかくほほ笑んだ。
ドキリとした。
そして、そんなことを感じた自分に驚いた。
(オーケー、落ち着こう……。深い意味はないぞ、吉井明久。あれしきで自惚れるとは情
けないにも程がある)
自分を落ち着かせるためにまで、卑下しなければならないとは……。少し生き方を考え
直した方が良いかも。
割と本気で落ち込む僕の意識を、現実に掬い上げたのは木下さんの控えめな笑い声だっ
た。
「ふ、ふふ。そうね。あなたは、文月学園きっての問題児だったわね」
不意打ちだった。
たっぷりと呆けるのを自覚しながら。
遅れて、突っ込んだ。
やっぱり罵倒されてたよ!
不思議と、嫌な気持ちにはならなかった。
いや、それどころか、くすぐったくさえ感じられ――――
(待て待て待て! 僕は、罵られて喜ぶ人じゃないぞ!)
ギリギリで待ったをかけた。
(あ、危うくマゾに目覚めるとこだったよ)
木下さん、恐ろしい子!
気付きもしなかった。いや、おぼろげには自覚しているであろう感情に、そっとふたを
かぶせて深く息を吸い込む。目を数瞬閉じて、空気を全身に回すように意識しながら鼻か
ら緩やかに吐き出した。
そうして、リセットを終える。これで、通常営業に戻れる。
(さて。どうごまかしたものかな)
三十秒は黙ったままであった僕を、首をかしげて覗き込む木下さんの顔を見て、ふと考
えた。
パンドーラまでの残りの道のりを、木下さんの追及をのらりくらりとかわしながら過ご
す。
時間は、あっという間で。
僕らは、無事に二度目のパンドーラの土を踏みしめた。
遅めの昼食をとった僕らは、プラプラと街を歩いていた。腹ごなしの散歩である。
あちらの世界とここでの食の相違など、他愛もないおしゃべりに興じていた。
ただ、一つ気になる点があるとすれば。木下さんの笑みが、なんとなくだけど段々ぎこ
ちなくなってきてるような……。
「先に宿に戻ってていいかしら?」
こう言われたのは、そんなことを考えた矢先のことであった。
「うん、別にいいけど。……体調悪いとか?」
「あ、別にそんなんじゃないの。ただ、ちょっと、ね」
ん~、聞かなくてもいっか。困らせるのは僕としても本意じゃない。
「ん、分かった。じゃあ、そこら辺適当に見て回ったら戻るね」
「ええ、悪いわね急に」
「いやいや、謝らないでよ。それじゃ、また後で」
初めて来た時と比べると、かなり静かになったように感じられる街を歩きつつ独りごち
る。
「余裕が無くて気付かなかったけど、道具屋なんてのもあるんだね」
当然のことなんだけど、ここがゲームの世界に酷似していると推測してる身からすれば
何が売られているのか気になるところだ。
理由をつけなくて済むので、こういう時単独行動は気が楽なものだ。
物は試しとばかりに、店をのぞいてみる。
真っ先に目についたのは、やはり装備品である。この存在が、否応にも未だ現実感の薄
い認識を正してくれる。
他には、ドロップにチョコ、おそらく薬草の類であろう草。変わったところだと聖杯と
いうのもある。これらは、回復アイテムの系統に違いない。
ふと、疑問に思った。
(回復作用を持つ飴玉は、甘いんだろうか)
果てしなくどうでもいい疑問な気もしなくもないけれど、気になるのは仕方がない。
「あの~、このまんまるドロップというのを一つください」
気付けば、購入していた。
ピンクの包装紙を剥がし、まろび出た飴玉を口に含む。
口中に広がる甘味。脳内に現れる問題用紙。
「…………」
あれ? おかしいな?
濃厚でありながら、後に引かないような甘さ。
下記の英単語のアクセントを選択肢から選べ。
「……なんでやねん!」
我慢できずに、突っ込んだ。
突然あげた大声に、店の者(何故か踊り続けている)に怪訝そうな目で見られ、慌てて
謝る。
<不正行為とみなし、零点で処理します>
「…………」
頭の中に響いてきた警告に反駁する気にもなれず、まんまるドロップを二つ追加購入し
て店を後にした。
† †
私が宿に先にチェックインしてから、三十分ぐらいして吉井君はやってきた。
お互い少し離れた位置に座ったところで、彼が会話の口火を切る。
「あのさ、文月学園では僕が居なくなったこと、どう説明されたの?」
「え? 何のことよ?」
言った直後、ハッとなる。手を顎に持っていき、思案する。
(おかしい。吉井君は”この世界”にいるんだから、文月にはいられないはず。なのに、
何で
「…………」
嫌な想像が、脳裏を
「誰かが行方不明になっただなんて話、私は聞いてないわ」
これは、必要なことだと自分に言い聞かせて。
「吉井君!」
「あ、れ? 木下さん?」
三度目の呼びかけで、ようやっと吉井君は返事をしてくれた。
あまりの衝撃に、意識が飛んでいたみたいだ。今も、焦点が定まらないような、そんな
様子が見て取れる。
「大丈夫?」
「あ、うん。ごめんね、心配かけちゃったみたいで」
「いえ、いいのよ。私が不用意だったわ」
「それで……続けてもいいかしら?」
(悪く思わないでね、吉井君。正直私もいっぱいいっぱいなの。それこそ、何もかもかな
ぐり捨てて叫んで逃げ出したいぐらいには)
未だそうなってないのは、いついかなる時も優等生を演じられるよう鍛え上げてきた鋼
の理性で以て、何とか押さえ込んでいるからだ。
「うん、お願い」
それに比べて、彼のメンタルの強さには驚かされる。
そんな思いを抱きながら、出来るだけ事務的に伝えるべく余計な感情は殺す。
「さっき言ったように、人が一人いなくなる、そんなニュースは聞いてないわ」
「……っ!」
覚悟はしていても、それでもきついものがあるのだろう。
「そんなことになったら学校中はおろか、警察ひいては一般に知れ渡るところになるわ」
でも、その事態に至っていない。
「やっぱりおかしいわ。確か秀吉と仲良かったわよね? そもそも吉井君が向こうでいな
くなったのは何月何日のこと?」
「十月……六日」
「私は、十月十日だから、あなたが居なくなったという事実は最長で四日間放置されたこ
とになる。それだけの日数ともなれば、あなたの近しい人が心配にならないはずもない
し、加えて担任は西村先生よ。あの人が、何も行動を起こさないとは到底思えないわ」
列挙していくごとに深まる謎。全容は、どこまで深いのか。
しかし、私が半ば直観に導いたのはそれを解くことが目下為すことではないだろう、と
いうものだった。
「私はね、学園長に呼び出されて頼まれたことがあったの。内容は、学園のPR。もちろん
召喚獣も込みでの、ね」
いきなりの話題の転換にも吉井君の反応は薄い。
「鍵は、召喚システムにあると私は踏んでいる」
ここで、漸く反応を見せる。吉井君は勢いよく顔を上げた。
「どういう、ことさ」
「でも、今重要なのは何故、誰によってここに来ることになったのかじゃなくて、どう
やって帰還するか。そうでしょ、吉井君?」
真相が気にならないわけがない。それは、私も例外でない。日常を奪った根源にしかぶ
つけられない強い負の感情は、今も心中を渦巻いているのだ。けれども、結局は推測に推
測を重ねたものしか浮かび上がらない。それでは、ストレスが溜まるばかりだ。
「帰り方は私たちだけじゃ分からない。吉井君の話と合わせると、プリムさんともう一度
会う必要があると思う」
聖剣の伝説について。そして、マナに関して。聞きたいことは山ほどある。
ゆっくりと俯き、彼は口を開く。
「僕は――――」
† †
「僕は……僕も、それが良いと、思う」
絞り出すような心地で吐いた声。けれど、驚くほど澄んだ感覚を抱いた。
そのことに疑問を覚えつつも、
「とりあえず、パンドーラでプリムを待とうか」
妖魔の森での捜索が一通り終わったら、一度パンドーラには寄るはずだ。
それにしても。
(女の子、それもかわいい女子の前でみっともない姿見せちゃったなぁ)
恥ずかしいけど、お礼は言わなきゃ。
「ありがとう、木下さん」
「へっ!? き、急に何よ」
「木下さんが、真剣に話してくれなかったら僕は流されるままだっただろうから」
「ふ、ん。私もあなたと同じような状況で、帰るには力を合わせなきゃいけない。そう
思ったから現状の認識を統一して共有したの。吉井君のためにやったわけじゃ、ないわ」
一気に、ガーッと弁を振るう木下さん。僕の態度が気に障ったのかもしれない。
それでも。恩を受けたことは変わらない。
「うん。そうだとしても、ありがとう」
「…………」
黙りこくってしまった。う~ん、やっぱり女の子って何考えてるのか分からないや。
場の雰囲気を変えなきゃ。そう思い、さっそくさっきの発見を話題に出す。まんまるド
ロップについてである。
「俄かには信じがたいわね」
僕の話を聞いた木下さんは、そう感想を漏らした。当然の反応だろう。疲れて、変な夢
を見たんじゃないかと僕自身疑っているのだ。
「うん、とりあえず木下さんにも体感してもらおうと思って買ってきた」
二つの内、一つを渡す。
飴を受け取った木下さんは、それをしばらく掌の上で転がし、訝しむような顔つきで「
味は?」と尋ねてきた。
「普通に美味しかったよ」
「ふ~ん」
ぺりぺりと外の包みをはがし、口に持っていく。
途端目を見開き、慌てたように手を口に当てた。僕の話を聞いて、不正行為と取られる
ような行為――試験中の会話をしそうになったのを未然に防いだのだろう。
十分ほどして。
「終わったわよ」
「あ、うん」
やることもなく、部屋に備え付けられていたメモ帳セットで気になる点を箇条書きにし
ていた僕は、木下さんの声を受けて彼女に向き直った。
「多分、これは補充試験の代わり……みたいなものね」
彼女は早々に結論を述べ、すぐさま行動に移った。
「
Aクラス 木下優子 英語 98点
点数が表示される。十分やそこらで、一時間かけて問題に向かう僕より点数が高いと
は、これ如何に。
そう思っていたら、さらに驚くことをおっしゃられた。
「それと、百点分しか問題は用意されてなかったわ」
彼女の言う通りならば、ほぼ満点をマークしたことになる。
話の腰を折らないよう、仰天するのをなんとか
と言わんばかりの口ぶりであった。
「ある問題全部解いたからよ。それにしても、採点まで自動的にされるなんてどうなって
るのかしら?」
ま、そのせいで点数自体は下がっちゃったけど。そう続けるが、僕はといえば、彼女の
疑問について考えるどころではなかった。
学年トップクラスともなると、常に余力を残して取り組んでいるように感じられて、そ
れに比べると。
(うう、ほんと僕っていつも余裕に欠けてるよなあ)
だから、雄二にも「明久の馬鹿は今に始まったことではない」って言われるんだろう。
思考が一つのことに傾いてしまって、他を扱うことが出来なくなるのは大きい欠点だ。
それぐらいは、さすがに僕でも分かる。
とはいえ、それに対する妙案は持ち合わせていないのだが。
木下さんの導いた推論は、このようなものであった。
「自分が、消耗した教科の補充試験を行えるものとみていいと思うわ。吉井君の場合も考
慮すると、扱った召喚獣の教科分から選ばれる、と言った方が正しいかしら」
加えて、問題やそれに対する自身の解答と模範解答はいつでも引き出せるらしい。彼女
曰く「解答用紙の情報が頭の中に送り込まれる」とのことである。
「それじゃあ、ぱっくんチョコも同じなのかな」
「そのぱっくんチョコっていうのは?」
僕の独り言を、木下さんが耳聡く拾う。
「多分、同じ回復系のアイテムだと思ったからさ。値段がまんまるドロップより高かった
から、テストの点数上限が増えるのかもね」
「……当たらずとも遠からず、ね」
じっくりと考え込むようにして囁く。
意図するところがよく分からず、聞き返す。
「あながち間違いじゃないかもしれないってこと」
当てずっぽうで言ってみただけなのだが、どこか彼女の見解とかぶるところがあったら
しい。「辿らなきゃ帰れないことも在り得るわね」そう前置いて。
「ねぇ、吉井君はどう考える? この状況を」
彼女は僕に、問いかけた。
今回の話、文字数が八千字を超えています。相変わらずボリュームの安定しない拙作です(汗
第一章の起承転結における”承”への導入。それが、第七話の役割といったところです。
話を深く掘り下げ、よりいっそう期待感を持たせることを求められる”承”は、難しいですね。アドバイスやご意見がありましたら是非教えていただけると嬉しいです。