当ssはシリーズ最新作のD.C.Ⅲの設定とは大きく異なる展開をしております。
しかしこの作品が「Ⅲの世界観ならびに作品を否定するものではない」ということを明言しておきます。
ひとつの二次創作、それこそifの話として楽しんでいただければ幸いです。
ED後の春の夢の中
あの人と純一の会話劇です
人に歴史あり。
誰にだってその人を人足らしめるルーツが存在し、過去の積み上げが今を作っている。
「私の過去の話?」
「おやおや……年寄りの昔話に興味はないんじゃなかったのかい?」
「連日花見につき合わされたら話の肴も尽きるんだよ。何日目だと思ってるんだ」
「情けないねぇ。アンタはまだ花の学生なんだから、毎日でも話すことなんてできるだろう」
「それを俺に期待するのが間違ってるって。つか、この時期は睡眠不足なんだよ。主に誰かさんのせいで」
「アタシがここに連れてこなくても、誰かしらの夢を見るだろう?」
「だからって連日引っ張ってくるなよ」
「この季節、目覚めるのは良いけどどうにも退屈でねぇ」
「じゃさくら呼べよさくらを」
「こんな成りでさくらと会ったら、あの子混乱しちゃうでしょう」
「元の姿で会えばいい話だろ。若作りする歳でもねぇし。つか死んでんだし」
「死んでるからこそ、若作りのひとつでもしないとやってられないのよ」
「孫の姿借りまでか?」
「さくらは昔のアタシと瓜二つだからねぇ」
「……で、えーと。何だっけ?」
「昔の話」
「あぁ、そうだったね」
「別に話したくないなら他の話でもいいけどな」
「話したくないわけじゃないさ。ただ……そうだね。何処から話せばいいか」
「……というか、まずどこの生まれなんだよ」
「おや、それすら知らなかったのかい?」
「生前はそんな話もせずに逝っちまったからな。たとえ話されても覚えているような歳でもなかったろ」
「……それもそうだね。生まれ……北欧の方さ」
「随分大雑把だな。まぁあの成りでアジア圏ってのもないだろう」
「当時と今じゃあのあたりの国境線も随分変わっちまってるだろうから、国の名前を言っても正しいかわからないだろうしね」
「そもそもヨーロッパ方面なんて国言われても位置までわからん」
「やれやれ、そんなことでこれからやっていけるのかい」
「テスト前にはそれなりに詰め込んでるさ。って国境線が変わってるって、そんな昔の話なのか?」
「伊達に魔女やってるわけじゃないよ。かれこれ2世紀前になるんじゃないかい?」
「2世紀……。1800年代か。やっぱ魔女狩りとか、あったのか?」
「どこまで遡ってるんだい。魔女狩りなんてのは16世紀から17世紀までが最盛期の話さ。アタシが生まれた頃にはとっくに下火になっちまってるよ」
「は? そうなの?」
「帰ったらちゃんと調べてみなさい。良くいわれているけど、アレが『かの宗教主導で大量殺戮があった』なんてのも大きな誤解だからね。随分と捻じ曲がって伝わってるものさ。まぁ宗教が民衆の生活の規範となる以上、無関係ではないけど。少なくとも民衆が主導で行われたのが始まりさ。
昔は時代は凶作とか、嵐が起きれば神に生贄を差し出したりしてたでしょ。」
「インカやマヤ文明の話か」
「おや、そっちは知ってるのかい」
「知り合いにマニアがいるんだよ」
「なんだか唐突にかったるくなったね。あとはその子に詳しくは聞いてみるといい」
「……死んでもやなこった」
「死人にそれを言うかい全く。ま、そういったものの原因を『悪しき存在』として誰かにレッテル張りしたのが所謂『魔女狩り』だけの話さ。
こういっちまえば、概念そのものがアタシら『魔法使い』のそれとずいぶん違うだろ。生まれがちょいと特殊なだけで、どっこい地に足付けて生きてるわけだしね。結局は対岸の火事の話さ。アタシらはそもそも寄り固まって小さな集落を作っていたしね」
「外界との接触はほとんどなかったのか?」
「いいや、行商の人が来たり、戦災難民が迷いこんだり、それこそ森に置き去りにされた木こりの兄妹がやってきたりもしたからね。そんときゃ、表向きは普通の集落として接するだけさ。なにも難しいことじゃない」
「お菓子の家でも用意したりとか?」
「アタシと仲の良い何人かで造ったことはあるよ」
「おい」
「けど年頃の女の子だからね。結局造った後すぐに自分たちで全部食べちゃったさ」
「……おい」
「じゃ、黒ミサとかサバトとかはなかったわけだ」
「黒ミサもサバトも『魔女の集会』というより『異教徒の集会』だからね。なかったわけではないだろうが、これも言葉の意味が全然違うさ。そもそもが黒ミサの『ミサ』はキリスト教、カトリックの集会だし、サバトだって語源はユダヤ語の安息日だよ。結局は宗教間の諍いの果てにできた言葉さ。
けど黒ヤギを頭に被ってはしゃぐってのはハロウィンみたいで楽しそうだね」
「……あれも魔女払いの祭じゃなかったか?」
「仮装して呪文を唱えればお菓子がタダもらえるんだから、何もせずして饅頭怖いみたいなもんだろう」
「逞しい限りで」
「けど、アタシらの集落にも集会みたいなものはあったよ。年に何回か集まって魔法の発表会みたいなことをする、それこそお祭りだね。
そういや日本の書物を読んだ子が、尻尾を二つに分裂させた自分の家の猫を自慢げにお披露目してたね」
「猫又」
「そうそう、それに対抗した子が中国の文献を頼りに狐の尻尾を九つに割ったり」
「……邪悪な集会からは程遠い風景だな」
「まぁそんな村だったけど、ちょいと物足りなくも感じてね。アタシはもともと外に出たい意識もあったから、100年ほどして飛び出したわけよ」
「タブーとかじゃなかったのか?」
「どうかね。アタシの代ではそんな奇特な子はアタシぐらいしかいなかったけど、村がひっくり返るほどの騒ぎになったり、ひっ捕まって軟禁されたりはしなかったね。二つ返事で了承貰って、買い物でもするようにふらっと旅に出た形だったね」
「ま、100年生きりゃそんなもんか」
「そこから諸国巡りさ。ヨーロッパの国々を巡って、アフリカはちょうどゴタゴタしてたから駆け足だったかな。中東にはそこそこ滞在して、ソ連ではオーロラも見たね。そこから赤道直下まで南下して、最後に来たのが……」
「ここってわけか」
「ホントはそのまま西の大陸へ渡る予定だったんだけどね」
「……ふーん」
「あっちでも桜と同系の樹はあったんだけどね。花を咲かすより、実を取る方に腐心した改良がなされていたから、こんな花を付けるなんて思いもしなかった。
ビーフシチューが全く別の料理になってて、言葉も独自的。着物は最初はごちゃごちゃとかったるかったんだけどね、あの人に合わせていたらいつの間にか慣れちゃったよ」
「これも、そういうときに出会ったのか」
「あら、美味しそうに造れるようになったじゃない。見た目は合格点だよ」
「伊達に『魔法使い』やってないからな」
「食べていいかい?」
「というか食べれるのか?」
「こんなこともあろうかと、ちゃーんと味覚まであるんだよ」
「こんなことのあるかもしれないなんて予測立てんなよ」
「いちいち煩い子だね。で、食べていいのかい?」
「そのために造ったんだ。食べないなら俺が食べるぞ」
「どうして素直に言えないのかねぇ……。造る和菓子はこんなに甘くて美味しいのにね」
「……関係なくないか?」
「『女の子は砂糖とスパイス、それと素敵な何かでできている』ものよ。甘くて美味しいお菓子を造れる魔法使いが、邪なことなんてあるもんかい」
「……」
「照れ隠しもほどほどにしときなさいよ。アンタはアタシに似なくてもいいところばっかり似ちゃったからね。
後悔ってのは先に立ってはくれないし、物事の始まりなんてのは良きも悪きもほんの些細なものなんだからね」
「そんなことは、数年前に痛いほど思い知ったさ」
「それはそうと、こっちに来てからあの人とはね」
「あー、勘弁してくれ。身内の惚気を素面で聞けるほど人間できちゃいねーから」
構想は無印D.C.のファンブック座談会より
「しばらくヨーロッパの方にいて若いままの姿で100年生きて、諸国放浪しながら日本へ。結婚して恋をして、その人と一緒に生きようと歳を取り出して、総計200年くらい生きていると」という御影氏のコメントです
D.C.Ⅲであの方については現スタッフよりある答えが出ていますが、そもそもD.C.という作品は(特に無印からⅡにかけて)複雑な変遷をたどっている作品ゆえ、無印とそれ以降のメディアミックスからとでは世界観が異なっていると考えました。(子どもの性別などなど)
そのため、我が家の設定では無印準拠のこんな感じで行きたいと思います。
最後に重ねて、この作品が「Ⅲの世界観ならびに作品を否定するものではない」ということを明言しておきます。
ひとつの二次創作、それこそifの話として楽しんでいただければ幸いです。