やはり俺たちの青春ラブコメはまちがっていた。   作:神納 一哉

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エピローグ②

          × × ×

 

部室の鍵を返しに職員室の扉を開け、真っ直ぐに平塚先生の元へと歩いていく。

 

「平塚先生、約束通り夕飯を御馳走になりにきました」

 

「まあ確かにラーメンを奢ってやるとは言ったが、もう少し私に配慮してくれてもいいのではないか?」

 

俺の方へと振り返り、少し涙目になりながら平塚先生は言った。

 

「その、平塚先生に配慮とは?」

 

雪乃が首を傾げて平塚先生に尋ねる。俺の左腕を抱きしめた状態で。それ、喧嘩売ってますから!自重して、ゆきのん!

 

「と、とりあえず部室の鍵をお返しします。えーっと、俺たちはどこで待っていればいいですかね?」

 

「……校門前で待っていてもらえればそちらに車を回す」

 

「わかりました。それでは校門前でお待ちします。行くぞ、雪乃」

 

「ええ。行きましょう。八幡」

 

「名前呼びだと…。畜生!見せつけるな!」

 

「すみませんでした!!」

 

「はあ、結婚したい…」

 

平塚先生に謝罪の言葉を投げ付けて職員室を後にして、扉の向こうから大きなため息とともに聞こえてきた言葉には、ものすごく重い何かが籠められていた。

 

本当に、誰か貰ってあげて!

 

          × × ×

 

「ふーふー。ふーふー」

 

雪乃が箸で掬い取りれんげに載せたラーメンに息を吹きかけているのを眺めながら、俺も自分の箸で持ち上げたラーメンに息を吹きかけた。俺たちの前に座る平塚先生は漢らしくラーメンを啜っている。

 

「ずずっ。うん、旨い」

 

「…っん。確かに美味しいわね」

 

「意外と大口を開けられるんだな」

 

雪乃がれんげを口に入れたのを見て正直な感想を言うと、雪乃は頬を赤くしながら俺を見る。

 

「…啜るのは苦手なのよ。その、食べるところをそんなに見ないで欲しいわ。恥ずかしいのだけれど」

 

「お、おう。悪い」

 

視線を目の前のラーメンに戻して、再びラーメンを箸で持ち上げて息を吹きかける。そうすると隣からも息を吹きかける音が聞こえてきたので、今度は視線を向けないようにしながら食事に集中することにした。

 

「ふむ。雪ノ下には向いていなかったか。陽乃は気に入ってる店なのだがな」

 

俺がラーメンを食べ終わりそうになった時、口角を上げて平塚先生がそう言い終わるのと同時に店の入り口の扉が開いた。

 

「ひゃっはろー。お待たせ静ちゃん。あ、醤油豚骨ラーメン一つお願いしまーす」

 

「あいよ!醤油豚骨一丁!」

 

「その呼び方は止めろと言っているだろうが」

 

「えー、良いじゃん別に。あ、雪乃ちゃんと比企谷くんもひゃっはろー」

 

「………どうも」

 

「………」

 

「雪乃ちゃんが冷たいっ!」

 

大げさに泣き真似をする雪ノ下さんを見て、俺は隣の雪乃へと視線を向けると、雪乃はれんげを口に含んだまま固まっていたので、これはヤバいと思って慌てて雪乃の口かられんげを引き抜いた。れんげを引き抜いた後、雪乃の喉が小さく動いたのを確認できたのでほっと胸をなでおろす。

 

「大丈夫か?」

 

「………突然姉さんが現れたから驚いてしまったわ。これは八幡の差し金かしら?」

 

「いやどう見ても平塚先生が黒幕だろうよ」

 

「ふふ。冗談よ」

 

小さく微笑む雪乃にれんげを返すと、前の席に座った雪ノ下さんに向き直ってから小さく溜息をついた。

 

「平塚先生から聞いたと思いますが、雪乃さんとお付き合いさせていただくことになりました。よろしくお願いします。お義姉さん」

 

「……………は?比企谷くん?今、なんて?」

 

「く、くくくっ。そういうことだ、陽乃」

 

「そういうことってどういうこと?静ちゃん」

 

「お前は比企谷の義姉という立場になったということだよ陽乃。しかし比企谷。お前もなかなかやるな。陽乃のこんな表情を見られるなんて思わなかったぞ」

 

「まあ、遅かれ早かれわかることですからね。なんで雪ノ下さんを呼んだんですか?平塚先生」

 

「ん?リア充なお前らへの腹いせだが」

 

教育者にあるまじきこと言っちゃったよこの人。

 

「えーと、雪乃ちゃんと比企谷くんが恋人になったってことでいいのかな?」

 

「ええ。その認識で間違いないわ。姉さん」

 

「ふうん。そうなんだ」

 

目を細めて俺と雪乃を見比べる雪ノ下さん。その冷徹な眼差しを俺たちは真正面から受け止めつつ、どちらからともなく机の下で手を繋いでいた。それに気づいた平塚先生は涙目になって雪ノ下さんのラーメンを持ってきた店員さんに追加のラーメンを注文し、雪ノ下さんはにやりと唇を歪めた。

 

「それが、貴方たちの本物?」

 

「はい」

 

「ええ」

 

俺と雪乃がほぼ同時に返事を返すと、雪ノ下さんは小さく微笑む。

 

「うん。合格」

 

そう言うと、雪ノ下さんは鞄からスマホを取り出してどこかに電話をかける。

 

「あ、お母さん。雪乃ちゃんの所に居る必要無くなったから家に帰るね。うん。詳しくは帰ってから話す。うん。じゃあ八時頃に雪乃ちゃんのマンションの下に車を回してもらえるかな?うん。じゃあ後で」

 

「…姉さん?」

 

怪訝そうに雪乃が呼ぶと、雪ノ下さんは鞄にスマホをしまってから片目を閉じて言った。

 

「比企谷くん。雪乃ちゃんをお願いね」

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