やはり俺たちの青春ラブコメはまちがっていた。   作:神納 一哉

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B.T.2 雪ノ下雪乃は愛を知る③

          × × ×

 

暫くしてから部屋の扉が開かれ、満面の笑みを浮かべた義姉さんと、テレビでしか見たことのないお義父さんが連れ立って部屋に入って来る。

 

そのままお義母さんの隣にお義父さんが座り、お義父さんの横に義姉さんが座った。

 

「初めまして。雪乃と陽乃の父親の雪ノ下利晃(としあき)です」

 

「は、はい。初めまして。比企谷八幡です」

 

「悪いね。隣室で少しの間モニターさせてもらったよ」

 

お義父さんはそう言うとおもむろに頭を下げた。

 

「雪乃を、よろしく頼むよ」

 

「えっ、はっ、ええぇ?」

 

突然の出来事に俺は奇声を上げて狼狽える。

 

いや、だって、初対面の雪乃の父親、県議会議員の雪ノ下利晃が会って早々に頭を下げてくるんだよ。慌てるなって言う方が無理だよね?

 

「…そこは男らしく返して欲しかったのだけれど」

 

「いや、ほら、拍子抜けしたっていうかなんて言うか…」

 

「言い訳はいいから、父さんにきちんと返事をしなさい」

 

「お、おう」

 

雪乃に尻を叩かれて、俺はお義父さんに真っ直ぐに向かい合う。

 

ところで、なんて返事すればいいんだ?

 

雪乃さんをください。――いや違う。

 

雪乃さんとの婚約を認めてください。――これも違う。

 

だとすれば、あれしかないな。

 

「雪乃さんと幸せになります」

 

俺がそう返事をすると、雪ノ下家の面々―雪乃も含めて―は一様に呆気にとられたかのような表情を浮かべた。

 

………あれ?何か間違えたか?

 

「……嬉しい」

 

雪乃がそう呟いたかと思うと横から俺に抱き着いてきた。

 

「ちょ、ちょっと、皆の前だぞ!?」

 

「構わないわ」

 

なんで猫みたいに擦り寄ってくるの?ゆきにゃんなの?

 

「まあ、あんなこと言われちゃ無理ないか」

 

「臆面もなく言い切りましたしね」

 

「嬉しいのはわかるが、雪乃は一旦離れなさい。話が進まないだろう」

 

義姉さんとお義母さんに白い目で見られているところに、お義父さんが仕切りなおすために雪乃に声をかけると、雪乃は不承不承といった感じで俺から身体を離した。

 

「さて八幡くん。君は雪乃を娶るということで間違いないのだね?」

 

「はい」

 

「妻も言ったが、君と雪乃の結婚は政略結婚とする。それに伴って八幡くんと雪乃は今日から許嫁ということになるが構わないかね?」

 

「はい。構いません」

 

「八幡くんが18になる日に結婚してもらう」

 

「わかり………えっ!?誕生日に!?」

 

「政略結婚とはそういうものだよ。八幡くん」

 

「はあ。わかりました」

 

反抗するだけ無駄のようなので素直に従うことにした。俺の誕生日が結婚記念日になるのか。まあわかりやすいからいいけど。

 

「ふふ。8月8日には比企谷雪乃に…」ニヤニヤ

 

「雪乃ちゃんがだらしない顔になってる!」

 

「また、陽乃はそうやってすぐ雪乃をからかうから疎まれるのよ」

 

雪乃を見て義姉さんがからかうのをお義母さんが窘めている。ホント、懲りないですね、義姉さん。

 

「雪乃。結婚した時点で戸籍上は比企谷になるが、高校卒業まで学内では雪ノ下を名乗りなさい」

 

「そうね。在学中に名前が変わると色々問題がありそうだもの。わかりました。ところで父さん、その、お互いの親しい友人などを結婚式に呼んでも良いのかしら?」

 

「式は身内だけで内々に行おうと思っているのだが、数名ならゲストを呼んでも構わないよ。八幡くんの誕生日はさっき言っていた8月8日なのかね?」

 

「ええ。そうよね?八幡」

 

「ええ。8月8日が俺の誕生日です」

 

さらっと友人などを呼んでいいか聞けるのは凄い。さすが雪乃。平塚先生と由比ヶ浜は確定として、後は誰を呼ぶのかねえ。

 

俺サイドは小町と戸塚が一押しだぜ。後は被るけど平塚先生と由比ヶ浜だな。材木座?暑苦しいから却下。

 

「ふむ、約5か月後か。式の方は問題ないな」

 

お義父さんはそう呟くと、隣に座っているお義母さんに何やら耳打ちをする。するとお義母さんが頷いて部屋を出て行った。

 

「母さんにはあるものを持って来てもらうように頼んだ。すぐに戻ってくるよ」

 

「何を取りに行ったのかしら?」

 

「雪乃に関係するものだよ。結納代わりに八幡くんに預けたいものがあるんだ」

 

「後日改めて両親と共に出直して来た時に預かるのでは駄目ですか?」

 

「記載済みの婚姻届をご両親から預かっている時点で、八幡くんが比企谷家の総意だと思うのだが」

 

「…まあ、そうですね」

 

うん、確かに婚姻届に署名してもらった時に親父から同じようなことを言われたよ。

 

未成年の俺なんかが預かって大丈夫なものなの?それ。

 

「んふふ。義弟くん、何を考えてるのかな?」

 

「大したことじゃありませんよ。俺が預かってもいいものなのか心配になっただけです」

 

「大丈夫だと思うよ。母さんが取りに行ったのって雪乃ちゃんのアルバムとか振袖とかだから」

 

「アルバムは興味ありますけど、振袖は俺が預かる意味ないと思うんですけど」

 

「八幡くん、嫁入り道具ってやつだよ」

 

「そ、そうですか…」

 

「それにこれは八幡くんを手に入れるための結婚であり、雪乃が幸せになる結婚でもあるのだから気にしないでくれると嬉しい」

 

なんでそんなに俺の好感度高いの?過大評価されてるの?

 

まあ雪乃は幸せにしますけどね。




独自設定

雪ノ下父の名前は雪ノ下利晃(としあき)
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