やはり俺たちの青春ラブコメはまちがっていた。   作:神納 一哉

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B.T.2 雪ノ下雪乃は愛を知る⑤

お前は何を言っているんだ。

 

「いや、あのな。婚約が成立したからっていきなり同棲ってのはちょっと…」

 

「ちゃんと八幡の部屋を用意するわよ。寝るのは別の部屋なら大丈夫でしょう?」

 

そう言ってから雪乃は俺の耳に顔を寄せて俺にしか聞こえない声で囁く。

 

「…準備が出来たら一緒に寝ましょうね」

 

「ばっ、馬鹿」

 

顔が熱い。確実に俺の顔は真っ赤になってることだろう。

 

「ふふ。貴方のせいよ」

 

なんでそんなに楽しそうなの?

 

「雪乃が世帯主だから好きにしなさいとは言ったけど、まさか雪乃の方からその日のうちに同棲を申し込むとは」

 

「それだけ八幡さんのことを信頼しているのよ」

 

「あの雪乃ちゃんが伴侶って言いきっちゃうくらいだしね」

 

「陽乃、貴女はどう思ってるの?」

 

「雪乃ちゃんのこと?雪乃ちゃんが私の妹ってことに変わりはないでしょ?雪乃ちゃんが一人暮らしを許されている理由もわかったし、なんの問題ないよ」

 

「雪ノ下建設を比企谷くんに継がせることについてはどのように考えているかしら」

 

「私が政治家になるって決めた時点で、会社は雪乃ちゃんが継ぐって決まっていたでしょ?でもその雪乃ちゃんの負担を肩代わりしてくれる比企谷くんが雪乃ちゃんの隣に来てくれて良かったなって思ってるよ」

 

お義母さんと義姉さんの話を聞いて、思わず質問をしてしまう。

 

「義姉さん、政治家になるんですか?」

 

「お父さんの後を継ごうと思って大学の専攻を政経にしたからね。だから雪乃ちゃんが会社を継ぐのって3年前には決まっていたんだよ」

 

「八幡が私の代わりに会社を継いでくれるから、私が八幡の夢を継いで専業主婦になるわ」

 

「じゃあ、雪乃は大学行かないのか?」

 

「そうね。高校卒業後は家に居て、子供を育てるというのもいいかもしれないわね。そうするとクリスマスくらいから子作り解禁かしら?3か月くらいならお腹も目立たないし…」

 

「何さらっと凄いこと言ってるの!?」

 

「雪乃。孫の養育費は任せなさい」

 

「お義母さんまで!?」

 

「雪乃ちゃん、妊娠初期は体調が崩れやすくなるからさ、春になるまで子作りは止めといた方がいいと思うな。それまでは避妊薬を飲んでおけば、周期にもよるけれど来月あたりからいっぱい可愛がってもらえるよ」

 

「姉さん。そうね、私の方が準備すれば八幡の準備を待たなくてもいいから、それが一番いかもしれないわね」

 

何を勧めてるの!?義姉さん!

 

「若いっていいわね。快楽に溺れないようにするのよ」

 

何言ってるの!?お義母さん!?

 

「あれ?義弟くんは乗り気じゃないの?」

 

「そんなことないはずよ。この間、避妊具がないから泊まれないと言って帰っていったもの」

 

「ふむ。責任感があっていいことだ」

 

いや、そこは怒るところじゃないの?お義父さん。

 

「流石にいきなり引っ越すというわけにはいかないだろう。今日のところは家に帰って荷造りをしてもらって、明日引っ越すということで良いのじゃないかな?車も雪ノ下家から出すよ。梱包資材はすぐに手配しよう。八幡くんが家に着くころには届いているはずだ」

 

「いきなり引っ越せと言われても困りますよ」

 

「八幡くん。政略結婚とはそういうものだ」

 

「そう言えば何でも通ると思ってるんじゃないでしょうね?」

 

「逃がさないよ。八幡くん。雪乃のためにも雪ノ下のためにもね」

 

「父さん、ありがとう」

 

「そこお礼言うところじゃないからね!?」

 

雪乃に突っ込みを入れると、雪乃は潤んだ瞳で真っ直ぐに俺を見つめてきた。

 

「駄目、なの?」

 

「いや、駄目ってわけじゃないんだけどよ…」

 

「私は一日でも早く八幡と一緒に暮らしたいのだけれど」

 

「冷静に考えてみろよ。俺たち恋人になってまだ三日目だぞ?それで許嫁になって8月8日に結婚することが決まった。これだけでもかなり凄いことだと思うのだが、そこに明日から同棲開始なんてもんが追加されるんだぞ?ヤバくねえか?」

 

「むしろ楽しみなのだけれど。八幡は、その、嫌なの?」

 

「嫌じゃない。けど、変化が急すぎてさ、気持ちの整理が出来ないというかなんというか」

 

「名前呼びみたいに慣れてしまえばいいのよ。私はもう、八幡が隣に居るのが当たり前に感じているのだけれど」

 

「…狡いな。そんなこと言われると断れねえだろ。俺だって、雪乃が隣に居るのが当たり前だって感じたいし」

 

「ふふっ。八幡」

 

俺が小さく呟いたのを聞かれたらしい。嬉しそうに俺に抱き着いてきた。

 

お義父さんとお義母さんと義姉さんに視線を向け、返された視線を受けて溜息を付く。

 

うん。知ってた。貴方たち雪乃のこと大好きだもんね。

 

その生温かい眼差しを俺にも向けないでくれますかね。恥ずかしいから。

 

―――こうして、雪乃との婚約(ついでに結婚の日時も)が決まった俺は、その翌日から両家の家族公認で同棲する運びとなったのでありました。まる。

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