第六戦隊と!   作:SEALs

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お待たせいたしました。
今日は開戦日、大東亜戦争が始まった日です。政治的なことは抜きにして、我が日本の為に戦ってくれた英霊の方々に感謝の意を示しましょう。

それでは、気を改めていつも通り楽しめて頂ければ幸いです!
では、どうぞ!


第98話:狼は放たれた 前編

X-dayには、横須賀・呉・佐世保・舞鶴など国内の泊地や母港から、NGFは急遽出撃、太平洋の南に向かった。

今回は空母戦闘群及び、戦艦部隊、機動部隊の出番はない。

これはオリンピア唐級原潜に対する純然たる対潜作戦であるので、主力を務める海自護衛艦に伴い、それを各鎮守府から派兵された軽巡洋艦、駆逐艦たちがサポートする形となる。

むろん、敵は唐級原潜だけは出してこないだろう。支援及び撹乱のために囮の潜水艦部隊を出来る限り出すはずだ。

 

事実オリンピア海軍は、原潜商級を4隻、南海基地から出撃させていた。

通常型は出さない。通常型(ディーゼル・エレクトリック艦)では、優秀な日本護衛艦に太刀打ち出来ないと崔海軍部長は考えていたのだが、実はこれは崔の思い違いだった。

原子力艦は確かに航続距離が長く、長時間潜航可能だが、反面、その機構上ノイズが大きい。

ディーゼル・エレクトリック艦の方が遥かに静かに潜航出来る。特にロシアのラーダ級の如きは、速力7ノット以下ではほとんど無音なので、米海軍が厳重に警戒していたほどだった。

だから、寧ろ通常型を出撃させるべきだったのである。

しかし、崔は通常型は東シナ海などに対する通商破壊戦に温存しておいた。だが、肝心の獲物であるタンカーや商船、病院船はこの時は通ってはいなかったのである。

 

出撃したのは4個護衛艦群の全艦隊。すなわち32隻。八八艦隊だから搭載ヘリは同じく32機。

提督たちは各鎮守府や泊地からは、灰田がもたらした近代兵装を施した軽巡洋艦娘、駆逐艦娘が支援を務める。

巡洋艦については、対潜作戦にはあまり役に立たないが、灰田のもたらした未来兵装は敵潜が対艦ミサイルを撃ってきたときの盾になり得るので、同じく派遣された古鷹たちも出撃した。

しかし、問題は哨戒範囲があまりにも広いことだ。

小笠原諸島を中心に、西は大東島諸島、東は南鳥島までが、敵の攻撃圏内に入る。

この東西2000キロに及ぶ哨戒線を、合計100隻の艦船や艦娘たちで哨戒しなくてはならない。

しかし、NGFにはP-1対潜哨戒機という強い味方がいる。

八丈島を基地とすれば、警戒すべき海域は全て哨戒半径に入る。海軍は80機もこれを保有しているのだから、実質的な哨戒任務は相当に楽になる。

ソノブイの投下により広く索敵出来るからだ。

むろん、DDHが積む対潜ヘリも大きな力となる。

 

 

 

すでに首相官邸地下室のオペレーション・ルームには、作戦コード2033と名付けられたオペレーションが立ち上げられ、横須賀の護衛艦隊司令部などとの光ファイバーによる直通連絡網が敷かれ、海自連絡官及び内局のスタッフたちがここに詰めていた。

土橋統幕長、篠山情報本部長もここにいる。海軍連絡官は司令部付きの望月海将補である。

立川企画調整官も情報本部長付きとして、ここに詰めていた。

民間人としてここに詰めているのは、防衛相と官房長官、首相秘書官たち。

首相そのひとは上の執務室にいて、定例のスケジュールをこなしている。

それと各省の副大臣。東京都副知事。

各大臣もまた所轄の省の正常な運営に励まなくてはならない。国民に不安を抱かせないためである。

 

実際にデータを操作するのは情報本部のオペレーション・スタッフたちがやる。

都知事はむろん都庁に詰めている。

いったんことあらば、1200万都民と運命をともにする覚悟である。

しかし東京都庁舎において、東京が核攻撃を受ける危険を知らされているのは、ごく限られた幹部たちだけで、一般職員たちには知らされていない。

マスコミのなかには、これを推測する者たちもいたが、厳重な報道規制が敷かれ、さすがにそれを破る社はいなかった。

もし破れば、巨大なパニックが発生する。

オリンピアによるノドンやスカッドの脅威の際には首相は真実を明らかにし、報復作戦を実行したと同時に、平静にするように呼び掛けたが、今度はそうはいかない。

何しろ、日本人というのは強い核アレルギーの持ち主である。

世界で核の洗礼を受けた唯一無二の国である。いや、新たに中国がその仲間に加わったが。

核攻撃を受けるという強烈な心理的圧迫は耐え切れるものではなく、収拾のつかないパニックが起きるのは目に見えていた。

 

ともかく、日本への核攻撃を許してはならない。その一念で凝り固まっている。

オリンピアにしても効果的な一発で、日本を屈服させたい。そのためには東京を攻撃出来れば良いのである。

しかし情報本部の分析では、SLBMが東京に着弾すると恐るべき被害が出る。

1発の威力はやはり2メガトン。唐級はこれを12基積んでいる。

これらが首都圏に1発でも着弾すれば、東京は息の根を止められてしまう。

即死者は100万人以上と見積もられるが、負傷者に至っては計算不能。インフラも70から80パーセントが破壊されることは確かだ。

日本という国の弱みはいわゆる一極集中、全ての組織中枢が東京に集中していることだ。

つまり東京は日本の心臓であり、東京が破壊されれば日本は瀕死の状態となる。

今までも天変地異の観点から、遷都もしくは組織の分散が叫ばれてきたが、行政は例によって腰が重い。思うように運ばれていない。全ては今からでは手遅れだった。

 

 

 

首相官邸地下室の完全防震及び、核攻撃にも耐えられる設計となっている(地下30メートルにある)オペレーション・ルームは、NASAの指令室にも似ている。

正面には巨大な液晶スクリーンがあり、今は作戦海域、つまり日本南方の西太平洋海域が映し出されている。中央には小笠原諸島が縦列をつくっている。

そこを幾つかの色分けされたスポットが移動しているが、それは4個任務部隊を表す。スポットは複数で一つが1隻を表す。呼び出せばすぐに艦名が出てくる。

オレンジ色が第1護衛隊群中核の第3TF(任務部隊)、グリーン色が第2護衛隊群中核の第4TF、ブラウン色が第3護衛隊群中核の第5TF。そしてイエロー色が第4護衛隊群中核の第6TF。

さらに2個潜水隊群15隻も出撃している。彼らは全てホワイト色の潜水艦の司令塔をシンボル化したマークで表されている。

 

必要があれば画面は拡大され、各護衛隊群単位で呼び出せるようになっている。

また、護衛艦によるテレビ映像も放送衛星経由でここに出せることになっている。

もし目標の敵艦(唐級原潜)がキャッチされた場合はブラック色の潜水艦マーク、他の敵潜がキャッチされた場合は、ダークグレイ色の潜水艦マークで表示されることになっている。

飛び回っている複数のアローマーク(矢印)は、対潜哨戒中のP-1対潜哨戒機を表す。哨戒ヘリの活動まではこの画面には出て来ない。

太平洋軍からのソーサス情報及びペンタゴンからの衛星情報は、太平洋軍司令部からリアルタイムで護衛艦隊司令部に伝えられ、そこからここに回されるが、タイムラグはほとんどない。

その画面は各辺が100キロの正方形のグリッドで仕切られ、必要がある時はアルファベット2個が組み合わされたコードネームが浮かび上がるようになっている。

スクリーンの手前は、階段状のオペレーション・デスクが設けられ、複雑な情報処理を行う専門スタッフたちがコンピューターの前に陣取っている。最上段には民間人のオブザーバーのための席がある。

その椅子のひとつに陣取って、中岡防衛相はスクリーンに見入っていた。

中岡の心中は、不安でいっぱいだったからだ。

ソーサスで唐級原潜の動向が最後にキャッチされたのは、48時間前である。

 

奄美海峡の直前で探知され、その直後、消息を失った。その後続けざまにオリンピア原潜のノイズが探知されたが、いずれも太平洋海域に向かっていると思われた。

しかしその後、彼らの消息はぴったりと途絶えてしまった。

南西諸島の東には、南西諸島海溝というかなり深い海溝があり、さすがの米軍もここにはマイクを設置出来なかったからである。

それを超えると、海底はパラオ海嶺となって盛り上がり、小笠原海嶺へと続く。

情報本部の説明によると、唐級原潜の積むSLBMの精度は夏級原潜などよりも精度が上がっており、射程距離はおよそ3000キロだが、正確を期するためにはその半分の距離、すなわち1000から1500キロまで近づく必要があるとみられる。

もっとも敵はこちらを欺くため遥か南を迂回し、南鳥島よりも東方から攻撃を仕掛ける可能性もある。原潜ならばそれが出来る。

P-1対潜哨戒機1機がばら撒けるソノブイは、四国の面積をカバーし得ると言われ、それが80機交替で出動している。

しかしソノブイは万能ではなく、敵が無音で潜航したり、逆転水温層の下に潜り込んでいると捕捉出来ない。

 

したがって、1個護衛隊群のカバーすべき範囲は広く、その司令官たち(第1護衛隊群・柏原海将、第2護衛隊群・田島海将、第3護衛隊群・志水海将、第4護衛隊群・細田海将)の責任は重かった。

提督たちの支援艦隊は全て彼らの指揮下に入ることになっている。

古鷹たちなどが積む対潜兵装は、全て灰田がもたらした未来兵装に差し替えられている。

唐級原潜が発見されない限り、中岡の不安は止むことはない。

今、この瞬間にも核ミサイルが東京に向かって発射されないとも限らないと想像すると、居ても立ってもいられないというのが本当のところだった。

しかし、執務室にいる首相や元帥にはさらに大きな重圧が掛かっているだろう。そう考えると、いっそう同情を禁じ得なかった。

 

 

 

 

「なんだか、だいぶ西太平洋は潜水艦で混み合ってきたようだな」

 

パールハーバーの太平洋軍司令部のひとつ、潜水艦司令部では、司令官フォード少将がソーサス探知システム室からの報告を聞いてにやりとした。

フォードは元々USFJ(在日米軍)のオハラ大将の参謀長であり、一部の在日米軍が異動とともに太平洋軍のTF74の司令官に横滑りしたのである。

これは以前は太平洋艦隊と言ったが、その潜水艦部隊の司令官は大変栄誉あるポジションである。

太平洋艦隊を率いて、日本海軍に勝利したニミッツ大将が元々潜水艦部隊司令官だったからである。

太平洋軍司令部では、ペンタゴンからの命令に基づき、パールハーバーに在泊していたバージニア級攻撃型原潜4隻……《テキサス》《ハワイ》《ノースカロライナ》《ミシシッピ》を出撃させた。

 

任務は日本海軍の支援である。

各艦長に与えられた命令は、極めて曖昧なものだった。

『日本海軍の行動を阻害しない範囲において、これを支援し観察せよ。ただし、オリンピア潜水艦が攻撃してきた場合は応戦を許可する』

しかし、海中では何が起きるか分からない。アメリカ潜水艦のコンピューターには世界の海軍の潜水艦のノイズが全てデータとして入っているとはいえ、誤認が100パーセントゼロとは言えないのである。

フォードがにやりとしたのは、ノイズ探知の度数が次第に増えてきたからである。

 

「……少なくとも4隻のオリンピア原潜、商級がフィリピン海を活動しています。北緯20度線を北東に向かっています。

それと、小笠原諸島を挟んで、日本潜水艦5隻のノイズを探知しました」

 

探知室からそう言ってきたのである。

 

「ふむ、問題の唐級はまだ見つからんか?」

 

「まだであります」

 

担当士官の大尉は電話に答えた。

 

「うむ、分かったらすぐに知らせて欲しい。何しろ、日本の連中を助けてやらなくちゃならないからな」

 

「承知しました」

 

フォードとしては、日本海軍が敵を発見した後どう戦うか見たかった。

かつては、リムパックと称して太平洋軍との合同訓練を2年おきに環太平洋国が繰り広げてきた仲なのだが、今は中止された。

しかし、さんざん鍛えられた彼らの腕は落ちてはいないはずだ。

おまけに艦娘たちと称する多数の旧海軍の魂を受け継いだ者たちが加わっているのだ。駆逐艦娘だけでも50隻以上を超えている。

オリンピアや深海棲艦などがおそらく何十隻という潜水艦を繰り出してこようと、結局はハントされるだろう。

 

問題はタイミングだ。

その中で最重要目標は、ただ1隻。唐級原潜だ。

それを、奴らが核ミサイルを発射する前に捕まえられるかどうかだ。

もしこの敵潜狩りに成功すれば、日本人の自信はさらに深まり、艦娘たちの能力も同じようになるだろう、と考えた。

しかし一抹の不安もあった。原潜の立てるノイズは何処の国のものでもよく似ている。ソーサスはきちんとそれを聴き分けるが。

アメリカ原潜が、この戦いに巻き込まれる危険もなしとはしない。

しかし日本海軍が目的を遂げたら遂げたで、また新しい問題が生じる。

 

太平洋の真の覇者は何処の国かと言うことだ。

ハリス大統領は、アメリカ太平洋軍、具体的に言えば第3、第7艦隊を脅かすものの存在を決して許さないだろう。

すると、いささか厄介なことになる。

フォードには政治的判断をするだけの頭脳はなかったが、日米関係が全く新しい次元に入ることだけは予想出来た。

まさか、第二次太平洋戦争などという事態にはならんだろうな。と考えていたフォードは苦笑いした。

そいつはいくらなんでも考え過ぎだ、第一、お互いに共通の敵と戦っているではないか、と。

しかし、皮肉にも現実の進行はしばしば個人の想像力を超えるときもあり、全く新しい事態が、そう遠くない未来に横たわっていたのである。

 




今回は予告通り、長くて短いような敵原潜による核攻撃を阻止するために日本の護衛艦などが出撃します故に、予想外なことに余計な部外者が現れるという展開になりました。
果たしてどんなふうになるかは今後のお楽しみを。

次回もこの続き、長くて短いような対潜戦に行こうと思いますのでお付き合いをよろしくお願いいたします。

それでは、第99話まで…… До свидания(響ふうに)
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