第六戦隊と!   作:SEALs

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С Новым годом(あけましておめでとうございます)、同志諸君! 今年も本作を宜しくお願いいたします。

新年の挨拶はここまでにして、お待たせしました。
お年玉代わりとして予告通り、前回に引き続き、原潜狩りを行います。

それでは、気を改めていつも通り楽しめて頂ければ幸いです!
では、どうぞ!


第99話:狼は放たれた 後編

オリンピア戦略原潜、唐級を任された周艦長は、決して愚かではなかった。

寧ろ戦略原潜を任されるほどだから、最優秀の艦長である。

周大佐は、東京攻撃を命じられたとき、その優秀な頭脳を振り絞って必死に考えた……敵の裏を掻く方策をである。

今度の任務は、先の中国本土攻撃とは全く違う。

あの時は安全地帯な沖合から発射出来た。

今度は西太平洋海域という、謂わば日本の前庭から発射しなければならないのである。

そこでは、護衛艦群と艦娘たちの大軍が待ち構えているはずだ。彼ら彼女らは対潜哨戒機も多数持っている。手持ちの潜水艦も全て繰り出してくるはずだ。

つまり、そこは敵でいっぱいだ。

 

そこで、周は考えを巡らせた。

商級原潜4隻は囮として、西太平洋海域に向かわせる。針路を複雑に変えて敵を惑わせる。自分は全く別なルートを取り、日本に寧ろなるべく接近してから発射する。

そう戦術を考え、崔海軍部長も承知した。

周大佐の考えたルートとは、奄美海峡ではなくさらに南の宮古海峡を抜けた後、南西諸島海溝になるべく深く潜り込み、海溝に沿って北上する。

ここにはソーサス・マイクは設置されていないはずだ。

九州から四国沖合、東海地方に掛けては浅い海溝、トラフと呼ばれるものが走っているが、ここにもマイクはないか少ないだろう。

 

謂わば、ここは海中の隠密エキスプレス・ルートだ。

このトラフを突っ走り、運が良ければ、関東地方の南東海域をよぎる日本海溝に潜り込めるだろう。ここはチャレンジャー海溝、マリアナ海溝(深さ1万メートルプラス)に続く世界有数の海溝で、伊豆・小笠原海溝に続いている。

これらの海溝には、むろんマイクは設置されていない。水圧で押し潰されてしまうからである。

ここからならば攻撃出来るチャンスは大いにある。敵はまさかこっちが足元まで忍び寄っているとは、思いも及ばないだろうからだ。

南西諸島海溝の北端から日本海溝までは、およそ1800キロ。

50時間プラスで到着出来る。

この作戦成功の可否は、日本海軍がどれほど日本近海で哨戒するかに掛かっている。

しかし、500キロから1000キロは南に出向いているだろうと、周は踏んでいた。

戦略原潜に狙われたら自分でもそうする。

あとは商級4隻がどの程度に囮としてのは役目を果たしてくれるかに関わっている。

かくして、唐級原潜は早朝には南西諸島海溝を北上しつつあった。

そして2日後には日本海溝に到着。そこで攻撃のチャンスをうかがうというスケジュールである。

一方、商級の407から410までの4隻は、25ノットの水中速力で奄美海峡を抜けると、ジグザグの針路を取りながら、小笠原諸島に向かって進んでいた。

むろん、日本海軍と遭遇し次第、これを攻撃すべしと命令されている。

晋級は魚雷発射管6門を持ち、533mm魚雷の他にYJ-82対艦ミサイルもここから発射出来る。これは西側のハープーンに相当する。

 

一方日本海軍は、情報本部の分析に従い、北緯28度線を横軸にとり、東西2000キロに掛けて展開していた。

九州南方には第1護衛隊群。四国南方には第2護衛隊群。小笠原諸島の西には第3護衛隊群。小笠原諸島東方には第4護衛隊群が進出していた。

各群とも南北に上下運動をしていたが、その範囲は北緯28度線プラス・マイナス300キロである。

各群の哨戒担当海域は、面積およそ2500平方キロで、数字上は極めて広大に感じられるが、哨戒ヘリ及びP-1などを有効に使うと、ぐんと圧縮出来る。

P-1は対潜魚雷、または空対艦ミサイルを持ち攻撃も出来る。

 

 

 

 

X-day、0630時。

P-1の放ったソノブイの1基が、北緯27度、東経133度のポイントにおいて、南東に進む潜水艦のノイズをとらえた。

かなり巨大なノイズで、原潜のものだとすぐに分かる。

原子力機関はどう工夫してもかなり大きなノイズを発生するので、ソノブイやパッシブ・ソナーにとらえられやすい。

そこは第1護衛隊群の担当海域で、艦娘たちを含めて20隻を擁していたが、広く散らばっており、最寄りの艦と艦娘たちは近代化改装されたDD《むらさめ》と、吹雪率いる第十一駆逐隊のペアだった。

それでも目標から150海里は離れていた。

150海里はキロに直すと、270キロ。

しかし、《むらさめ》の出し得る速力は30ノット(時速55キロ)をもってすれば、5時間で急行出来る。

DDむらさめ型護衛艦はステルス性を兼ね備える汎用護衛艦。兵装は76mm単装砲、CIWS、短SAM、SSM、アスロック、対潜短魚雷、対潜哨戒ヘリ1機搭載。

一方、吹雪たちも同じように灰田の未来兵装により、汎用護衛艦並みに変えられている。

76mm単装砲は1分間に10発から80発という猛烈な速射能力を持ちレーダー管制だから決して目標を外さない。しかも射程距離は従来よりも延びている。

吹雪たちの猛速をもってすれば、遥かに早く目標海域に到着出来るが、潜水艦狩りはペアを組んで行うのが原則である。

 

ソノブイから《むらさめ》に届いたデータは、すぐにコンピューターに入れられ、オリンピア原潜商級だと判断した。

唐級原潜であることを祈っていたので、むらさめ艦長・所1佐と吹雪たちは、甚だがっかりした。

これが唐級だったら、東京を救った英雄になれたところだった。

しかし、この報告を受けた護衛艦隊司令部からは直ちにこれをキャッチ、撃沈せよと命令を下した。

敵がこちらを攪乱するために複数の潜水艦……その長時間の潜水能力から見て原潜を放ったことは確実だ。それを1隻ずつ潰していけば、唐級に突き当たるかもしれない。

しかし、時間の猶予はあまりない。

吹雪たちは目標海域に向かって突進したが、商級もまた水中速力30ノットと速い。真っ直ぐ逃げるつもりであれば、なかなか追いつけない。

しかし、幸いにも敵はジグザグの針路を取っているようだ。

タイミングを見てSH-60Jを飛ばして、ディッピング・ソナーで捕まえれば逃がすことはない。

 

 

 

同日、0850時。

最も東方を哨戒している第4護衛隊群は、P-1対潜哨戒機が哨戒海域東端に投下したソノブイからノイズを捕捉した。

それは直ちに、《ひゅうが》のコンピューターに入れられ、米海軍バージニア級のものと判明した。バージニア級はもっとも多数造られた攻撃型原潜である。

報告を受けた横須賀・護衛艦隊司令官の白川海将は、苦笑いして呟いた。

 

「やれやれ、太平洋軍が見物にお出ましか。ややこしい事をしてくれるものだ。こっちは頭に血がのぼっているから、間違って攻撃しかねんぞ」

 

事実、その危険はある。

潜水艦の立てるノイズはそれほどはっきりした特徴があるわけではなく、微妙な差があるだけだ。

まさかディーゼル・エレクトリック艦のそれを原潜と間違うことはないが、同じ原潜同士ならば誤認もあり得る。

コンピューターだけが、その微妙な波形を見分けられるからだ。しかし、もしコンピューターが異常をきたせば……。

 

1100時。

急行を続けた《むらさめ》と吹雪たちは、ソノブイのデータから敵まで50海里に迫ったと判断すると、対潜哨戒ヘリSH-60Jを放った。

目標は針路をひっきりなしに変えたので、予定より速く追いつけたのである。

まだ、追われていることに気づいていないのかもしれない。P-1対潜哨戒機のばら撒くソノブイはパッシブ・ソナーだからである。

SH-60Jは敵の前方に出たと判断すると、ディッピング・ソナーを降ろした。直後、強い反応が返ってきた。

敵は思ったより近くにいる。最大距離でも5海里以内。

SH-60Jは対潜魚雷を2本積んでいるから攻撃も出来る。

 

 

 

 

「敵に探知されました!」

 

その商型は407潜。艦長は孫大佐。

ソナー班が緊迫した声で、報告してきたのを聞いた。

ディッピング・ソナーはアクティブ・ソナーなので、敵をとらえやすいが、探知されたことも敵に知られる。

 

「そうか。そろそろ捕まる頃だと思っていた」

 

孫はあくまで冷静だった。

囮役を命じられたときから、死を覚悟していたのである。

いま出来ることはせいぜい走り回り、敵を攪乱することぐらいだ。そしてチャンスがあれば敵艦を攻撃する。

 

「深さ300、針路280」

 

孫は命じた。

 

「280ですか?……おそらく敵はそっちから来ます。それでは敵に向かうことになりますが?」

 

航海長が確認する。

 

「命令は以後繰り返さんぞ。280だ」

 

商級原潜の最大潜航能力は300メートルとされているが、何処の国の潜水艦も潜航能力については公表はしていない。最大の軍事機密だからだ。自国の潜水艦の能力から類推するしかない。

しかし、孫は350メートルまで潜ったことがあった。

極めてスリリングな経験だったが、なんとか持ちこたえた。

今度も必要があればいけるだろう。

敵に向かうのは、むろん敵を惑わすためだ。

敵の対潜哨戒ヘリはさらに前方に出るはずだから、ソナーの感知力が弱まる。

407潜はぐるっと回頭すると、北北西に向かった。

 

「ソナー室。敵艦がソナーを発振したら知らせろ」

 

孫は命じた。

 

「了解」

 

孫は出来るならば、この敵と刺し違えるつもりだった。




今回は2つの視線からなる原潜狩り、狩る者と狩られる者という視点になりました。果たしてこの影響でどんなふうになるやら。
今年はどれだけ執筆出来るか分かり兼ねないですが、出来る限り皆様に楽しませるように自分のペースで書き進めていきます。
佐藤大輔先生みたいに遅筆で申し訳ないです(汗)

それでは、次回は狩る者と狩られる者の対決になります。
果たして勝負の行方は如何に……

それでは、第100話まで…… До свидания(響ふうに)
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