第六戦隊と!   作:SEALs

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おまたせいたしました。
たいへん待たせてごめんなさい。

それでは、予告通り今回は狩る者と狩られる者の対決になります。果たして勝負の行方は如何に……

それでは、気を改めていつも通り楽しめて頂ければ幸いです!
では、どうぞ!


第100話:海底の乱闘

かたや30ノット、かたや22ノットで対向しているのだから、両者の距離はたちまち縮まった。

《むらさめ》はバウ・ソナーを装備している。むらさめ艦長・所1佐は15分後にソナーを発振させた。ソナーは強力な音波を発振して周囲を探り始めた。

同じく吹雪たちもソナーを発振させて、対潜警戒をしている。

もっともソナーはかつて音波探知機と呼ばれ、大戦後期には各国の駆逐艦も持っていたが、性能はまだまだのものが多く、物になったのは戦後が多かった。

 

1215時。

孫大佐の407潜の巨大な艦体に音波が当たって跳ね返るカーンと言う甲高い音が聞こえた。

 

「敵のソナーに捕捉されました!」

 

副長が叫ぶ。

 

「分かっている」

 

孫はあくまで冷静だった。

 

「すぐにアスロックの攻撃が来るぞ。先ずアスロックを使わせてから攻撃だ。深さ350、針路180」

 

「深さ350、針路180」

 

潜航担当士官に命じた。

操舵員が舵を切り、407潜はその巨体を再びぐるりと南に向けながら、更なる深みへと潜っていった。

 

 

「敵潜探知。90パーセント以上の確率で商型に間違いありません……180に変針しました」

 

《むらさめ》のCIC(戦闘情報中枢)にはソナー区画から報告が来た。

 

「距離は?」

 

「ふむ、アスロックの発射準備せよ」

 

「はい、所艦長!」

 

所1佐は兵器担当士官及び、吹雪たちに命じた。

むらさめ型護衛艦はロケット魚雷アスロック垂直発射機(VLS)を1基持っている。射程距離は約40キロ。魚雷は音響探知式。海中に突入すると自力で目標を設定し、突進する。

吹雪たちも同じく装備しており、これに倣っている。

 

「準備なり次第、発射!」

 

全ての兵器はCICから操作出来る。イージス艦の如きは強力な電波を輻射するので、人間は外には出られないほどだ。

 

「発射!」

 

「みんな撃つよ!」

 

『はい!!!』

 

各自のVLSからアスロック・ロケットが舞い上がり、白煙を曳いて上昇すると、敵に潜む認知海域に向かった。

 

 

407潜では、ソナー員がハイドロフォンの聞き耳を立てていた。

 

「アスロック、着水しました!」

 

「よし、魚雷が来るぞ。ギリギリまで引き付けてからデコイ発射!」

 

デコイは水上艦でも使われるが、潜水艦で使うものは薄い金属片で音波を攪乱するものである。水上艦の場合はレーダーを攪乱する。

 

「魚雷近づきます……3000メートル……2000……1500…… 800」

 

「デコイ発射!」

 

407潜の後部発射管から囮用のデコイが放出された。

407潜の推進音を目指して突っ込んできた魚雷の群れは、その雲のなかに突っ込み、途端にホーミング・システムが狂い始めた。

407潜の全乗組員たちが息を止めているなかを、ギューン!と、高速のプロペラ音が右舷をかすめて遠ざかった。タイマーが組み込まれてあったらしく、遠くで爆発音が木霊した。

孫大佐以下全員が息を吐き出した。

タイマーが組み込まれているのは、目標を見失った魚雷は音源を求めて彷徨い、自艦を攻撃し兼ねないからである。

 

「ソナー。敵の位置は推定出来るか?」

 

「250度の方向に4隻、距離5キロ。30ノットで進んで来ます」

 

「よし、深さ50まで浮き上がってから雷撃する。敵が混乱したところを潜望鏡深度まで上がり、対艦ミサイルを発射する」

 

聞いていた副長は我が耳を疑った。なんとも大胆不敵な作戦である。

しかし、ハンターキラー4隻と潜水艦との戦いでは潜水艦が絶対的に不利なので、大胆な作戦を取るしかない。

407潜は発射管は6門だが、対艦ミサイルYJ-82及び、83の発射のたむには1門開けておかねばならず、つまり発射出来る魚雷は5本である。

 

 

《むらさめ》では艦長がソナー区画及び、吹雪に問い合わせていた。

 

「どうだ、命中音は聞こえたか?」

 

「はあ、それが……爆発音は聞こえましたが、敵潜の破壊音とは違うようです。魚雷は目標を逸れてタイマーで爆発したようです」

 

《こちら吹雪。敵潜水艦はまだ健在なようです。私たちの魚雷を全て回避した模様》

 

「……うむ、なかなか出来る艦長のようだな。見事に魚雷を逸らすとは」

 

所1佐は副長の松井3佐を振り返った。

 

「副長、君が敵ならば次の手をどう打つかね?」

 

「思い切った手に出てこっちの意表を突くでしょうね。それしか勝ち目はないと承知しているのでしょうから」

 

「その通りだな」

 

所はCICにいる全員及び、吹雪たちを振り返った。

 

「敵は浮いてくるぞ。たぶん中深度から雷撃して来るだろう。聴音、よく聞き耳を立てていろ。吹雪たちにも雷撃あるやかもしれぬと聞かせろ。……魚雷戦用意!」

 

《むらさめ》や吹雪たちも対潜用ホーミング魚雷連装発射管を持っている

 

 

「深さ50です」

 

「よし、発射準備!」

 

407潜ではソナーから得たデータが魚雷に入れられ、発射諸元が決められた。

 

「準備完了」

 

「発射!」

 

司令所の魚雷員が次々に発射ボタンを押すと、533mm魚雷が発射管を蹴って飛び出して行った。敵艦の進んでくると思しい海面に向かう。

 

「魚雷、発射されました。少なくとも5本近づきます、速力50ノット!」

 

「最大速力で30秒ごとにジグザク航進!」

 

所艦長は命じた。

いささか乱暴な命令だが、海中から50ノットで突き上げてくるホーミング魚雷を躱すには、こっちも思い切った手を打つしかない。

この場合、30ノットの速力が遅く感じられる。吹雪たちの38ノットという高速が羨ましいくらいだ。

 

《むらさめ》や吹雪たちは高速を活かしてジグザク航行に突入。艦体は激しく左右に揺さぶられ、乗組員や艤装妖精たちは何かに掴まっていなければ身体を安定出来なかった。

艦橋や艤装には見張員が出て、必死に雷跡を見張っていた。

魚雷はその性質上、水中から発射されてもいったん海面近くに浮き上がり、水平航走するはずである。

こうなると、見つけるのに肉眼に勝るものはない。

 

「右舷に雷跡2本、本艦らと反航!」

 

つまり、直進してくるということである。

 

「取り舵いっぱい!」

 

所1佐は絶叫した。

これは面舵でも良い、ともかく魚雷をそらせば良いのである。

《むらさめ》は、ググッと左回頭した。

敵の魚雷2本は平行して走りながら50ノットの高速で《むらさめ》をかすめていったが、不運にも吹雪たちがちょうどその真正面にいたのである。

右回頭し終わり、ちょうど魚雷の針路に入りつつあったのが不運だった。

 

「正面に雷跡!」

 

見張員が叫んだ時は遅かった。

吹雪と白雪は急速左回頭に入ったが、間に合わずそれぞれ1本ずつ命中した。その瞬間、2人は瞬く間に大破した。轟沈は免れたものの、攻撃力は削がれてしまったのだった。

 

「しまった!」

 

所艦長は叫んだ、敵の捨て身の作戦にいっぱい喰わされてしまった。

 

「敵潜、浮上してきます。レーダーにゲインあり、潜望鏡深度です!」

 

レーダー員から報告が来た。

敵潜が突き出した潜望鏡とアンテナがレーダーに反応しているのだ。

 

「方位170、距離3海里」

 

「敵の対艦ミサイルがやってくるぞ。防空戦闘用意!」

 

所の命令。彼の読みは正しかった。

しかも、ここで浮上してくるとはなんとも大胆な敵だ。それともヤケクソなのか。

ともかく、407潜は潜望鏡の20メートルまで浮上すると、対艦ミサイルの照準に入ったのである。

407潜が航空機の支援が得られれば、自力で照準する必要がなく、海中にいて超長波受信で発射データが得られる。

しかし、全て一人でやらなくてはならない。

孫は潜望鏡を覗いた。

すでに魚雷が敵艦を2隻大破したことは分かっている。海中でその凄まじいノイズを拾ったからである。

潜望鏡に映っているのはスマートな現代の海自の護衛艦に、大破した2隻を守っている2隻の艦娘だった。

 

「短SAM発射準備、砲戦用意」

 

所艦長は矢継ぎ早に命じた。

《むらさめ》と初雪や深雪の防空システムは、先ず短SAM。これが撃ち漏らせば、CIWSが対応する。

 

 

敵艦はジグザクに突進してくる。

 

どうやらこちらを見つけたのだ。

 

「ミサイル発射準備よし!」

 

407潜では兵器担当士官が報告した。

 

「発射!」

 

発射ボタンが押され、魚雷発射管からUSMが発射された。

ロケットのブースターが海面を割って本体が上昇すると、放物線を描いて目標に向かった。

 

最大速力はマッハを超える。

《むらさめ》の3次元レーダーシステムがこれを捕捉。短SAM《シースパロー》が舞い上がった。

イルミネーターから発射されて跳ね返ってくる電波に誘導されているから、敵ミサイルがマッハのスピードであろうとミスしない。

《むらさめ》の2キロ手前で命中、空中に巨大な火の華が返り咲いた。

 

「よし、今度はこっちの番だ。砲撃始め!」

 

《むらさめ》を含めて、初雪や深雪は、すでにレーダーで照準されていた76mm単装速射砲が火を噴き始めた。

発射速度は毎分10発から80発に調整出来るゆえに、今は50発で撃っている。

射程距離1万6000メートルだから、従来の駆逐艦たちが持つ連装砲を凌ぐ。

 

「急速潜航!」

 

407潜では孫艦長がそう命じた途端、飛翔してきた砲弾の嵐が集中し始めた。

遅発信管に調整されていたので、海中に突入して司令塔に命中すると炸裂した。続いて数発が命中。その1発が司令塔の付け根に命中、艦殻に亀裂を生じさせた。

しかし、その数発だけでも充分過ぎるというものだった。

司令塔が引き裂かれ、下の司令所に海水がどっと浸水し、戦闘中のために各部ハッチは閉ざされていたが、前部バラスト・タンクもやられ、ここにも海水で満たされた。

もはや排水しようにもどうしようもない状態であり、潜水艦としての機能も失われた。

司令所にいた乗組員たちは全員溺死。商級の水中排水量6000トンの巨体は、頭を下にして石塊のように沈んでいった。

閉ざされた各区画には僅かに空気が残り、まだ少数の乗組員たちが生き残っている。

しかし司令所との連絡は取れない。艦が急速に海の深みに沈んでいくのをただ待つしかない。

潜水艦乗りにとっては、最も残酷な状況である。

 

 

《むらさめ》の聴音員とともに、初雪が聞き耳を立てていた。

ハイドロフォンが、沈んでいく敵潜のノイズを拾っている。

水圧が掛かるにつれて、様々な金属的な音が聞こえてくる。

商級の艦殻が次第に押し潰されていく恐ろしい音が鳴り響いた。

水圧ほど無慈悲なものはない。それは絶対的な破壊神だ。縄張りに入り込むだけで全てのものを容赦なく押し潰す。

 

「……敵潜、圧壊したよ」

 

初雪の言葉どおり、海中ではバリバリという不気味な金属音がすり潰された音が聞こえた後に、静かになったのだった。

彼女の言葉を聞いた、所1佐は深呼吸した。

 

「……よし。司令部に報告。我ら商級原潜1隻を撃沈せり。それから急いで吹雪や白雪は護衛を付けて退避するんだ」

 

 

 

 

翌日が来た。

この日も商型にとって厄日となった。

409潜が、第2護衛隊群が哨戒しているその海域のど真ん中に入り込んでしまったのである。

哨戒海域は確かに広大だが、8機の対潜哨戒ヘリがフル活動している上に、此処が最重要警戒海域に指定されているので、多数のP-1対潜哨戒機が飛び回ってはソノブイを投下していた。

 

その複数のソノブイに引っ掛かったから堪らない。

409潜の聴音員が、ソノブイが間近に投下される音を聞きつけたので、艦長・陳大佐は探知されたことを覚悟した。

たちまち周りから護衛艦と駆逐艦娘のペア、すなわちハンターキラーたちが高速で集まって来るだろう。

実は潜水艦、軽巡や巡洋艦娘たちも集まって来ていたのである。

周りの言っても50海里から200海里というかなりの遠距離からになるが、巡洋艦娘たちは敵潜が浮上した際は、砲撃戦となれば役立つし、さらに艤装に搭載している短SAMも役立つからだ。

複数のソノブイに引っ掛かった以上、逃げようがない。

しかも包囲される形になったので、409潜はどちらに向かっても逃げるのが難しい。

 

409潜の艦長こと陳大佐は、3つの選択肢から1つを選ばなくてはならなくなった。

ひとつは最大深度350メートルを保って、逆転水温層を探してその下に潜り込み、敵の哨戒圏から出来る限り早く脱出する。速力が25ノットもあるから、逃げ切るチャンスはある。

しかし、そうすれば出来る限り敵を攪乱せよという司令官の命令に背くことになる。

ふたつ目は、やはり最大速力で寧ろ敵のど真ん中に入り込み、針路を複雑に変えて逃げ回り攪乱する。しかし、アスロックにやられる危険は大きい。敵潜との遭遇の危険も出てくる。

三つ目は敵艦隊が集まるのを待って潜望鏡深度に浮上、敵艦隊でなるべくでかいやつをUSMで仕留める。向かって来るやつには魚雷をぶっ放す。

これはむろん敵と刺し違える捨て身の作戦であり、生き延びるチャンスはない。

どうせ生き延びるチャンスは少ないならばと、陳大佐は2番目の選択肢を選んだ。

深海皇女や司令官の期待に最も応えることになるからである。

陳大佐は5分毎に変針、最大速力で走り回るように命じた。

暗くなれば少なくとも航空機の脅威はなくなるので、潜望鏡深度に浮上、そして様子を見るつもりだった。

 

最初、陳大佐の作戦は功を奏したように見えた。

3時間後に2隻の敵艦や艦娘部隊に包囲されたが、互いのソナーが干渉し合って、目標の位置を絞りきれない。

そこに集まっていたのは第7護衛隊の《すずなみ》とそのペアの《しらぬい》、磯波とその相棒の浦波、そして綾波や敷波である。

磯波たちは第十九駆逐隊所属。先に大破した吹雪型の姉妹艦であり、綾波と敷波は綾波型駆逐艦である。

第2護衛隊群旗艦《いせ》はまだ遠くにいたが、この状況を聞くと、《すずなみ》の先任艦長・島津1佐に命じた。

 

“各員索敵し、アスロックで仕留めよ”

 

各自は息の合った索敵を再開した。

ソナーでがっちり捉えると、アスロックで同時攻撃した。

複数の対潜魚雷が海中に突入、逃げ回っている409潜に向かった。

対潜魚雷は1本だけであれば、409潜のようにデコイで振り切れたかもしれない。

409潜もやはりデコイを放出して振り切ろうとしたが、少数が引っ掛かったにしろ、残りは騙されなかった。

それだけでも充分なものだった。

インパクトの瞬間、409潜の巨体は引き裂かれ、一気に海水に押し潰された。

乗組員たちにとっては、苦痛は一瞬に過ぎなかったことが、せめてもの慰めだったろう。

 

各鎮守府や泊地、特に横須賀の護衛艦隊司令部では、白川司令官が、2隻目の商級原潜撃沈の知らせを受け取ったが、手放しでは喜べなかった。

 

「商級ばかり沈めてもどうにもならん。彼らは囮に過ぎん」

 

幕僚たちは唸った。

 

「肝心の唐級は何処に行ったのだ? ……もうあまり時間がない。統幕長たちも焦っておられる。各隊の司令官に褌を締め直すように伝えろ」

 

任務を速やかに遂行せよとの鞭撻の指令が飛んだが、これが悲劇の引き金となったのである。

 




今回は痛み分けの部分はあるものの、日本側の勝利。
現実では護衛艦群は、水上打撃群だったかなになり代わりつつありますからね。次の作戦ではそうしようと思います。
出来る限り皆様に楽しませるように自分のペースで書き進めていきます。
毎度ながら佐藤大輔先生みたいに遅筆で申し訳ないです(汗)

次回はこの作戦で悲劇的な事件が起きます。果たしてどんな事件なのか。無事に唐級原潜を捕らえることが出来るのかお待ちくださいませ。

それでは、第101話まで…… До свидания(響ふうに)
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