第六戦隊と!   作:SEALs

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お待たせいたしました。
それでは、予告通り対潜狩りの最後になります。
果たしてどんな結末を送るやら。

それでは、気を改めていつも通り楽しめて頂ければ幸いです!
では、どうぞ!


第102話:目標補足!

時間は容赦なく過ぎていき、X-dayの正午となった。

首相官邸地下室のオペ・ルームでは、焦りが頂点に達しつつあった。

商級2隻は確かに沈めたが、肝心の唐級原潜の行方は杳として知れない。

そして第四護衛隊群及び、提督たちの艦娘たちからは、小笠原諸島北東海域において《うずしお》が行方不明になったという報告があった。

唐級原潜と戦闘を交えたという可能性もないではないが、果たして敵はそれほど遠方まで進出しているだろうか?

横須賀司令部ではこれに対し、否定的な見解を出していた。もし唐級が戦闘を行ったならば、すぐにでもミサイルを発射するはずだというのである。

確かに、その意見には一理ある。

潜水艦に事故は付きものなので、《うずしお》は事故で沈んだ可能性もある。

土橋統幕長に就いている立川企画調整官は、西太平洋が映し出されている巨大なスクリーンをじっと見つめていたが、はっと心に閃くものがあった。

しばらく時間を掛けて閃いたものを整理すると、土橋に声を掛けた。

 

「統幕長、お耳に入れたいことがあります」

 

「うむ、なんだね?」

 

土橋の顔はこれまでの疲労と心労で土気色で、うっすらと不精髭が浮いている。髭を剃る心の余裕もなかったのだ。

 

「我々はとんでもない考え違いをしていたのではないでしょうか。言い換えると、敵の術中に陥っていたのではないでしょうか」

 

「一体、何を言いたいのかね?」

 

「本官は敵の艦長の立ち場になって考えていました。オリンピアはかつての中国の様に孫子の兵法を学んでいるテロ組織。詐術にも巧みなテロリストです。

唐級原潜の艦長ほど重要な任務を負った者ならば、思い切った詐術を考え出すでしょう。

……もし本官が彼、若しくは彼女であれば、まずソーサスを避ける方策を考えるでしょう」

 

「うむ、当然だな」

 

「深い海溝にはソーサス・マイクは設置出来ません。したがって、海溝を潜航していけば探知されません」

 

立川はレーザーポイントを手にすると、海図にポイントを当てた。

 

「本官はまず、敵は奄美海峡を避けて、より南の宮古海峡を抜けたと考えます。そして、そのすぐ東に続く南西諸島海溝に潜り込みます。

此処から北端まで行き、九州と四国の南をかすめて、伊豆・小笠原海溝、或いは日本海溝を目指します」

 

レーザースポットが、小笠原諸島の北から伸びる濃紺のラインを指差した。

 

「日本海溝に入ってしまえば、もう安全です……ここは9000メートル級の深い海溝ですから。

敵はおそらく日本本土すれすれに東に向かったのでしょう。本土すれすれにはソーサスはありませんから。その海域は我々の盲点であり、哨戒海域からはるかに外れています」

 

「つまり、敵は我々の足元を通った。灯台もと暗しというわけかね!?」

 

土橋の表情も今や興奮を押さえ切れなくなって来た。

 

「それが今まで発見されなかった理由か?」

 

「おそらくそうでしょう。そして、今ごろは唐級原潜は伊豆・小笠原海溝の北端ないしは日本海溝の深み……と言ってもせいぜい350メートルですが……そこにいて、攻撃のチャンスをうかがっていると考えています。おそらく、夜間浮上してミサイル攻撃をするでしょう。夜間攻撃の方が何かと安全ですから。

したがって、有り難いことにまだ我々にも時間の余裕があるということになります」

 

「……うむ、そうか」

 

土橋は呻いた。

その顔にようやく血の気が差してきた。

 

「もし君の推測が当たっていれば、欲しいだけの勲章をやるぞ」

 

傍らの副官に命じる。

 

「すぐに横須賀の白川海将を呼び出せ」

 

 

緊急指令を受けて、四個護衛隊群及び、提督たちの艦娘たちは大混乱となった。

すぐに哨戒海域を引き上げ、伊豆・小笠原海溝から日本海溝に向かえという命令である。

現在の哨戒海域の哨戒は、P-1対潜哨戒機に任せる。

 

「敵艦はこれらの海溝に何れかに潜んでいるもののごとし」

 

解読された暗号には、そう書いてある。

提督たちを含め、各隊の司令官たちは幕僚たちと顔を見合わせた。

それが事実ならば、唐級原潜が今まで発見されなかったことの理由にはなる。

新たに指示された海域にもっとも近いのは、第四護衛隊群、続いて第三護衛隊群、第二護衛隊群、第一護衛隊群の順である。

各護衛艦の出し得る速力30ノットで新しい哨戒海域に向かったが、そろそろ燃料の問題が出始めていた。

遠距離まで進出して最大速力で走り回っていたのだから、燃料の消耗が大きかったのである。

特に、もっとも遠い舞鶴鎮守府から出撃した第三護衛隊群は危なくなっている。あと48時間の活動がぎりぎりのところだった。

海自や艦娘たちはむろん補給艦を持っている。

横須賀では、補給艦を日本海溝南部に出すように手配した。ここで燃料の少ない護衛艦及び、艦娘たちから順番に補給するが、本来はそんな事をやっている余裕はない。しかし、念のためだ。

 

 

 

 

目的海域から遠い第一護衛隊群の位置は、伊豆・小笠原海溝の北端までおよそ1500キロ。全速で飛ばしても31時間は掛かる。

もっとも近い第四護衛隊群では、15時間で到着する。

しかし、それでも日が暮れてしまう。

土橋統幕長は、立川1佐の推理が当たっていれば、もはや護衛隊群や潜水隊群、そして連合艦隊も当てにならないと考えた。

時間的に間に合わない。

暗くなり次第、敵は攻撃準備に移るだろうからだ。

哨戒ヘリは赤外線暗視システムを持ち夜間索敵も出来るが、搭載している母艦の到着が第一護衛隊群を除いて間に合わない。

 

ただし、P-1対潜哨戒機は照明弾装備だ。

したがって、防衛任務はいちにP-1対潜哨戒機の上に掛かることになった。

敵艦が浮上すれば、レーダーで探知出来る。

海面近くにいれば、MADで捉えられる。

P-1対潜哨戒機の兵装は爆弾・対潜魚雷・対艦ミサイル。この何れでも攻撃出来る。

旗艦《ひゅうが》率いる第四護衛隊群は、全軍を集結させながら30ノットで北上した。

小笠原諸島の北端のすぐ北から小笠原海溝が始まり、伊豆海溝へと続く。そこから斜め右に折れる形で日本海溝が始まる。

海底地図で見れば、深い溝がくの字に連続しているように見えるだろう。

しかし、小笠原海溝の真ん中あたりで暗くなった。

司令官の細田海将は直ちにSH-60Jを出した。2機ずつ交替で前方を広く哨戒させる。

 

1900時。

オペ・ルームには、まだ敵発見の報告が来ない。

 

2000時。

まだ、来ない。

 

立川1佐の自信は次第にぐらついて来た。

 

もしかしたら自分の推理は間違っていたのか?

 

敵はまだ、護衛隊群や艦娘たちが立ち去った後の海域に潜んでいるのではないか?

 

「自信を持て、立川1佐。君の推理は正しい。必ず敵は見つかる」

 

土橋統幕長から逆に激励される始末である。その土橋の眼も血走っている。

 

2100時。

第四護衛隊群からは哨戒ヘリ2機が、日本海溝南端に達したという報告が入ったが、まだ目標は発見出来ない。

このとき8機のP-1対潜哨戒機が出動。伊豆・小笠原海溝北部から日本海溝に掛けて連続してソノブイを投下していたが、SH-60Jは反応をキャッチ出来なかった。

遂に堪り兼ねたらしく黒木首相自らオペ・ルームに降りてきた。

 

「一体、どうなっているのだ?」

 

冷静な顔をする元帥は除き、首相や補佐官たちは土気色の顔をしている。気分が悪そうなのはストレスのためばかりでなく、コーヒーの飲み過ぎなのだ。

彼女を除くオペ・ルームにいる全員が、立川も含めてそうだった。立川1佐も胃がムカついており、食欲は全くない。

 

「……未だに敵発見の報告はありません。しかし、そろそろ敵は行動を起こす頃合いだと考えます。本職の勘ですが」

 

土橋統幕長は苦しげに答えた。

 

「うむ、その勘が正しいと良いのだが、素直なところ、これ以上、私は待つのに耐えられんよ」

 

黒木首相もまた苦しげな声を絞り出した。

 

「信じましょう、黒木首相。敵はそろそろ動き出すと思いますよ」

 

元帥の言葉に伴い、偶然にも土橋統幕長の勘は当たっていたのである。

 

 

 

2130時。

日本海溝に首尾よく到着出来た唐級原潜は、海溝の南端、東寄りの350メートルの淵に潜み、浮上するタイミングをうかがっていたが、周大佐はそろそろ頃合いだと考えた。

日本側に戦術を見抜かれたとは、全く考えていなかったのである。

その証拠に、拍子抜けするほどスムーズに此処まで到着出来た。

日本の領海(12海里)すれすれのところを通ってきたのだが、日本はその辺りは全く警戒していなかったのである。これは本土に近すぎた為である。

 

このとき、沿岸警備隊は事態の重大性にかんがみて哨戒任務から外されていたのだが……そもそも海防艦娘たちのように対潜能力がない……全艦出動していたらまた事態は変わっていたかもしれない。

少なくとも、水中の唐級原潜から見れば護衛艦や巡視船、そして艦娘たちかの判断はつかないので、唐級原潜の行動に影響は与えたはずだ。

 

「浮上せよ、上げ角5度!」

 

周大佐は司令所の壁の時計を見て命じた。

巨大な原潜は前部バラストをふかすと、ゆるゆると浮き上がった。

アクティブ・ソナーを発振しているが、周囲に全く反応はない。もちろん敵潜はいない。周は安心して艦を浮き上がらせた。

 

「潜望鏡深度です!」

 

20メートルに達すると、夜間潜望鏡を上げて偵察した。

周囲は暗黒の海面。日本本土からは遠すぎて、明かりも全く見えない。

しかしこれまでの航路から逆算して、東京へのSLBMの照準計算は出来る。GPSなども持っている。

 

「レーダーに反応なし!」

 

副長が告げる。

 

周囲には敵艦や艦娘たちもいないということだ。

周は『見事に敵の裏を掻いてやった』とにんまりした。

あとは攻撃するだけだ。20分後には東京は灼熱の火の海となり、中国本土のように壊滅するだろう。

おそらく約100万人が即死、500万人以上が負傷する。

今こそ、オリンピアの偉大さを示すまさにメガトン級のパワーが炸裂する。

 

「浮上せよ!」

 

周の命令で、唐級原潜は完全に海面を割って浮き上がった。

SLBM数発を収めたサイロ(VLS)は後部甲板にずらりと並んでいるが、発射の為には水密ハッチを開かねばならない。

 

「1番ミサイルから3番ミサイルまで発射準備、ハッチ開け!」

 

分厚いハッチがゆるゆりと上に開き始めた。

完全に開けば、二段固形燃料ロケットに点火するだけだ。弾頭には東京の位置をインプットした慣性誘導システムが収められている。

周は副長、航海長とともに艦橋に出ていたが、その時、下の司令所から切迫したレーダー員の声が響いた。

 

「レーダーに感あり、航空機、急速に接近します!」

 

それは厚木基地から出たP-1対潜哨戒機の1機だった。

機長の松原1尉は5分前にレーダーで敵影をキャッチしたが、敵に気付かれないようにすぐさまレーダー輻射を止め、700キロのスピードで突っ込んできたのである。

周大佐たちの頭上で、急速に航空機独特のエンジン音が増すとともに雷鳴のような響きとなった。

 

次の瞬間、照明弾が投下されて明るくなった。

 

周大佐は完全に思考が停止した。

サイロが開き掛かっているので、急速潜航は不可能だ。

もはや打つ手は何もない。

 

P-1対潜哨戒機が装備した250キロ爆弾が2発投下され、後部甲板と司令塔に命中した。

この爆弾は、夜間攻撃に備えてとくに搭載されてきたものである。直後、ものすごい火炎が噴き上がった。

核弾頭は特殊な信管を持っているので、誘爆(核爆発)はしないが、燃料に火がつき、それが爆発した。

次の瞬間、唐級原潜は真っ二つに折れると沈み始めた。

上空を旋回しつつ、P-1対潜哨戒機は唐級原潜の最期を見続けると基地に打電した。

 

"我松原機、目標を撃沈せり。繰り返す、ミサイルのサイロを確認、唐級原潜を撃沈せり……なお、漂流している乗組員のいる可能性もあり。護衛艦や艦娘たちの救援を求む“

 

オペ・ルームではこの報告が入るとともに歓呼の声が沸き上がった。

 

「本当か、誤認ではないのか?」

 

黒木首相が何度も聞き質すと、元帥は頭を振った。

 

「ミサイルのサイロを確認したと言っているので、誤認ではありません。オリンピア軍の唐級原潜に間違いありません」

 

「そうか……」

 

首相は近くの椅子にへたり込んでしまった。

 

「これで東京は救われたな」

 




無事に唐級原潜を撃沈しました故に、考え違いがなければ今ごろ東京は核攻撃に遭ったと言う最悪の結末になっていました。
なお核弾頭を搭載した潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM) や巡航ミサイルを水中で発射することが出来るらしいですが、戦果の見たさに慢心したと言うことにもなりましたね。とはいえ、対潜哨戒機から逃げられるわけもないですが。

それでは、次回は各国の思惑になります。
今回の件で果たしてどうなるかは次回で明らかになります。
出来る限り皆様に楽しませるように自分のペースで書き進めていきます。
毎度ながら佐藤大輔先生みたいに遅筆で申し訳ないです(汗)

それでは、第103話まで…… До свидания(響ふうに)
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