青葉が執筆したこの小説がどういう作品なのかが分かりますゆえに、とある架空戦記キャラがゲスト出演します。
いつも通り、最後まで楽しめて頂ければ幸いです!
では、本編であります。
どうぞ!
執務室―――
「えええええっ!?」
今日の秘書を務める衣笠は衝撃的なことを聞いたあまり、大声を出した。
なお執務室だけでなく、鎮守府全体に彼女の声が響き渡った。
鎮守府内にいた全員『何が起きたんだ!?』とびっくりしたのは言うまでもない。
「なんで、私が出演女優なの……!?」
衣笠はあまりにも衝撃的だったため、手にしていた書類を落としてしまう。
「この前、青葉が書いた新作小説を元帥が読んでこの企画に参加することに決定したんだ。
簡単に言えば『柱島国際映画祭』と言う企画になるな」
提督は落ちていた書類を拾い集めながら説明したが、慌てていた衣笠が『私が拾うから』と言う間にも提督は全ての書類を拾い、彼女に渡した。
「でも、どんな話なの?」
衣笠は、青葉に訊ねた。
「映画の内容は、恋愛映画ですね」
「ふむふむ、タイトル?」
「タイトルは『ラバウルで朝食を』です!」
衣笠はもちろん、古鷹と加古も『何処かで聞いたことあるタイトル』と突っ込みたくなるが、突っ込んだら負けてしまうかなと内心に呟いた。
提督は某有名な女優が出ていた『ティファニーで朝食を』だと言うことはすぐに分かったが、古鷹たちと同じく『突っ込んだら負けだ』と言うことで言わなかった。
「元帥がまず『映画の顔となる貼り紙を撮影してから、映画撮影をする』とのことだ」
青葉の説明と同時に、提督の言葉を聞いた衣笠は不安になった。
「でも、私なんかで大丈夫なのかな……」
「ガサなら、きっといい宣伝広告ガールとして務めることが出来ると元帥が推薦したから大丈夫だよ♪」
「うん、第六戦隊としても誇りだよ♪」
「あたしらもゲスト出演するから大丈夫だよ、ふわぁ〜」
緊張する衣笠を見た青葉たちは、彼女を励ました。
青葉たちの励みを聞いて、衣笠は気持ちを切り替えた。
「分かった…… 映画も衣笠さんにおまかせ♪ …ってね」
衣笠はウインクをし、映画『ラバウルで朝食を』の出演女優を務めることに決意した。
しかし、その夜――
静寂な夜に包まれた鎮守府が訪れ、所々に見える明かりが神秘的な色彩を演出している。
夕方までに執務を終えた提督・古鷹たちは、いつも通りに一緒に夕食を食べて、入居後には自由行動を楽しんでいた。
古鷹たちと愛し合うことも多いが、たまにはこうして一人になることもある。
愛し合うこともとても大切だ。だけど提督も、古鷹たちもお互いに気遣って、疲れているときは数分のディープキスを交代ずつしながら、例の謎物資ことテイトクニウムを補給してから就寝することも心掛けている。
衣笠が出演する映画『ラバウルで朝食を』を聞いたときには、大丈夫かなと心配したが、彼女自身がここまで喜んでくれることに安心した。
古鷹・加古は『衣笠のために頑張る』と言い、青葉も『ガサが喜ぶためにも張り切ります!』とともに、この企画に賛同してくれた赤城たちも同じく『演出に関しては、私たちに任せてください』と彼女も楽しみにしている。
「たまには、こういう企画に参加するのも悪くないな」
戦うことばかりではなく、たまには悪くないとも思えた提督は、自身の部屋で読書を楽しんでいたときだ。
コンコン、とドアをノックする音が聞こえた。
「提督、起きている?」
声の主は、衣笠だ。
少しドアを開けて、そっと提督の自室に入った。
「どうしたんだ、衣笠?」
提督が首を傾げていると、衣笠は抱き付いた。
「どうした、眠れないのか?」
衣笠の背中を摩りながら、提督は心配した。
「……うん、今日のことで眠れなくて」
「映画のことか?」
提督の問いに、衣笠は彼の袖をギュッと握った。
「……うん、やっぱ衣笠さんに女優なんて無理かなって……」
「あはは、大丈夫じゃなかったのか」
「あれは……つい勢いで言っちゃって……」
「流れに身をまかせたのか。弱気なお前も珍しいな」
提督は衣笠の頭を優しく撫でた。
「うん、弱気かもしれない、それとすごく緊張している。でも……」
「でも?」
「こんな機会めったにないから頑張りたいんだ、何よりも提督や古鷹たちと一緒にたくさん楽しい思い出を残したいから」
衣笠の答えを聞いた提督は――
「そこで座って待っていろ、俺が良い物を作るから」
「あ、うん……」
衣笠は、コクリと頷いた。
提督の個室にひとり残された衣笠は、提督が読んでいた小説を手にして読みだした。
じっとしているよりは良い、少しでも緊張感を解したい気持ちでいっぱいだった。
小説の内容は覚えていない、ただいたずらに時が過ぎて行くのを待っていた。
「衣笠、出来たぞ」
提督の両手には彼のマグカップと、衣笠愛用の花柄のピンク色のマグカップを持っていた。
提督は彼女に手渡した。
「提督、これ……」
衣笠は訊ねた。
「ホットミルクだ、少しは落ち着くだろう」
「あ、ありがとう」
衣笠はお礼を言うと、甘く優しい香りがするホットミルクをひと口啜った。
砂糖は入っていないのに、甘さが口いっぱいに広がる。
「美味しい」
「そうか、良かった」
一口飲んだのか、衣笠は口を開いた。
「さっきまでは不安で緊張して、なんで私なのかなと思ってたけど、提督のおかげで甘えられたから感謝かな////」
「お礼はみんなに言ってくれ」
「どうして?」
衣笠が訊ねると、提督は答えた。
「最初は俺も不安だった。映画祭なんて参加する時間もないし迷っていた。
こういう企画は艦隊士気や戦争映画でも戦意高揚のためなどといろいろと言われているが…… 青葉たちが『何よりも銀幕で輝く衣笠にしよう!』と決めたんだ。
だからこそ俺もみんなと一緒に、最高の思い出にしようって!」
「提督////♡」
衣笠は先ほど緊張していた自分が馬鹿だなと思った。
提督たちがこんなにもしてくれたこと尽くしてくれたに対して、先ほどの緊張なんて小さいものだと……
そして何よりも自分や古鷹たちを、こんなにもたくさん愛してくれる提督の信念と願いを壊してはいけないと……
「提督」
「どうした、きぬが――」
「ちゅっ……っ……んっ……ん〜っ……ちゅっ……ぁむ♡」
提督も同じく衣笠を抱きしめながらお互いの舌を上下に絡み合い、甘酸っぱいキスを交わした。
「っはぁ、き、衣笠////」
「暫らく、こうして抱きしめて////」
「……ああ////」
提督はギュッと強く抱きしめると、衣笠も同じく抱き返した。
「提督、ありがとね」
「俺はただ、当然のことをしただけだ」
「ううん、こうして勇気まで貰ったから」
「……そうか////」
「だから、衣笠さん頑張っちゃうから♡」
「ああ、楽しみだな////」
「うん、頑張っちゃうから♡」
衣笠は提督の胸下で、スヤスヤと静かな寝息を立てていた。
提督は起こさないように、そっと彼女をお姫様抱っこで持ち上げて寝室に運ぼうときだ。
ドアの前に立っていたのは、パジャマ姿の古鷹たちがいた。
「ようやく、落ち着きましたね」
「古鷹、加古、青葉。心配して起きたのか?」
「はい、心配して様子を見に来ました」
「あたしも眠れなくてね、あたしら夫婦の悩みはみんなで解決するのが約束だからな」
「はい。青葉たちみんなの悩みであり、心配ですから放っておけなくてね」
提督は『そうだな』と微笑むと、古鷹たちも微笑み返した。
悩みはみんなで解決するのが、お互いに交わした約束である。
どんな時があってもみんなで解決して、明日に備えることが大切であり、夫婦としても当然のことなのだからだ。
「ありがとう。みんな」
『いいえ、どういたしまして♡♡♡』
「それじゃあ、俺たちもそろそろ寝よう」
『はい♡ 提督(司令官)♡♡♡』
そうして提督・古鷹たちは自分たちの寝室に戻り、撮影当日である明日に備えるのだった。
撮影当日
「では、貼り紙用の撮影を開始します!」
元帥の鎮守府に所属している海軍報道部の記録映画撮影技師・菱島昭人(ひしじま あきひと)である。
元は有名な映画で鍛えられたカメラマンで、その技術を元帥に買われて、様々な記憶撮影作業に就いている。
「今日は衣笠を頼むぞ」
提督の言葉に振り向いた昭人は自信たっぷりの笑みを浮かべ、平然と言った。
「私は本職ですよ、提督。あなたの衣笠さんをバッチリかつ魅力的に撮りますよ!」
「キミの弟は、砲弾を捉え続けると言う噂があるとは聞いたが……」
「昌人(まさひと)は新聞記者ですからね。僕よりは瞬間を撮る術に長けている。
仕事の性格が違うんですよ」
苦笑いを浮かべ、昭人はカメラを用意すると――
「よろしくお願いします!」
衣笠は艤装を取りつけて、いつも通りの元気いっぱいかつ気ままな彼女に戻っていた。
撮影でも衣笠はとても輝いて見えたことに、提督・古鷹たちも心から満足した。
撮影後――
「提督ー!♡」
撮影が終わった衣笠は、提督に抱きついた。
「提督、みんなどうだった?」
にっこりと笑う彼女に、提督は微笑んで答えた。
「ああ、すごく良かったぞ。凛としてて且つ衣笠らしくて良かったぞ」
「うん、とっても良かったよ♪」と古鷹。
「かっこ良かったぞよ〜♪」と加古。
「ガサの良いところ、とても輝きましたよ♪」と青葉。
「本当!? やった!♡」
その後も提督・古鷹たちに褒められた衣笠はそれが終わってもキラキラ状態だった。
親友鎮守府――
同じ頃、提督の親友がいる鎮守府でも別のイベントが行われていた。
「はっくしょん!」
とある人物はくしゃみをした。
「どうかしましたか?」
親友提督は心配すると、その人物は大丈夫だと言う素振りを見せた。
青年の名は菱島昌人(ひしじま まさひと)である。
昭人の弟であり、新聞記者として活躍している快活な若者だ。
また兄と同じく、提督や艦娘、そして元帥たちと友好な関係を築いている。
「いいえ、兄さんが僕の噂でもしていると思いますから大丈夫です」
「そうか、今日は私の阿賀野の水着撮影をよろしくお願いするよ」
「任せて下さい、可愛く撮りますから!」
彼もまた兄の昭人と同じく自信たっぷりの笑みを浮かべ、平然と言った。
「それじゃあ、撮影始めますよ!」
大きなカメラを構えた昌人と親友提督の先には――
「きらんっ☆ きららんっ☆ きらり〜〜〜ん☆☆」
水玉模様が
阿賀野はウインクに伴い、ピースでみんなを虜にさせるポーズを取った。
「阿賀野さん、綺麗で可愛いですね」
「ほんと、提督さん聞いた? 阿賀野、綺麗で可愛いって!♡」
「うん、阿賀野は私の自慢の嫁だもの////」
「もう、提督さんったら♡」
撮影前にも関わらず、阿賀野は親友提督にキスをした。
言わば、ふたりは自分たちの世界に入り込んでいたのだ。
「あ、あの〜……いつもおふたりは嗚呼なのですか?」
昌人が能代たちに訊ねた。
「はい、いつもあの調子ですから////」
「提督と阿賀野姉は、いつも所構わずキスをしたりしますから////」
「司令とお姉ちゃん仲良しだよ~♪」
やれやれ状態の能代・矢矧だが、酒匂はふたりのイチャラブを見てニコニコと微笑んだ。
数分後には無事撮影が始まり、無事に終了した。
なお後日『ラバウルで朝食を』のポスターとともに、水着姿の阿賀野が主役の月刊雑誌『艦これ雑誌』の最新号が人気を集めた。
しかもどちらも一日で売り切れたのは、言うまでもない。
今回は衣笠メイン且つ、前回同様に二人っきりの空間を描きました。
こういう眠れない夜は、嫁艦と一緒にホットミルクも良いかなとも思います。
衣笠さんの『ラバウルで朝食を』のポスターのポーズ大好きです。
モデルのようなスタイルとともに、美脚が眩しいです。
阿賀野さんに関しては、漫画『止まり木の鎮守府』にて、水着を披露する回がありましたので、これをヒントにしました。
そして今回ゲスト出演として登場した菱島昭人と、菱島昌人のふたりは中里融司先生の作品『荒鷲の大戦』と言う架空戦記に登場しているキャラクターです。
名作に伴い、メインキャラクターたちも個性あふれていますと同時に、各地と各海域で行われる陸海空戦はどれも迫力あります。
また架空艦も登場していますから、なおその時は『艦これで実装したらどうなるのだろうな』と思いながら読み返しています。
ともあれ、今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。
では次回も古鷹たち第六戦隊の魅力とともに、シュガーテロもお楽しみに!
それでは第14話まで…… До свидания((響ふうに)