第六戦隊と!   作:SEALs

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お待たせしました。
今回は本作とともに、『天空の富嶽』同時更新です。
久々の飯テロに伴い、少しだけですが甘いところもあります。
自分でも書いている最中に、空腹に襲われてました。

モノを食べる時はね、誰にも邪魔されず自由で云々と、ゴローちゃんの名言がしみじみ伝わりました。執筆する際にも、同じことでもあります。

今回の食糧回収イベントでも、食べ物恨みは恐ろしいですから。

では改めて、いつも通りの予告に伴い、楽しめて頂ければ幸いです!

どうぞ!


第35話:ホーム 後編

柱島泊地 海岸線

時刻 0550

 

少し早起きをした五月雨は、散歩をしていた。

東の水平線から陽光が、まだ昇ることはなく、鎮守府内の防波堤にある灯台の光源と、湾内に設置している赤く点滅信号を発するいくつもの津波検知用ブイの光源体しか見えないほど、静かな暗い海だった。

朝日が昇る時間帯よりも、早起き出来て良かったなと思う、と五月雨は心が弾んだ。

暗くてもさえずるような音を聞くため、彼女は、そっと双眸を落として耳をすました。

両耳から、穏やかな波音が心地良く聞こえた。

オーケストラのように優しい音色に伴い、周囲にはこの音色につられて、海岸線に聳える木々から、カサカサ、と葉鳴りも風を掴むように奏でる音も心地良い。

彼女は双眸を開けて、もうすぐ朝焼けが泊地を包み込むように神秘的な光景が見えると思うと、待ち遠しい気持ちを表したときだった。

 

「おはよう、五月雨」

 

「ふえっ!? あっ、提督。おっ、おはようございます!」

 

五月雨は、肩まで跳ねあげて驚いたものの、挨拶はきちんとした。

因みに提督は、今は黒ジャージ姿である。

 

―――肩まで跳ねあげて驚くとは、まだ信頼されていないのか、それとも苦手なのかな。

 

「驚かせてすまない。俺もジョギング中だったから五月雨もジョギングしているのかと思ってな」

 

「い、いえ……五月雨、朝焼けを見るのが好きで……」

 

「そうか。朝焼けが好きなんだな、五月雨は」

 

「は、はい……」

 

提督の問いに、五月雨は答えた。

彼は『ふむ、それならば……』と頷き、何かいたずらを思いついた子供のような笑顔を見せて彼女に告げた。

 

「なら、俺も付き合って良いかな?」

 

「…えっ、は、はい?」

 

五月雨は、意外な答えに、きょとんとしたが、提督とともに朝陽を見ることにした。

 

 

場所は打って変わり、柱島泊地灯台へ―――

 

「少しキツいけど、大丈夫か?」

 

「大丈夫ですよ、提督」

 

提督は、五月雨を連れて灯台の頂上まで目指した。

各鎮守府や泊地では、岬の先端や港内には灯台が設置されている。本来は海保、現在は沿岸警備隊管轄の建築物であるが、戦時中である今は海軍が管轄している。

本来の役目でもある船舶の航行目標となる施設に伴い、いざと言うときには見張り台の重要な役割も担っている。

灯台内の頂上まで続く階段を登り終えた、ふたりは出入口ドアに辿り着いた。

 

「ここが見晴らしの良い、とっておきの場所だ。今から魔法が起こるからな」

 

冗談を合図にした提督は、蝶番を掴み、ゆっくりとドアを開けた。

五月雨は、眩しい、と言い、朝日を眩しがるように手で顔を覆っていたが、瞳に映る景色を見て、双眸を輝かせた。

 

「スゴい、綺麗!」

 

朝焼けは、この泊地を包み込むように神秘的だった。

東の空から昇った太陽は、夜の顔から目覚めるように、静寂だった泊地や水平線の彼方まで続く海から、黄昏色に染めた朝日が昇り上がった。

朝日に照らされて炎のように赤くなる空とともに、埠頭に打ち寄せる波頭の白い線は黄金色に染まるように、ところどころ煌めかせた。

 

柱島泊地周辺には、小柄な島々が朝焼けに照らされてエメラルドグリーンに、これらを囲む海色は透き通るコバルトブルー、不思議な美しさへと変貌していく。

同時に、南国の海にいるように、この絶景に魂を引き込まれてしまうほどだった。

一部の提督たちから柱島泊地は『魔境』と言われており、忌み嫌われたり、悪い意味で囚われている。

しかし、本当の意味は風光明媚な瀬戸内海の波間に浮かぶ自然に包まれ、全身から優しく包まれる海風を肌で感じ、雄大で穏やかな瀬戸内海を俯瞰に伴い、絶景を臨むことが出来る泊地でもある。

 

「お気に召してくれたかな?」

 

「はい。これ以上に綺麗な景色、見たことありません!」

 

提督の問いに、五月雨は答えた。

彼女の胸の内には、この美しい海の色と絶景に心を奪われたことは生まれて初めてだった。

そして五月雨は無意識の内に、ジャージの裾を握っていた。昨日、彼に撫でられたこの優しい手を求めるように……

 

「あ、あの提督……」

 

「どうした。五月雨?」

 

「手、握っても良いですか?」

 

五月雨の要望に、提督は微笑した。

 

「ああ、良いぞ」

 

「では、失礼します」

 

「ああ」

 

提督は、五月雨の手を優しく、そっと握った。

 

―――優しくて、温かい手。

 

五月雨は、微笑んだ。

撫でられたときと、また違った温もりが伝わる。

それに、もしも自分にお父さんがいたら、こんな感じだろうな……と、ふと提督を父親のような面影と伴い、朝焼けのように、いまひととき、温かくて優しい夢を見ているのではないかと感じた。

彼女の視線に気づいた提督は、微笑んだ。

彼の双眸、その碧海のように透き通る瞳は綺麗で強さと優しさを兼ね備える瞳でもあった。

 

―――元帥の言った通り、良い提督だな。

 

そう呟き、彼女が微笑んだときだった。

きゅうぅぅぅ、とお互いの空腹を知らせる音がなった。

 

「……あはは。お腹空いちゃいました」

 

五月雨は照れながら笑った。

 

「あはは。俺もだよ。今日は一緒に朝焼けを観賞出来て嬉しかったお礼に、俺たちの家で朝食を用意してあるから一緒に食べるかい?」

 

「あ、あの良いのですか。提督?」

 

「ああ。朝食は大勢で食べた方が楽しいからな」

 

提督の言葉に、五月雨は―――

 

「はい。では、御言葉に甘えて行きます!」

 

「よし。我が家の朝食を楽しみにしてな!」

 

「はい、楽しみにしてますね」

 

ふたりは、清々しい朝焼けを観賞し終えて、朝食を取るために戻ることにした。

 

 

 

提督&第六戦隊邸

 

「ただいま」

 

提督が玄関を開けて、足を踏むと―――

 

「おかえりなさい。提督♡」

 

「提督、おかえり〜♡」

 

「司令官、おかえりなさい♡」

 

「おかえり、提督〜♡」

 

天使のような微笑みを浮かべた、エプロン姿の古鷹たちが迎えてくれた。

 

「ああ、それから可愛いゲストを呼んで来たぞ」

 

提督の傍で、ひょい、と五月雨が顔を出した。

 

「おはようございます。古鷹さん、加古さん、青葉さん、衣笠さん」

 

五月雨が挨拶を交わすと、古鷹たちも『おはよう』と返した。

 

「さあ、上がって良いぞ」

 

「はい、お邪魔します」

 

「腕をよりに掛けて作るからね♪」と古鷹。

 

「美味しい朝ごはん楽しみに待っててね♪」と衣笠。

 

「あの朝ごはんの準備、手伝います!」

 

「あはは。良いって、良いって♪」と加古。

 

「待っているだけで良いですよ♪」と青葉。

 

「あはは、では御言葉に甘えて」

 

デジャブだな、と思いつつ、提督たちとともに食卓に足を運んだ。

 

 

 

そして、数分後―――

 

食卓についた五月雨は、着席した。

なお、提督は運動後のシャワーを浴びて、黒ジャージから、いつもの制服に着替えた。

 

「もう少しで出来るからな」

 

「あっ、はい」

 

提督は、初めて来たから緊張感が出ているな、と察知していた。

 

「大丈夫だ。朝食を食えば緊張感もなくなるから」

 

彼の言葉通り、キッチンから鼻腔をくすぐるようにバターの匂いが漂って来た。

 

「あっ、良い匂いがする」

 

彼女の言う通り、ふっくらと香ばしい焦がしバターの匂いが漂った。

他にもコポコポ、と沸騰する音を鳴らし、コーヒーポットから淹れたばかりのコーヒーの芳醇な香り。

包丁に切られ、その切り口から甘酸っぱい匂いがする果物に、みずみずしく新鮮でシャキシャキと音を鳴らしながら盛られる野菜などの音も聞こえて来た。

昔から続く良き朝の風景を堪能し、もうすぐ出来るな、と提督が察した通りに、料理が盛った白い皿やサラダボウルなどが運ばれて来た。

 

『はい、お待たせ〜!』

 

古鷹たちは、各々と持って来た料理を置いた。

 

「うわっ、美味しそう!」

 

五月雨は笑顔とともに、双眸を輝かせた。

目の前に置かれた料理は、とてもカラフルだった。

 

「この料理は青葉とガサと一緒に作りました」

 

「もう一つサプライズがあるから、開けたときのお楽しみだよ」

 

青葉と衣笠は、いたずらをする子供のように笑う。

白い皿に盛られていた料理、出来立てで温かい湯気がこもっていたフレンチトーストはオムレツやたまご焼きのように綺麗な金色、ところどころにある程よい焼き色、そしてバターと卵、小麦の香ばしい匂いが朝の眠たい身体を起こしてくれる。

 

「サラダは、あたしが作ったんだよ」

 

加古は、ニカッと笑った。

サラダボウルに盛られ、七色の虹を演出しているウォルドーフサラダ。

酒蒸しに塩・胡椒で味付けされた鶏肉のそぎ切り、赤・黄緑・黒など角切りにされたリンゴやセロリ、くるみ、レーズンに伴い、マヨネーズや生クリーム、蜂蜜、粒マスタードを加えて、混ぜ合わせ作られた甘酸っぱい匂いが堪らないマヨネーズソースでコーティングされている。

その周りに飾られているエンダイブとくし型に切られたリンゴが彩りを添えている。

 

「コンソメスープは私です。簡単に牛ミンチや野菜で作ったスープだよ」

 

古鷹も微笑んだ。

湯気につられて、牛肉と香味野菜独特の香りが堪らなく、透き通るほど琥珀色に輝くコンソメスープ。その上には刻みパセリが浮き実として添えられている。

今回は牛のコンソメ《コンソメ・ドゥ・ブフ》だ。史実でも日本海軍も牛のすね肉や骨や香味野菜を使って、コンソメスープを作った記録が残っている。

なお完成したスープの色は澄んだ琥珀色でなくてはならず、コンソメが濁っていることは許されない。見た目は単純だが、非常に手の込んだスープである。

 

 

「コーヒーは専門店から買ってきた豆を使ったものだが、味は上手いから保証するぞ」

 

提督が言った。

そして、最後には淹れたばかりのコーヒーがマグカップに注がれる。

湯気が立ちこもると、コンソメスープに負けないようにコーヒーの独特なほろ苦い香りが優雅な朝食を演出してくれる。

 

「コーヒーは、ブラックでも大丈夫?苦手ならば砂糖とミルクあるけど……」

 

提督が問い掛けると、五月雨は小さく頷いた。

 

「はい。五月雨、ブラックコーヒーで大丈夫です」

 

「良かった。じゃあ、たくさん食べてね♪」

 

古鷹がそう言い、空いている席についた。

 

「全員揃ったところで……」

 

『いっただきま〜す』

 

一同は今日の始まり、一日のスタートとなる朝食に感謝を込めて合掌した。

 

「たくさん食べなよ、五月雨」

 

「はい!」

 

五月雨は、提督の言葉に聞き、まずはフレンチトーストから手を延ばした。

右手にナイフと、左手にフォークを持ち、フレンチトーストを切った。

青葉と衣笠の言ったサプライズを楽しみながら、サクッサクッと音を鳴らして切っていくと―――

 

「えええ!?フレンチトーストの中にハムとチーズが入っている!!」

 

切り口、パンの間からピンク色のハムとチーズがトロリと姿を現した。

 

「それは『モンティクリスト』と言うカナダの料理ですよ♪」

 

「もん……?」

 

青葉の言葉に、五月雨は首を傾げた。

 

「つまり分かりやすく言いますと、フレンチトーストとクロックムッシュを合わせたようなサンドイッチで、外はカリカリ、中はふわふわの食感が楽しめますよ」

 

「なるほど〜、これがサプライズだったんだ。面白いですね」

 

喜ぶ五月雨を見て、青葉と衣笠はハイタッチを交わした。

 

「ほのぼのドッキリ大成功ですね♪」

 

「うん。大成功だね、青葉。それにモンティクリストにはメープルシロップを掛けて食べるだよ。はい、五月雨ちゃん」

 

「あ、ありがとうございます」

 

五月雨は、衣笠が手渡してくれたメープルシロップを受け取り、モンティクリストに適度に掛けて、ゆっくりと口に運んだ。サクッと音を響かせて―――

 

「んっ〜〜〜!!甘いのにしょっぱい!それに癖になるほど美味しい〜〜〜!」

 

彼女は、心から衝撃的な美味しさを全身から感じた。

外はカリカリ。中はふわふわ。パンの間に挟まれたハムとチーズが噛む度にとろけていき、双方の塩気とメープルシロップの甘味が意外にも合い、より癖になる味を引き立ててくれる。

 

「次は、コンソメスープを飲もう」

 

五月雨は次に、コンソメスープに移った。

スープ用スプーンを手にし、スープを掬った。

火傷しそうなほど熱いスープを、息を少し吹き掛けて火傷しないようにゆっくりと啜る。

 

「とても優しくて深い味で美味しい〜〜〜!」

 

ほっとするコンソメスープの味は、牛肉のコクと旨味、野菜の甘味がこのスープに溶け込んでおり、冷えた身体を芯から温め、そして眠気から覚ましてくれる。

 

「スープの次は、ウォルドーフサラダを……」

 

小分けにされたウォルドーフサラダ、これを適度に食べられる量に載せて頬張った。

 

「う〜〜〜ん。マヨネーズソースに絡まれた鶏肉と野菜、果物が調和して美味しいです!」

 

噛めば噛み締めるほど、野菜の様々な音がする。

しゃきしゃき、ポリポリ、パリパリとひとつひとつ違う音を奏でていく。鶏肉とマヨネーズ、生クリームのコク、粒マスタードの辛味、そして蜂蜜とレーズン、リンゴの甘味が口の中で美味しさが広がっていく。

 

「どれも美味しくて、幸せです」

 

ほっと一息。五月雨は熱いコーヒーを啜る。

ほろ苦い香りと味が、また一層と気持ちを落ち着かせてくれる。

 

「五月雨は、旨そうに食べるな」

 

彼女の傍にいた提督が声を掛けた。

緊張感が解けた五月雨は、ニコッと微笑んだ。

 

「はい、どれも美味しくて!」

 

「見ている俺たちも良くて嬉しくなるな、みんな」

 

『はい、提督(司令官)♡ ♡ ♡ ♡』

提督は、ニカッと笑った。

彼が笑うと、古鷹たちも一緒に微笑んだ。

 

「それに大切な人たちと食べる食事は温かいし、場を和ませてくれるから、俺は大好きなんだ。だからこそ、笑って、強くなり、古鷹たちとみんなを護って行きたいんだ」

 

提督は、照れくさそうに言った。

自分は正義のヒーローのようには、かっこいいことは言えないな、と呟きコーヒーを啜った。

 

「素敵な言葉ですね、提督」

 

この言葉を聞いた五月雨は、ニッコリと微笑み返した。

提督・古鷹たちは、彼女の笑顔を見て、『天使がここにいる』とほころんだ。

 

「今日も良い一日を過ごそうな、みんな!」

 

『はい、提督(司令官)♡ ♡ ♡ ♡』

 

「五月雨も頑張っちゃいますね♪」

 

一同は、良い一日になるようにと願いを込めて、優しさのこもった朝食タイムを過ごしたのだった……

 

 

 

おまけ―――

 

「このプリンも美味しいですね、提督」

 

マグカップの中身は、プリンである。

黄身の味が濃く、牛乳の優しい味、カラメルソースの甘い味が一体と化して、より一層と深い味を主張する。

 

「そうか、良かった」

 

提督が良かった、と微笑んだとき―――

 

「でも、どうしてマグカップなんですか?」

 

五月雨は、再び首を傾げた。

 

「あ……それはね、みんなで温かいミルクセーキを飲もうとして、レンジでホットミルクを作るように温度設定調節したら出来てな」

 

提督・古鷹たちは苦笑いした。

ただ、失敗は成功の母だな、と思えば良いかなとも思えた。

 

「えへへ。でも、美味しくて、五月雨大好きですよ」

 

「あはは、そう言ってくれると嬉しいな」

 

―――もちろん。優しい笑顔の提督と古鷹さんたちも大好きです

 

五月雨はそう呟くと、一日の始まりに感謝したのだった。

 




今回は戦闘描写以外の風景、景色描写及び、飯テロにすべく描写に遅くなりました。
柱島の綺麗な海は、いつか必ず見て見たいですね。
角島と同じくらい、綺麗なコバルトブルーで、南海と勘違いしてしまうぐらいです。

シュガーテロもですが、こういうほのぼのとした作戦もあって良いんじゃないかとね。
そして五月雨ちゃんも天使。私の自慢の初期艦として、娘でもあります。
駆逐艦の娘たちは、娘でもありますので。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。

それでは、第36話まで…… До свидания((響ふうに)
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