第六戦隊と!   作:SEALs

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お待たせしました。
予告通り、今回も視点を変えて、今度は大西洋に展開するフランス率いるNATO艦隊にも悲劇が襲い掛かります。
どういう展開なのかは本編を読めば分かります。
いつも通り楽しめて頂ければ幸いです!
それでは、どうぞ!


第77話:殺戮の天使たち 前編

 

NATO連合艦隊・旗艦《クレンマンソー》

X-day 時刻 1735

北大西洋海域

アラン・ロブグリエ中将

 

台湾、アメリカに引き続き、この北大西洋でも同じく災厄が降り注ごうとしていた。

深海棲艦出現後、NATO諸国の中軸を担うフランス海軍は、米海軍とともに活躍しており、日本で起きた先の観艦式襲撃事件以降、マルセイユから米海軍と同じくヨーロッパで唯一原子力空母を持つフランス海軍の切り札であり、シャルル・ド・ゴール級空母《シャルル・ド・ゴール》の後継艦でもある、最新鋭空母《クレンマンソー》を派遣。シシリー島・東海面海域などで活動をしていた。

前級と比べて飛行甲板は大幅に拡張し性能も向上しており、基準排水量75000トン。速力27ノット。搭載機は50機。

艦載機はFCAS計画として注目された独仏西共同の次世代戦闘機は、フランスの傑作艦上戦闘機《ラファールM》と同じくマルチ機能を搭載、さらにはステルス機能性を備えたF-35Bを凌駕するとも言われている《ミストラル》艦上ステルス戦闘機を32機搭載。他にはE-2D早期警戒機×3機、NFH90対潜哨戒ヘリ×4機、EADS アーファング×3機を搭載している。

 

其の彼女の護衛を務める随伴艦は、アキテーヌ級フリゲート《アキテーヌ》に、フォルバン級駆逐艦《フォルバン》《シュヴァリエ・ポール》の3隻を伴い、マルセイユから出港した。

フランス海軍は核弾頭ミサイルが搭載可能なル・トリオンファン級戦略原潜を持つが、警戒及び、哨戒活動には不向きなので、其の代わりにシュフラン級原潜を同行させている。

NATO合同海軍で米軍に次ぎ、唯一と言っても良いほどフランスが原子力空母を保有するため、旗艦を務めることになっている。

 

同じくフランス海軍とともに行動しているのは、中軸国でもフランスと勝るとも劣らないイギリス海軍。スコット中将が座乗するのは英国御自慢の最新鋭空母、クイーン・エリザベス級航空母艦 《クイーン・エリザベス》。其の姉妹艦の《プリンス・オブ・ウェールズ》も同行している。双方ともSTOVL方式空母であり、インヴィンシブル級軽空母の後継艦として就役した空母であり、万が一の時には、揚陸艦機能も兼ね備えており、海兵隊250名も搭乗可能である。

搭載量は48機。F-35B×30機。HMA.2対潜ヘリ×10機。

護衛艦は45型駆逐艦や23型フリゲートも参加している。

 

他にはイタリア海軍。この艦隊の指揮を執るのは、イタリア艦隊司令官のジュリアーニ中将。彼が率いるのはカーヴル級軽空母《カーヴル》率いる空母戦闘群。軽空母であり搭載量は少ないため、こっちはF-35B×12機。対潜哨戒ヘリ×6機を積んでいる。

また護衛を担う艦船は、カルロ・ベルガミーニ級フリゲート《ベレニケ》やアンドレア・ドーリア級駆逐艦《アンドレア・ドーリア》などを筆頭した護衛艦6隻を引き連れている。

 

かつて全ての欧州海域を治め、無敵艦隊とも謳われたスペイン海軍は、軽空母としての機能を兼ね備える強襲揚陸艦《フアン・カルロス1世》を筆頭に、最新鋭艦のボニファス級フリゲート、イージス艦の原型として世界に衝撃を与えたアルバロ・デ・バサン級フリゲートを派遣。

 

オランダ海軍からは多目的レーダーを極め、より高度な防空能力を兼ね備えた防空艦兼嚮導艦として開発・建造された、デ・ゼーヴェン・プロヴィンシェン級フリゲート《エヴァーツェン》。

かつての海軍国オランダだからこそ、艦艇能力は一味違う。

 

そしてドイツ海軍からはバーデン・ヴュルテンベルク級フリゲートとともに、オランダ海軍と同じくNAAWS戦闘システムを搭載した防空能力を高めたミニ・イージス能力を備えるザクセン級フリゲート2隻が参加。

 

NATOの中軸国による艦隊、型式では新型と旧型が入り混じっているが、ギリシャ、ポーランド、トルコ、ルーマニア、リトアニア、ノルウェーなどから各1隻ずつではあるが、各国の代表である最新鋭主力艦が参加している。

各国の補給船・給油艦などを含めれば、この勢揃いした50隻近くの壮観とも言えるNATO連合艦隊の、各国の艦船能力は、ほぼ海自のDDないしDDGと重なり、速射砲の口径は様々であり、少なくとも100mmから120mmクラスである。此れらの砲熕兵器に加えて、現代戦には欠かせない、先手必勝の要でもある鋼鉄の長槍とも言える対艦、対空ミサイルは米国製及び、自国製を兼ね備えている。

特にフランスは軍事産業に力を入れており、友好国には貸与、輸出しているほどの軍事産業国家でもあり、ヨーロッパにおける紛争を鎮めるには、充分な抑止力を兼ね備えている。

だからこそNATO諸国の海軍は、自国周辺及び、地中海までが行動範囲が主である故に、豊富な兵力と潤沢な資金を誇り、世界を唸らせる米軍とまではいかないが、此れほどの大艦隊の前に、特にNATO連合艦隊旗艦《クレンマンソー》を座乗するフランス軍司令官、感情豊かなラテン民族であるロブグリエは意気盛んだった。

ここで日米以上の活躍を見せれば、我が祖国の英雄であり、名将のナポレオンを凌駕して、かつての古きヨーロッパを、また世界を唸らすほどの脚光を浴びて過去の栄光を取り戻すことが出来るだろう、と。

此れは決して、自意識過剰ではなく、NATO海軍の実力を誇っているのも事実である。

しかし、次第に迫り来る、避けようのない恐怖を迎えようとしていることを、其の結果がどうなるか、まだロブグリエたちを含めて、予想することは誰にも出来なかったのだった……

 

 

 

 

北太平洋海域・上空。

雲を眺めていると、戦争をしているのが嘘のように思えてしまう。

見下ろせば青い海が広がり、一度でも見渡せば、視界を埋め尽くすこの神秘な光景が心を潤してくれそうだ、平和な光景とはこの事かもしれない、と、海上上空の警戒のために飛び立った双発機。

高度1万メートルを悠々と飛翔して、快調な回転を示していた2基のターボプロップエンジンを唸らせていたのは、旗艦《クレンマンソー》所属のE-2D《アドバンスドホークアイ》だ。

 

「よく見ていろよ。日本の観艦式襲撃以降、怪しげなテロ組織が何をやってくるか分からないからな」

 

「機長、本気なんですか? まさか我が艦隊に攻撃などなんで事態は願い下げですよ」

 

レーダーにも敵影はなし、海面にも異常なし。と言いつつも、退屈な哨戒任務に顔を向けて問いかけるコワルスキー。

救国の念に燃えて入隊した一人の若者だが、やはり実戦が目前に迫れば気後れするものだ。勇敢なことでは人後に落ちないフランス生まれでも、この戦いの行く末に対しては、様々な思い、恐怖を抱くのも無理はなかった。

 

一方機長は生粋の士官学校卒業で鍛えられたシルヴァー大尉は、恐怖を払い除けようと、声を掛けた。

 

「大丈夫だ。俺も最初の頃は、そんな感じだった。始まる前は長くなると思っていたが、実際には1時間ほど哨戒や偵察をしても、ほとんどが会敵しないか、たまにというくらいだ」

 

シルヴァーはかぶりを振り、咳をした。

 

「戦闘とはいつもこうではないが、一刻一秒でも敵より先を行かないとならないのは覚えておくことだ」

 

コワルスキーは深く息を吐いた。

 

「どんな時でもですか?」

 

「そうだ、その通り……」

 

「どうかしましたか、大尉?」

 

予想外の声を途切らせた様子に、不審に思ったコワルスキーは、機長の視線をたどり前方の窓に眼を向けた。

何処までも続く蒼空に、穏やかな雲が伸びているだけ。

かなりの高速を出す、空の色に似合う飛行物体が見え始めてきた。

其れは整然と飛行している、互いに距離を取りながら飛行する大型旅客機が3機。なんだ、珍しく同じルートで鉢合わせなのか? 其れとも訓練中なのか? と思った、次の瞬間、二人は眼を剥いた。

 

「「な……なんだあれは!?」」

 

旅客機から放たれた複数の小さな鳥型の飛行物体が、意志を持つように群れとなして、猛進に押し寄せて来た。このままではぶつかる。

不味い、と、即座に、シルヴァーは操縦桿を捻った。

武骨なE-2Dがエンジンの唸りを上げて、強引に回避したおかげで辛うじて衝突は免れた。刹那、彼は無線機を取り上げた。

 

「こちら《メルヴィル》!3機の大型旅客機から大量の無人機が排出された。まるで渡り鳥の群れのように、俺たちを無視して、艦隊めがけて押し寄せてくる!」

 

《なんだって!?おい、冗談じゃあるまいな!四月馬鹿は、もう過ぎたぞ!》

 

通信将校が半信半疑で問い返す。歯噛みしたロブグリエは、眼を怒らせて怒鳴りつけた声が響いた。

 

《ばかもん!冗談が言える状況か!艦載機を発進させろ!同時に防空態勢を固めろ!》

 

この巨大な力を秘めている鋼鉄の嵐。

高速で飛びまわる無人機が凶器となり、其の災厄に巻き込まれた自分たち。その光景を思い浮かべただけでも、新たな緊張はおろか、恐怖を感じる他なかったのだ。かつて中世時代のヨーロッパ本土にいた人々を、2/3をも死に追いやった黒死病というものを彷彿して、其の災厄に自分たちは巻き込まれたのだ、と思うようになったのだ。

嫌だ、死にたくない、こっちに来るな、生きて帰るんだ、と思っても、咄嗟に身を構えるが、無意味に等しかった。

鋼鉄の嵐でもある無人機の群れは、彼らの命を奪い、そして不運な早期警戒機は紅蓮の炎に纏いながら、澄んだ蒼空に散ったのだ。

 

 

 

 

《あはっ。フランスの蛙食いどもが早くも狼狽えている。馬鹿だな。我々の送る最高のお楽しみと、細やかな贈り物をしているのに》

 

《そうですね、同志》

 

この様子を見ていたオリンピア軍の指揮官たちは嘲笑っていた。同時に揶揄するように、艦内を笑い飛ばすように言い放った。

彼女たちは敵情を知るために派遣されたオリンピアの潜水艦《レッドサタン》が海中から様子を見ていたのだ。無論のこと、艦が発する騒音も、最低限に抑えている。

深度も約60メートル。偵察機が真上を飛んだとしても、この辺りの海域はさほど透明度が高くなく、艦影を見られることはないから安心して活動することが出来る。

 

《このまま見物しておこう。ともかく新世界秩序のための致し方のない生贄として死なねば為らぬ連中なのだから。抗うだけ足掻いている姿は見ものだからな》

 

《御鑑賞の間、指揮を引き継ぎます。艦長は、どうぞごゆっくり食事でも》

 

《敵の表座敷だぞ、ここは。ゆっくりするには、よほどの肝っ玉を持っていなければなるまい》

 

余裕の笑みを浮かべて、同時に冗談を言って返し、部下から運ばれてきた戦闘配食、出港前に大量に積まれた大事な糧食、グランド・マザー様下心尽くしの黒パンとハム、そしてチーズで作られた特製の黒パンとハム・チーズのサンドイッチを美味しそうに齧りつつ、これが新世界の始まりだ、と作戦の行く末を楽しむのだった。

 




今回は架空の仏空母などが登場していますが、元ネタは仏海軍が現在開発中の新型空母に伴い、ラファールに次ぐ新型艦載機であります。
艦載機の名前由来は、フランス軍にはミストラルと言う名の兵器が多いので、此方の名を採用しました。
なお今回のネタは『天空の富嶽』最終巻に登場する艦隊を少し現代風に合わせて変えたりしています。原作では現在では退役している艦船がありますので、現段階で現役艦船に置き換えていますが。

では次回は後編、対空戦と言う形になります。

それでは、第78話まで…… До свидания(響ふうに)
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