第六戦隊と!   作:SEALs

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遅れましたが、明けましておめでとうございます。
今年も本作品ともどもよろしくお願い致します。
新年の御挨拶が済んだところで、予告通りいよいよあの人物の登場回となります。大変お待たせしました。度々出てはいましたが、本格的に介入するためにあの人物が登場するのでお楽しみください。
いつも通り楽しめて頂ければ幸いです!
それでは、どうぞ!


第80話:灰色服の男、現る!

 

「ここは……」

 

重い瞼をゆっくりと開けて、起き上がった提督は眼をこする。

気づいたら、柱島泊地の医務室に設けたベッドの上。

あの時、愚零主任が試作したOH-1XA《ニンジャ・改》に搭乗して、敵仮装巡洋艦を攻撃。直後に深海騎士との一騎打ち、そして古鷹たちとともに戦い、母校に攻め込んできたオリンピア・深海連合艦隊を駆逐していた最中に、柱島泊地海域の中心部で起きた光の津波に呑み込まれて意識が失ったところまでは、はっきりと覚えている。

其れにも関わらず、何一つ傷口も残っていない、あの爆風に巻き込まれて痛みを感じる前に雲散霧消してもおかしくなかったはず……

 

――夢でもなければ、ここは天国ではない。

例え存在していたとしても自身は複雑な理由があるにしても、これまでの経緯、いくら国のため、戦争とはいえ、決して天国に行く資格すらないのだ。いいや、持っていない、と言った方が正しいだろう。

 

「みんな、俺が起きるまで待っていたのか……」

 

ふと足元に違和感を感じた提督は視線を下げると、頭を傾けてすやすやと静かな寝息を立てていた古鷹たち。

おそらく俺の容態を心配して居ても立っても居られず、高速修復材を使って完治した後に、俺が眼を覚めるまで待っていたのだろう。だが、先ほどの戦いの疲れのせいで寝てしまったのだろう。

ならば、目の前の、この感覚はなんなのだ? 無数の疑問が浮かび上がるほど分からないことだらけだ。

しかも俺たち全員を含めて、泊地まで無事とかあり得ないだろう……と思うのが素直な感想だった。

あの爆発し見捨てられた仮装巡洋艦は姿形すら残っておらず、乗組員たち全員も姿はないのだ。此れだけには止まらず、柱島泊地を含めて近くの沿岸地帯なども津波による水害、核攻撃による第二の被害などもなく、全て無事だったというのもあり得ないこと、と考えていた最中――

 

「提督、起きていたんですね」と古鷹。

 

「提督、気分は大丈夫か?」と加古。

 

「ああ、大丈夫だ」と頷く提督に対して――

 

「良かった、青葉たちも何故か無事なのですが……」

 

「青葉の言う通り、私たちがみんな無事なのよね、不思議と」

 

頭の整理が追いつかないのが正直な感想だ。いま考えても夢のような心地がする、自分たちは確かにあの悍ましい核爆発を受けた。

柱島泊地上空に大火球が発生して、途轍もない熱線や衝撃波、爆風が身体中に襲い掛かってくるのを感じたのだ。自身の眼はおろか、熱線に焼き尽くされて死亡していたり、挙げ句は周囲に甚大な被害が報道されてもおかしくないはずなのに、気が付いてみると、騒ぎどころか、このように温かいベッドの上にいた……という経緯を話すと――

 

「みんな同じ体験をしました。私たちもあの光の津波と爆発に巻き込まれて、とてつもない熱線が襲い掛かり、全身を焼き尽くされたのに気づいたら入渠ドッグまで運ばれて完治されたとのことです」

 

古鷹の会話に、加古、青葉、衣笠が頷いた。

この奇妙な出来事、其れとも椿事なのか、はたまた解説しきれない点では超常現象と言ってもおかしくはない。時間が逆行したのか、果てはあの核攻撃をなかった事にしたのかは解明しきれないが、そう解釈しない限りは辻褄が合わないのだ。

おそらく此処にいる古鷹たちだけでなく、もしかしたら全員が同じ体験をしているはずだ。こうしてはいられない、と立ち上がり、身支度を整えて、そっと部屋を出ようとした際、ふと違和感を感じた。

 

――其の違和感を感じた瞬間、部屋の空気が冷たくなった。

提督が視線を移すと、部屋の一遇に靄のような物が立ち込め、其れが急速に人の姿になって凝縮し始めた。

グレイのスーツ、グレイのネクタイ、履いている靴までもグレイ一色である男が音もなく近づいてきたので、思わず提督たちもたじろいだが、顔には見覚えのある人物だった。

 

『愚零主任……』

 

と一斉に声を出したのだ。

 

「いや驚かせてすみません、柘植提督。其れに皆さん。其れに愚零主任は仮の名前であり、私のことは灰田とでも呼んでください」

 

愚零主任こと、灰田は物柔らかな声で言った。

 

「確かに私は愚零主任として、この泊地で貴方がたの様子を見ていました。其れは貴方がたを助けるために、未来からやって来たのです。未来と言っても別な次元にある未来ですが」

 

「つまり、多次元宇宙という概念で考えれば良いですね。あの英国の天才学者ホイルが唱えたものと思えば良いのですね?」

 

青葉の解釈に、その通りです、と灰田はゆっくりと頷いた。

 

「はい。おっしゃる通りです。要するにこの宇宙は無数に重なり合い似通った宇宙から出来ているというものです。

謂わば、玉ねぎの皮が重なり合ったようなものですね。

私は其の一つからやって来たのです、我々の未来は大変科学が進歩していまして、次元の壁をくぐり抜けることなどは何でもありません」

 

灰田の長広舌を、奇天烈な話を聞いて驚きを隠せなかった。

アインシュタインが唱えた特殊相対性理論、つまり時間と空間の相対的関係からなる四次元で成り立ち、時間の流れ――我々こと観察者の座標軸によって異なり、速く動いている観察者にとって時間の流れは、他の静観者に比べて遅くなる。

しかし、別の観察者は光速を超えるスピードでは動けない。

物体(質量)はエネルギーとして、つまり質量と真空中の光速度との関数であること。そして重力場は慣性系の加速度は等しく、極端に歪んだ重力場では時間の進行もまた歪み、これを利用すれば未来に行けるというものだ。

――但し、過去には行けないのは、タイムパラドックスというものが存在するからである、と考えられていた。

アインシュタイン博士の考え方は、要するにドイツのハイゼンベルクの考えた不確定性原理、またはオーストリアの物理学者のエルヴィン・シュレディンガーの『シュレディンガーの猫』の考え方とは反対の立場でもあった。

多次元理論とタイムトラベル、多次元宇宙を自在に行き行き出来るのであれば、と思うと驚かないのも無理はなかった。

しかし、知り得るだけの知識を得ても、況して数多くの存在する別次元の日本を、大東亜戦争時の大日本帝国の危機を救ったことまでは知る由もなかったのだ。

 

「確かに途方もない話ではありますが、ぜひ私の言うことを信じてください。

私は今のこちらの日本の窮状を見るに見兼ねてやって来たのです。

深海棲艦・オリンピアに思うように痛めつけられたこの現状を、住む世界は違うとはいえ、これらを黙って見過ごすことは出来ません。

その為に貴方がたを助けにこの現代にやって来たのです」

 

「私たちを助けに? 一体どうやって?」

 

衣笠の問いに、灰田は落ち着いた口調で答えた。

 

「古鷹さんたちに加えて、同時に赤城さんたち率いる空母娘たちを従来より強力にします。

大雑把に言って、敵艦隊の倍の戦闘力を持つようにします。

大鷹さんたちをさらなる改装にしましょう。速力を正規空母娘並みに施し、搭載量を翔鶴姉妹の80機にします。

貴方がたが持つ空母機動部隊は、言うまでもなく夜間は作戦行動は出来ません。艦載機を飛ばせないので攻撃隊を出せないからです。

しかしこの制約を無くし、古鷹さんたちの様に、夜間でも自由自在に作戦行動が出来るようにしたらどうでしょうか?」

 

「あたしたちのようにか、具体的には改装でもするのか?」

 

加古の言葉に、灰田は頷いた。

 

「その通りです。其の方法は至極簡単なものです。

古鷹さんたちを旗艦にすることで様々なスキルを生み出し、より艦隊能力を向上化させることで敵艦隊を屠ることが出来ます。

装備を変えることにより、従来から此れまでにない新たなこの能力は今後の海戦にお役に立つことでしょう。

次に赤城さんたちの艦載機に強力なレーダーを取り付けて、夜間でも索敵及び、夜間攻撃出来るようにします。彼女たちの艤装自体にもレーダーを装備し、敵に先んじんて相手を発見出来るようにします。

むろん搭乗妖精たちの訓練が必要になりますが、其の訓練システムもこちらで用意しましょう。

艦載機のレーダー、つまり電探は機体上部と下部に二つ付けて、上部及び水平方向、そして機体下方を全て探知出来るように改良します。

なおこの艤装は、深海棲艦を凌駕する数倍かつ強力なものとします」

 

「なるほど。確かに強力なものだが、ここで疑問が浮かび上がる。

古鷹たちの能力向上は分かるものの、問題は赤城たちの持つ艦載機……つまり敵艦や敵機を発見し攻撃隊を出せたとしても問題は帰投時だ。レーダーは水平線の向こうまでは利かない。どうやって赤城たちを見つけるのだ?」

 

提督の質問に対して、良い質問ですな、という顔を浮かべた灰田。

 

「これは艤装から特殊な赤外線を垂直に発振させることで解決することが出来ます。搭乗妖精たちは、其れを見ることの出来る偏光レンズ付きのヘルメットを被ります

御承知の通り、赤外線は人の眼には見えませんから、敵機からは見えないわけです。

この上空に垂直に伸びる赤外線の指標を辿れば、帰り着くのは容易いでしょう」

 

「なるほど、考えたものだな」

 

提督が言うと、さらに驚かされることを聞いた。

 

灰田は、懐から小さな黒い箱を取り出すと机の上に置いた。

すると、そこから光線が発射され、空間に映像が浮かび出たのが零戦三二型がまるで本物のような立体映像、ホログラフィとして映し出された。

 

「今から御説明しますね」

 

灰田が人差し指を振ると、零戦の風防の前部及び、反対側の機体下部に赤い突起が現れた。

 

「これがレーダーで、上部にあるものが上空。後方、さらに前方を探査します。

下部にあるものが、下方全体をチェックします。

これによって、全方向の探知が可能となるわけです」

 

再び灰田が指を振ると、今度はコックピットの映像が現れた。

それは提督たちが日頃から見慣れた計器盤ではなく、カラフルに彩られた一枚のデジタル盤面だった。

 

「これは御存知の通り、テレビモニターというもので、零戦を飛ばすためのデータを全てここに集約しました。

速力・現在位置・航続可能距離・敵機の位置などに加えて、油圧・プロペラピッチなど機体のステータスもここに全て現れ、操作することが出来るデジタル電子システムを搭載します」

 

現代戦闘機が持つシステム、さながらF-22《ラプター》は、パイロットが装着するヘルメットに、そのバイザーに全ての情報が表示されているようになっている。

全方向探知レーダーはこの時にやっと現れたものであり、それを大東亜戦争時代の艦載機に乗せる為には、灰田にしても其れなりの努力を払う必要があった。なにしろ前世紀の電気・機械的操作・情報伝達システムからなる航空機だからである故、フライ・バイ・ワイヤー・システムはもちろん持たない。

其処にデジタル・システムを持ち込むのは、流石の灰田でも難しい。

やむなく、従来のシステムを途中で電子的に変換することで其れを可能にしたものの、全てをブラックボックス化することは避けられないのだ。

其れは万が一故障した場合、修理は灰田が未来エンジニアを派遣して行わなくてはならないことを意味する。さらにこのシステムを早急に覚えこませる為に、シミュレーション・システムを持ち込むことにしてある。

 

「見た目よりもややこしいものではありません。搭乗妖精たちもシミュレーション訓練、つまり模擬訓練によってすぐになれるはずですから。

それから零戦のエンジンも換装して、出力を2000馬力にまでアップすることにしました」

 

灰田があまりに簡単に言うので、提督たちは唖然としてしまった。

零戦は日に日に、烈風などに栄光の座を譲ってしまっている。

優秀な性能を得るために、設計陣は血の滲む努力を払い、軽量化を行った。

鋲の頭を削るまでの努力をしたのである。その結果、優秀な格闘戦性能と長い航続距離を手に入れたが、その代償として、いったん守りに入ると弱かった。

しかし逆説的に言えば、当時の技術だからこそ軽量化に成功し、長い航続距離と高い戦闘能力を持つ戦闘機として活躍出来たと言える。

防弾ガラス・防弾板などと重量を増した米軍のF6F艦上戦闘機のように、どうしても2000馬力級エンジンを用いた一撃離脱を得意とする力任せの航空機では、零戦の持つ軽快さは後継機であり、本物の零戦キラーと呼ばれたF8Fまで実現出来なかったのだ。

その零戦のパワーを一気に2000馬力まで引き上げると、未来人の豪語には驚かされる。

 

「無論パワーアップに伴い、各部の強化は必要でしょうが、それも全てこちらでやります。

また、零戦の性能も落とさないように各部のバランスも見直します。速力は570キロ。航続距離も零戦の特徴である長距離を落とさないよう燃費に配慮してあります。

しかし零戦から、九九式艦爆、九七式艦攻に全てレーダーを取り付けるとなると、やはり相当の時間が掛かります。

それでも一週間も見ておけば良いでしょう。それから訓練に取り掛かるわけですから、都合一ヶ月で実戦に出せるようになるでしょう」

 

なるほど、それまでは従来通りの装備で行くのか、と納得した提督たち。

 

「……先ほどから聞いていると、OH-1XA《ニンジャ・改》と言い、潤沢な支援と言い、大変上手い話だが、お前の目的はなんなんだ?」

 

提督の問いに、灰田は落ち着いて答えた。

 

「先ほどを申し立てたように、私はこの日本を助けたいだけです。

御心配することは最もですが、その点に関しては、私を信じて頂ければ大丈夫です。あなた方を欺く為に、わざわざ未来からやって来たりはしません」

 

ふむふむ、それも確かにそうだな。試作品であるOH-1XAも含めて、もしかしたら時間を戻して、自分や古鷹たちがこうして無事であること。柱島泊地で起爆した核兵器を無効化したこと、あれだけ被害があったのにも関わらず騒動すら起きていないことを考えると妙な納得がした、此れまでの流れを感じると思うと、灰田の行き先を考えてみると辻褄が合うなと頷いた提督。

 

「よく分かった、灰田。お前を信じることにしよう。今日を含めて、明日からは忙しくなりそうだな」

 

提督の答えに、古鷹たちも頷いた。

 

「大変結構です。では、その間に関しての対策などは後日ご説明します」

 




今回は灰田さん登場回となりました。
前作ともどもチート級の力を持ち、貸与した超兵器などのおかげで数多くの多次元世界の日本を救ってきています。今回はまだ砂糖を少し囓った程度の御支援だと思って頂ければ幸いです。
段々と増えるのが、未来人らしさもある支援方法ですが。
今回はどのようになるかは今後のお楽しみを。
本当にイベントで実装されたら、架空戦記並みに面白いと思います。連山を搭載できる土佐姉妹や艦載機100機搭載でき、なおかつ砲撃戦等も可能な戦艦空母姉妹などとチート艦娘たちが登場しますがw 何を言っているかって? そこは前作品を読んでくだされば分かりますので宜しくお願い致します。

では長々とした後書きはさて置き、次回予告ですが、次回は準備段階となります。
果たしてどんな展開になるかは次回までお待ちを。

それでは、第81話まで…… До свидания(響ふうに)
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