長らくお待たせして申し訳ありません。
それでは、予告通り戦力準備に移ります。同時にどんなものなのかも少し分かりますのでお楽しみを。
いつも通り楽しめて頂ければ幸いです!
それでは、どうぞ!
日本に必要だったのは、空母戦闘群の実用化期間だった。
機械で言えば、各部を油で馴染ませる時間であり、それを人間対人間で行うものである。
クローン乗組員たちのおかげで、さほど時間は掛かることなく順調に終わった。
長崎・佐世保・横須賀・舞鶴などの各鎮守府・泊地では、艦娘たちの艤装改造が行われるようになった。
特に護衛空母娘たちは、翔鶴型に匹敵する搭載機80機かつ高速化にするためには、大幅に手を入れなければならない。
灰田はこれらを全て成し遂げると明言したが、提督たち以外は誰もが半信半疑だったが、始まった以上は一旦任せる以外はない。
各鎮守府などに設けられたドックに入られると、妖精たちなどは全て退去。直後、濃霧が湧き出してきてドックを包み込んだ。
灰田の言う通り、これは一種のエネルギー・バリアだと思われる。
ある者は強引に入り込もうとしたが、眼に見えない壁のようなものに跳ね返されて入れなかったり、試しに銃撃をした者もいたが、これまた何かに吸収されたように攻撃が無力化されたのであった。
濃霧に包まれた後、ドックは静まり返って、何の物音も聞こえない。
実はこれは灰田が各艤装を一旦自分の世界に搬送してそこで改造していたのだが、誰一人もそれに気づく術はなかった。
その間に赤城たちなどの艦載機に伴い、各地の基地航空隊の方も改造が進められていた。
やはり濃霧に覆われて、改造が行われており、灰田が自分の世界に送り込んで全て改造していたのである。
灰田の未来世界では、これらの仕事は児戯に類するものだった。
そして約束通りの日が過ぎると、各鎮守府・泊地のドックを覆っていた濃霧が晴れると、待ち構えていた提督や艦娘たちは、一様に眼を見張った。
古鷹たちもだが、特に護衛空母たちは驚愕した。
何しろ翔鶴型までに性能が拡大されていたのだ。威容に驚いたのも無理はなかった。飛行甲板は延長され、格納庫は全て二段化。搭載機80機を余裕に収納出来るほど拡張されているのだ。
また機関も大型のものに換装されており、艤装をさっそく取り付けた大鷹たちを外洋に出して試験運転を行わせてみると、速力は何れも楽々と35ノットという、翔鶴型を凌ぐ速力を誇っていた。
そして、電探の能力にも驚いた。
かつて装備していた二一型対空電探や二二型水上電探などと比べてみたら天と地だった。灰田が持ってきた電探は探知距離3万メートルも誇り、精密なミリ波レーダーで対空能力だけでなく、水上電探としても運用出来る優れものだった。
そして基地航空隊を覆う濃霧が晴れて、改修の終わった艦載機が姿を現した。
灰田の言っていたレーダーは、機体の上部と下部に取り付けられている。
先ずは厚木基地に待機していた者たちが、先ず零戦を調べたが、確かにエンジンは換装されており、機体各部も強化されていた。そのことにより、零戦の持つ運動性能がスポイルされていることを彼らはおそれた。
試しに中も確認すると、コックピットは一新され、計器盤の代わりに例のテレビモニターが備え付けられていた。
本当に現代戦闘機のデジタル電子システムになっている、と関心している最中に、灰田が姿を現した。
なんと、全ての基地航空隊が設けられている場所に同時に現れたのである。
まるで忍術――影分身の術みたいだが、言うまでもなく彼らは灰田のクローンであり、同じ意識と肉体を共有していた。
「ちょっと待ってください。操縦システムは大幅に改造されていますから、先ずはシミュレーション・システムで学習してから乗った方が無難でしょう。
各地にシミュレーション・システムは出現させるように手配してあります。
これは10分で最高レベルの操縦技術を身に着けられるようになっていますので、全搭乗妖精たちが取得するまでさして時間は掛からないでしょう」
灰田の言葉に応じて、灰色の円錐形のボックス、妖精たちが入れるほどのサイズが出現した。
「先ずテストパイロットに、一人ここに這入ってもらってください」
赤城たちは最高の腕を持つ搭乗妖精を選んだ。
灰田がその『箱』に手を触れると、妖精たちが潜り込めるほどのアイリス式の入口が開いた。
搭乗妖精がそこに潜り込むと、自動的に椅子に座っている自分を発見。
まるで椅子の方から、自分をすっぽり絡め取ったかのようである。そして壁の上から無数の端子が伸びてきて、搭乗妖精の頭に吸い付いた。直後、前方の壁が空に変わった。
あのテレビモニターも現れ、点滅し始めた。
それから起こったことはあまりにもスピードが速く、しかも複雑だったが、搭乗妖精の意識は抵抗なくそれを吸収した。
たちまち10分が経ち、自動的にドアが開き、搭乗妖精が出てきた。その顔はまるで別人のように輝いていた。
「あなた、大丈夫なの?」
赤城が心配して声を掛ける。
「大丈夫です。この新型零戦のことはすっかり頭に入りました。ひとつ模擬戦をやってみましょう」
念の為に改造していない零戦も残しておいたので、これと模擬戦をやってみると、結果は全く勝負にならなかった。
なにしろ速力差が50キロもあり、その上に運動性能は旧型と全く同じどころか、寧ろ向上しているのだから勝負になる筈がない。
この結果を見て、赤城たちはもちろん、海軍関係者たちは大いに満足した。
「いま各鎮守府などでは、このシミュレーション・システムによる急速学習が行われている筈です。
艦攻や艦爆の改修を含めますと、2日もあれば完了する筈です。それにより戦闘能力も大幅に向上するでしょう。」
灰田は言った。
彼の言葉によると、艦攻や艦爆のエンジンもパワーアップして、速力はプラス50キロに向上させるとのことであり、特に重い爆弾や魚雷を抱えているので低速になるのは避けられず、いきおい撃墜率は高い。
しかし、速力が増せばその分カバー出来る故に、しかもこれらの機種もレーダーを付けており、一新されたコックピットを持っているし、また、各操縦系のレスポンスも電子化により上がっているので、戦闘能力は大幅に向上していた。
これもまた搭乗妖精たちはシミュレーション・システムを使って、急速訓練を行い、赤城たちとともに海上を出て、慣熟訓練を行った。
「それでは次は古鷹さんたちですね」
灰田は、提督と古鷹たちにも説明を行った。
「……今回のこの機会でNGFの幕開けとなるでしょう」
灰田の協力をもとに日本が戦力を整っている最中、オリンピア・深海棲艦連合軍は、次の作戦に取り掛かっていた。
先島諸島は日本軍が入っているが、これらは小さな島なので、当分は放って置いてもよく、後で幾らでも奪えるからだ。
「これらをすっ飛ばして、いきなり沖縄に侵攻する。もともとここは日本ではなく、偉大なる中国民主主義人民共和国様の文化圏である。ここから日本本土侵攻の足掛かりとする」
忠誠心が露わに、自ら愛国精神を叩き込まれてきた陳主席には、些か誇大妄想気味のところがあり、オリンピア幹部の頃から本気で日本本土占領を夢見ていた。
「先ずは九州。それでも日本が屈伏しない時は四国・中国地方と波状的に攻め上がっていくのだ!」
これはかつて大東亜戦争時で連合国軍が行おうとした、幻の日本本土上陸作戦――オリンピック作戦にも似ており、謂わばオリンピア版である。連合軍の場合は九州占領後は、米軍は関東地方、ソ連軍は新潟から挟み撃ちにする形で上陸しようと考えていた。
オリンピア海軍司令部は、南海艦隊及び東海艦隊所属の艦船や深海棲艦を総動員した。
オリンピア海軍は、LCACを4隻積める071型揚陸艦を保有している。これは排水量18500トンもあり、海自が持つおおすみ型輸送艦よりも大きく、搭載兵員は500〜800名とも言われている。
この他にも玉亭型揚陸艦などを多数持っており、先の台湾上陸作戦では先陣を切った。
これらに水陸両用部隊を乗せて、両基地を出ており、そして多数の輸送機部隊が空挺師団と特殊作戦部隊を乗せて飛び立つ準備をした。
他にも輸送船を多数動員したので、その総兵力は4個師団に及ぶ。特に空挺師団と特殊作戦群は、厳しい訓練を受けているので、一旦上陸させると厄介なことになる。
この攻撃部隊の中核となるのが、空母戦闘群であることは言うまでもなく、これは寧波から出て東シナ海に入り、上陸作戦を支援する。
司令官は、開上将である。
上陸部隊総司令官は陸軍の岳上将。
自前の偵察衛星で、このことを察知した統幕監部は『いよいよ日本空母戦闘群の実力が試される時が来た』と考えた。
その司令官には異例のことだが、護衛艦隊司令官・小松原海将が就任した。
昔で言えば、南雲や小沢の役どころにいきなり山本が座るようなものである。
提督や古鷹たちを含めて各鎮守府・泊地から護衛艦隊群が出ると、いったん四国沖合に集合。後に薩南諸島に沿って南下した。
横須賀を出た空母戦闘群は、薩南諸島から大分離れた太平洋の中部に出た。
なお横須賀を出港する前に、灰田が現れてにこやかにこう言った。
「敵潜やEMP爆弾、ドローンのことは心配なさるには及びません。然るべき措置を講じておきましたから」
それがどんなものなのかは分からないが、おそらく未来がハイテクを駆使したものだろう。
彼らは知らなかったが、灰田はすでに晋級の水爆ミサイルを消しているのだ。
その頃は、すでに自衛隊幹部たちも灰田に満幅の信頼を寄せていたので、素直にその言葉を受け取った。
オリンピア・深海棲艦連合艦隊を含むオリンピア空母戦闘群は東シナ海のど真ん中にあり、沖縄を目指して進む上陸部隊を支援していた。
この時すでに沖縄には陸自の4個師団が入り、航空群も充実していた。これらは第1、第3、第4、第10師団である。
県民たちは可能な限り軍用輸送機と民間機を併用して県外脱出を計らせたが、それでもまだ三分の一が残っていたものの、首相命令で必死の努力が続けられた。
だが、大陸から飛来したオリンピア・深海棲艦の爆撃機やミサイル攻撃が始まったので、救出作戦も途絶した。
数万人の県民が取り残されることになり、本島北部の国頭に向かった。ここは沖縄の山間部で、大東亜戦争の際も避難地として使われたところでもあり、米軍が占領中は、訓練地として使われた。
陸自は中距離・短距離対空誘導弾やパトリオット・ミサイル、高射機関砲などで敵機や敵ミサイルに対抗した。
さらに装輪自走車輌・榴弾砲を始めとするT-600《タイタン》や10式戦車などを中心とする各戦闘車輌まで持ち込んでいた。
これらはおおすみ型輸送艦を始めとする揚陸艦から運ばれてきたものである。
これで見るように、沖縄戦の再来である。
「ここは平坦なビーチが続き上陸しやすく、なかんずく島を寸断出来る絶好の位置にあるからである」
誰でも考えることは同じで、岳総司令官もここを上陸地点だと考えていた。
陸自もそう考え、この一帯を最重要防衛地域とした。
ここにあらゆる火器を集められた。ここは嘉手納飛行場及び、空自の西部方面航空隊の全兵力が進出していた。
オリンピア・深海棲艦の爆撃機がやってくると、F-64中心の中部方面航空隊を含めて、F-15やF-35戦闘機が飛び上がり、苦も無く追い散らした。
この段階では、オリンピア・深海棲艦もまだ様子見というところであるが、その中に警戒すべき機体――Tu-22M《バックファイア》が10機ほど混じっていた。これは爆弾搭載量24トン、他にも各種の強力なミサイルを積んでいる。
しかし、不思議なことにミサイルを使うことをせず、爆弾を適当に落としただけで引き揚げたのである。
威力のあるミサイルは、いざ沖縄上陸作戦の時に使うつもりなのだろう、と睨んだのだった。
今回はやたら伏線を残しながらの回に伴い、次回から本格的に戦いが始まるという回を匂わせる回でもありました。
次回は双方の艦隊決戦になりますのでお楽しみを。
其れから皆様にお知らせです。活動報告にも書いてありますが、新作を投稿しました。タイトルは『蒼海の龍神艦隊』です。
二足のわらじとなりますが、本作品ともども宜しくお願い致します。
それでは、第85話まで…… До свидания(響ふうに)