第六戦隊と!   作:SEALs

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С Новым годом(あけましておめでとうございます)、同志諸君! 今年も本作を宜しくお願いいたします。

新年の挨拶はここまでにして、お待たせして申し訳ありません。
予告どおり、双方の艦隊決戦になります。

いつも通り楽しめて頂ければ幸いです!
それでは、どうぞ!


第85話︰日オ艦隊決戦

お互いに早期警戒管制機を飛ばし合い、衛星データを分析。敵情敵を探り合ったさまはいよいよ戦機が熟してきた証だった。

この作業は、統幕本部の地下室に設けられたオペレーション・ルームで行われた。

ここに統幕長を含めて幹部、そして各鎮守付や泊地の提督たちが詰め掛けて、総合指揮を執っている。

 

総司令官である黒木首相・元帥との間に直通電話も繋がれている。

土橋統幕長は『オリンピア・深海合同輸送船団が東シナ海の中間に達したときに、空母戦闘群に攻撃を仕掛ける』ように命じた。

この命令のなかで最重要なことは、敵空母を沈めることはもちろんだが、強襲揚陸艦や輸送船を沈めることである。

これは上陸及び強襲作戦を阻むという古来からの鉄則であって、双方を沈めてしまえば、敵の作戦そのものが成立しなくなる。

大東亜戦争でも、そのような局面がしばしばあった。

 

X-day 早朝。

沖ノ鳥島付近を遊弋していた日本空母戦闘群は、F-35《ライトニングⅡ》150機を放った。

これは米海軍の空母戦闘群ではあり得ない兵力であり、米空母は1隻に搭載している戦闘攻撃機は50機に過ぎない。

しかし1機分だけで、大東亜戦争時の重爆分の兵器を搭載していると言われている。

ほとんど同時に、オリンピア空母戦闘群もJ-31を80機放った。

両軍は沖縄を飛び越えて、敵空母戦闘群に殺到した。

なにしろ、マッハ2に近いスピードであり、たちまち相手がレーダーに映った。直後、猛烈な空中戦となった。

なにしろ日本機は多数であり、80機を相手に残して、残りはオリンピア空母戦闘群に突進した。

同じ数同士、80機同士の空中戦が始まった。

現代では珍しい精鋭機同士の格闘戦であり、J-31は何しろ運動性の高さ、性能もF-35《ライトニングⅡ》のコピー品としてその血筋は侮れない。

 

「美国製品のお下がりを操る原子猿人どもに負けるはずがない!」

 

しかしこのF-35部隊のパイロットたちは、普通のパイロットではなかった。

未来からやってきた複製パイロットたちであり、従来の人間以上の能力を仕込まれており、しかもF-35は対艦攻撃・対地攻撃に加えて、空戦も全て熟せる統合戦闘機である。

オリンピア軍パイロットは、まさかこのような相手を敵にしているとは思わなかった。

 

「叩き落としてやるわ!」

 

自信満々で襲い掛かるオリンピア軍。数秒の後、エンジンを轟かせて蒼空が広がる両軍の戦闘機は激突した。

先陣を切ったのはオリンピア軍部隊。翼下のSD-10中距離空対空ミサイルを撃ち放ったが……

 

「こ、こんな馬鹿な……何なのよ、この戦闘機は!」

 

眼を見開いて口走った瞬間、あり得ない運動性で外された。

コブラ機動に似てコブラ機動ではない躱され方で空対空ミサイルを躱し、まるで死神の意思が乗り移ったかのように、F-35は翼を翻して、報復するように背後につくと、AIM-120 AMRAAM中距離空対空ミサイルを食らった。直後、敵機の機体が微塵に砕けた。飛び込んできたミサイルがオリンピア軍隊長機を粉砕し、ついで操縦席に、紅蓮の炎を噴き上げる。

隊長機が爆散していく様を目の当たりにした副隊長は、唇を噛んで絶叫した。

 

「全機、隊長の仇を取れ!」

 

命令しながらも、副隊長の頭脳は必死に回転した。

――な、何故だ。何故、猿真似しか出来ない日本人どもが短期間で、これほどばかりの腕前を持つわけがない!と独語した副隊長は恐怖に陥った。

その言葉が声帯から出し切らないうちに、F-35の翼下に搭載した25mm機関砲ガンポッドが、真っ赤な炎を噴き上げた。

鋭い針に似た25mm機関砲弾の火線が、ミシンで縫ったようにJ-31の機体を貫いていく。金属片が宙を舞い、ついで副隊長の肉体が紅い霧を撒いて飛び散った。

猛禽類に似た中国製の艦載機はくるりと反転して、真っ逆さまに落ちていく。

不運に見舞われた機体は、副隊長機だけではなかった。唸りを上げて逆落としを掛けたF-35の編隊は銀色の疾風となり、ミサイルの嵐を加えてJ-31の群れを叩き割った。

次々に紅蓮の花が咲き、J-31が墜落する。この戦い振りは土器の瓶を戦鎚で叩き割るような、力感に満ちたものだった。

高速で一撃を加え、そのまま駆け抜ける。通り魔の所業にも似た、重戦の戦法にほかならない。

 

激しい空中戦が行われている間に、70機のF-35部隊は、オリンピア空母戦闘群に襲い掛かる。

《天津》《光洋》の2隻の空母を護衛する各駆逐艦やフリゲートは、過剰と言えるほどの対空兵器を兼ね備えている。

各々の艦対空兵器だけでも数十種類もあり、長距離ミサイルがだめならば、短距離ミサイルもある。なおかつ、それでもだめならばCIWSを持っている。

理論的にはこれらの対空兵器を駆使すれば、日本機を撃墜出来るはずだった。

 

しかし、そうはならなかった。

敵機は信じ難いほどの運動性能を、機体と伴い、パイロットにも耐えられないはずだと考えられる動きを披露して、全てのミサイルを回避した。

いまや、天敵のいない空を舞う凶鳥と化して、空母や輸送船団に攻撃を仕掛けた。

死を報せる夜鳴き鴬さながらに機体を翻した攻撃機が、反撃の術を失った空母や輸送船団に死の宣告を与えるかのように、操縦席に装着された爆撃照準機に、空母《天津》の艦体を捕らえた刹那。

 

「爆弾投下」

 

号令とともに、複製パイロットは爆弾投下索を引いた。

安全装置が外れ、抱えてきたMk.82航空爆弾を放り出した。

装甲を施した軍艦の甲板すら打ち破れる爆弾。しかし、装甲など持たない飛行甲板を持つ空母が、跳ね返せるはずもない。

重い500ポンド爆弾は、甲板をひとたまりもなく打ち破り、貧弱な隔壁を捻じ曲げつつ船倉まで突き入って、信管を作動させた。

瞬間、空気が光と化した。《天津》の飛行甲板が大きく拡張し、外郭が残らず弾け飛ぶ。

最強を誇るはずの空母《天津》は中破。《光洋》は爆弾を4発喰らい、その瞬間に大破してしまった。

《天津》に座乗する開上将は、呆然とする暇もなかった。

飛行甲板があちこちに大穴があけられ、火災が噴き上がり破壊され、艦載機の発着艦が出来なくなった。

 

これを見ると、日本攻撃隊は後方の輸送船団に向かった。

すると、蒼空を圧して接近する戦闘機の群れ――大陸から支援についてきたJ-11やJ-10《ファイアバード》が駆け付け、まず交戦に入った。

ここでもF-35部隊は信じ難いほどの能力を発揮した。

オリンピア機も多彩な空対空兵器を兼ね備えていたが、それらが全く通じないのである。

ともかく敵機は、従来のF-35ではないような動きを披露し、まるで両機の御株を奪われたようだ。

 

信じられないような異様な仰角でも機能を喪失しないのであり、したがって空対空ミサイルは、あと一歩のところで外され、あとは固定装備である機関砲に頼る他はなかった。

敵機もそれに対応し、現代戦では珍しい格闘戦が続いた。

しかし、双方ともマッハ2に近いスピードがあるから、一連射を加えたと同時にすれ違ってしまう。

航空戦は一刻も争う。巧遅より拙速こそ航空戦の本質だとも言われているが、ここでもF-35の運動性能がものを言い、次々とJ-11とJ-10が落とされていった。

直衞機の全てを撃墜されてしまったのを目撃した上陸部隊総司令官・岳上将はパニックに陥った。

 

「こんな事があって良いものなのか、我が軍の誇る戦闘機部隊が、全て撃墜されるとは!?」

 

しかし、その信じ難いことが起こったのである。

岳上将は、指揮艦である強襲揚陸艦《海南》に座乗している。

強襲揚陸艦をはじめ輸送船団には、フリゲート部隊が寄り添って護衛していたが、彼らが発射する艦対空ミサイルでは、全く敵機に歯が立たなかった。

かくして強襲揚陸艦や輸送船団には、大災厄が襲い掛かってきた。

日本機が、対艦ミサイルを浴びせていたのである。

しかも大量の敵機が、一斉に対艦ミサイルを浴びせていたのだから堪らない。

各々の艦が備え付けられている短SAM及び、CIWSも対艦ミサイルの嵐の前では役に立たなかった。

3発の対艦ミサイルが《海南》に直撃。甲板など紙のように引き裂いて格納庫に達し、次々と爆発した。

その瞬間に大破し、鉄と火の嵐に揉みしだかれ、生命の残り火すら消え失せようとしている老いた女王に殉じる忠実な騎士を思わせた。

艦内は悲惨で重油と金属の破片、そして人体の欠片が散らばる鮮血の海、猛火に包まれる鋼鉄の車輌や機体、自らを火炎の衣装で包まれていく光景は、これからオリンピアと日本が過ごさねばならない苦難の日々を嘆き哀しむかのようだった。

 

他の強襲揚陸艦や揚陸艦に続いて、非武装に近い輸送船団はもっと悲惨だった。

ミサイルの直撃後、膨れ上がる爆炎のただなかに、艦を形作る骨格が浮かび上がったかに見えたのも束の間、耳を聾する轟音と、眼を眩ませる白熱光とともに、1万トン級の輸送船は、大爆発を起こして粉々に飛び散った。

叩きつけるような衝撃波に、海面すら抉られて沈み込み、ただの一撃で大爆発を起こした数個師団を載せたオリンピア輸送船団、特に爆薬運搬船はあまりにも凄惨な最期を語るであろう名残を示す、濛々たる黒煙を上げていた。

 

『先ず輸送船団を沈める』という元帥や統幕幹部、提督たちの戦略は功を奏したのだった。

 

しかも敵空母戦闘群1隻中破及び、1隻大破。

味方空母戦闘群4隻は無事という報告が来ると、この刻々と伝えられる戦況を見て、オペレーション・ルームの幕僚長たちなどが歓声を上げたのも無理はない。

 

しかし戦闘は、それで終わったわけではなかった。

 

まだ第二幕、第三幕が待っていたのである。

 

 

 

 

 

 

葉巻型を基調とした鋼鉄の巨鯨が、火災を上げて停止しつつある空母《天津》から、2万メートルの距離まで忍び寄っていた。

海自の潜水艦《じんりゅう》がオリンピア軍のミサイル駆逐艦やフリゲートが、日本機との戦闘のために対潜警戒が緩くなったため、このような近くまで忍び寄ることが出来たのである。

《じんりゅう》は、そうりゅう型潜水艦の7番艦である。

そうりゅう型潜水艦は、海自潜水艦の最新鋭艦である。排水量は2900トン。水中排水量は4500トンもある。速力13ノット。水中速力は20ノットである。

潜水艦にとって夢のエンジンと言われている、スターリング推進機関を搭載している。これを積んだ潜水艦はAIP搭載型と呼ばれており、もはや蓄電池を充電する必要がないので、シュノーケルの必要がない。

 

《じんりゅう》は対艦ミサイル《ハープーン》を積んでいるが、この距離ならば魚雷で充分だ。

《じんりゅう》が、ここまで近づけたのは、オリンピア海軍の驕りが物語っていた。

ミサイル駆逐艦やフリゲートが全速で走り回っているため、ソナーは効かない。時折スピードを落として、ソナーを働かせなければ使い物にならないからだ。

それとも曳航ソナーを活用するかである。《じんりゅう》の島地艦長は『魚雷戦用意』を下令すると、潜望鏡をちらりと大胆な行為を出した。

敵艦がレーダーを一周させるまでの間に、必要なことを見て取らなければならない。

その点、島地一佐は極めて優秀な艦長だった。

潜望鏡には分角が刻まれており、敵艦のおおよその大きさは分かっているので、この分角度を測定。敵艦の方位や速力を測る。

この目標の場合、ほとんど停止しているので、それらのデータをはじき出すのは容易かった。

 

「魚雷6本を使う」

 

島地艦長は、水雷長にデータを伝達した。

 

「準備が出来次第、知らせ」

 

艦首の魚雷発射管に魚雷装填を確認、直後。

 

「発射!」

 

水雷員が発射ボタンを押し、533mm魚雷が次々に飛び出した。

僅かに開角されているのは、まんべんなく敵艦に命中させるためである。

 

「……命中時間です」

 

水雷長がストップウォッチを手に握り締め、命中時間を測っていた。雷速は約45ノット。次の瞬間、遠くからズウーンと重たい轟音が5回ほど続いて鳴り響いた。

1本は失中したらしいが、5本は命中したのだ。

魚雷は艦底を通過するときに爆発するのが、最も威力があると言われるのは、爆発力が全て上に向かうからだ。

磁気探知魚雷なのだが、1本はそのまま行ってしまったらしい。

島地は、もはや潜望鏡を出そうとはしなかった。

命中を確かめようとして、潜望鏡を出すのが一番危険だからだ。

これは昔からの潜水艦乗りの鉄則であり、護衛艦が血眼になって、見張っているからだった。

 

「高速スクリュー音が近づきます!」

 

聴音員から連絡が来ると、島地は命じた。

 

「潜るぞ。深さ200」

 

200メートルは一応《じんりゅう》の限界深度ではあるが、マージンがとってあるので、潜ろうと思えばまだ潜れるのだが、それはいざという時のために取っておきたい。

オリンピア護衛艦も馬鹿ではない。《天津》が大爆発を起こしたと同時に、日本潜水艦の存在を察知したのだ。

艦制御コンソールではコンピュータがバラストタンクへの注水を行い、潜舵手が舵輪には制御してダウンに持っていく。

このときセイルにある潜舵は、最下降角となっている。

 

「敵艦、対潜魚雷及び、対潜ロケット弾投射しました」

 

「デコイを撒け、このまま深さ250、針路360」

 

聴音員から再び報告が来るが、島地は冷静に命じた。

《じんりゅう》は極めて静粛性が高いため、したがって敵の聴音に感知されにくい。

敵護衛艦の対潜魚雷を撹乱するためにデコイをばら撒いた《じんりゅう》は変針して、目標の方に向かった。

目標の下を潜り抜けるのは、老練な艦長のよくやる手段であり、島地は今、それをやろうとしているのだ。

 

「くそ、日本子鬼めっ、やりやがったな!」

 

止めを刺された《天津》に座乗していた開上将は、猛烈な衝撃を、雷撃を5回も連続し受けたのを感じて、北京語で罵った。

 

「護衛艦どもは、いったい何をしているのだ!」

 

憎悪を込めるも、その護衛艦部隊は必死で対潜攻撃を繰り返しているが、敵潜が退却したのであとの祭りだった。

しかし《天津》の命運はすでに尽きていた。魚雷を5本も喰らって浮かんでいられる空母は、この世には存在しない。

すでに大きく右傾斜し、各部から浸水報告が相次ぎ、もはや排水も間に合わない有り様だったのである。

 

「司令官。あと5分ほどで我が艦は沈みます。退艦をお願いします」

 

艦長が悲壮になって言う。

 

「……うむ。残念ながらこの作戦は失敗だったな。生き残っている揚陸艦や輸送船団には基地に引き返すように伝えてくれ」

 

そう言うと、開上将は腰の拳銃ケースから92式自動拳銃を取り出し、こめかみに当てて引き金を引いた。

どうせ帰国しても中南海のお歴々の前で吊るし上げられ、作戦失敗の責任を問われるだけでなく、上将の位も剥奪されるだろう。

それぐらいならば、自決した方がマシだと考えたのだ。

 




勝負は無事に日本が勝つことになりました。
腕のいいパイロットたちでも、やはり灰田さんがもたらした複製パイロットたちの前ではとても歯が立たなかった模様。
因みに最終回で打ち切りという形で惜しくも終わりになりましたが、超太平洋戦争でも複製パイロットたちの活躍が描かれています。こちらは烈風に搭乗して空戦はもちろん、特別攻撃も行っており、米軍を翻弄しています。こちらは恐怖を感じてないようですので、こちらも必要あればそうなるのではないかと思います。

なお今回叩いた光洋ですが、こちらは田中光二先生作品の一つ、超空の連合艦隊(超空の大和)に登場していた架空の空母です。空母は空母ですが、実質的には軽空母ですね、こちらは大破した後に出番無しのまま退場という形だったかな、と思います。

長話はさて置き、次回は敵空挺部隊の降下を阻止する回なのでお楽しみを。

それでは、第86話まで…… До свидания(響ふうに)
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