第六戦隊と!   作:SEALs

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お待たせ致しました。
予告どおり、今回もオリンピアに対する報復作戦を開始します。今度は海戦に伴い、空爆作戦を開始します。
果たして今度は何処を叩くのかはお楽しみに。

いつも通り楽しめて頂ければ幸いです!
それでは、どうぞ!


第90話:朝鮮半島・中国懲罰作戦 後編

 

「艦を風に立てろ。面舵一杯」

 

提督の号令一下、各空母戦闘群は大きく面舵を切って回頭した。

艦首が波を蹴り飛ばし、白銀の飛沫が上がる。潮の飛沫が束の間の虹を描く中、飛行甲板前部中央から流れ出る蒸気の白い帯が、飛行甲板を斜めに流れ出す。

艦が回頭するにつれ、提督たちの足下が、回り舞台のように回っていく。陽光が射し染める大海現に、飛行甲板を彩る蒸気の帯が流れを変えて、やがて中心線を示すカタパルトに、完全に重なった。刹那、

 

「発艦開始!」

 

複製飛行長の号令一下、複製搭乗員が操縦するF-35Cが、F135エンジンを唸らせて、猛然と滑走を開始した。

複製乗組員たちが帽子を振り回し、艦橋から見守る司令部スタッフが帽子をゆっくりと回して見送るただ中を、人らしく笑顔とともに敬礼した複製乗組員は、鮮やかに宙へと飛び立った。

続いて、帰還して補給を素早く終えたF/A-18E部隊が、再び爆音を残して飛び立っていくのだった。

 

 

 

 

その一方――北海艦隊司令部及び、空母戦闘群壊滅の報せを聞いてオリンピア海軍は、南海艦隊に残っているただ1隻の山東級空母1番艦《山東》率いる空母戦闘群を出す決心をした。

 

提督たちは寧ろこれを待っていたのである。

オリンピア空母戦闘群は台湾海峡を越えて北上して来た。

この狭い海峡だから身動きが自由にならず、しかも浅い海峡なので、潜水艦の活動も自由ではない。

全てがオリンピア・深海棲艦側にとって、不都合なことだらけであるが、それでも敵討ちをしなければならない。日本軍や艦娘どもに負けてなるものか、と護衛艦部隊を率いて航行していたときだ。

 

そんな右往左往していたオリンピア空母戦闘群を見つけた第二次ゴジラ部隊と戦爆連合部隊は、獲物に飛びかかる鷹のように突っ込んだ。

行く手に立ち塞がる駆逐艦やフリゲートから、速射砲の閃光とは異なる火光が閃いた。大口径機銃や対空ミサイルが束になって撃ち出されていくが、各攻撃隊は必死に操縦桿を握りつつ、フレアを放出。各部隊は敵艦の対空砲火を巧みに躱していく。

標的は選り取り見取り。空母や深海棲艦でなくたって、駆逐艦やフリゲートにも敵兵は乗っている。そいつ等を道連れに出来るなら、死出の旅路としては上等。人として道は外れているが、死を決意した軍人としては、このうえなく道理に適った考えが、各搭乗員たちの脳裏を占めていく。

マスターアームスイッチ、オン。各機は兵装――主翼下に積んできたAGM-84《ハープーン》と、前者よりも強力かつ後継の長距離空対艦ミサイルのAGM-158C LRASMを選択。これらを搭載した各部隊は躊躇せず、空対艦ミサイルの発射ボタンを押した。

どっと加速した空対艦ミサイルの群れは、あっという間に音の壁を突き破る。音速を突破した鋼鉄の矢は、意志を持つかのように、狙い定めた目標に向かっていく。

 

死に物狂いで回頭し、対空砲火を撃ち上げる空母《山東》の飛行甲板に、破砕音が轟いた。飛行甲板を撃ち抜いたAGM-158C LRASMは、格納庫まで貫通し、そこで信管を作動させた。

紅蓮の華が、爆発音とともに、華麗な花弁を開かせた。爆風が艦内を走り抜け、放つべく整備中のJ-21などを、床から引き剥がして吹き飛ばす。

島型艦橋に空対艦ミサイルを撃ち込まれ、艦長以下全員を薙ぎ倒され、猛火のなかにのたうっていた。

他の駆逐艦や深海棲艦も、悲惨な状況はほぼ同様だ。

ゴジラ部隊や空母艦載機群が放った空対艦ミサイルの大群が、続けざまに突き刺さる。

各駆逐艦群の艦上構造物に、無数の爆焔が噴き上がる。ほとんど瞬時に、バルジを貫通し、主砲やCIWSなどの多くの兵装が砕け散り、戦力を大きく削っていく。

ほんの数分。それだけでオリンピア・深海棲艦連合艦隊の攻撃力を、ほとんど喪失させられた。

攻撃力が大きく滅殺された、チャンスだ。そう見て取った古鷹たち率いるNGF部隊は、一斉攻撃を下令した。

 

「全艦突撃!敵艦を葬れ!」

 

提督からこのうえない、簡潔な命令だ。

目標とされた敵艦は、機関が破壊されたわけではなく、兵装も健在だ。艦船としての機能は何ら失われたわけでなく、最大戦速を振り絞って回避を試みる。

が、阻止すべき火器は、哀しいほどか細いものになっていた。

しかも空と海の同時攻撃。三次元運動を行う航空機と、二次元運動を行う古鷹たちの連携攻撃を、今のオリンピア・深海棲艦連合艦隊が破るのは容易いことではない。

この有り様だから、ゴジラ部隊と空母艦載機群の空対艦ミサイル攻撃で各兵装を吹き飛ばされたオリンピア・深海棲艦両艦隊の状況は、絶望的なものだった。

わずかに残った速射砲を、死に物狂いで撃ちまくる。

とはいえ、火山の爆発を思わせた火箭の勢いはすでになく、悠々と攻撃態勢にかかった古鷹たちが、狙い澄ました徹甲弾を撃ち放った。

オリンピア艦長や深海棲艦は、操艦術を駆使して回避を続けた。無数の徹甲弾が躱されて、各自を水柱が包み込む。その操艦は見事なものだったが、撃墜や轟沈の危険を大幅に軽滅された双方の前には、それも時間の問題だった。

 

《山東》の護衛を務める指揮艦・南昌級駆逐艦《嘉興》の右舷艦首に、青葉・衣笠が放った酸素魚雷が突き刺さった。

全速航進していた駆逐艦の、13000トンの排水量が生み出す圧力が、破口から大量の海水を呑み込ませた。

一気に行き足が落ち、傾いた《嘉興》めがけ、またしても空対艦ミサイルが見舞われる。さらに動きの鈍った《嘉興》に、右舷から姿を現した加古が、続けざまに魚雷を投射した。

その同型艦《保定》は、先に徹甲弾を命中させられた。先のゴジラ部隊や空母艦載機群から、空対艦ミサイルを艦橋に受けている。艦の幹部たちを殺傷され、回避がままならぬ状態に遭ったことが、最新鋭駆逐艦の命運を決した。

人間でいえば頭脳や呼吸器系を破壊され、濛々と黒煙を吐きつつ速度を落とした《泉州》めがけ、こちらは左舷に集中して、徹甲弾が慕い寄る。

南昌型駆逐艦にも劣らない戦力を持つ深海棲艦、戦艦ル級、16インチ主砲を持つ戦艦タ級にも、同様の災厄が襲いかかる。

緒戦で空対艦ミサイルの攻撃を受けず、無事な重巡リ級、軽巡ホ級などは必死で駆け回り、抵抗をし続けるが、攻撃を押し止めるまでには至らない。

左舷を集中攻撃された《泉州》が、浸水に耐えられなくなって転覆した。

最新鋭駆逐艦に似合わない、呆気ない最期だった。

さらに30分後。無数の空対艦ミサイルを撃ち込まれ、炎上しながら微速でよろめき進んでいた戦艦ル級が、弾薬庫に火が入ったものか、大爆発を起こして沈没。戦艦タ級も猛火に包まれたまま、力尽きたように沈んでいく。

文字通り疾風怒濤の攻撃で、敵艦は混乱。他の深海棲艦たちも、災厄を免れずにいる。ある者は艦首を沈み込ませたまま低速で前進したもの、ある者は舵を破壊されて、大きく円を描くのみ。辛うじて小破は数えきれるのみといった状況だった。

旗艦である《山東》も、猛火のなかで喘いでいる。

残る戦力は深海棲艦の重巡洋艦1隻、軽巡洋艦1隻と、駆逐艦3隻のみとあって、作戦遂行は、もはや望みえない。

ユーリ上将は、江凱型フリゲート《咸寧》に移乗した。

 

作戦中止を決断すべきか。

 

逡巡の挙げ句、ユーリは決断した。

 

「やむを得ないわ。この戦力では、日本海軍の迎撃は不可能だわ。撤退しましょう」

 

「しかし、閣下。マザーからの訓令は……」

 

言いかけたスミスの口を、ユーリは封じた。

 

「何も言わないで、ユーリ君。そもそも、貴重な空母戦闘群を動かしたのが間違いだ。責任を逃れるつもりはないが、日本は、東洋きっての大国――それを侮り、戦力を出し渋った当局の責任も、追求するつもりでいる」

 

苦渋の決断を下したユーリだが、しかしそれは遅きにすぎた。

 

「レーダーに反応! 北東、距離25!」

 

レーダー伝令が、息せき切って報告した。と、その叫びを吹き飛ばすように、轟音を上げて飛翔した巨弾が大気を灼熱させて、《咸寧》から100メートルほど離れた水面に、数本の水柱を突き立てた。

その瞬間、ユーリ以下、幕僚たちの顔が蒼ざめた。《咸寧》の射撃指揮所から、引きつった叫びが送られる。

 

『北東、約25マイルに敵影! 大和級戦艦率いる連合艦隊と認む!』

 

その瞬間、一気に艦橋内の空気が、零下に下がったかのようだった。

爆焔に遮られ、彼方はさだかには窺えない。しかし、高々とそびえ立つフリゲートの射撃指揮所からは、艦娘特有の艤装が、煙を透かして認められた。

攻撃隊の収容を終え、自ら止めを刺すべく進撃してきた、日本連合艦隊の雄姿であった。

 

 

 

「砲戦続行! 弾種徹甲弾!」

 

旗艦を務める大和が叫ぶ。

重量3000トンを超える主砲塔が、離脱を図ろうとするオリンピア空母に向けて旋回し、視界に取られた彼女と、艤装では副長と砲術長妖精たちが、逸る心を落ち着けつつ、照準器を覗かせていた。

艦首近くの弾薬庫から、垂直に立てられた砲弾が、水圧筒で送られる。円形の運弾盤に乗せられて回転し、一弾ずつ給弾室を経て、揚弾筒に入れられる。

巨大な水圧が歯車を動かし、縦向きに込められた主砲弾を、砲塔内へと運び上げる。最上部の換装筒に至った砲弾が、およそ90度倒されて、装填機へと移される。

46cm主砲の砲尾が開き、装填機が前進して、砲腔内へと進められた砲弾の後部に、装薬が装填される。尾栓が音を立てて閉じ、三基九門の主砲は重々しく旋回して、オリンピア空母戦闘群が離脱しようと疾走する、およそ25キロ彼方へと向けられた。

 

「距離25000、方位、右二。上げ、100」

 

方位盤に取り付いた艤装妖精が、修正値を射撃盤に送り込む。無数の歯車が回転し、戦場を離脱する空母の未来位置を弾き出して、各砲塔に伝えていく。

 

「敵空母の速力は、約22ノット強。砲撃の機会は、一度きりだ。頼むぞ、大和さん!」

 

砲術長妖精の言葉を聞いて、大和の心臓が、次第に早く打ち始める。

旗艦といえども、平静を欠いてはまず当たらない。彼女は意識して動機を抑え込み、自らの心に必中の意識を刻み込む。

この一撃に叶うものなし。と心のなかで呟くうちに、各砲塔で追随する仰角、旋回の貴針が、方位盤のそれと重なった。

 

「この一撃に叶うものなし!」

 

必中の信念を叫んだ瞬間、大和の艤装が吠えた。

主砲を鳴動させるように、発砲回路を流れた電流が装薬に点火。そこから生み出された膨大なエネルギーが、合計九弾の46cm徹甲弾を、轟音とともに叩き出す。

想像を絶した爆風が大気を叩き付け、砲口下の海面が、巨大な槌で一撃されたかのように大きく窪む。ごくわずかな時間差をつけ、発砲焔とともに撃ち放たれた砲弾は、毎秒60回転で大気を貫き、衝撃波を放ちつつ、白熱して飛翔する。

 

損傷しながらも走らせつつ、この場から逃れようとするユーリたちは、再び異様な轟音を、頭上に聞いた。

まるで巨大な特急列車が、頭上の鉄橋を通過するような、あるいは迷信深いものならば、年に一度、聖ワルプルギスの夜に、大宴会を開くために深夜の空中を踏み轟かせて飛行する、飛天魔軍の飛翔音と形容する轟音が、遥か頭上から雷霆となって降り注いだ。

自分たちを狙い澄ましたかのように、恐ろしく太く高い、天然色で着色された水柱が突き立った。そのただ中に、確かに少なくとも3本の火柱が立ち上がる光景を、ユーリたちはその瞳に映した。

一瞬、《山東》の巨体が、浮き上がったように見えた。それも束の間、損傷した飛行甲板に新たに三カ所を叩き割られたオリンピア空母は、真っ白い蒸気を噴き上げつつ、轟音をあげて横転。そのまま、一直線に海中へと引きずり込まれていった。

 

残されたユーリたちの命運も、すでに定まっていた。

強力無比な砲弾は空気を焼き裂いて飛翔し、吸い寄せられるように命中して、すべてを粉砕した。

一瞬、めくるめく閃光が膨れ上がり、《咸寧》の流麗な艦体を、異様な形に膨張させた。

ユーリ上将を初めとする誰もが、何が起こったのか分からなかった。網膜に、永遠の影を焼きつけるような閃光と、体を突き上げる大爆発の感触に、スミス艦長は大声で叫んでいた。

 

「総員退艦、艦を放棄せよっ!」

 

しかし、その命令は永遠に実行されることはなかった。

この世の終わりを彷彿させる大爆発のただなかで、粉微塵に砕け散ったのだ。

空中高く噴き上げられた破片が雨のように降り注ぎ、煮え滾る海面に、熱い飛沫を跳ね上げる。爆炎が拡散した後には、艦橋も主砲も跡形すらなく、ただ割れ裂けた艦の中央部から後の下半身が、辛うじて浮いているばかりだった。

他のオリンピア艦船も、深海棲艦も、最後まで獅子奮迅の奮闘を見せていたが、ついに力尽きて海底へと消えていった。

 

 

 

 

「射程に入ったわ!各員、適宣判断して射撃に移って!」

 

水上打撃部隊旗艦を務める扶桑から放たれた号令一下、東シナ海の蒼海に熾烈な砲火が閃いた。

折からの潮風が、一段と激しくなっているようだ。

荒波の北海を思い起こさせる、見渡す限りの強風を貫いて、オレンジ色の砲火が噴出する。

叩き出された徹甲弾が、大気を引き裂き飛んでいく。

そこかしこで、着弾の轟音が轟いた。そのただ中に、金属の叫喚が交錯し、命中弾が出たことを教えてくれる。

その証に一際高く、青白いほどに燃え上がった炎が、一気に四方に波及する。轟々と燃える東海基地に、紅い炎の糸が燃え走っていく光景は、さながら火山が噴火し、溶岩が大地を割っていくさまを思わせた。

 

《東シナ海に味方艦隊確認、これより共同作戦を開始する!》

 

頭上から重い爆音が駆け抜けていた。来た、共同作戦をしてくれるゴジラ部隊だ、と扶桑たちは気付く。

味方のF-22とF-15JE部隊が、彼女たちの真上を通過していった。そう、まさに天使。天使たちは扶桑たちを援護しに来たのだ。

海上に向けて据えられた沿岸砲や対艦ミサイル部隊は、為す術もなく、ゴジラ部隊の爆弾や対地ミサイルの豪雨に砕け散った。

槌と鉄床攻撃。航空機と艦娘による共同攻撃により、破壊と爆炎の饗宴のただなか、海上に遠雷に似た轟音が轟き、41cm砲弾が降り注ぐ。

弾着の衝撃に、大地震さながらに翻弄される東海基地からは、ようやく出撃したミサイル艇やPT小鬼群の群れが、眦を決して出撃する。フィリピンや東南アジアなどと言った南方方面のような小島の多い海域ならばともかく、東シナ海で使用するのは無謀にすぎた。

 

護衛を務める睦月・如月・弥生・卯月の第三十駆逐隊による単装砲と、扶桑姉妹の副砲が火を噴いた。

また彼女たちを護衛する護衛艦部隊はミサイルやCIWSで迎撃した。

接近さえすれば戦艦すら葬れる武器を持ちながら、勇気あるミサイル艇の乗組員やPT小鬼群たちは、蒼い海域を紅に染めて散華し、彼らが魂を込めて放ったミサイルは護衛艦部隊に撃墜され、魚雷は全て回避されてしまった。

ミサイル艇長は、罵声をあげたに違いない。次の瞬間、飛来した12.7cm砲弾が、勇敢なミサイル艇を、乗組員の血肉もろとも、粉々に粉砕したのだった。

 

シャノン中佐ら、海軍の幹部、そして深海棲艦の猛者たちは、降り注ぐ火弾のなかで必死に耐えた。

蘇州(スーチョウ)、抗州(ハンチョウ)、福州(フーチョウ)、汕頭(スワトウ)などの沿岸地域にある空軍の支援さえあれば、充分に報復できる。軍事力では世界一の実力を持つ、我々が持つ世界一のウーマンパワーを見せてやる。

その一念を支えに、空軍の支援攻撃を待つシャノン中佐らだったが、日本海軍は徹頭徹尾、沖合いから艦砲射撃。空からは戦闘爆撃機からの空爆をするばかりだった。

 

「卑怯者め!やはり日本人はレイシストモンキーだ!私たちと戦うのが、そんなに怖いのか!」

 

「み……味方の空軍はどうした!? 航空支援を早く!」

 

悲鳴にも似た叫びをあげた彼女らに、

 

「だ、駄目です!蘇州、抗州、福州、汕頭などの沿岸地域の空軍基地に、日本軍のF-35C及びF/A-18E戦闘爆撃機による空母艦載機群飛来!戦闘機隊は足止めされて、支援不可能との連絡です!」

 

通信兵が叫び返して、シャノン中佐らは唖然とした。

オリンピア軍や深海棲艦の狼狽ぶりを嘲笑うかのように、F-15JEの編隊は低空飛行に移った。

鋼鉄の荒鷲たちは、胴体下に抱え込んだ空対艦ミサイルを発射。それが艦艇に達するなり、凄まじい轟音とともに防壁を陥没し、次いで弾薬が誘爆して、エンジンが火の手をあげる。

海上では無敵の艨艟も、空からの攻撃には為す術がない。続けざまに炎を発した駆逐艦やフリゲート、深海棲艦群にさらなる災厄が降り注ぐ。

 

「砲撃続行、弾種三式弾!敵基地及び都市を焼き尽くしなさい!」

 

弾薬庫から下ろされた砲弾が41cm連装砲に装填される。轟然と撃ち放たれたとき、次弾が地上や停泊中の艦艇に到着した。

瞬間、めくるめく炎が炸裂した。双方に激突する寸前、弾けた41cm砲弾は眩い閃光を放って分散し、何百という火の玉が、いまだに消火作業及び、避難を終えずにいるオリンピア軍の頭上から襲いかかった。

 

数分のうち、再び扶桑たちが砲撃を開始した。

各員の連装砲は灼熱の驟雨となって、基地で逃げ惑うオリンピアの艨艟を、容赦なく焼き尽くす。

それは、徹甲弾ではない。炸薬を詰め込んだ通常弾でもなく、基地上空及び地表間近で弾けた砲弾は、炎の尾を曳く無数の小型焼夷弾に分裂――建築物や待機する艦艇の艦体を焼き尽くし、そして引き裂いた。

本来は対空用として開発された特殊な砲弾で、弾体には約900個の焼夷弾子が内蔵されている。

砲弾の弾底に弾子四散用の放出火薬が充填され、発射後一定時間を経て時限信管に点火。直後、焼夷弾子が発火すると同時に放出火薬が爆発する。1発あたり約900発の焼夷弾が炎の尾を曳いて、最大60度の角度をもって、2500から3000メートルの範囲に飛び散るという代物だ。

本来の使用法では、編隊を組んで飛来する敵編隊に向け、主砲から発射される。信管の調整さえ成功すれば、例えば大和や武蔵が撃ち放った場合、全門斉射で1万2600発の焼夷弾が炎の雨となって敵機を焼き尽くすほどの威力が見込める。

 

扶桑姉妹たちの艤装に搭載された三式弾は、一人あたり約120発にすぎない。しかし、灰田が齎した高性能電探による照準の元に撃ち込まれる三式弾は、爆撃より遥かに高い命中精度をもって、オリンピア軍や深海棲艦が擁する基地や市街地を砲撃する。

劫火と化して降り注ぐ焼夷弾の驟雨は、展開している艦艇はむろん、基地内の諸施設や市街地に蔓延る高層ビルなどを次々と粉砕、炎上させていく。

沿岸地域基地や泊地は轟々と炎上し、出撃準備作業にあたっていた兵士たちが、全身に炎を纏って悲鳴をあげながら転倒し、転げまわる。罵声をあげて対空兵器に取りつき、上空に向けて飛来して来る三式弾を落とさんと撃ちまくっていた兵士たちもいたが、その努力は虚しく焼夷弾子の直撃を浴びて、一瞬にして燃え上がった。

 

砲撃はなおも続く。

撃ち放たれた三式弾が、徹甲弾が、魔女の悲鳴にも似た風切り音をあげる漆黒の死神は、狙いを過たず、市街地に降り注ぎ、凄まじい破壊を繰り広げた。

近年の繁栄を具現化したかのような摩天楼などが、重圧な外壁を砕かれ、基底部をすくわれて、轟音とともに崩れ落ちる。

満遍なく振り撒かれる焼夷弾子が、粉砕された摩天楼や諸施設、密集地に飛び込み、オリンピア市民たちのただ中に突入して、眩い炎を噴き上げた。

粘度の高いパーム油が炎を伴って粘り着き、マグネシウムや可燃性ゴムが逃げ惑う人々を、地獄の業火に包み込む。一瞬にして燃え上がった、摂取数千度の火炎は市街地を嘗め尽くし、灼熱地獄に変えていく。

 

扶桑たちの遥かな視線に燃え盛る基地などが、大地まで紅く染めているようだ。崩れ落ちる基地の諸施設と市街地の破片に火の粉があがり、躍り上がる火炎そのものが、まるで戦争を続ける人間たちを嘲笑う悪魔の像を思わせる。

東海基地を、沿岸地域都市を、大都市を席巻する大火災は、周囲に撃ち放たれた三式弾が引き起こした猛烈な火災によって幾重にも増幅され、急激に上昇した気温が海上の大気を呼び込み、逃げ場を失ったオリンピア市民たちを、竜巻にも似た火炎嵐が焼き尽くすのだった。

 

 

オリンピアの名物ヒステリックアナウンサーやマスコミ連中は、当然これらの攻撃に怒り狂い、中国国内はむろん、国外にも日本に対する非難のメッセージを流した。

だが、それまでのオリンピアの無法な行為がよく分かっているので中東の僅かな国以外は、オリンピアを支持するものはいなかった。

中南海では、軍幹部たちが茫然自失の態だった。

これまでは、5隻の最強空母戦闘群を出撃させ、日オ境界線では日本を脅かし、返す刀で台湾を占領して、意気軒昂そのものだった。

日本軍に負けるなどとは、思いもよらなかった。

だが、奇妙にも日本軍に4隻の空母戦闘群が出現、それから様子がおかしくなった。

一方的に攻守逆転してて不利になったのである。

 

「不味い事態となったな。我が軍は空母戦闘群まで失ってしまったぞ……これで国家の総力をあげてつくってきた海軍力は半減だ。

海軍は、この責任をどう取るのだ!」

 

陳主席は喚いて、宋海軍司令官は小さくなった。

 

「ともかく、今は隠忍自重するしかありません」

 

范総参謀長が諌めた。

 

「各艦船の修理が終わるのを待ち、ロシアからはより多数の戦闘機を買い付け、さらにミサイル駆逐艦も買い、戦力を向上させるほかはありません。

そして何よりもパイロットの技量です。今回の敗戦は、機体の優劣さもさることながら、日本人パイロットの卓越した技にやられたのです」

 

さすがに総参謀長だけあって、事態の推移をよく見ている。

しかしさすがに彼も、日本空母戦闘群のパイロットたちが複製隊員だとは気づかなかったが。

 

「したがって、我が軍もパイロットの技を磨き、これを持って報復戦に望むべきだと考えます」

 

「……うむ、その言やよし、とするか」

 

陳は頷いた。

 

「幸い、我が国には資金はある。かつての中国のように世界一国債を保有しているからな。これを持ってロシアなどから兵器とエネルギーを買い付ければよろしい。……ロシアは足元を見て高いことを言ってくるだろうが、この際はやむを得ん。

言い値で買う他はなかろう。私の方から国防部と財政部によく言っておく」

 

なんとか陳の怒りはおさまったようである。

危ないところだったと、幹部たちは胸を撫で下ろした。

下手をすれば、全員首を切られるか、銃殺刑にされるところだった。

しかし、まだこれから悲劇の第二幕が開くことになるとは、オリンピアの幹部たちは気づかなかったのである。




これにてオリンピアに対する報復作戦は終了します。
第一段階といい、第二段階といい、第三段階といい、これくらいしないと割に合いませんからね。艦砲射撃と空爆は徹底してやりましたが、これでもまだ生やさしいぐらいの報復作戦ですからね。

長話はさておき、次回は本格的に台湾を奪還する作戦を開始します。果たしてどのようになるかは次回のお楽しみに。

それでは、第91話まで…… До свидания(響ふうに)
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