第六戦隊と!   作:SEALs

97 / 102
お待たせ致しました。
予告どおり、今回はとある場所で大変なことが起こります。
果たしてどのような展開になるかは本編を読んでからのお楽しみを。

いつも通り楽しめて頂ければ幸いです!
それでは、どうぞ!


第95話:中国本土壊滅

王総統の命じた通り、台湾国営ネットのリアルタイムにより、この悲惨な光景……オリンピア軍空挺部隊の最期の様子が放映され、全世界にも配信されて世界中に衝撃を与えた。

大陸内部では、これを見ることを軍幹部たちが禁止したにも関わらず、多くのオリンピア軍将兵たちがこっそり見て、怒りより悲しみを覚えていた。

テレビやネットそのものがあまり出回っていないかつての特亜ならばいざ知らず、ネット社会が発達した現代では、見せないでおくことは難しい。

こんな無謀な空挺作戦は行うべきではなかったと、将兵たちは考えた。

 

如何に軍隊では命令は絶対とはいえ、勝算の全くないこの作戦はひどすぎる。

単にオリンピア市民に対する岸破茂雄のポーズのために行われたのだと、将兵たちの多くは正しく見抜いた。

オリンピア軍の士気は僅かながら低下した……いや、そもそもこの無茶苦茶な作戦のせいで、岸破の厳命のせいでもあるが。

 

 

 

 

岸破は苛立っていた。

今いるところは、南京に近い秘密地下司令室である。

深さ50メートルもの地下にあり、米軍のレーザー誘導貫通爆弾《バンカーバスター》にも耐えられるようになっている。

少なくとも設計者たちは、そう証言した。しかしその言葉の正しさは、そうなってみなければ分かるものではなかった。

そこには党国防委員会、軍事委員会の幹部たちが集まっており、陸海空それぞれの責任者たちもいる。

階級は元帥または次帥。岸破茂雄のみ大元帥である。

岸破が苛立ちの極みにあるのは、むろん理由がある。

台湾を奪還されたこともあるが、再び占領しようと精鋭部隊である空挺部隊を送り込んだが、それが失敗したことである。

さらに以前にも海軍基地は空爆されてしまうだけでなく、連合艦隊によって沿岸地域は壊滅的損壊を被ってしまったことだ。米軍の代わりに日本軍、なかんずく神がかりな力を得た日本が原因だと言うことは明らかだった。

しかも空母戦闘群や空自は大きな脅威となった。奴らのジェット戦闘機や艦載機は、やすやすと南京近くまで届く。何れここも空爆を免れないだろう。

 

日本には朝鮮半島支部軍によるミサイル攻撃を叩き込んでやったが、TMDシステムで半分は撃ち落とされ、予想した通りの効果を齎さなかったようだ。

しかも、日本の戦意をかき立てると言う逆効果を齎したらしい。

こっちには北朝鮮製の原爆を保有しているが、何れもプルトニウム型で、重さは5トンもある。これではとても航空機には積めない。

今の自分たちにはこれほどの重量の爆弾を積める重爆撃機を持っていないし、第一航空機であればたちまちミサイルで撃墜されてしまうのがオチだ。

原爆を日本に見舞うには、どうしてもノドンに積まなければならないが、ノドンが運べる弾頭はせいぜい500キロまでである。

岸破はオリンピア科学者たちを叱咤激励したが、この数年のうちにそれほどには小型化するのは不可能だった。

 

ともかく、日本のおかげで苦戦しているのは確かである。

しかし、それに対する報復手段を持っても返り討ちにされるのが癪の種である。

肝心の深海棲艦は艦娘たちにやられる、貸与された海軍部隊は全く使い物にならず、難民船や漁船を装って日本海岸地域から特殊部隊を上陸させ、破壊工作を行わせることも考えたが、ミサイル攻撃の後では無理難題だ。

敵はもはや厳戒しているに決まっているからだ。

そのことを指摘しなかった石屋や林山、そして将軍どもにも腹が立っていたが、これは岸破茂雄自身が招いた面もある。

首相時代から何でもかんでも今までの愚策や無策を自分で決めてきたからである。権力を一身に集中した結果、そうなった。

謂わば、身から出た錆だった。

 

「これほどオリンピア軍や深海棲艦が脆弱とは思わなかったぞ!なんだ、このざまは!?」

 

岸破は、石屋や林山、金人民武力部長をはじめとする将軍たちの顔をじろりと睨め回しながら唸った。右手にはおにぎり、左手にはナポレオンVSOPのたっぷり入ったグラスを握っている。更にテーブルには岸破のご機嫌を取るために、密輸や密漁を利用して用意された対馬沖の天然トラフグの刺し身、彼の地元・鳥取県かつ日本海で捕れたズワイガニ、新鮮な魚介類を使った海鮮丼、そして第二の故郷でもある広島県産の牡蠣といった豪華な料理などが並べられていた。

数多くの持病が進んでいるので医師からはアルコール、脂質や糖質、プリン体を多く含む食材、特にブランデーのような強い酒や高級食材などによる暴飲暴食は強く差し止められているのだが、こんな状況では飲まず食わずにはいられなかった。

 

「モゴモゴモゴモゴ。……偉大なる習近平国家主席様や華麗なる金一族、そしてアジア的優しさを持つ歴代抗日韓国大統領様たちが御覧になったら、さぞ嘆かれることだろう!!」

 

カバのように意地汚くおにぎりを一口で頬張ると、左手に握られたナポレオンVSOPをあおるように飲み干した岸破は吠えた。

怒り狂っている彼に対して、石屋や林山、金元帥たちは反論する術を持たなかった。

こうなった原因は、幾つかある。

しかし、その多くは最初から危惧されていたものだった。

台湾に向けて膨大なミサイルと火砲を向けていたことは確かであり、かねてから台湾に警告していたとおり、台湾は火の海にしただけでなく、台湾を占領することが出来た。

しかし、台湾が占領されても日本は負けたわけではない。日本はどういう理由か最初からそれを計算していたはずだ。

空母戦闘群だけでなく、連合艦隊も動員させて大陸内部の重要都市や地域を空爆及び、砲撃された。

台湾の占領が始まった時点から本当の戦闘が始まったために、日本攻略に遅れが生じたはずだ。自分たちでも試行錯誤するものだ。

 

強化されたとはいえ、かつての北朝鮮海軍と空軍の脆弱さは、金元帥たちはよく知っている。空軍は数だけは揃えているが、精鋭機は少なく、何よりも訓練時間が短く、日本の空自とはまともに戦えない。

それに日本のF-64やF-15JEなどという世界でも最強レベルの戦闘機、迎撃機が現れたのだから尚更である。

果たして予想していた通りの結果となり、自前の海軍と空軍は早々と失ってしまった。

おまけに日本の空母戦闘群と艦娘たちが台湾の制海権を奪回した。

まことに双方は恐ろしく、前者は小国を滅ぼせる力を持ち、艦娘の攻撃力は陸軍数個師団に優に匹敵する。

更に突然の日本軍による台湾奪還作戦が実行され、これまた戦力を失う羽目になった。それに焦りを覚えた岸破が実行した無茶な空挺作戦により、精鋭部隊の消耗が決定的となった。

いま苦戦している理由は、そこにあるだろう。

金たちはそう考えていたが、誰もが口に出した途端に良くて更迭。悪ければその場で銃殺されることは疑いもなかった。

 

「全ての将軍たちに通告せよ」

 

岸破は命じた。

 

「この24時間以内に攻勢に出て、台湾及び、我が故郷である鳥取県と広島県以外の日本に報復攻撃せよ!それが出来ない者たちは全て更迭する。なお戦意に欠けたと見なされた者たちは、軍事裁判局の即決裁判により銃殺するものとする!」

 

これはかつてのソ連軍と同じやり方である。

スターリンは部隊の背後に政治将校や督戦部隊を配置し、立ち止まった者や逃げ出す者たちは躊躇うことなく射殺するように命じた。ソ連軍兵士たちは前からだけでなく、後ろからも飛んでくる銃弾と戦わなければならなかった。

それかあらぬか、ソ連軍兵士は強かった。

しかし、これはむしろ政治将校や督戦部隊のおかげというよりも、ドイツ軍、特に武装SS部隊のやり方が残酷過ぎて、復讐の念に燃えたからだろうと言われている。

 

「……分かりました」

 

金元帥が止むなく頷いたとき、世界が突然激動した。

凄まじい振動に地下会議室が襲われたと思った途端、厚さ1メートルもある鉄筋コンクリートの壁が彼らの上に落ちてきた。

周囲も同じ厚さの壁に囲まれている。その上は50メートルもの固められた砂礫で覆われ、なおかつ地表部分は厚さ50センチの鋼鉄で覆われているのだが、それが瞬時に溶けてしまい、なおかつ50メートルもの深さの穴が抉れた。

これほどの破壊力を引き起こすものは、核兵器を除いて他にはない。

その通り、南京に核ミサイルが落ちたのである。

爆心地はなかば偶然だが、南京地下司令部だった。

つまり、岸破の秘密司令部は爆心地から1キロしか離れていなかったことになる。

その核ミサイルの威力は25キロトン。爆発によって、さしわたし3キロに及ぶ巨大な穴がうがたれ、岸破の司令部はすっぽりとそこに呑み込まれてしまった。

天文学的な重量の土砂やコンクリートが岸破たちの上に落ちてきて、彼らは圧死した。

苦痛は一瞬だった。

生命が失われる直前に岸破茂雄の意識によぎったのは、どこのどいつがこんな馬鹿なことを仕出かしたのか!?世界一良い子の自分にこんな事をして許されると思ったのかと言うことだった。

なお岸破たちは知らなかったが、各中国大陸で同じことが続いて中国大陸が壊滅したのは知る由もなかった。

 

 

 

 

それより、3日前の深夜。

某所の深海皇女公邸の執務室では、特に彼女の眼鏡にかなった軍事委員会と将軍たちが集められていた。

明らかにグランド・マザーにより忠実な者、マザーの息の掛かった人物は慎重に取り除かれていた。

言い換えると、深海皇女だけに忠実なイエスマンだけを集めたのである。

 

「……諸君。いよいよ時が来たわ」

 

彼女が掛けていた眼鏡を光らせながら、集まった者たちの顔を見回した。

公邸は厳重に深海執事と深海騎士、総政治部所属の公安局の者たちで固められ、誰一人も入られないようになっていた。

おそらく、マザーそのひと自身が訪れても入れてもらえなかっただろう。

 

「核ミサイルを発射する時が来たのよ」

 

そこにいた全員は、ショックを受けて息を呑んだ。

 

「再び日本に向けてですか……しかし、それはアメリカの怒りを触れるのではないのですか?」

 

蘇総政治部長が言った。

 

「誰が日本に向けて発射すると言ったのよ?」

 

深海皇女は切り返した。

 

「我々の目標は別にある。中国本土全体よ」

 

今度のショックはもっと大きく、全員が顔を見合わせた。

廬一級上将は、一瞬、耳を疑ったほどである。ミサイルは空軍の管轄である。

 

「……いま、中国本土全体に向けて核ミサイルを発射すると言われたのですか?」

 

廬は聞き返した。

 

「その通りよ」

 

深海皇女は平然と答えた。

 

「貴方がたが持つ全ての原潜から発射させる。我が軍から発射した証拠をアメリカに摑ませないように海上から発射するのよ。そして世界にはアメリカの仕業だと公表する。

アメリカが日本を支援するために中国本土全体を破壊したとプロパガンダを流す。その結果、アメリカは身動きが取れなくなり、我々を縛っていた鎖が外れると言うわけよ」

 

「しかし、マザーは御存知なのですか?」

 

「むろんあの女は知らない。これはここにいる者たちだけの秘密よ。決して外には漏らさないことをここで誓ってもらいたい。もしも破った者は、死をもって報復されるわね……その前に気が狂ったと思われるのがオチでしょうね」

 

深海皇女は心地よげに笑った。

 

「要するに、アメリカが中国本土全体を攻撃したと世界が信じれば、我がオリンピアが核ミサイルを用いることについての制約が取れるというわけですか?」

 

鶴陸軍部長が訊ねた。

 

「その通りね。自分で核を使っておいて、他国には使うなと強制することは出来ないわ。その時、我々は自由に日本を攻撃出来る。必要とあれば、ハワイもアメリカ西海岸も攻撃出来るわ」

 

「そんなことをすれば、アメリカと全面戦争になってしまいます」

 

鄭軍事委員会副主席が指摘した。

 

「第一、世界がそんなことを信じるでしょうか?」

 

「完全に信じずとも、少なくとも疑心暗鬼には陥るでしょうね。それで充分よ。アメリカはむろん躍起になって否定するだろうが、否定すればするほど怪しさは増す……それが人間の心理というものなのだから」

 

「……なるほど」

 

鄭軍事委員会副主席が頷くと、満座の者たちも頷いた。

深海皇女が全てを考え抜いた挙げ句の発言だと言うことが、ようやく分かってきたのである。

 

「しかし、マザーがこれを知れば当然阻止されるでしょう」

 

崔海軍部長が訪ねる。

 

「むろん反対するわね。あの女は優柔不断なものだからね。ことがバレた後で私から説明するわ。

それでも納得しない場合は、国家主席から降りてもらい、私が権力や軍を掌握する。軍部の後押しがあれば、それは簡単なことよ」

 

つまり、深海皇女はさらなる権力を握ろうと企てているのである。

 

「どう、軍部は私に忠実よね?」

 

「それはもちろん」

 

全員が声を揃えて答えた。

 

「我々は深海皇女様に何処までも付いていきます」

 

「よろしくてよ」

 

深海皇女は満足気に笑った。

 

「それでは早速、全ての原潜部隊の最高指揮官を私のところに呼んできて頂戴。但し極秘にね」

 

「分かりました」

 

崔は言った。

 

「最高指揮官の名前は周満大佐と言います。彼女は党の綱領に忠実な女性ですから、深海皇女様の御命令に背くことはないでしょう」

 

その時ちょうどオリンピア海軍の原潜部隊が、青島基地に帰投していたので、海軍司令部の命令で深海皇女の下に直ちに出頭するよう命ぜられた。

空軍のヘリが仕立てられて周大佐を中南海に運んだ。

ところで、グランド・マザーは決して愚鈍な人物ではない。深海皇女が何か企んでいることを察知していたが、これほど途方もないこととは思わなかった。

オリンピアの不幸は、このときマザーは前々から決められていた南海視察のために席を外さなければならなかったことである。

公安局長を呼び、深海皇女とその一派をよく見張るように言い残して言ったが、あにはからんや、当の公安局長も深海皇女に取り込まれていたのである。

深海皇女は周大佐と内密に会い、極秘命令を伝えた。

それが中国本土全体への核ミサイル攻撃であることを知って、周は愕然としたが、何しろ深海皇女がマザーと同じく軍最高司令官であるからして、その命令には逆らえない。

せめて命令は書類にしていただきたいと、頼んだが拒否された。

 

「これは機密作戦だから命令書は残せない。そのようなものは存在しないわ」

 

深海皇女は言った。

 

「しかし、君は全海軍において最も名誉ある任務に選ばれたのよ。我がオリンピアの国益にかなう任務である。君は私の眼鏡にかなった士官であり、将来の昇進は私自身がここで約束する。

直ちに出撃して、SLBMを中国本土全体に発射。決してしくじらないこと。その後は大至急、潜航して第二基地に戻ること」

 

「……分かりました」

 

周大佐は蒼白な顔になりながら、それでもきっぱりと頷いた。

直ちに基地に戻り、満載している核ミサイルCSS-N-3に異常がないかどうか、点検してから出撃した。

日本護衛隊群や艦娘たち、台湾海軍が警戒している台湾海峡を、発見されないようにしながら慎重に通り、全ての原潜部隊は所定の位置についた。直後、そこで初めて乗組員たちに任務を説明した。

彼ら及び、彼女たちは最初は混乱したが、深海皇女の言葉を繰り返すと納得した様子だ。

もともと社会主義国家の軍隊、特に兵士たちや士官ですら考えることは要求されていない。任務を達成させるだけの機械に育てられているのである。

 

X-day、0900時。

1発25キロトン以上の威力を誇るSLBMが全弾発射され、中国本土全体に向かった。

南京を含めて重要都市などに落ちて炸裂、全ての都市内を灼熱地獄と放射線地獄に変えた。

一億人以上のオリンピア市民(ほとんどが男性)が即死。威力半径の淵にいた者たちも被爆は免れなかった。

しかしそんな彼らを誰も助けることなく、本物の地獄の中に叩き込まれたのであった。




今回は自業自得というべきか、因果応報とも言える最期を遂げましたが、これが後にとある作戦の第一段階とは知らずに岸破たちはその犠牲になることになりました。オリンピアでは男の命なんて軽いし幾らいなくなろうが、また代えを揃えればいいだけと考えているほどですから。

後書きはさておき、次回はアメリカ視点に移ります。
果たしてどのような展開になるかは次回のお楽しみに。

それでは、第96話まで…… До свидания(響ふうに)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。