第六戦隊と!   作:SEALs

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おまたせいたしました。
今回は予定を多少変更して、オリンピアが日本に核攻撃をしようと企てる段階になります故に、日本もそれを阻止せんとする激戦の前夜になります。

それでは、気を改めていつも通り楽しめて頂ければ幸いです!
では、どうぞ!


第97話:深海皇女の密命

X-day

今回の事件を受けて、首相官邸地下室では、何度目かの国家安全保障会議が開かれた。

主要閣僚、それに危機管理監、そして提督たち。

防衛省からは中岡防衛相の他に土橋統幕長も出席、情報分析のために篠原情報本部長も内局から出席していた。

 

しかし肝心の黒木首相がまだ現れない。

首相は在日アメリカ大使から緊急の面会の用件があると言われて、わざわざアメリカ大使館まで出向いていたのである。

如何なる用件であれ、本来はアメリカ大使が首相官邸に出向くのが外交常識だから、逆に呼びつけられたということは、よほど異例な内容の用件だということになる。

首相は、元帥を引き連れて赴いた。

会議や提督たち全員が揃い、首相や元帥が現れるのが遅いのでざわめき始めたところに、ようやく二人が姿を現した。

黒木首相と元帥の顔は青ざめていた。

よほど重大な知らせをアメリカから受け取ったに違いなかった、と全員が察したのである。

 

「一体どうなさったのですか?お二人ともお顔色が悪いですが」

 

二人が座に着くなり、毛利官房長官が訊ねた。

彼の言葉に、黒木は曖昧に頷いた。

 

「いや、大丈夫だ。アメリカからは極めて重要な情報を貰ったので、それはすぐに諸君に披露するが、その前に国連安保理の結果を知らせてもらいたい」

 

「国連大使からの報告によりますと、中国本土に跋扈していたオリンピアは降伏し、中国本土への多国籍医療団の派遣も決定されました。監視派遣軍は極東ロシア軍などが中心となります」

 

村松外相が報告した。

 

「例の核攻撃については、どう言っとるのかね?」

 

「以前の通り、オリンピアはアメリカが張本人だと決めつけていますが、奇妙なことにアメリカは反論しませんでした。オリンピアや岸破率いる売国奴どもが南京などに置いていた原爆や核ミサイルが誤爆して、自滅したという噂も流れ始めているようです」

 

「実はそれどころではないのだ。アメリカのNSAとペンタゴンの精密調査によれば、中国本土を核攻撃したのはオリンピア軍が保有しているだろうと思われる戦略原潜部隊、唐級だとほぼ確認された。

偵察衛星がミサイル発射の瞬間とその軌跡も捉えた。……これは台湾海峡沖などから発射され、ミサイルの軌跡は明らかに中国本土に向かっている。

我々はその証拠写真のコピーを見せられたから、ほぼ間違いないと言っても良いだろう」

 

「しかし同胞がいる中国本土を核攻撃するなど、なぜ、そんな不条理なことを!?」

 

毛利官房長官は口走らざるを得なかった。

 

「そこがポイントです。むろん、アメリカの仕業に見せかけ、自らの手はフリーハンドにするためです」

 

元帥が冷静な口調で言った。

 

「だからこそ、オリンピアは声高にアメリカを非難し続け、国際世論をそのように持っていこうとしているのです。

アメリカが核を使って問題を処理しようとするならば、我々もそうするという明らかな意思表示なのです」

 

その場に恐ろしい緊張が張り詰めた。

 

「我々はオリンピアをかなり痛い目に遭わせた……とすると、オリンピアは核による報復を目論んでいる可能性もあるわけかね?」

 

安西国交相が呟く。

 

「しかし、アメリカが黙ったままでいるのは……」

 

「オリンピアの挑発には乗らない──という意思表示だよ」

 

黒木は答えた。

 

「言い換えれば高度な戦術だ。非難合戦となれば相手の土俵に乗ってしまう。ハリス大統領は冷静な人物だ。そんな下策は絶対にとるまい」

 

黒木首相は、土橋統幕長を向いた。

 

「統幕長。海自や艦娘たちは全軍帰途についているのかね?」

 

「はあ、艦隊はそれぞれの母港などに帰投しつつあります。念の為に東シナ海北部には1個潜水隊を残してありますが。

本職としては、潜水隊群はマラッカ海峡からのシーレーン防衛に使いたいと思っていたのですが。そうすれば航路を元に戻せますし」

 

すでにバシー海峡近辺において、2隻のタンカーが沈められたので、日本タンカー群はインドネシアのスンダ海峡からマカッサル海峡を通り、フィリピンの東を北上するという迂回を余儀なくさせられている。これによる経済的ロスも大変なものである。

 

「ふむ。それは出来る限り早くそうしたいところだが、その前に為すべきことがある。首都圏東京の防衛だ」

 

黒木はきっぱりと言った。

 

「アメリカからの極秘情報では、唐級原潜はいったん南西諸島の人工基地に帰投したと言うことだが、24時間前に再び出港した。

米軍の設置したソーサスが、唐級原潜のノイズを捉えた。ペンタゴンの推定では、奄美海峡を抜けて、太平洋に出るつもりだろうということだ。

そして、しかるべき位置からミサイルを発射する……我が東京に向かってな」

 

ソーサスというのは、海底に置かれた潜水艦ノイズ探知マイク・ネットワークのことである。

米軍は太平洋にもこれを設置している。太平洋の場合、この情報はリアルタイムで太平洋軍司令部(パールハーバー)に集まることになっている。

 

「……首都東京がミサイル攻撃されると言うんですか?」

 

ようやく、半井総務相が声を絞り出した。

 

「オリンピアの戦略原潜によって?」

 

「ワシントンではそう睨んでいる。私もその可能性は高いと思う。我々は中国本土に配備されたオリンピア軍や深海棲艦をほとんど壊滅させ、空軍にも大打撃を与えたわけだから、オリンピアはその報復を行わずば、もはや権力を維持出来まい。

また、すでに中国本土を攻撃しているとすれば、心理的抵抗も少ないわけだ

そういうわけだから土橋統幕長、潜水隊群は全軍この防衛に当たってもらいたい。

また米軍がソーサス情報網ならびに衛星情報を逐次提供してくれることになっているから、防衛地域は絞りやすいだろう。

統幕長、最高司令官として命令する。この原潜を発見し、そして即座に撃滅するのだ」

 

黒木は青ざめた顔ながら、きっぱりと言い放った。

 

「分かりました」

 

土橋統幕長もきっぱり答えた。

 

「さっそく、その準備に掛かります」

 

 

 

 

それより、2日前のX-day。

オリンピア海軍の南西諸島にある基地に、深海皇女はわざわざ足を運び、中国本土攻撃の極秘任務に成功した唐級原潜の艦長、周満大佐の労を労った。

 

「……あなたの働きは、まさに国家最高殊勲賞に値するわ。部下たちも皆同様よ。今や国際世論は反アメリカに傾きつつあるわ。我がオリンピアの戦略が功を奏したのよ……これは先ず味方(岸破らなど使い捨ての奴隷男たち)をも欺くという孫子の兵法だけどね」

 

深海皇女は大満悦の笑みを浮かべた。

しかしその反対に、周艦長の顔色はさえなかった。歴史上初めて、いや世界史上初めて、原潜から核攻撃し、大量殺戮を行ったのである。

中国本土では、少なくとも数千万人以上、若しくはかつての中国飢餓のように数億人が死傷しただろう。

周にもその惨状を思い浮かべるだけの想像力はある。如何に鋼のようにメンタルを鍛えられているとはいえ、血の通う軍人である。

 

「……はあ、ありがとうございます。部下たちもその御言葉いただいて、感謝するでありましょう」

 

「ふむ」

 

深海皇女は尊大に頷いた。

 

「ところで大佐。早速だが、君たちには次の任務がある。準備が整い次第、直ちに太平洋に出撃して東京を攻撃するのよ」

 

「……東京を、でありますか?」

 

周大佐は息を呑んだ。

中国本土とは比較にならないが、首都圏を攻撃せよ、とは予想外のことであった。

 

「私は命令は二度と繰り返さないわ」

 

深海皇女は冷たい声で言った。

 

「私の言ったことは、聞こえたはずよ」

 

周大佐はゆっくりと頷いた。

 

「御命令とあらば……直ちに出撃します」

 

「ただし、今度は中国本土攻撃のようなわけにはいかないわ。日本海軍は優秀な対潜部隊を持っている。すでに我が潜水艦部隊は散々な目に遭わされている。

オリンピア海軍自体壊滅状態にあり、空軍戦闘機部隊も優秀な機体とパイロットを半分消耗した。

台湾侵攻に対する我が海軍の支援作戦もまたことごとく阻まれてしまった」

 

深海皇女の顔に憎悪の色がみなぎった。

 

「これはその報復なのよ」

 

……実はこの作戦実施決定において、ここに来るまで深海皇女の公邸では、一悶着があった。

陳光総参謀本部長をはじめ、蘇令光総政治部長、陸海軍三軍の長など、そして総書記に身を引いたグランド・マザー以外の政治・軍トップが集まり、深海皇女の次なる作戦について説明を受けた。

オリンピアにおいてはかつての中国や北朝鮮同様、軍は共産党の軍隊であるから政治と軍は不可分である。

 

「中国本土攻撃とその後の宣伝工作は上手く進んでいるようじゃない。世界の大半はアメリカがあれをやったと信じ始めているようね」

 

深海皇女はにんまりとした。

 

「結果として、我々の作戦は成功した……今度は東京を攻撃する。あの生意気な日本人どもの首都を叩くのよ。

我々は海軍・空軍が大損害を被ったからして、その大義名分はあるわ。日本もそれで震え上がって降伏するでしょうね」

 

そこにいた全員が、色を失って顔を見合わせた。

 

「お待ちください、皇女様」

 

慶国務院外交部長が、それこれ勇気を振り絞って指摘した。

 

「お忘れですか?解読班が解読したところ、アメリカはあれをやった真犯人を摑んでいるそうです。具体的な証拠も摑んでいるそうです。つまり、アメリカは我々があれをやったことを知っているのです」

 

「しかし、まだ確認したわけではない。そうでしょう?」

 

深海皇女は反論した。

 

「彼らが沈黙を守っているのが、その証拠だ。自信がないからこそ黙っているのだ。アメリカが沈黙している間に、我々は行動を起こさねばならないわ」

 

「しかし……」

 

廬空軍部長が、躊躇いがちに口を挟んだ。

実は廬は元国家主席だったグランド・マザー寄りであり、深海皇女は内心では気嫌いしていた。

しかし空軍はミサイルも管轄しているので、ここで簡単に更迭するわけにはいかない。

 

「アメリカは、敵性国家だった中国本土への核攻撃は見逃すかもしれません。しかし、緊密な同盟国・日本への核攻撃を見逃すでしょうか?」

 

「アメリカは後ほど日本に対して敵対心を抱くわ」

 

深海皇女は平然と言った。

 

「日米のハネムーンは過ぎるものよ。例え東京が壊滅したからと言って、その報復を行うつもりはないと、私は見るわ」

 

「しかしこの戦争が始まったとき、我々が核を使った場合、直ちに報復措置を取ると何度も言明しましたが……」

 

「情勢が変わったのよ、お馬鹿さん」

 

深海皇女はこともなげに言った。

 

「アメリカ自身が、まず核を使ったという疑いを掛けられている以上、それどころではないわ。その件についての縛りは、もはや外れたと私は見ているわ。

ともかく東京は攻撃する。これは我がオリンピア全体の確固たる意思よ」

 

組織の軍事委員会主席にして、国家主席も今は兼ねている。この二つの最高権力を持つ人物にこれ以上に逆らう勇気を持つ人物はいなかった。

かくして、東京核攻撃は決定されたのだ。

 

「周大佐、いつ出撃出来るの?」

 

南西諸島の人工基地の司令部では、再び深海皇女が大佐に訊ねた。

 

「はい。原子炉のチェックが完了次第、直ちに出撃出来ます」

 

「よろしい。国家は再び君たちに期待しているわ。東京に、少なくともSLBM3発を撃ち込んでやるのよ」

 

「……分かりました」

 




今回は嵐の前夜と言うか、なんと言うやらの防衛戦線という展開に伴い、潜水艦狩りの前夜ともなりました。
果たしてどうなるやら。本当ならば先週辺りに投稿したかったのですが、なかなか都合が合わなかったので今日に投稿しました。
ようやく執筆活動に適した季節になりましたので、少しは進められたら良いなと思いますね。

それでは、長話はさておき次回の話です。
次回から長くて短いような敵原潜による核攻撃を阻止するために日本の護衛艦などが出撃します、果たしてどうなるかは次回のお楽しみに。

それでは、第98話まで…… До свидания(響ふうに)

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