秋が深まり窓の外を落ちた葉が舞っていく。体育を終えた秀吉は更衣室で最後のひとりとなっていた。着替える姿を人に見られたくない為だけに、秀吉はいつも最後まで残っている。白すぎる肌は日焼けを知らず、焼こうとすればすぐに火傷になってしまう。そして逃げられない白さは、子供の頃には気持ち悪いと言われていた。
たとえその動機が好意から来るものだとしても、否定された側には傷しか残らない。そして高校生となった秀吉は人に肌を見せることを避けるようになっていた。
ロッカーを開かせてジャージを脱いでいると不意にドアが開かれる。誰か忘れ物をしたのかと脱ぐ手を止めて目を向けると、金髪の生徒が立っていた。
クラスどころか学年も違う生徒の出現に秀吉は我知らず眉を寄せる。
「次は一年の体育ってわけやないよな」
「六限は実習っす。それよりセンパイ、なんでおれじゃないんすか」
後ろ手にドアを閉めた一年生は止まることなく秀吉に近付いてきた。そのため秀吉は逃げるように後ずさる。
「あいつは確かに強いかもしれない。文化祭のアレは確かにすごかったし、それはわかるよ。けどあんなウサギ野郎よりおれのがイケメンじゃないっすか! あいつすっげーマヌケだし天然だし!」
「長政君は天然やないし、間が抜けてもないわ」
嫉妬に狂って目がおかしいのかと思いながら秀吉は後ずさる。そして壁に背が当たり足を止めた。すると一年生は勢いよく接近し、そのままの勢いで壁に手を当てる。
「センパイはだまされてるんすよ。あいつはかわいいもの好きなマヌケ野郎だから」
「長政君は誰よりカッコええ俺のヒーローや」
「それがだまされてるって、言ってるんだよ」
壁に追い込まれた秀吉は一年生にあごをつかまれ強引に上を向けさせられた。
「おれのが良いって絶対言わせるから、センパイ受け入れてよ」
「やめ…っ」
ゆっくりと近付く相手の顔に、秀吉は恐怖に震える。
「とーうっ!!」
しかし恐怖の時間はすっとんきょうな声とともに断ち切られた。横から飛び込んできた生徒が一年生を突き飛ばして助けてくれる。
「だいじょうぶっすか!」
ハツラツとした声を向けられた秀吉は恐怖に青くなった顔のまま相手を見た。タイピンで二年生だということはわかるが、手や顔につけられた湿布などが痛々しい。
「よっしゃミルトンよくやった! 現行犯だぞおまえ!」
「怪我人のくせに飛び込むとかすげぇ」
他にも二年生が数人やってきて一年生を捕まえ連れ出してくれる。その中で残った前木が心配そうな顔でやってきた。
「秀吉、大丈夫か? 保健室に行くなら付き添うけど」
「俺はだいじょうぶやけど……こっちのケガはええの?」
「みるとのケガは大丈夫。文化祭の時のだから治りかけてるし」
そう告げる前木にあわせてミルトンと呼ばれた生徒が親指を立てた。
「ちょっと転んだだけっすからだいじょうぶっす!」
「そうなん?」
問題ないのはわかるが、襲われた自分より助けてくれた二年のほうが痛々しい。それはどうかと考えていると前木が困ったような顔を見せた。
「えっと…文化祭の時にみるとが秀吉のストーカーを最初に見つけたんだよ。連中は生徒会で片付けたけどさ。って言ってもオレは参加してないから詳しく知らないけど、その前にみるとが足止めしたんだよ」
「おいおいそれは言っちゃダメだろ」
真実を告げた前木のそばで渦中のミルトンが照れたように笑った。そんな二年生の肩をたたき、秀吉はにこりと微笑む。
「ほんまに……ありがとな」