学園ものパラレル 長政×秀吉   作:とましの

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最終話

2月14日の午後からバレンタインイベントが始まる。昼のうちに風紀委員室へ移動していた秀吉はそこでイベント開始の放送を聞いた。とたんにそこかしらから歓声が響き誰かを探すような声が聞こえる。

「…そろそろやな」

生徒会長からイベントの話を聞いてから半月、秀吉はひたすらに浅日を避け続けていた。もちろんイベント前にフラレることを防ぐためだ。どうせフラレるのならきちんと告白してからにしたい。

冷たい風がふきつける中庭に出ると秀吉は白い息を吐き出した。雪が降るほどではないが、それでも冬のから風は頬に突き刺さる。

寒さに身を縮こませていると足音が近づいてきた。校内からはにぎやかな声が飛んできている。けれど寒過ぎる中庭に出てくるほど元気な生徒はいないらしい。

枯れ葉を踏み締める音は秀吉の前で止まった。視線を持ち上げると半月ぶりの後輩が変わらない笑顔で立っている。

「今日は寒いですね」

「ほんまやね。せっかくのバレンタインイベントやのに呼び出してごめんな」

しかもこんな寒いところでと告げながら、秀吉は白い小箱を取り出した。

「迷惑なんは承知してるんやけど、どうしてもこれをあげたくてな」

小箱を差し出す手は寒さとは別の意味で震えている。けれど浅日の目には寒さに震えているように見えるだろう。むしろそのためにあえて中庭を選んで呼び出していた。

しかし浅日は小箱を受けとるのではなく、小箱を持たない反対の手をつかむ。手をそっと握ると手のひらにちりめんでできたウサギのキーホルダーを乗せた。薄汚れているが、白いウサギは確実に京ちりめんでできた品だ。

「そういえば浅日クン、うさぎさん好きやね」

浅日の部屋にもウサギのぬいぐるみなどいくつかあったことを思い出して告げる。すると浅日はゆっくりと首を横に振った。

「僕がうさぎ好きなのは先輩のおかげです。先輩がこれをくれたから」

「俺が? こんなんあげた記憶ないけど」

「小学生の頃に、修学旅行先でこれをくれたんです。その時からずっとあなたの事が……」

途中で言葉をとぎらせた浅日は奥歯を噛み締めて顔を伏せる。突然の変化に驚いた秀吉はどこか痛むのかと心配のまま顔をのぞきこんだ。すると浅日はなぜか目に涙をたたえて困ったような顔を見せる。

「すみませ……ぼく…俺こんななんです」

「こんな、て?」

「泣き虫で弱虫で……駄目なんです。今まで先輩を幻滅させないよう守れるよう頑張ってたんですけど、ほんとはこんなで……かっこよくないんです。先輩が好きになってくれたのは、違うから」

涙をこぼしながら独白する浅日を見上げたまま秀吉は我知らず目を見開く。

秋頃に、秀吉はレッドヒーローに告白している。その直後にレッドヒーローの正体を知って、秀吉は内心で安堵していた。けれどおそらく浅日はその時からプレッシャーを抱えていたのだろう。

そこまで考えた秀吉は首を振りながら浅日を抱き締めた。

「今の俺が好きなんはレッドさんちゃう。長政クンや」

「でも……」

「今までもこれからも恋人は長政クンやからな。いつでも俺のこと暖かく包んでくれる長政クンがええねん。そやから、笑った顔も泣き顔も全部俺が欲しいて、言うたら困る?」

強く言いきることができず、最後は問いかけるようになってしまう。その自信の無さを抱えたまま見上げると、浅日はますます泣き出してしまった。

 

 

 

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