学園ものパラレル 長政×秀吉   作:とましの

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第8話

右手首のねんざと診断された浅日長政は同時に全治一週間と言い渡された。その間は極力右手を使わないようにしなければならない。

となると当然だが日常生活に大きな支障を来すことになる。食事はスプーンとフォークで乗り切れるが、授業のノート写しはどうにもならない。しかしそこでクラスメイトに助けられた。

クラスメイトからノートのコピーを受け取った長政はまっすぐに相手を見つめる。

「いいの?」

「これくらいどってことないよ。あ、次は移動教室だった。荷物持つよ」

「お礼どうしよう?」

「またニンジン食べてくれればいいよ」

人参の苦手なクラスメイトは少しすねたような顔で言う。そんなクラスメイトに長政はにこやかな顔を見せた。

「だからあきら君は小さいんだね」

「ニンジンに身長を伸ばす効果なんてないから!」

笑顔の言葉にクラスメイトは素早く切り返す。しかしさほど怒った様子でもなく長政の荷物を手に歩きだした。

ふたり並んで教室を出ると歩くその先に見知らぬ生徒が立っている。派手目な外見の生徒は制服をわざと着崩しているが、さらにネクタイを緩めた。

「おまえ浅日長政だろ。豊白センパイに気に入られているとかいう」

まっすぐににらみつけてくる生徒を前にして長政は首を傾けた。

「何か用ですか?」

「おまえ文化祭の演劇に誘われるだろうから絶対に出ろ。おれの引き立て役としてな」

「それはちょっと」

「豊白センパイって腕とか細いよな。あんなんじゃおれでも簡単に押し倒せそうだわ。ああ、寝取る的なアレな」

男子生徒は長政に近付くと小声で告げる。それを聞いた長政は笑顔をかき消して相手を凝視した。

「相手は風紀委員長だよ」

「気持ち良けりゃ相手は誰でも良いんだろ?だからおまえみたいな間抜けな優等生と付き合ってるんだもんな」

嘲笑いながらけなしてくる相手に長政は怒りこそわかなかった。ただ確かにあの風紀委員長では襲われても抵抗できないと考える。なにせ風紀委員長は先日も街で何者かに襲われたばかりなのだ。そしてあの時は複数の相手だったとは言え、簡単にねじふせられていた。

 

 

名も知らぬ生徒の挑発を受けた数時間後、長政は演劇の誘いを受けた。もちろん練習は怪我が治ってからになるが、役はとても重要なものであるらしい。

役柄の説明と台本を受け取った長政はその足である場所へ向かった。

校舎二階部分にある一室は、一般生徒を寄せ付けない重い雰囲気を持っているという。生徒会室には緋色の髪の生徒会長がカッターを手に立っていた。

「……やあ、新入生代表君」

なぜかカッターの刃を夕日にかざしている生徒会長に長政は素直に戸惑う。すると生徒会の副会長である三年の伊達川が朗らかに用件を問いかけてきた。

「豊白先輩を守りたいので、ご助力を……」

「お断りだよ」

言葉の途中で生徒会長から拒絶の言葉が突き付けられる。そのため頭を下げようとしていた長政はそのままの姿勢で固まった。

「信長、話くらい聞いてやっても良いではないか。守りたいというからには、何やら事情があるのだろう」

そこでまたしても副会長に救われ、話すようにとうながされた。その言葉に感謝しつつ長政は頭をあげる。

「豊白先輩は部外者の人につきまとわれています。その人は不良を従えていて、先日は街で豊白先輩を襲っていました」

ただそれだけの説明で状況を理解したのか生徒会役員たちは互いに顔を見合わせた。

「明紫波が言っていた嫌がらせの手紙の犯人だナ」

「うむ。ストーカーか」

副庶務の真葉が鬱陶しそうな顔をするのとは対照的に副会長は真剣な顔を見せる。するとやりとりを眺めていた書記の前木があいつだろと立ち上がった。

「オレと秀吉が遊園地に行った時に現れたやつだよな。あの時は秀吉、階段から突き飛ばされて危なくてさ。レッドヒーローさんが助けてくれなかったら大怪我して……あ、ごめん」

秀吉がレッドヒーローの事を好きだと知っている前木は最後に謝罪をしてきた。そんな前木に長政は首を横に振って返す。

「大丈夫です」

「そのレッドなんとかって、君だろう?」

緋色の髪を夕日に照らした生徒会長はカッターの刃をしまいながら言う。そんな生徒会長に驚きの目を向けた長政は相手の鋭い眼光につい見入ってしまった。心の奥底まですべてを見抜くように強い瞳は揺れることなく長政を射貫く。

「学業に支障を来さないという条件でバイトを許されてるはずだけど。その怪我はバイトで負ったものかい?」

「これは違います。その……豊白先輩を助けるときに少し失敗して」

「訓練が足りないんじゃないのかい? 君はヒーローだろう?」

「いえ、あれはあくまでショーですから」

本物のヒーローではないと返す長政に生徒会長はつまらなさそうな顔を見せた。

「あれにとっては本物のヒーローらしいけどね。だけど本当に君は鍛えなよ。次は黒騎士になるんだろう?」

そう告げた生徒会長の視線がわずかに下へ向けられる。そこで思い出したように長政は手元の台本を持ち上げた。

「生徒会長はなんでもご存じなんですね」

「……明紫波から聞いただけだよ」

素直に驚く長政の目の前で、生徒会長はなぜか不機嫌に顔をしかめていた。

 

 

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