僕はこの世界の旅をした   作:旅の物見666

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幸福な国の話

幸福な国。そう呼ばれている国の門前に一人の青年が立っていた。精悍な顔つきに銀髪ショートの髪に金と水色のオッドアイ。膝下まである黒いコートを身につけ手には杖とバックが一つ。旅人には不自然ないでたちだ。

「旅人さんですね?ようこそ!幸福な国、我が国へ!滞在は何日を所望で?それとも移住をお考えですか⁉︎それなら…」

マシンガンの様に言葉を並べ立てる門番を横目に青年は国を見た。人々は笑顔で道を歩いき、会話し、仕事をこなしている。とても幸せそうにしている。青年は少し考え「…そうですね。3日です。今日を含め3日。つまり明後日にはここを発ちます」門番の言葉を遮る様に言い放ち入国審査を終わらした。

 

街を歩き始め青年は人々の服装が目に付いた。全身赤の服の者、黄色の者、黒の者と異様だった。「なんともね。さて、宿はここでいいかな」宿の主人もやはり全身統一された色。黄色だった。「何日ご宿泊で?」「3日かな。少し面白そうな国だからね」宿の主人は笑顔のまま部屋の鍵を渡した。

 

青年は昼買い物を済ませ夕食も済ませ借りた部屋で誰かと話していた。「あぁ。すまないなそちらを任せきりにして。…うん。こっちは国についたよ。明日見て回りたいと思う。…感想かい?まだわからないさ、僕が感想を言う時は滞在を終わらせてからさ」

青年は話を終わらした。

 

二日目、青年は朝食を手早く済ませ街を観光する事にしたが誰にたずねても幸福な事が観光名所だと言われるだけだった。時間が経ち太陽が真上に来る頃青年は昼食を取りにレストランに入った。コーヒーと軽めの昼食を注文し厨房が見える窓際の席に座った。暫くして厨房の方から何かが割れる様な音、そして男性の怒号と女性の謝罪の声が聞こえてきた。「この不幸民め!大切なお客様に出す料理を落とすとは何事だ!」「すみません!すみません!どうか…どうかお許しください!」「駄目だ駄目だ!貴様の様な不幸民は処分されてしまえ!」その言葉を後に声は聞こえなくなった。暫くして注文したものが運ばれてきて青年は手早く食べ店を後にした。「誰も見向きもしなかったな…」

 

陽は傾き夕方、青年は大通りを外れ路地裏に入った時だった。「ひぃぃ!た、た、助けてくれ‼︎」青年に助けを求めたのはオレンジ服を着た男だった。男は青年の肩を掴み言った「た、旅人さん!お願いだ。俺を追っている奴らを殺してくれ‼︎罪なら心配しなくて大丈夫だ。この国で旅人が殺してもすぐに旅立ては罪には…」青年は男の手を払った「残念ですが、僕は旅人です。貴方の運命を変える手伝いはできません。それに…」青年が言葉を溜めた時。男は倒れた、倒れた男の後ろには黒服の男が血のついた棍棒を持って立っていた。「助けたとしてもまた狙われますよ」冷静に告げた。「えぇ。その通りです旅人さん。貴方が助けたとしてもこの者は処分されるのです。幸福の元に」青年は何も言わず踵を返し大通りに戻って行った。

 

夜、部屋の扉がノックされた。青年が扉を開けると10代半ばの少年がいた。少年は真剣な表情でこう言った。「旅人さんですね?少しお話があります」青年は部屋の椅子に座るよう促し話を聞く事にした。彼は自分をこの宿屋の息子だと言い、話を始めた。「僕は、この国が狂ってると思ってるんです。この国は紫様と呼ばれる国王により統治されています。そして市民には幸福制度…といえば聞こえはいいですが、実際は階級制であり奴隷の様な扱いの者もいるのです。下の階級の者は上の階級の者には逆らえず逆らったら死刑なのです、ここまでは旅人さんなら目にする様なものだと思います」「ええ。独裁国家にはよくある風潮ですね。そのいい方だと他に何かあるのですね?」少年は少し黙った。「…そうです。幸福でない国民も死刑、と言う物が国王により作られました。それを聞いた国民全員が狂った様に”私は幸福な国民”を演じる様になってしまったのです。しかし…上階級への待遇は良いためその人らはこの制度に賛同しているため下階級の者は逆らうに逆らえないのです」「なるほど。昼間色々あった謎が解けた。だから革命を起こそうだなんて者も現れないわけだ」少年はすがる様に言った「旅人さん。貴方がもし革命のリーダーとしてなってくれるなら僕らは戦えます。この国は変われます。…助けになっていただけませんか」「すまない。僕は明日出国しなければならないからリーダーにはなれない」青年は冷静に言った。少年はそうですよね。と肩を落とし部屋を出て行こうとした時、一つ聞きたいことがあると言い、こうたずねた「…旅人さん。貴方はこの国をどうお思いですか?」青年は暫く考え、笑顔でこう答えた「そうだね。感想は国を出た後で。かな」

 

3日目、青年は再び門の前に来た。この国で最も偉い”紫様”が見送りに来ていた。「旅人さん。この国はどうでしたかな?実に幸福な国でしたでしょう?」「えぇ。とても」青年は一言応えると去っていった。「…全く、旅人が滞在する時ぐらい不幸民だけは出て欲しくない者だな」そう”紫様”が見る先には、レストランで処分と言われたであろう女性、路地裏で助けを求めてきた男性、そして、昨日青年と話していた宿屋の息子”だった”物があった。

 

広く青々とした草原に停車する一つのバイク。いやこの世界ではモトラドというのか。近くには銀髪、白髪とも思える短めの髪に黒コートに白のシャツを着た金と水色のオッドアイの青年だ。誰かと話しているようだった。「あぁ。あの国の感想かい?…そうだね。とても幸福で面白そうな国だったよ。でも僕はあの国に住みたくはないな。一生幸福だけなんて頭がおかしくなりそうだ。いや…もうおかしいのかな?僕か、それとも彼らか」風が吹く。草原の草がざわつき青年の黒コートが揺れた。

 




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