スクールガールストライカーズ~Ains channel~   作:アインス=ウォーレン

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 夜木沼伊緒。バレーボールで日本人強化選手に選ばれる程の運動能力の持ち主で、成績は優秀。おまけに超がつくほど美人でかっこいい。(おっぱいでかい。)そんな彼女は普段はフィフス・フォースで第06チーム《アルタイル・トルテ》に所属している。
 これは、そんななんでもそつなく完璧にこなしちゃう彼女と、アルタイル・トルテ、そして隊長や彼女の背中を追う、少女たちの物語。


伊緒の背中

 エテルノの、とある一日の朝。

 

「はいっ、隊長さん❤ ゴハンだよ!」

「やった~!お腹すいた~」

 まなにキャットフードを手渡され、隊長はよろこんで食べる。

「ふっふっふ、今日は特別大サービス!なんと釣りたてほやほやのイワシも付けちゃおう!」

 さらに悠水が別の皿に魚を盛りつけた。

「ええ、マジっすか!?なんすか今日は豪勢っすね……!」

「ふっふっふ~、日ごろ隊長さんは私たちと同じもの食べたいって言ってたからね!」

「あれ?でも、五次元湖でイワシなんて釣れたっけ……?」

「伊緒ちゃん!細かいことは言いっこなしだよ!」

「でも、ほんとに今日は朝からたくさんイワシ料理があるけど、どうしたのこれ?」

 椿芽が聞いた。テーブルには、イワシの煮付け、南蛮漬け、照り焼き、蒲焼丼など、これでもかというくらいのたくさんのイワシ料理が並んでいた。

「実はね、釣りでは難しいからハヅキちゃんたちが漁船で底引き網で獲ってきたらしいんだよ!今日たくさんお魚のおすそ分けもらっちゃった!」

「もぐもぐ……でもそれ、釣って来たとは言えないですよね……もぐもぐ……」

 サトカは大口を開けてイワシの煮付けとご飯を交互に口に放り込んでいる。

「あははっ……確かに……!」

「伊緒ちん!食べながら笑っちゃダメなんだよ!」

「まーまー、とにかくたくさん食べてよ!まだ全然冷蔵庫にも余ってるくらいだからね!隊長さんもどうぞ!」

「もぐもぐもぐもぐ」

「隊長さんもっ、すごい食べてる……!あはははっ!」

「伊緒ちん!笑いすぎ!」

「お箸が転がっても笑う年頃ってやつですかね………もぐもぐもぐもぐ」

「隊長さんとサトカちゃん、何気にすごく似てるかも……」

「あははははっ……!」

 伊緒は、お腹を抱えて大笑いするのであった―――。

 

 

 アインス隊長は、今でこそフィフス・フォースの全メンバーの隊長だが、エテルノに隊長として就任した直後は、まだ第06チーム《アルタイル・トルテ》を指揮する隊長だった。その影響で、隊長として他のメンバーに接することも多くなったが、第06チームとはとても仲が良く、一日を共に過ごす日も多い。

 今日は、隊長は第06チームと共に、探索任務にいくことにした。

「それでは、第06チーム、準備はいいですか?」

 時空管理官、ティエラは、第06チームに告げた。

「まなはいつでも準備おっけーなんだよ!ティエラ先生!」

「はいです」

 まなとサトカがそういうと、リーダーの椿芽はうなづいた。

「本日の境界は……少しだけ、歪みが大きいようです。通常よりも強力な妖魔が出現する可能性がありますので、十分注意してください」

「新種の妖魔と判断したら、すぐに報告をいれるモシュ」

「強力な妖魔……」

 椿芽は、ごくりと唾を呑んだ。

「といっても、隊長さんと絆が深い皆さんの力なら、大抵の妖魔なら殲滅はたやすいと思いますが……」

「心配しないでよ!今日は俺がついてるからさ!ふふーん!」

「隊長さん、危なくないように下がっていてくださいね」

「わーい!まな隊長さんがついててくれたら百人力なんだよ!」

「………どうやら、心配なさそうモシュね」

「そうですね。………では、出撃してください」

 

 

 

 五次元時空、荒野。

「………ここは………?」

 椿芽は、きょろきょろと辺りを見渡す。

「建物が何ひとつないですね……まるで隕石でも降った跡のようです……」

「隕石……まさか、俺と悠水ちゃんが!」

「入れ替わってる~!?」

「こらそこ!隊長さんもあまりふざけないで!」

「あはははっ!なんでその映画の話に……!」

「伊緒ちんも笑ったらダメなんだよ!」

「皆、気を引き締めて!いつどんな妖魔が現れてもおかしくないんだよ!」

 椿芽の言葉に、全員が顔を引き締めてうなづいた。

 

「………って、あれ!」

 アインスが指を指した。時空の歪みから、妖魔が出現する!

「きた!」

「数は、1、2、3………全部で5体ですよ!」

「タイプは、偵察型の………ってあれは!」

 偵察型オブリは、背中の機動装備から追尾ミサイルを連続で発射した!

「ミサイル!?」

「ここは私に任せるです!」

 サトカが、ピットでミサイルを攻撃して、なんとか防ぐ。

「行きます!」

 椿芽が、刀を抜いて斬りかかる!……が、

「はやいっ!?」

 偵察型オブリは、ブースターを使って目にもとまらぬ速さで加速する。

「あの装備って………どこかで……」

「はい、隊長さんのお察しの通り……『雪代マリ』さんの、『i(インカーネイト)f(フレーム)』装備ですよ」

 偵察型妖魔は、時にストライカーたちの装備を模した兵装で攻撃を仕掛けてくる時がある。普通ならばRメモカ、SRメモカ装備が普通だが、今回はどうやら違うようだ。

「奴ら、進化してるってこと?」

「どうやらそのようですね………来ますよ!」

 偵察型オブリたちは、ミサイルを連続で放ちながら突っ込んでくる。

「だったら、あたしが食いとめて見せる!」

 伊緒は、『ハイド・インフェルノ』を装備し、突撃した!

「うらうらうらうらうらぁ!!!」

 連続でミサイルを拳で粉砕し、偵察型オブリに近づく!

「伊緒ちん!」

「!」

 偵察型オブリは、ブースターで加速させて伊緒に突撃する!

「あたしと力比べをするつもり!?」

 伊緒は、偵察型オブリの肩を掴み、組み伏せようとする。

「………!?」

 しかし、偵察型オブリのバーニアがさらに火を噴いた。伊緒のパワーでも、地面に叩き付けることができないどころか、後ろに徐々に押されていた。

「嘘っ、きゃあああああ!!!」

 伊緒は、地面に引きずられて吹き飛ばされた!

「伊緒!」

 偵察型オブリたちは、間髪入れず伊緒を取り囲み、ミサイルを一斉に放った!

「そんな……」

「させないんだからっ!」

 伊緒の前に、まなが立ち塞がった。

「伊緒ちんには、指一本触れさせないんだよっ!」

 まなは、『イノセント・バズーカ』を放ち、ミサイルごと偵察型オブリを一体貫いて消し飛ばした!

「ナイスですまなさん!」

「じゃあ、反撃開始するよっ!悠水、アルティメット・アロ~!!!」

 悠水は、『クレセント・ムーン』で連続して矢を放った!

「動きさえ予測できれば、そこだぁ!」

 悠水の矢が、偵察型オブリを1体捕え、撃破した!

 

「逃がさないですよっ!」

 サトカが、『ジェノサイダー』を装備し、敵を追い詰める。

「!」

 偵察型オブリは、ミサイルを発射する!

「同じ手は二度も通用しな……!」

 そう言いかけて、サトカはミサイルを攻撃せず、攻撃をかわす。

「サトカちゃん!?どうしたの!」

 サトカは、ミサイルの追撃を振り切りながら、説明した。

「今、私の攻撃の射線上に悠水さんがいたです………同士討ちをさせることを計算しながら、的確なタイミングで!」

「なら、まながやっつけ……!」

 と、まなも一瞬動きが止まった瞬間、偵察型オブリが突っ込んで来た!

「きゃあああああ!!」

「まなちゃん!」

「あ~ん!今伊緒ちんに撃っちゃうところだったんだよ!卑怯だよこの妖魔~!」

「卑怯ですが…………なるほど、私と同じく頭脳で戦局を変えるタイプの妖魔ですか……興味深い……」

 

 

「………なるほど、今まで一定の統率行動をとる妖魔は確認していますが、自分で戦略を考え、緻密な計算で敵を攪乱する妖魔ですか………」

「新種のオブリとして認定するモシュ!」

 指令室で、ティエラとモシュネはデータを保存していた。

 

「……とにかく、敵はあと3体………急いで殲滅しないと!」

 隊長は、地面に伏せて隠れながら言った。

「でしたら……インカーネイトフレームなら、私にだって!」

 椿芽が、白銀色に光るメモカを装備した!

「隊長さんが引き当ててくださった可能性………今こそ披露します!」

 『if究極装備』に身を包んだ椿芽は、ビームサーベルを手に取り、飛翔した!

「早い!」

「アレなら、さっきの妖魔ちんにも追いつくんだよ!」

「!」

 偵察型オブリが、加速するまもなく追いつかれ、一瞬で辻斬りにされる。

「まずはひとつ!」

「!」

 偵察型オブリが、ミサイルを発射する!

「遅い!」

 椿芽は、バーニアを加速させると、ミサイルを軽々振り切り追い越しざまにミサイルを切り裂いていく。

「でやぁ!」

 椿芽は、2体目の偵察型オブリを貫いた!

 

「次は………」

 と、椿芽が振り向こうとした時だった。

「!? 動けない……」

 腹を貫かれた偵察型オブリが、椿芽の腕を掴んで離さない。

「椿芽ちん!後ろ!」

「えっ……!?」

 さらに、もう一体の妖魔が、突撃してくる!

 

『ピー、ピー、ピー。ピー』

 もう一体の偵察型オブリの装備から、ところどころ赤いランプが光っているように見える。

「な、なんかあの妖魔のフレームから何か聞こえるよ!?」

「………まさか!自爆する気ですか!」

 サトカが叫んだ。

「今狙撃しても間に合わないんだよ!」

「椿芽ちゃん!」

「くっ、放せぇ……!」

 椿芽は、迫ってくる妖魔の気配を感じて、振り返った。

 

 

 

「椿芽ぇ!」

 伊緒が、椿芽の前に割り込み、妖魔を受けとめた!

 

「伊緒!!」

 椿芽は、ありったけの力を振り絞り、妖魔の上半身を切り裂く。が、

「待って!伊緒!」

「早くっ!逃げ……」

 手を伸ばした椿芽の目の前で、、閃光が走った。

 

 

 ドカ―――――ン!!!!!!

 

 

 

 

「………伊緒さん!」

「伊緒ちーーぃん!!!!」

「伊緒ちゃあーん!」

「伊緒ちゃん!」

 全員が、伊緒の元へ走った。

 

「うう……ッ!伊緒!」

「………あはは、派手にやられちゃったなぁ」

 伊緒は、変身装備はボロボロに破れ、倒れていた。

「伊緒ちん!」

「伊緒!全身傷だらけじゃない……どうして私を……」

「もう、皆……まだ私死んだわけじゃないんだから、泣かないの……うっ痛……」

 伊緒の全身は傷だらけだが、命に別状はなさそうだ。

「とりあえず、すぐにエテルノに帰ろう!悠水ちゃん、まなちゃん、伊緒ちゃんを運べる?」

「う、うん!

「わかったんだよ!」

 こうして第06チームは、傷だらけを伊緒を運び撤退するのであった。

 

 

 

 

「………そうですか、敵は自爆攻撃まで………」

 ティエラは、悲しそうにため息をついた。

「はい、先生。伊緒ちゃんの容態は……?」

「エテルノでは、例え傷ついても元の肉体に影響が出ることはありません。一応大事を取って3日ほど安静にしていればすぐに元の任務に戻れるでしょう。第06チームには、3日間の休暇を出すと伝えておいてください」

「はい、ありがとうございます……」

 隊長は、安堵してため息をついた。

「それにしても……インカーネイトフレーム装備を操り、戦術を練る妖魔ですか……これでは、《SR級》のメモカで戦っている生徒たちでは、少し力不足かもしれません……」

「そんな……でも、今の俺では……」

「現在、隊長さんが持っている《UR級》装備は8人です。インカーネイトフレーム装備は4人、究極装備完成系も4人……今後、時空の歪みが強く出ている探索任務では、選抜メンバーで出撃した方がいいかもしれません」

「一応、彼女たちには普段は待機しているメンバーも、実戦経験は積んでもらいたいから……なるべく出撃させてあげたいんですが……」

「時と場合を選んだ方がいいでしょう……最低でも究極装備クラスは必要かと……」

 

 そんな会話をしている中、伊緒は担架の上でその会話を聞いていた。

(あたしが今持っているメモカは通常変身メモカだけ………私、隊長さんの役に立てないのかな……)

 

 

 

 

 その夜、第06チームハウス

「いや~、今日は災難だったねぇ、伊緒ちゃん」

「もう寝てなくて大丈夫なの?」

「うん、ありがと、悠水、椿芽。安静にしていれば、少しくらい起きてても大丈夫だから」

 伊緒は、パジャマ姿で皆と夕食を食べていた。

「ところで、隊長さんは?」

「さっきの妖魔のことで、ティエラ先生と会議があって遅くなるって……あっ、帰って来た!」

「ただいま~……」

 隊長は、ふらふらと倒れ込んだ。

「隊長さん、だいじょぶですか?」

「もうやだ………報告書はもう見たくない……頭痛い……」

「隊長さん、難しいの苦手だもんね」

「うん、伊緒ちゃん。ちょっとおひざに乗せて」

「いいよ。おいで」

 伊緒は、隊長を膝に乗せた。

「隊長さん、伊緒にあんまり無理させたら……」

「いいのよ椿芽。隊長さん、あったかいから、なんか膝に乗せてると落ち着くし」

 伊緒は、隊長の背中をなでる。

「むー、いいなー隊長さんは伊緒ちんになでなでしてもらって!」

「まなもして欲しいの?」

「あっ、してして~❤ まなもいっぱい頑張ったんだよ~❤」

「はいはい……」

「だから、あんまり伊緒に頼っちゃダメだって……」

「いいってば~………ッ!」

 一瞬、伊緒は顔をこわばらせた。

「伊緒さん、まだ痛むのでは……」

「あ~、あはは、そう、みたい………ごめんね。ちょっと部屋で休ませてもらっていいかな?ご飯の残りは、あとでチンして食べるから、冷蔵庫に入れておいて」

「わ、わかったよ!」

「じゃあ、おやすみ。皆今日はお疲れさま……」

 伊緒は、最後まで笑顔を絶やすことなく、自分の部屋に入っていった。

「………隊長さん、ちょっといいですか?」

「ん?」

 椿芽は、隊長に耳打ちした。

 

 

「………俺に伊緒ちゃんのそばにいてほしい?」

「はい……忙しい隊長さんに、こんなことを頼むのもおこがましいんですが……」

 隊長は、椿芽の部屋で椿芽と話していた。

「ああ、いいよそれくらい。……実は、伊緒ちゃんのことは、前から気になっていたんだ」

「そう……ですか。やっぱり………無理、してますよね。伊緒ちゃん」

「そりゃあ………頑張りすぎくらいには、ね」

 伊緒は、天才肌で運動も勉強もトップクラスの秀才だ。それでいながら、それに甘んじることなく周りの期待に応える努力家でもある。そんな彼女であるが故に、任務でもたびたび身を投げ出すような真似をしてしまうこともあった。

「毎日、私たちの戦術フォーメーションを夜まで考えてくれていたり、夜中も私の個人的な相談に乗ってくれたり、そのお蔭で朝は起きるの遅いんですけど、それでもがんばりすぎてると思うのは……リーダーの私から見ていても分かるんです」

「まあ、そりゃそうか」

「でも、私が言っても、『大丈夫』の一点張りで………是非、隊長さんから、もう少し無理をしないように言ってもらいたいんです」

「………なるほどね。よくわかったよ。……でも、それを言う前に、俺はとりあえず伊緒ちゃんに休んでもらいたい、かな」

 隊長は言った。

「とりあえず、俺は3日間の間は伊緒ちゃんと一緒にいるから、皆も休暇を楽しんでおいで。伊緒ちゃんのことは、俺に任せておけば万事オッケーだから」

「………そうですね。隊長さんなら、伊緒ちゃんの疲れを癒してあげられそうな気がします。では、お願いしますね」

 椿芽は、そういうと布団をかぶった。

「では隊長さん、おやすみなさい……」

「うん、おやすみ~」

 

 

 

 翌朝。

「ん、んん……」

 伊緒は、寝ぼけまなこをこすりながら、寝転んだまま手を伸ばして目覚まし時計を手に取った。

「あれ、もう9時……?なんで目覚まし、鳴らなかったの……?」

 と、ふと見ると、布団が妙に暖かい。

 めくってみると、「う、ううん……」と隊長が眠っていた。

「隊長さん……もしかして、わざと私を眠らせるように……?」

 と、さらに上を見上げてみると、机の上に朝食が置いてある。悠水の直筆の「お大事に❤」のメモ付きだ。

「………皆」

 珍しくまなも起こしに来ないところを見ると、隊長が皆に自分を休ませるように言っていたのだろう。

「隊長………もう、そんな気を遣わなくていいのに……」

 確かに、最近寝不足は続いていたり、任務が続いて忙しかったような気がするが、自分はまだ……

「…………最近、頑張りすぎてたかなぁ……自分じゃ、全然わからないけど」

 

「うん、頑張りすぎだと思うよ?」

「隊長さん、起きてたの?」

「よっこらせ」

 隊長は、ベッドから降りると伸びをした。

「伊緒ちゃん、自分ですぐ無理してないとか強がるけど、無理してる時ほど笑顔で頑張ろうとするよね。向上心が強いのはいいことだけど、自分の身体くらい労わらなきゃ」

「そ、そう……? あはは、そう言われちゃうなら、あたしもまだまだだな~……」

 伊緒は、照れて笑って見せた。

「………笑い事じゃないよ。伊緒ちゃんが無理して倒れちゃったら」

「そ、そうだよね。ごめん、隊長」

「そうじゃなくて………倒れちゃう前に、もっと俺を頼ってくれてもいいのに」

「隊長に?」

「俺だけじゃない。第06チームの皆だって、もっと伊緒ちゃんに頼って欲しいって思ってるよ。伊緒ちゃん、自分はいつも頼られる側の人間って思ってるけど……頼ってばかりじゃ、伊緒ちゃんの負担になっちゃうでしょ?皆も、そこの部分は感じてると思うよ」

「負担………」

「だから、伊緒ちゃんは抱え込みすぎなの。だから、ちょっとくらいは手を抜いてサボってもいいし、仕事も完璧じゃなくていいんだから。人間不完全で当たり前なんだよ」

 隊長は、そういうと伊緒のひざにきた。

「だから、その………とにかく今日は皆のことは気にしないで、とにかく休んでね。今日は一日、俺がついてるから」

「隊長…………うん、そうだね。わかった。今日は夜木沼伊緒、休息に専念します!」

「よろしい」

 伊緒はその日一日、伊緒は布団でごろごろしたり、読書をしたりして、一日自分の部屋から出ずに休みに専念するのであった。

 

 

 

 さらにその翌朝。

「伊緒ちん、体調はどう?」

 朝のチームハウス。伊緒は、珍しく早起きして、皆と話をしていた。

「うん、ありがとまな。まだちょっとだるさは残ってるけど……昨日一日リラックスして過ごしてたら、気分はだいぶ良くなったよ」

「伊緒さん、この前より少し、顔つきが柔らかくなってるですよ。ずっと緊張してたんですね……」

「え?そうなの?」

「はい、ずっとなんか、笑ったまま顔が緊張してたと言うか……気を張り詰めていたって言うのは、私は気付いてたですよ」

「皆………」

 伊緒は、嬉しそうに顔を和らげた。

「ね、皆だって気付いてたでしょ?」

 隊長が言った。

「そうだよ伊緒ちゃん!ほら~、もっと笑って笑って~。ほら、パイナップルとリンゴで一芸やろうか?」

「はい、悠水ちん!ペンとサングラスも持ってきたよ!」

 悠水とまながネタをやろうとする。

「悠水、まな……もうっ、それアレやる気満々じゃないの!」

「ふっふっふ……流行りのネタはお嫌いですかお嬢さん?」

 サングラスをかけた悠水がいった。

「このペンは責任を持って私が預かるよまな君……心ばかりの礼だ、とっておきたまえ」

 まなは悠水に渡されたパイナップルとリンゴを持ってとぼとぼサトカのところへ歩いていく。

「食べ物で手をひけと言われたですか………もぐもぐ」

「サトカちん!お願いだからまなを仲間に入れてほしいんだよ!」

「もう帰れないかもしれないとしても?」

「覚悟の上なんだよ!」

「…………40秒で支度しな!ですよっ!」

「ちょっ、突然やめてよそれwwwあははははっ!」

 謎の寸劇を見せられて伊緒は笑い転げた。

「あはは、皆よくセリフ覚えてるね………」

 椿芽は呆れつつ感心して言った。

「いやー、あれは何回も観ちゃいますからな~。覚えるほど観れば、何度でも(記憶が)甦るさ!」

「「バ○ス!」」

「ぎゃあぁ~~、目がぁぁ目がぁぁ~」

 サトカとまなが一緒に言うと、悠水が床を転げまわる。

「あはははははっ!!やめて、もうお腹痛い……げほっ、げほっ……」

 伊緒は笑いすぎて咳き込むほどむせた。

「ぶふっwwwダメだってそれwwwwいてっ」

 隊長も笑い転げてテーブルの脚に腰をぶつけた。

 

 

「それじゃあ、今日はこのノリで……カラオケ大会とかどう!?」

「おお!それいいね!よ~し、久しぶりに歌っちゃおうかな~」

「ふっ、俺の超絶イケボを聞かせてやるぜ」

「隊長さん、ほぼテレパシーだけどマイク通るのかな……?」

 

「あ、あの~……」

 玄関から声がした。

「あ、第03チームのみんn」

「おはようございまーす!伊緒センパイのお見舞いに来ました~!!!」

「いきなり騒いだら先輩たち困るだろ!もっと普通にいけばいいだろ!」

「お邪魔します!」

「………」

 椿芽が対応する前に第03チームが入ってきた。

 

 

 10分後。

「いや~、ごめんね?わざわざ私のためにメロンまで」

「ちょうど余っていましたから、皆さんで分けて食べようと思いまして」

「私の家から持ってきた差し入れのやつなんですよ~」

「はい、たくさん切ったから第03チームの皆も食べて~!」

 悠水がメロンやリンゴ、パイナップルを切って持ってきた。

「いただきま~す!……あむっ………んっ!美味しい!」

「みずみずしくて、新鮮で甘いです!」

「もぐもぐもぐ……美味です」

「気に入っていただけたみたいでよかったです」

「でも、そんな勢いで食べて大丈夫なのか……?」

「心配いらないんだよ!いっつも冷蔵庫にサトちん用のおやつやフルーツは多めに用意しているんだ~」

「おー、たくさん食べるから、毎回すごい作戦を立てられるんですね!おぉーさすがです!」

 遥も喜びながらパイナップルをかじる。

「ところで、皆もカラオケやっていかない? 今から第06チームでやろうと思ってたんだ」

「おータイチョー!カラオケ!?いいよやるやる!」

「わ~楽しそうです~♪」

「天音、今日は非番だし、別にいいわよね?」

「………」

 なぜか、天音は不機嫌そうにそっぽを向いたままだ。

「天音?」

「……いいわよ。ただあたしは今日はのどの調子が悪いから、アンタたちだけでやんなさい」

 天音は、そう言うとチームハウスから出て行ってしまった。

「あ~ん!天音ちんの歌すっごく上手いから聞きたかったのに~!」

「天音さん………」

 

「………あ~、仕方ないって!天音がたまに不機嫌になるのはしょーがないよ。アタシたちだけでやろうぜ!」

「そうですね………最初は誰がやるです?」

「じゃあ最初はまながやるんだよ!」

「まなセンパイ!『きっとワンダフォー!』歌って欲しいです!」

「え、それだと私も歌わなきゃいけないですか……?」

 サトカが嫌そうに言った。

「CDも大人気で好評販売中らしいですね~❤」

「その話はここでしなきゃダメか……?」

「どうしても私を歌わせたいのなら、ちゃんとCDを買って是非聞いてみるです。OP曲に私たちのキャラソンが入った『未来形ストライカーズ』、私とまなさんが歌うハイテンションなED曲『きっとワンダフォー!』、是非買って欲しいですよ」

「だから宣伝が生々しいって!?」

「よし!じゃあ歌うんだよ~♪」

 まなは、曲を入れ始めた―――。

 

 

 そして、第06チームと第03チームのカラオケが始まって、早3時間半。

『~そう そんなんじゃや~だ♪ もう そんなんじゃま~だ~♪ 私のこと見ててね ずっと ずっと❤』

 悠水が歌い終わり、全員で拍手をした。

「いや~、こんなの歌ったことなかったけど、なんとか歌えたね!」

「やはり俺の見込んだ通り……!」

「隊長さんって変わったリクエストを出すよね~。なのに自然に歌えるのは、これいかに」

 悠水はメロンソーダを飲んだ。

「でも、とっても可愛らしくて悠水さんとっても素敵でしたよ!」

「かーわいー!」

「次は、伊緒ちんの番なんだよ!」

「ええっ、何歌おう、もう歌のレパートリーが……」

「藍井エイルさんの曲とかどう?ラピスラズリとか」

「ええっ?隊長さん、そんな最近の歌手を言われても………真乃さん、おすすめの曲ある?」

 伊緒は真乃に聞いた。真乃は何故か色んな音楽に精通していて、個別にあったオススメの曲を教えてくれるのだが、

「…………」

「真乃さん?」

「あっ、いえすいません。ぼーっとしてました」

「真乃さん、大丈夫?さっき歌ってた時も、ちょっとふらふらしてたし、疲れたならあたしの部屋で休憩してても」

「いえ………少し、天音が今何してるのか気になって……」

 真乃は、静かにそう言った。

 

「……だったら、俺がちょっと様子見てくるよ」

 隊長が、まなのひざから降りて扉から出て行った。

「待って、隊長さん!あたしも行く!」

 伊緒が、体調の跡をついていった。

「伊緒ちん!次の曲~!」

「まな、あたしパス!次の人が入れておいて!」

 

 

「…………はあぁ!!……はあぁ!!」

 トレーニングルーム。杏橋天音は、1人で巨大な大剣を振るっていた。

「天音ちゃん!」

 隊長と伊緒は、天音に声をかけた。

「………なによ。今素振りがいいところなの。邪魔しないでくれる?」

 天音は、鋭い眼光で伊緒たちを睨みつけた。隣のカウンターでは、『115回』と記録されてる。

「そうじゃなくて………あの」

「アインス。別にティエラからは許可はもらってるわよ。文句でもあるの?」

「いやその、今日は調子がおかしいなって思ったから」

「おかしくなんてないわよ。今日は無性に腹が立つだけ………アンタのせいでね、夜木沼伊緒」

「………あたし?」

「…………」

 天音は、スポーツドリンクを飲むと、大剣に重りをさらに追加して、素振りを始めた。

「ええッ!……そうよッ!アンタが………簡単にっ、妖魔になんか……負けたりするからぁ!……あたしは、なんだかねッ!無性にっ!虫唾が走るのよ!」

 ブオンブオンと、重そうな大剣が空を切る音が響く。

「天音ちゃん!伊緒ちゃんは強い新型オブリと戦って、仲間を……」

「仲間を庇った?当然よ!あたしはね、そんなどうでもいいことを怒ってるわけじゃないの!そんなこと今更やったからって優越感に浸られても困るのよ!」

「優越感だなんて、あたしは……」

「あたしは!油断して負傷するような甘ったれた第06チームの戦い方が許せなかった!不利な状況に追い込まれても、諦めなければなんとか逆転できるなんて思ってるのが許せなかった!」

「そんなこと……」

「思ってるくせに!どうせ、アインスがついていれば絆の力で百人力とか思ってたんでしょ?んなわけないでしょ!こいつは、自分一人じゃ何もできないただの猫ちゃんよ!」

「天音ちゃん………」

「そして……アンタが、隊長の力と………自分自身に満足して、自分がいれば状況はどうにでもなるって思ってることが許せなかった!」

「あたしが……自分の力に?」

「アンタも、仮にあたしが憧れた女よ!文武両道でなんでもできて、学園中の人気を独り占めして………あたしにないものをたくさん持ってた。メモカの力だって、アンタの方が上だった!」

「でも、今は天音さんは究極装備を………」

 

 ガキン!

 

 伊緒の顔の真横に、大剣が突き立てられた。天音は、剣を握る手を震わせながら、大声で叫んだ。

「装備を言い訳にしないでよ!通常変身しか使えないからって何?あたしがアインスに贔屓されてるからって………自分が勝てない言い訳にしないでよ!!あたしの知っている夜木沼伊緒は、そんな自分に負けるような女じゃなかった!アンタは……自分の才能に自惚れすぎなの!傲慢なのよ!」

「………!」

 伊緒は、言葉を失った。

「あたしは、何が何でも、高嶺アコも降神小織も、アンタも緋ノ宮二穂も全部全部超えて最強になって、全てを掴んで見せる!才能なんかなくたって、あたしは絶対に自分には負けない。……もういいでしょ?アンタたちはトレーニングの邪魔よ。でてって」

 天音は、大剣を抜くと今度は大ぶりの回転斬りの練習を始めた。

「………隊長さん、いこ」

「伊緒ちゃん」

「………あたしも、まだまだだな……」

 伊緒は、そういうとトレーニングルームを出て行った。

 

 

 

 翌日

 

『ザザッ…………聞こえますか?エテルノ司令b………ザザザ、こちらプロキオ……新型妖魔に遭遇……苦戦につき至急援護を願います!………援護願います!』

 

「…………隊長さん、困ったことになりました」

「第03チームが、パトロール中に新型妖魔に?」

「はい。現在、真乃さんがif装備で応戦しているそうですが………先日よりも数が多く、かなり苦戦しているそうです」

「こんなに出現頻度が高いとは予想外だった………今、出れるチームは?」

「それが…………今は第05チームしか………」

「シャルルちゃんたちか………参加したばかりでSR級メモカすら整ってない彼女たちではさすがに危険すぎる」

 シャルロッテ(隊長はシャルルと呼んでいる)率いる第05チーム、《アマンド・フォーマルハウト》は、最近モルガナとの戦闘を得てフィフス・フォースに合流したチームだ。戦闘経験はそれなりにあるものの、まだメモカの用意が追い付いておらず、普段の協力戦でも中級の急襲妖魔の討伐に当たっている。

「ですが………」

「天音ちゃんたちを放っては置けない。至急第02チームを呼び戻して……」

「隊長さん」

 後ろから声をかけられ、隊長が振り返った。

「あたしたちに、行かせてください」

 

「伊緒ちゃん………それに、皆」

 第06チームが、戦闘装備を整え立っていた。

「………良いでしょう。ですが、夜木沼さん。貴方は休暇が今は任務です」

「いえ、それはできません。あたしは、第06チームです。一緒に行かせてください」

「伊緒ちゃん……気持ちもわかるけど、今はティエラ先生の言うことが……」

「隊長さん!あたしの目を見て!」

「!」

 伊緒の瞳は、まっすぐ、震えることなく澄み切っていた。

「隊長さん。伊緒さんは至って平常です。もう十分に休息でき、問題なく戦闘もできるかと」

「サトカちゃん……」

「隊長さん。実は私たち………昨晩、伊緒に言われて話し合ったんです。私たち、任務をこなせていることに満足して、油断していたんじゃないかって」

「昨日は、伊緒ちゃんがすっごく熱弁を振るってくれてね!このままじゃダメだって、意識をしっかり改革してフィフス・フォースとしての自覚を持たないと、いざというときに隊長さんも危ないってね」

「そして、隊長は、時として私たちの精神が安定することを優先するあまり、任務中にふざけても許してくれることがほとんどです。結果として、良好な精神でメモカの力を引き出すことは出来てはいますが、私たちに足りなかったのは、任務に対する『覚悟』というやつですよ」

「まなも、絶対にもう油断しないよ!最初から全力で、オブリちんをやっつけるんだよ!」

 第06チームの全員が、強いまなざしで隊長を見ていた。

「でも、だとするなら俺が……」

 そう隊長が言おうとした時、伊緒が隊長の頭をなでた。

「………大丈夫、隊長さんはそのままでいいの。隊長さんが臆することなく、ひょうひょうと笑ってくれることであたしたちはどんなときでも安心できるし、失敗しても不安になることなく次の任務で結果を出すことができる。隊長さんが笑ってくれるから、私たちも笑って緊張せずに100%の能力を発揮できるの」

「伊緒ちゃん………」

「隊長さん、行かせて!あたし、全力でこないだのリベンジをしてくるから!」

 

 

 

 

 五次元空間。

「………くっそぉぉ!!当たれぇぇぇ!!!」

 いつみが、巨大なガトリングガンを連射する。しかし、高速移動をする妖魔たちには、一発も当たらない。

「うわあぁぁぁぁ!!」

 迫りくるミサイルから、遥は全力で逃げ回る。

「当たらないので精一杯で反撃できないよ!」

「しかも、こちらの攻撃はほとんど当たってないです~」

 沙々が手榴弾を拡散させて爆撃するが、回避されてしまう。

「くっ…………!」

 真乃が、バイクで駆け抜けながら、連射銃で敵を攻撃していく。

「私ですら、互角ですか……!? 第03チームは、究極装備が3人もいるのに、ここまで苦戦するなんて………」

「諦めんじゃないわよ!真乃、アンタのメモカが唯一奴らに対抗できるんだから、あたしたちが奴らの注意を引いてる間に、早く…………!」

 次の瞬間、真乃のバイクが爆発した!

 

「真乃!」

「大丈夫、転んだだけ………それより、今の攻撃は……」

 真乃のバイクは、前半分が焼け焦げて焼失していた。

「みて!あれ!」

 遥が指さした先には、さらに別の妖魔がいた………」

「あれは…………緋ノ宮さんのif装備!?」

 ビームキャノン……だったそれは、剣の形に変形していく。剣を持った妖魔は、さらに背中のバーニアを加速させ、突っ込んでくる。

「装備を2つ…………!? うおおお!!」

「きゃああ~!!」

 いつみと沙々に向かってミサイルの爆撃が襲う。

「くそっ、このままじゃ………!はっ!」

 真乃に向かって、ミサイルが降り注いでいく!

「真乃っ!!!!」

「天音!?」

 真乃の前に天音が立ちふさがり、天音が大剣でミサイルの爆撃を受ける。

「ああああ~!!!!」

「天音!ムチャよ!」

「こんなことで、あたしもセブンスターロワイヤルも、折れたりなんてしないっ!!」

 天音は、爆撃を受けきると、ぐらりと真乃のほうに倒れた。

 

「あまねっ!」

 しかし、追い打ちをかけるように、剣を構えた妖魔が天音たちに剣を振り上げた!

「……あぁッ!」

「……ッ!」

 天音は、無意識に真乃におおいかぶさるように押し倒した――。

 

 

 

「はあああぁぁぁぁぁ!!!」

 目の前の妖魔を、伊緒が横から殴り飛ばした!

 

「………え?」

「大丈夫?天音さん、無事?」

 伊緒は、にこっと笑って見せた。

「ええ、私は無事です、夜木沼先輩」

「あとは私たちに任せるですよ」

 サトカが、ピットを飛ばしオールレンジ攻撃で敵を爆発させていく。

「何言ってんだ!」

「私たち、まだやれますよ~!」

 いつみと沙々が、立ち上がって武器を構えた。

「ふりそそぎます~!」

「必中連射法!!」

 沙々の手榴弾を、いつみが空中で爆発させていく!広範囲の爆発の渦が、妖魔たちを飲み込んでいく!

「あたしも、全速力だ~!!!」

 遥も、全速力で走りながら、腕を振り回す!

「ジェットストリーム・アクセルコンビネーション!!」

 一発、二発、三発四発五発。腕を振り回す旅に、妖魔が地平線の彼方へ吹き飛んでいく。

「椿芽ちん!」

「任せて!」

 椿芽は、空中で超加速をしながら敵を次々切り裂いていく!

「さすが椿芽さん!扱いが難しいif装備を、あんなに軽快に!」

「………真乃!まだやれるわよね!負けてられないわ!」

「ふふっ、了解!」

 真乃は、メモカでバイクを復活させ、走り出した!

 

「ていっ!やああ!!」

 伊緒は、次々と妖魔を殴り倒していく。

「………アンタ、妙に強いわね。なにしたの?」

「天音さんが教えてくれた、覚悟の違い、じゃないかな」

 伊緒は、バックハンドスプリングで攻撃をかわしつつ、蹴りと裏拳を叩き込む。

「それと、隊長さんのおかげ。さっきメモカを、《限界突破》してもらったんだ」

「限界突破………」

 メモカの能力は、強化を施しても成長には限界がある。そのため隊長が集めた『限界突破回路』を用いて、モシュネが限界突破できるようにメモカを改造するのだ。これを施すことにより、同じメモカでも見違えるように強さが変わる。

「………そっ、それくらいあたしだってやってるわよ!てか、結局メモカの力じゃない!」

「あ、やっぱり?……でも、あたし思ったんだ。あたしが元々持ってる強さって、どんなときにもリラックスして、落ち着いて戦況を見れること、本来のパフォーマンスを安定して出すことじゃないかなって」

「………それは、あたしも知ってるわよ」

「だから、予想外のことが起きたって、冷静に椿芽が負傷する前に、あたしが対応できた。どうしても、万全の努力をしていたからって、予想外のことは起きる時には起きるし、起こさないためにも、普段から緊張しないように心が安定してるのが、バレーでも戦闘でも強さを引き出す秘訣かな、って」

「あたしも!アンタがそれだから強いのは知ってる!」

「だから、あたしに足りなかった緊張感や普段からの心構えを教えてくれた天音さんには、感謝してるんだ。ありがとう。あたしも、あたしたちも、もっと強くなれた!」

「ああんもう!お礼とかバカ真面目に言わなくてもいいわよ!いいから手を動かしなさい!」

 天音と伊緒は、お互いの背中を守りつつ、敵を次々蹴散らしていく!

 

「やあ、天音ちゃん。うまく戦局が変わったみたいだね」

「アインス!アンタ、邪魔だから引っ込んでなさいよ!」

「そう言わないでよ。………どうやら、絶望的状況で弱体化していたメモカの力が、本来のパワーを取り戻したみたいだね」

「………」

 思えば、第03チームは、全員予想外の敵に、明らかに動揺してしまっていた。敵の動きに身体がついていかず、そしてリーダーである自分が明らかに動揺したことで、チームに乱れが生じてしまっていた。

「う、うっさい!!けっとばすわよ!」

「その苛立つ怒りの感情は、全部妖魔にぶつけてやれ!」

「言われなくたって!」

「あと、昨日は一日中俺がつきっきりなのに元気がない伊緒ちゃんに怒ってヤキモチ妬いてる天音ちゃん、可愛かったよ~!!」

「ッッッああああああ~!!!!!!!」

 天音は、全て見透かされてる自分とアインスに憤慨し、全力の一撃を妖魔に叩き込んだ。

 

 

 

「…………あれは!」

 妖魔たちの群がる向こうの上空に、闇色に染まるクリスタルが見えた。

「あれは、ステラプリズムか!?」

「いや………よく見ろ、あれは………」

 暗い色のクリスタルのように見えるが、よく見るとそれは石のようであり機械のようでもあるなにかだった。

「………なんだろ?わかんなーい!」

「あそこから、すごい次元の歪みを感じます………なんなんでしょう、すごく禍々しい」

「椿芽ちゃん、ご名答だ。あれは……今回の次元の歪み、強大な新型オブリを生み出す原因ともいえる何かだろう」

 隊長が言った。

「新型オブリの、発生源があるんですか!?」

「おそらくな。あれを壊さない限り、あそこから何度でも強化された妖魔が出てくるだろう」

「じゃあ、答えは簡単だな!あれさえ壊せば、もうこんなムチャクチャな妖魔はでてこなくなるってことだろ!」

「そういうことだいつみちゃん!…………では、フォーメーションを教えるから、やっちゃってちょうだい!」

 アインスは、全員を集めて耳打ちをした。

 

 

「………では、フォーメーション『プロキオン・トルテ(仮)』、スタート!」

「仮なんかい!」

 といいつつ、いつみは沙々と並んだ。

「道を開けてください~!」

「おらおらおらおらぁ~!!!」

 2人は地面に群がっている妖魔たちを、一斉に爆撃で一掃する。地面が、少し開けた。

「天音!」

「まかせなさい!」

 加速していく真乃が駆るバイクに、天音が後部の上に立っている。

「いくよっ!」

「いっけぇぇぇ!!」

 真乃が、勢いよくブレーキを踏むと、天音がその反動を生かして上空へ跳躍した!

「援護するよぉ!」

「せーのぉ!」

「喰らうがいいですよ!」

 続いて、上空に群がる妖魔たちを、悠水、まな、サトカが一斉に狙撃していく!

「道を切り開く!!」

 椿芽が、さらに散らばった妖魔たちを追撃し、一匹残らず切り裂いていく!

 

「見えた!」

 天音の上空に、闇の動力源までへの道が開いた。

「でも、」

 高さが足りない。このままでは、届くことなくまた落ちる。

 

「諦めないでっ、天音!」

「夜木沼センパイ!いきますよ~っ!とうやぁ!!」

 遥が、伊緒の足を拳に乗せて思い切り振りかぶった!

 

「やあああああああっ!!!!」

 超加速で伊緒は、天音に追いつく!

「頼んだっ!」

 伊緒の声に、天音は頷いた。

「せいやああああああっ!!!」 

 伊緒の拳が、天音の脚に叩き込まれた!

「~~~ッっつ……」

 天音は、足の痛みにこらえながらも、さらに上空、闇の動力源の真上にまで飛び上がった!

「これで終わりよ!全部全部全部………ッ!」

 天音は、上空でぐるぐる回転をかけて一気に闇の動力源を叩き切った!!

 

「アンタのおかげなんだからねっ!!!!夜木沼伊緒!!」

 

 

 

 真っ二つにされた闇の動力源は、ジジジ、と電磁波を発生させながら爆発を起こした!

「やった~!」

「さすが天音ちんなんだよ!」

「………ふんっ。造作もなかったわ。……って、言いたいところなんだけど」

 天音は、着地すると照れ臭そうにこう言った。

「ありがと、アンタたち………プロキオンも、第06チームの協力も、あとアインスも、皆で力を合わせたから勝てたわ………感謝してる」

 

「…………どしたの?天音ちゃん?」

「らしくもないなぁ、熱でもあるのか?」

「わ~、天音ちんがデレたんだよ!」

「う、うっさいわね!素直に喜びなさいよ!」

 真っ赤になって怒る天音。

「ぷっ………あははははははっ!」

「笑うな夜木沼!」

「あははははは、だって、皆の反応が、面白いんだもん……あははは……」

「やっぱり、伊緒ちゃんの笑いのツボはどこか独特だね………」

 

 

「はい、皆さんお疲れさまでした」

 エテルノに帰ると、ティエラが笑顔で待っていた。

「皆さんが発見したあの奇妙な物体………あそこから強い次元の歪みを起こす力が働いていたのは間違いないようです」

「すごーい、隊長さんなんで分かったの?」

「……………」

 なぜかアインスは黙っている。

「隊長さん?」

「いや、カンで言っただけだったんだけどマジすか………」

「あんなドヤ顔で言ってたのに勘だったのか!?」

「隊長さんのカンって~、よく当たりますよね~」

「………こほん。とにかく、今モシュネちゃんと捜索していますが、今のところあれと同じ動力源は発見されておらず、当面は、あの妙に強い妖魔とは、戦わなくて済みそうです」

「ほっ………よかったぁ」

「なんで戦わないアンタが一番安心してんのよ」

「でも、油断は禁物ですよね」

 椿芽が言った。

「そうだよ椿芽。皆も、またいつ今回のような妖魔がでてこないとも限らないんだから」

「はーい、伊緒ちん!」

「すいません、任務中おやつタイムを取るのは、脳の活動をよくするという意味でセーフになりませんかね……」

「いやダメだろ!確かに小腹空くのはわかるけどさ!」

「じゃあ、罠を作るという意味でクモの巣やカエルを採取するのは~」

「もっとダメだろ!クモの巣で罠ってどういうことだよ!」

「…………皆さん?」

 ティエラににらまれ、全員がびくっとする。

「まったく、こんな調子で大丈夫なのかしら……」

「まあまあ天音ちゃん。そこを監督するのは俺の仕事だからね」

 

 

 

「………ふ~……」

 伊緒が風呂に入り、傷ついた身体を癒す。

「………はー、しみるわ~」

「はいるわよ、伊緒。………あと、おっさんくさい」

 浴室に、天音が入る。天音は体を洗いながら、伊緒に話しかけた。

「まだ、身体は本調子じゃないんでしょ。しっかり休めることね」

「あ、わかってた……?うん、そうするね」

「………本気じゃなくても、あの火力、か」

 天音は、足を押さえた。

「ん?なんか言った?」

「なんでもないわ。………それより、アンタにはつくづく感心するわね」

「あたしは天音さんに感心しっぱなしなんだけどなぁ」

「そういう、言われたことを全部受けとめれる素直さは………いや、いい。とにかく、あたしはまだアンタに活躍してもらわなきゃ困るから、しっかり頑張んなさい」

「はいはい、天音ちゃんも、休む時にはしっかり休んでね」

「天音ちゃん足も少し痛めたし、明日は休んだ方がいいよ」

「そうね…………」

「えっ、もしかして、私のパンチ、効きすぎちゃった……?ご、ごめん!」

「気にしてないわよ!これくらい!………ってか、」

 天音は、ばさっとタオルで身体を隠した。

「アインス!?なにしれっと会話に混ざってるのよ!?どこから見てるの!?」

「大丈夫!まじまじと凝視はしてないから!」

 風呂桶の中から声が聞こえた。

「きゃあああっ!隊長さん!?///////」

「このばかばかばか!変態!!入ってくんなぁ!」

「ではこの秘密の抜け穴から失礼!」

 アインスは、小さな隙間から逃げ出した。

「こらあああああ!!!待ちなさい!!!」

「もう………隊長さん……」

 伊緒は、ためいきをついた。

「隊長さん…………悪い人じゃないんだけどなぁ」

「アインス、明日会ったらとっちめてやるわ!」

「うん、そうだね………」

「なによ、伊緒。顔が笑ってるわよ」

「…………なんというか、隊長らしくてさ。こういうのって」

「………わかるわ。なんか」

 普段はなんでもお見通しで仕事が適格で、皆のことを一人一人きちんと見ている隊長。すごい人だから皆信頼を寄せちゃうけど、欠点はちょっと抜けててどこかおちゃらけてて、さらに言うと恥ずかしい服に着替えさせたり胸に猫タッチしてきたり、ちょっぴり変態なところ。

 

「なんで、憎めないんだろうなぁ……?」

「伊緒、アンタだいぶ毒されてるわね」

「…………うふふっ、天音さんもね?顔嬉しそうだよ?」

「! べ、別にあいつのことなんて考えてないし!ていうかアンタにだけは言われたくないし!」

「はいはい、天音さん」

「あたしのほうが、メモカの強さも隊長の信頼だって高いし!絶対アンタにだけは負けないんだから!」

「………ふふっ、あたしだってif装備や神装変身装備が入ったら、今の天音さんくらいには勝てるんだからね!」

「絶対!」

「あなたには!」

 2人は、同時にお互いの手を握って言った。

 

「「負けない!!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~おまけ~

 

伊緒「なになに?」

悠水「なんか、私とまなちゃんとサトカちゃんのパロネタを考えているときに、偶然思いついたはいいけど没になったネタを今から遥ちゃんがやってくれるんだって!」

サトカ「最初はプロキオンも交えてお笑い大会をやる予定だったらしいですよ」

椿芽「そうなんだ…………お笑いのネタって、意外と自分で考えるのは難しいですよね」

まな「あっ、始まるんだよ!」

 

遥「…………………」

 

サトカ「ハチマキ………白と赤のランニングと短パン……これ、どこかで見覚えが」

 

 

 

遥「空前絶後のォォ!!!!超絶怒涛のプロキオン・プディング!!!!

 

 走りを愛し、走りに愛された女ァァァァ!!!!!

 

 

 100m、200m、ハードル・・・・・すぇべての走りの生みの親ァァァァ!!!

 

 そう、我こそはあああああああ!!!!」

 

伊緒「んふっwwwww」

椿芽「こ、これって………ふふっw」

 

 

遥「身長157.4cm、7月5日生まれかに座、血液型はO型、

 

 3サイズは83 - 59 - 81

     ハイサイ 南 国  ハァイ!  って覚えてくださぁぁぁぁい!!!」

 

 

天音「ハァイ!ってなによ……ハァイ!って……」

真乃「ごめ………んふっw」

 

 

遥「そう!すぅべてをさらけ出したこの私は!!!サンシャイィィーーン・・・・・・・

 

 く、り、も、と・・・・・・・・・

 

 

 

   イエエエエエェェェェェ~~~~~~~イ!!!!!!!!!ヴィクトリー!!!」

                       

                                ここで舞台裏に逃げ出す

 

 

 

 

 ~終わり~

 

 

 

 

 

 

 




 ……伊緒ちゃんのふとももで暖をとりたい。失礼しました。
 今回は「普段完璧な伊緒ちゃんが、隊長だけに見せる弱いところ」みたいな話を書くつもりだったんですが、思いのほか筆が天音ちゃんのところへ滑ってしまいました。アニメのほうでもとってもよかったですねぇ………
 また読者様の感想、ご意見、誤字、解釈の指摘、あと「この子が見たい!この子とこの子の絡みが見たい!」などの公式に言えないようなリクエストたくさんお待ちしてます。見たら感想かいてよねっ!////
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