スクールガールストライカーズ~Ains channel~   作:アインス=ウォーレン

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私、澄原サトカは、探偵助手。依頼のためならどんな調査でもお手の物です。そんな私ですが、今回は隊長さんに忍び寄る不穏な影を調査するよう依頼が来たので....え?あ、はい。すいません。ちょっとお腹が空いたので、ランチいってくるですよ。

...それから、本編は親愛イベントなどのネタバレ要素が多分に含まれてるそうなので、見るときはそこそこ気をつけるですよ。そこを踏まえた上で、どうぞお読みくださいですよ


サトカの秘密尾行

 ……ああ、やばい。

 エテルノランドに設置されたファミレスで、隊長のアインスは冷や汗を流していた。

「もぐもぐ………もぐもぐ………」

「あむっ……はぐはぐ……」

 来月あの子の誕生日プレゼントを買うはずのレアダイヤ、ついうっかりこんな所で使ってしまうとは……ああ、目の前で消えていくカレーパン、ワッフル、シュークリームにチョコレートパフェ。ラーメンやハンバーグまで見える。

 これを買えるレアダイヤで、メロンパン何個買えたんだろう……隊長は、ごくりと唾を飲みながら、目の前の食欲全開の少女たちを見た。

 

「もぐもぐ………カレーパンと一緒にライスの付け合せも……いいですね……」

「んん~❤ やっぱデラックスパフェは美味しいね~❤」

 アコぉぉぉぉぉ!!!なにしれっと一番高いパフェ頼んでんだぁぁぁぁぁ!!!隊長は、心の中で叫びつつ、笑顔で問いかけた。

「美味しい?アコっち」

「うん!久しぶりに元気が出たのだ~❤」

「まったくですよ………先月突如大量発生した、『クラッシュ&ビルドオブリ』に、エテルノ中をめちゃくちゃビルド&クラッシュされたあげくエテルノ全部を迷路ダンジョンにされてしまって………」

 

 

「皆が迷路で迷いに迷った挙句、全部サトカっちが迷路の地図を作るまでほんとにやばかったのだ……」

「あれからフィフス・フォース全員で迷路を壊して復旧しましたが、もうへとへとですよ………」

「アコっちも復旧工事のために走り回って足がパンパンなのだ……」

「夕依さんが104回も行方不明になって徹夜で探し回ったりもしたです………」

 思えば、なんかメチャクチャ苦労したなぁ。隊長は、涙が出てきた。

 

「でも、そんな折に」

「倒れそうな私たちに『ファミレスに連れてってあげる』なんて粋な隊長の心意気に……この澄原サトカ、感謝してもしきれないですよ……!」

「ほんと、ボスがあたいたちの隊長で、よかったのだ……うっ、うっ」

 満面の笑みと本気の涙を見せられると、ああ、連れてきてよかった。レアダイヤなんか惜しくねえ。この笑顔を見れるんなら。隊長は心からそう思った。

「まーまー、サトカちゃんたちには特に頑張ってもらったからね。これも隊長として当然だよ。ほら、もう食べられないってくらい好きなだけ食いなよ!」

「ふおぉ……!ほんとですか!では、カレーパン10個追加で」

「アコっちもパフェ追加なのだ~!」

 まだ食うのかよ!成人男性の4倍の量は食ってるぞお前ら!

「頭脳労働に、カロリーと糖分はかなり必要です………食べれるだけ食べるですよ」

「たまにはアコっちも、好きなだけパフェを満喫したかったのだ……❤」

 ああくそう、笑顔がかわいすぎる。一心不乱に食べる口も、女の子らしくてかわいい。なにこれ、小泉花陽?

「美味しいです、美味しいですぅ……!」(すごい勢いで消えていくカレーパン)

「はにゃ~❤ ボス、もう一個頼んでもいい?」

「あ、あははは………」

 くそう、これはレアダイヤの前借と、探索エリクサーの購入も検討しないとなぁ。と考える隊長であった。

 

 

「ふう、ごちそうさまですよ」

「ふ~、もう食べられないのだ~❤」

 目の前に積まれた大量の皿と、カレーパンの包み紙。隊長の顔からは、血の気が引いている。

「い、いや~、よく食べたね~。やっぱ元気な女子高生は、これくらい食べないと!」

「でもボス、さすがにこれはお金(レアダイヤ)が不味いんじゃ……?」

「いいの!女の子はお金気にしないで!たまには気前よく隊長におごらせて!」

 隊長は、必死に振るえる尻尾を隠しながら言った。

「隊長さん………」

「あっ、そろそろ二穂ちゃんたちと探索に行く時間だ!ごめんねっ、またご飯いこうね!」

 隊長は、レジにいるモシュネに支払いを済ますと、ささっと行ってしまった。

 

 

 

「………サトカっち」

「ほい、なんですか」

「さすがに遠慮なさすぎなのだ。カレーパン30個、ラーメン2杯にハンバーグも3皿」

「アコさんだってデラックスパフェ2つとフルーツタルト4つ、ワッフルも13個食べてるです」

「…………これは、アコっちたちの誕生日に、メロンパン2個みたいなレベルになることも懸念しておいた方がいいのだ……」

「キーホルダー60個とかいうのも、それはそれで困るですけどね……」

 サトカとアコは、ファミレスを出た。

「このあと、どうするですか?」

「んー、今は15時だから………アコっちは情報収集の仕事の時間なのだ♪」

「あ、そですか……私は、とりあえず腹ごなしにランニングでもしてきましょうかね………」

「ん?サトカっち、運動は苦手じゃ……」

「必要最低限はこなして、いざというとき動けるようにはしておけと、まなさんや椿芽さんからきつく言われてるので……」

「さすがはあの二人、なのだ。感心なことなのだ。……じゃ、またねサトカっち!」

 アコは、サトカに手を振ってその場を後にした。

 

「…………さて、私も《仕事》にいくですかね………」

 

 

 

 

 

 私、澄原サトカは、『ありくい探偵事務所』の探偵……の助手を務めているです。多忙な先生に変わって調査をしたり依頼を受けたりすることも多々あり、一時期は『五稜館学園の美少女名探偵』なる呼ばれ方で噂をされていたこともあってですね………

 今はエテルノで第06チームとして任務をこなす毎日ですが……ときたま、依頼を受けることもあるですよ。

 

 今回の依頼は、第04チームに所属する高等部三年生、山吹楓さんから。

『アコちゃん………最近、隊長さんのことを嗅ぎまわって、よからぬことをたくらんでいるって小耳にはさんだの。真実かどうか、調査をお願いできるかしら?』

 ………なるほど。隊長さんの秘密、ですか。

 隊長さんは、猫の姿をしているですが、実際は別の遠い境界(チャンネル)で人間として生活している。詳しくはメインストーリーEP1をクリアして見ていただくとして、隊長さんは端末から猫の身体に意識を転送し、エテルノで活動することができている………そうで。

 まあ、実際は隊長さん、割とよくそっちの世界のことは喋るので、まだ彼も高校の学生で、私たちと年は大差ない、ということは聴かせてくれましたが、それも真実かどうかは定かではないです。

「………しかし」

 アコさんが隊長さんのことを調べているというのは、気になる話ではあるです。

「………まずは、聞き込みからですよ」

 

 

 

「え?最近のアコのことを聞きたいって?」

 まずサトカが訪れたのは、第02チームのチームハウス。

「そうさねェ………だいたいはアタシたちは普段から自由行動しているから、まあ放任主義さ」

「アコちん、確か昨日は部屋にこもって何かのメモを書いてたみたいだったけど……」

「ああ、そうだ。確かその後、ささっとまた出かけて行って……」

「それから先は、見てないよ。私たち、昨日はテレビを観てたし、昼は昼寝してたからね」

 ハヅキ、リョウコ、イミナ、マリは言った。

 

「そうですか………あと、ここ数日で不審な点は?」

「………サトカ。ちょっときな」

 マリは、ささっとサトカを部屋から連れ出した。

「えっ、なにマリさん……何を話すの?」

「ふぅん……何か深ぁいことを知ってそうだねぇ?」

「な、なんだよ……気になるじゃないか……」

 

 チームハウス 裏口。

「……それで、知ってる情報と言うのは?」

「澄原サトカ……あまり、あの子らにはおおっぴらに言いたくなくてね」

 マリは、静かに空を見上げた。

 

「………もしかすると、それって」

「知ってたのかい? ……あいつと隊長が、デートしてたらしいね」

「………やっぱりですか」

 

「まあ、今更って感じだけど。あたし、前に山の方の境界に、1人でいたんだ。そしたら、なんかアコと隊長、それから降神小織にティエラ……すぐに片付いたけど、妖魔と戦っていたよ」

「ああ、ティエラ先生が前に落した週刊誌の情報と一致するですね………」

 

「? 週刊誌?」

「いえ、なんでもないです………それより、他に目撃者は?」

「いない。私ひとりだった。それに、他の皆は誰もそのことをおくびにも話題にはしてない」

「つまり……ウワサにはなってはないということですね……」

 やはり、この週刊誌は十分危険な代物だった……そう考えると、自分が手に入れておいてよかったかもしれない。

「………ねえ、サトカ」

「ほい、なんですか、マリさん」

 

「アンタは………どうなの?」

 

「………それは、自分にもプライベートは守秘義務というものがありますので」

「あいつさ……隊長。可哀想だよね」

「……ど、どういうことです?」

「見ればわかる……エテルノにいる36人が、同じ瞳をしていることを」

 

「…………」

「なのに隊長は……いや、私たちも必然的に………答えを出すことは許されない。隊長は、優しいよ。優しいから、人ひとり受け止めるのもやっとのような重い気持ちに、全員答えようとしてる。絶対に、全員を、例え矛盾していようとも絶対に裏切らない」

「マリさん……」

 

「……いいんだ。あいつも、自分なりに気持ちを伝えようと、私たちに接している。隊長は、私のことも、アンタのことも、馬鹿正直すぎるくらい好きだよ」

「…………それは、私も常々感じているです」

 

「むしろ、私の方が考えてしまう。素直で優しいあいつが、自分の世界のことをもっと話したいだろうに。自分の世界で、同じ世界で出会った人間を愛したいだろうに。あいつが、どれだけ笑顔の裏で、私たちとの関係に悩んでいるのか、考えたことある?」

「それは………」

 サトカは、答えに詰まってしまう。

 

「………だから、アンタはアンタのままでいい。私たちにできることは、何も気づかないこと。予定調和の、平和なエテルノを守り続け、任務を終えること。そして、あいつを好きでい続けること。それでいい」

 マリは、ふぅー…と息を吐くと、サトカの肩をたたいた。

「仮にも、アンタが『一番最初に選んばれた』女なら、そんな辛そうな顔をするな」

「………!」

 

 

 最初に選ばれた。それは、隊長が記憶を失くしてから、始めて再びエテルノを訪れたとき。いわゆる、隊長が最初にエテルノに就任した時の話。

『私たちは、《オブリ》という正体不明の妖魔を倒すための舞台、《フィフス・フォース》です』

『ふぃふす……ふぉーす?』

 寝ぼけていた隊長さんは、きょとんとしながらティエラ先生の話を聞いてたです。

『あなたは、その6番目のチームの隊長。………ここまでよろしいですか?」

『あー……よくわかんないけど、俺隊長なんだね!よろしいです!』

『それでは……あなたの指揮下で任務を行う5人のメンバーを紹介しましょう』

 

 ここで、私たち第06チーム《アルタイル・トルテ》が前に出た。

 

『美山椿芽と申します』

 

『夜木沼伊緒です』

 

『あ、どうも。澄原サトカです」

 

『はい、どうもー!沙島悠水と申します』

 

『まっほー!菜森まなだよ❤』

 

 

 自己紹介を終えると、ティエラは言った。

『この中から一人、あなたの『パートナー』にする子を選んでください』

『え、ええ……あの、どんな基準で選べば』

『それは隊長さんにおまかせします。最初に選んだパートナーには、少し強いメモカを配布しますので、できるだけ長~く付き合いたい隊長さんと相性がいい子がいいと思いますよ』

 

『そっか……じゃあその、可愛い子がいいかな……』

 その一言に、全員が一気に緊張しました。

『………ん~………』

 隊長さんは、全員の目を見て、あっちにいったりこっちにいったりしながら悩んでいました。

『個人的には………まなちゃんか、サトカちゃんか……う~ん』

 2人に絞られた時、なぜか私が残っていることに驚きましたが、

『じゃあ、サトカちゃんで!』

 このとき、隊長さんは嬉しそうな顔で、私に飛びつきました。

 

 このあと、隊長さんはたびたび任務に私をパートナーに選び、途中でいつみさんやアコさんが選抜メンバーに選ばれるなか、私との時間を多く作ってくれていました。

 そして、

『……で、隊長さんはオトナだからうまく受け流してくれるだろうので言いますが……』

 日に日に、自分の中で大きくなっていく、隊長さんに、ついに、

『その相手は……隊長さんです』

 そのときの隊長さんは、鳩が豆鉄砲を喰らったようにきょとんとしてて、恥ずかしそうに、でも、ほんの少し嬉しそうな顔を見せた後、何かを言いかけたのですが、私はそれを止めました。

 それ以来、隊長さんは、数週間くらい照れて真面目に話しかけられなくなってたりもしていたのですが、今は依然と同じように、普通に接してくれている。ずっと私を、見続けてくれている。

 

「…………隊長、さん……」

「……悪い。そろそろ私行くよ。アンタも、考えすぎないようにね」

 マリは、サトカを置いてその場を立ち去った。

 

 

 思えば、あれが、最初の告白だったのか。自分が、一番最初だったのか。

 その数日後、アコの様子がおかしくなり、まな、悠水と続いて、雰囲気がいつもと違うのにサトカも気付いた。それでも、全員はいつもと変わらないように接し、いつも笑ったり、驚いたり、エテルノ中の全員が、隊長と共に仲良く過ごしている。

「…………私は、隊長を……」

 今でも好きだ。何回、自分がアコと隊長のデート現場を目撃しようと。天音に抱き着く隊長を見ようと。

 胸の中で燃え上がる、熱い気持ちは抑えられない。

「………ですが、それとこれとは、今は話が別です」

 マリに言われて、少し動揺してしまったが、今はマリの言う通り、平和な日常を、エテルノ全員の笑顔を守るため。アコの動きを探る。それが自分にできる、隊長への想いを貫く方法だ。

「…………それにしても、マリさんは割り切りすぎです……あんな覚悟は、なかなか持てるものではないです」

 サトカは、次の場所へ歩き出した。

 

 

 

 

 

 

「………で、なんで小織のところに来たの」

「割とメイン選抜メンバーの中でも、アコさんとつながりが深い小織さんなら、何か知っているかと……」

 ここは、非正規メンバーのための宿舎。サトカは、降神小織に話を聞いていた。

「小織からは、話すことは何もないよ………」

「そんなこと言わないでほしいです!同じコタツで暖まった仲じゃないですか!」

「同じ釜の飯を食ったみたいに言わないで」

「それでもダメですか……では仕方ないです」

 サトカは、すっと小包を小織に差し出した。

「………これは?」

「……ノエルさんからいただいた、由緒正しきロイヤルなカマンベールチーズだそうで……滅多に食べられるものではないです。本当は私が夜中にこっそり食べるつもりでしたが、お話ししてくれるのであればこれはお譲りするです……」

 小包の大きさは、直径30cmもある大きなものだった。

「嘘、カマンベール………こんなに大きいの、見た事ない……!」

 小織は、目を輝かせて小包を受け取った。

「………わかった。話すよ、小織が知っている事」

「おお、お願いするです」

 小織は、静かにうなづいた。

 

「まず……これ」

 小織は、ある物を取り出した。

「これは………パトリ、ですか?しかし、形状が微妙に……」

「小織のパトリ、隊長が少し改造したの。モシュネしか使えない、特殊な『様々な並行世界と干渉できる会話空間』に繋げられるように」

「えと、難しく言ってますけど、平たく言えば」

「隊長の世界の『ツイッター』ができるの」

 小織は、隊長と一緒にツイッターをやっている。画面の前の皆は小織ちゃんのアカウントは知ってるかな?

「なるほど………で、これとどんな関係が?」

「高嶺アコのアカウントを見つけた」

「…………ほ、ほう、それはまたド直球ですね」

 思わぬことにサトかはたじろいでしまった。

 

「しかし、それがあるなら、私としても動向を探りやすいです。……しかし、アコさんはかなり警戒心が強いはずですし、小織さんのアカウントでは近づくことすら容易ではないのでは………」

「小織、別アカウント持ってる。適当に新人隊長のアカウントを作って、アコに接触した」

「……アコさんのアカウント、鍵ついてるですよ」

「フォロー許可もらうのに3カ月かかった」

 その間、あなた一体どんなことをしていたんですか……

「ところで小織さん。あなたネットはそんなに得意じゃないようなイメージがあるのですが……」

「時代を生き延びるのには、こうした情報のリテラシーは必要。ネットもできないようじゃ、この先ひとりで生き延びることは出来ない」

「な、なるほど……あ、だから学習したんですね………」

「あと隊長に買ってって言ったらミニパソコン買ってくれたよ」

「…………それは隊長さんのお財布が切実に心配です……」

 小織さんって、ワガママを言えなくて気持ちを閉ざした、と聞いたのが私の情報だったのですが、ウチの隊長がワガママを言えるようにのびのび育ててしまったんでしょうか……

「………こほん。それで、アコさんのおかしな様子は?」

「毎日隊長の寝顔やキメ顔の写真、あとデートに行った時の2ショット自撮りもあげてた」

 キラキラの隊長の無防備な写真やプリクラアプリでデコられたラブラブな写真があった。

「………ちょっとアコさん私たちが見てないところで好き放題やりすぎじゃないですかねぇ」

「小織もそう思う……ちょっとあとで弓で射掛けにいこうかな……」

「私もお供するですよ……」

 2人に、謎の絆が生まれた。

 

「………それで、他におかしなところは?」

「………これ。『ボスのことを、もっと知りたい。ボスの情報を全部識って、もっとボスを好きになりたい』」

「ああ、このツイートですか………確かに、少し重そうな意味を感じるです」

「識りたい………まさか、モルガナ様に……」

「知識欲、ですか。たしかにあの人に変なことをそそのかされて知識欲をかき乱されたというのは筋が通りますが………さすがにこの一文だけでそう判断するのは早計かと」

「そうですよ。意味深なことは全部私のせいと思っては困ります」

「そうだね、モルガナ様………モルガナ様!?」

 

 2人の後ろに、いつの間にかもるがなが立っていた。

「二人でこそこそ何を秘密の相談をしているかと思えば………高嶺さんのことでしたか」

「モルガナさん……御無沙汰しているです」

「はい、ご無沙汰しています。……ところで、あのカマンベールチーズ、とっても美味でした。今度またノエル=ジョーヌ=べアールさんに取り寄せてもらえるよう頼んでもらえませんか?」

「小織のチーズ、食べたの……?」

 小織の目からハイライトが抜けていく。

「安心しなさい。半分は残ってますよ」

「おお、あの高級チーズの50%はでかいですよ……」

「小織のチーズ……お姉と分け合おうと思ってたのに……」

「まあ、あれ半分でも普通の店で売ってるものの2個分くらいはありますから……それより」

 もるがなは、にやりと笑った。

 

「高嶺アコが、今『どこにいて』『何の目的で』『なにをしているのか』………知りたくはないですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「………とりあえず、ボスの新鮮な毛は手に入れたのだ」

 アコは、職員室のパソコンの前に座っていた。

「あとは……」

「ティエラ先生!何をどう間違えたら私の服にピンポイントで紅茶をこぼすんですか!」

「すいませんすいませんんん!!依咲里さんがオススメのっていうからどうしても飲んでみたくってぇぇ」

「急いで床を拭いてください!さすがに今日ばっかりは私に任せられても困ります!もう、シャワー浴びなくっちゃ……」

 給湯室で、ティエラと楓が騒いでいる。どうやらティエラが滑ってお茶をこぼしたようだ。

「掃除にかかる時間も見積もって、ティエラ先生がここに戻ってくるまでの時間は5分……十分余裕なのだ♪」

 アコは、USBメモリをパソコンに差し込んだ。

「あとは………これをこうしてこうやって……」

 

「そこまでです」

「!」

 アコが上を見上げると、モルガナが浮いていた。

「アコさん、観念するです。もうネタはあがってるですよ」

「ここは完全に包囲したよ」

「なっ、サトカっち、小織っち!?」

 探偵コスのサトカと、婦警コスの小織が、アコの逃げ道を塞いだ。

「くっ………だが、そのネタとは、一体何なのだ?別に職員室でパソコンをいじっているだけのアコっちが、悪者扱いだなんて侵害なのだ!」

「……高嶺少年。ただの勘違いで犯人を指摘するなんて、三流自称名探偵のようなことはしないです」

 サトカは、虫メガネを光らせていった。

「降神警官。まずは、アレを見せるです」

「わかったよ……」

 

 小織は、自分のパトリを取り出して、起動した。

「そ、それは!」

「アナタが盗もうとしていたモノです。それは……『ツイッター』のアカウント!!」

 画面には、『アカウント:降神小織@アインス隊長のチャンネル』と出ていた。

「そして、貴方が『そのアカウントと同じ端末に入っているアカウント』に、わざと接触した……」

 小織は、スマホを操作すると、もうひとつの『ノイン@新人隊長』のアカウントを見せた。

「……こ、こんなアカウント知らないのだ!そ、そもそもアコっち、ツイッターなんてやってないし~」

「言い訳は見苦しいよ」

 小織は、隊長とアコが映ったプリクラ写真を見せた。アコが上目遣いでカメラに写っている恥ずかしい写真。

「これは、小織と相互になった高嶺アコのアカウントから見つかった写真……まだ言い逃れするの?」

「そ、それは~、その、別のチャンネルの別のアコっちが、たまたまボスに似た別の隊長と撮ったやつじゃないかにゃ?」

「言い逃れは出来ません……画像の解析の結果、このエテルノのエテルノランドにあるプリクラから撮影されたものだということはわかっています」

「はにゃあ!?」

「そして、そのアカウントは今………」

 モルガナは、アコのパソコンを操作する。

「ちょっ、なにをするのだ……」

 

 ピコン!

「………第三者にハッキングされている」

 小織のパトリには、『ノイン』のアカウントに『にゃはっ❤』とツイートされている。

「間違っても小織はこんな文字打たない……つまり、小織のパスワードが誰かに知られている……」

「…………」

「そのパソコンを操作していた、真犯人によって!」

 サトカは、アコにビシィっと指を指した!

 

 

「う、うううう……うわああああ!なんでバレたのだ~!」

「午後17時47分、逮捕」

 小織は、アコに手錠を付けた。

「アコさん………」

「うう、何も言うななのだ……全てサトカっちたちの言う通り、アコっちは小織っちの本アカウントが欲しかったのだ………」

「広告塔の役を、小織じゃなくてアコがやりたかったの……?」

「その通りなのだ………」

「…………アコさん」

 サトカは、アコに言った。

「アコさんは、そんな面倒な真似をしなくても、隊長にそう言えば、数日くらいはアカウントの主を後退してもらえることくらい、わかっていたはずです。……もっと、本当にやりたい目的があったのでは?」

「………ふふっ、さすがサトカっち。伊達に長い付き合いじゃないのだ」

 アコは、静かに言った。

「アコっち、本当は………小織っちのアカウントから、データがとりたかったのだ」

「それは、何の……?」

「そう、あのアカウントは……アコっちたちのエテルノの境界と、ボスのいる世界の境界を繋ぐ唯一のネットワークだったのだ。アコっちは、猫の姿じゃない本当の姿で、逢ってみたかったのだ………その手掛かりになればと思って、他の境界の監視にも使われるここのパソコンで、小織っちのアカウントが使いたかったのだ………」

「…………アコさん」

 単純な話。アコは隊長に会いたかった。誰よりも、隊長が好きだから。エテルノでの建前を気にしない隊長の本来の境界で、本来の姿で会いたかった。ただ、それだけだったのだと。

「………また、アコっちは別の方法を探すのだ。絶対に、ボスに逢えるその日まで」

 アコは、寂しそうな笑顔を見せた。

 

「………高嶺さん」

 もるがなは、アコの前に立った。

「モルっち?」

 

「貴方も仮に五次元感知能力を持つ者なら………もう少しその能力(ちから)を使いなさい。あの人が住む境界は……その気になれば、その人を想う『人の意志』というものが、強く強く惹かれあうほどの力があるなら………因果というものは引き寄せられ、道は開かれるものです」

 モルガナは、アコの唇を人差し指でつついた。

「願いなさい。魂の輝きを持つ少女よ。あの人は………待っています」

 

「!……わ、わかったのだ!」

「それでは、私は失礼。ふふふ………」

 モルガナは、境界を移動して姿を消した。

 

「あっ、待っ……」

「貴方たち!!こんなところで、何をしてるんですか!?」

「うわあ!てぃ、ティエラ先生?」

「勝手に職員室のパソコンを使うとは………どういうことかわかってますね?」

「ああいや……その………」

 アコは、こっそりUSBを抜いた。

「それも、全部没収です!!」

「ああああこれだけは勘弁するのだああああああボスとの写真とか入ってるし重要機密プログラムが」

「いいから没収です!」

「いやああああ返してぇぇぇぇ」

 USBメモリを奪われたアコは、手錠に繋がれた両腕をぴょんぴょん伸ばす。

「………では、事件も解決したようですし、我々はこれで……」

「失礼するよ………」

「貴方たちもですよ?少し事情聴取が終わるまでは今夜は返すわけにはいきません」

 ティエラが二人の肩を掴んだ。

「え……それっていつまで続くですか……?」

「事情が分かるまで、まあ今回はパソコンを使った件もあるので早くて5時間ですね」

「な、なんですと………!? こ、今夜は悠水さんが牛すき鍋パーティをやると………」

「小織も、カマンベール……」

「い・い・か・ら!!!」

 こうして三人は、長時間にわたる尋問を受けお腹が鳴るまで返してもらえなかったという………

 

 

 

 

 

 21時

「お、お腹が空いたのだ~………」

「小織も……」

「私ももう、ダメですよ………」

「そうだね~。もう悠水ちゃんたちもあからちゃんたちも待ってたよ」

 隊長と共に、三人はようやく学校を出た。

「……でもね。もうアレはやっちゃダメだよ。今回は俺が口を利いて誤解が解けたからよかったけど」

「ご、ごめんなのだボス………」

「………エテルノのティエラ先生が管理しているパソコンにはね、セキュリティーコードが掛かっているとはいえ、時空管理局の重要機密のような情報だって入っているかもしれないんだ。普段書類の手伝いをしているかもしれないけど、あれよりももっと重要な機密。それを、もしもアコっちたちが『識ってしまった』ら……元に戻れなくなるかもしれないんだよ」

「………!」

 アコは、夢中になって自分が何をしてしまったかを、改めて考えるとぞっとした。

「…………隊長さんの言う通りですよ、アコさん」

「小織も、まだ死にたくはない………」

「う、ううう……」

 落ち込むアコに、隊長が言った。

「でも………全部、『約束』のためだもんね」

「…………」

「それは嬉しかったけど……じゃあ、だったらこうしよう」

 隊長は、ぴょんっとベンチの上に飛び乗った。

「俺が、いつかちゃんとエテルノに行くよ。皆にちゃんと逢いたいんだ」

「で、でもボスの境界ではステラプリズムも見つかってないし……」

「………あれは本来『異質』なものなんだよ。……でも、その力が異質だとして、それでも俺は思うんだ。人間の想像するイメージに、実現不可能はないって」

 隊長の黒い毛並みが、月明かりに照らされて光る。

「アコっちも、サトカちゃんも、小織ちゃんも、皆。俺に会いたいって思ったってことは………つまり、《逢える》ってことなんだよ。俺が願い続けていれば、アコっちたちが観測できるってことは、俺にだって、その力があったっておかしくない。次元を超えて、ちゃんと逢いに行くことは出来るよ。いつかね」

「ぼ、ボス……!」

「隊長……」

「隊長さん………」

 

「だから、待っててよ。この時が流れないエテルノなら、俺は年を取るかもしれないけど、死ぬまでには絶対逢いに行って見せるから」

「………小織は、隊長がシワシワのおじいちゃんっていうのは嫌だよ……」

「確かにそうですね、イメージが……」

「………にししっ、なら、アコっちだって、ボスを探すのはやめないのだ」

 アコは、にやりと笑った。

「アコっちは、ずっとずっと待ってるし、待ってるだけじゃなくて、アコっちが迎えに行く用意もしておくのだ。だから、ボス。ずっとアコっちたちのこと、見ててほしいのだ」

「………そうですよ、隊長さん。いつか、私たちの任務が、終わる時が来るかもしれません。でも、それまでに」

「それが終わっても、必ず……」

「絶対、逢ってちゃんと話をしよう。ハイタッチしよう。俺が隊長として絶対に叶える『約束』だよ」

「………はい!」

「はいなのだー!」

「……うん」

 

「てか、お腹すかない?皆待ってるよ!」

「あっ」「あっ」「あっ」

 すると、3人同時にお腹が鳴った。

「………」

「ナイス三重奏ww……ぐべらっ!」

「………じゃあ、小織は帰るよ………////」

「アコっちも、チームハウスに帰るのだ~!」

「あっ、そうだ。隊長さんは、誰と帰るですか?」

 隊長は、ぴたりと足を止めて、振り返った。

「今日は、サトカちゃんのベッドで寝たい気分かな!」

 

 

 

~終わり~

 

 

 

 

 




はー、サトカちゃんとアコっちに放課後食事に連れていっておごるの、夢だったんです。ども、アインスです。いかがでしたでしょうか。
本編でも触れました通り、実はサトカちゃんは私にとってとっても思い出深い娘なんです...サトカちゃん...

では、次回もお楽しみに。それからハーメルンやTwitter等でどんな些細な一言で構いませんので感想をお待ちしてます。
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