スクールガールストライカーズ~Ains channel~   作:アインス=ウォーレン

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~注意~
 このお話には、若干過激な描写や依咲里が乱れる場面が含まれております。
 苦手な方は閲覧をご遠慮いただけますようよろしくお願いします。


依咲里の熱

「・・・ねえ、隊長様」

「・・・ん? なぁに、依咲里ちゃん」

 私、隊長のアインスと、少女、灰島依咲里は、依咲里の部屋にいた。

「二人っきり、ですわね・・・」

「・・・嫌だった?」

「いえ、そうではないのです。そうではなくて・・・」

 灰島依咲里は、隊長に顔を近づけた。

「・・・・今日は、イジメてくださらないんですの?」

「・・・・!」

 アインスは、どうしてこんなことになったのか、経緯を思い出すことにした。

 

 

 

「・・・アインス!今日も絶好の狩り日和だな!」

 緋ノ宮二穂が、アインスに笑って言った。

 

 とある日の探索任務。アインスは、第04チーム《ビスケット・シリウス》と共に静かな森の境界を歩いていた。

「そうだね~。いいお天気だしね」

「なんだか、お昼寝したくなっちゃいますね」

 隣で、蒼井雪枝が、微笑みながら言った。

「ふふ、油断しちゃだめよ。どんな強い妖魔が出てくるかわからないんだから」

「華賀利も、腕が鳴りますわ❤」

 そういう山吹楓と灰島華賀利も、どこか温かい日差しの陽気に、どこか嬉しそうだ。

 

「・・・・二穂様。あちら」

「ん?」

 灰島依咲里が指差した先には、なにやら蠢く大きな影があった。

「今回の新型妖魔か・・・」

「今回、私たち《ビスケット・シリウス》の任務は、時季外れに出現した新型妖魔を殲滅すること。あれがターゲットのようね」

 楓が、武器を構えた。

「よし、相手は気づいていないようだ。全員、慎重に突撃せよ」

「よし、『ワールドイズマイン』の錆にしてくれる!」

「行きますわ❤『逆さ六法』!」

 二穂と華賀利が、妖魔に突撃した!

 

「!」

 妖魔が、振り返った。

「斬ッ!!!」

 依咲里が、一体の妖魔を切り裂いた!

「行きますわっ❤」

 華賀利が、妖魔を蹴り飛ばした!・・・が、

 ぼよんっ。

「!? 衝撃が・・・」

 すると、妖魔はひだの部分から、怪しげなピンクの胞子をまき散らした。

「アッ・・・」

 胞子をじかに吸ってしまった華賀利は、そのまま倒れてしまった。

「華賀利!?」

「オブー・・・・」

 その、巨大なマツタケの着ぐるみを被ったかのような妖魔は、嬉しそうにキノコを震わせている。

「あれは・・・マタンゴオブリ!!」

「む?ティエラ、どこにいる!?」

「そんなことは些細な問題です」

 ティエラは、木の上からなぜかブランコに乗っている。

「あのマタンゴオブリは、キノコから催眠胞子を浴びせかけて、眠らせて自分たちのお家にお持ち帰りしてしまうという、なんとも厄介な妖魔です!」

「なるほど・・・お持ち帰った女の子を苗床にして繁殖するのか・・・・おっふ」

「なに気色悪い妄想をしているのですか変態。・・・とはいえ、あながち間違いでもなさそうなのが嫌ですわね」

 隊長に心底不快そうな目線を送りながらも、依咲里は冷や汗をぬぐった。

「なら、胞子を吸う前に切り裂くか、遠距離からの攻撃で殲滅してしまえばいい!」

「でしたら、わたくしが・・・『デス・シュピーゲル』!!」

 依咲里が、妖精と共に爆撃を放つ。遠距離からの熱線に、マタンゴオブリはかなり怯んでいるようだ。

「行きましょう!楓さん!」

「ええ!」

 雪枝が、『永遠のアジュール」で槍を投擲し、楓が『亜光速レールガン』でさらに追い打ちの炎を叩き込む。

「二穂様!」

「よくも華賀利をやってくれたな・・・・覚えておくがいい!あたしの顔は・・・一度までだ!」

 二穂の大剣が、赤く燃え盛る炎をまとった!

「はあぁぁぁぁ!!」

 二穂が、一振り振るうだけで、2体の妖魔が切り裂かれ、燃えていく。

 一閃。一閃。炎の竜巻。爆発。辻斬り。一閃。

 

 気が付けば、妖魔の群れは全滅していた。

「あたしの前に立ちふさがったのが・・・お前の敗因だ!」

 

 

「流石、二穂様でございますわ!」

 依咲里が、拍手をした。

「今日も見事だったわね」

「ふう、無事に終わってよかったです・・・」

 

「むにゃ・・・・あら?」

 華賀利がゆっくり目を開けた。

「気が付いたか、華賀利。妖魔のことなら心配はない。早く帰るぞ」

「二穂様・・・・不肖華賀利、お役に立てず申し訳ございません」

 華賀利が謝ると、二穂は首を横に振った。

「・・・馬鹿者。謝る相手が違うだろう」

 二穂は、左に手を向けた。

「あら、お姉様」

「華賀利・・・・」

「お前が妖魔に眠らされた時、依咲里はたいそう心配していたぞ。おかげでさっきのメモカの威力・・・あの『デス・シュピーゲル』の一撃がなければ、妖魔は勢いづいていたかもしれない」

 メモカとは、意志の強さでその威力が変わる。依咲里は、『華賀利が妖魔に連れ去られてしまうかもしれない』と隊長らとの会話で考えたその時、想像を絶する限界突破で、本来のSR究極をはるかに上回る実力で妖魔に有効打を与えていたのだ。

「・・・・心配かけて、申し訳ありませんわ。お姉様」

「・・・・華賀利は、すぐに考えなしに突っ込みすぎますわ。もう少し情報を見極めてからでも、遅くはありません。次からは、気をつけなさい」

「はぁ~い❤ さすが、お姉様は頼りになりますわ❤」

「よしよし、これで万事解決だね」

 アインスが、にこりと笑った。

 

「よし、帰還するぞ!」

「あっ、二穂ちゃん!帰ったらバトル付き合ってよ!」

「おお、いいぞ!今日もあたしのファイアロー軸パーティの力、見せてやろう!」

「ふふふ、俺のウツロイドの前でも同じことが言えるかな・・・?」

「ま、またゲームの話ですか・・・?私、ついていけないなぁ・・・」

「雪枝、お前も始めればいいではないか。新作もでたことだしな」

「UMAみたいなポケモンもいて面白いよ!」

「あ、それはちょっと気になります・・・・たまに、ポケモン都市伝説みたいなのも聞きますし・・・」

「む、それはなんだ?」

「たとえば、レジロック、レジスチル、レジアイスっていうのがいるんですけど・・・・」

 

 アインスと二穂、雪枝がなにやら盛り上がっているのを、残りの3人は後ろから眺めていた。

「あの子たち、本当に子供みたいにいい表情をしているわね」

「楽しそうですわね、お姉様❤」

「そうですわね・・・・」

 このとき、アインスたちは気づいてなかった。依咲里の服の裾に、わずかな胞子が付いていたことを。

 

 

 

「・・・む~、もう一回だ!アインス!」

「勘弁してくれ・・・もう一回挑まれたら今度は勝てる自信がない・・・!」

「勝てる勝負にだけ挑もうとするのはお前の悪い癖だぞアインス!お前の考えも最近は簡単に読めるようになってきたから、さあもう一回だ!」

 《ビスケット・シリウス》のチームハウス。アインスは、二穂とゲームに勤しんでいた。

「お二人さん。紅茶とミルクの用意、できたわよ」

 楓が、お茶を淹れてきた。

「わあ、今日のお茶も、なんだかいい匂いするね」

「ちょっと今日は変わったところから仕入れたお茶なの。お口に会うかしら」

「どれ・・・・うむ、なかなかいい風味だな」

「華賀利も、いただきますわ❤」

 皆で楽しくお茶の時間を過ごしていたが、隊長はふと気づいた。

「あれ?依咲里ちゃんは?」

「そういえばおらんな。どうしたのだ?」

「お姉様なら、おそらくお部屋にいると思いますが・・・呼んできますわ」

 華賀利は、階段を上って、依咲里の部屋に行った。

「お姉様~?」

 華賀利は、依咲里の部屋に入っていくと、依咲里のベッドが盛り上がっているのを見つけた。

「お姉様、お休み中だったのですね。お姉様~?おやつの時間ですわ、起きてくださいま・・・」

 すると、依咲里は、仰向けに寝がえりをうった。顔は真っ青で生気がなく、息はしているようだが、とても苦しそうだ。

「お姉様!?だれか!来てくださいまし!」

 華賀利は、慌てて人を呼んだ。

 

 

「依咲里ちゃん、一体どうしたっていうんだ・・・・」

「これは、五次元熱なのかしら・・・・?」

「いや、違うな。明らかに症状が違う。かなりの低体温、汗のかきかた、あたしのときとは妙に違うではないか」

「エテルノでは、普通病気にならないはずなのに・・・・」

 エテルノには、医者はいない。呼ぶこともできない。謎の症状に、一同はただ立ち尽くすしかなかった。

「依咲里ちゃん、大丈夫?なにかしてほしいこと、ある?」

「た・・・隊長様・・・・だ、大丈夫です、わ・・・・・げほげほっ!」

 依咲里は、強くせき込んだ。

「依咲里ちゃん、無理しないで」

「隊長様、皆さん・・・・ま、万が一この病が伝染するものであるといけませんわ・・・し、しばらく休んでいれば平気です、から・・・げほっ、げほっ」

「隊長さん。看病なら私に任せて。念のため、他のチームに異常がないか、見てきてもらえるかしら」

 楓が言った。

「わ、わかった・・・」

「では、頼むぞ楓。私も、アインスと共に様子を見てくる」

 アインスたちは、楓を残して依咲里の部屋を出た。

 

 

 そうして、アインスは他のチームハウスを見て回ったが、特に異常はなかった。

「うむ、まあ皆が無事なだけ、よかったとしよう」

「そうだね・・・・問題は、原因がはっきりすればいいんだけど・・・・」

 そうアインスが言った時だった。

「隊長殿~!」

 後ろから、誰かがアインスに声をかけた。

「あからちゃん!」

 声をかけたのは、降神あからだった。

「いやあ、今さっき探索から帰ったんだ。・・・それで、その依咲里君を襲った謎の病のことなんだが」

「何か知っているの?」

「ボクら三姉妹がかつて、モルガナ様と共に君たちと敵対していた時の話にまでさかのぼるんだが・・・そのとき、境界に放っていた妖魔の中に、『マタンゴオブリ』と似たような妖魔を見た気がするんだ」

「マタンゴオブリだって・・・?」

「あの妖魔が、今回の病の原因というのか!」

「確証はないが、おそらくそうだろう・・・詳しくは、陽奈に聞いてくれ」

 あからは、陽奈のいる司令塔まで案内した。

 

「うん、間違いないよ~。十中八九アイツのしわざっしょ」

 陽奈は、モニターの画面にマタンゴオブリのデータを映し出した。

「アイツは、モルガナ様の下で秘密裏に開発された妖魔の一種・・・新型妖魔としてこっちでは認識されてるけど、ウチはみたことあるよ」

「そうだったのか・・・・それで、そのマタンゴオブリの詳しいことを教えてくれ、陽奈ちゃん」

「あいよー。あいつは、2種類の胞子ガスを持ってるの」

「2種類?」

「・・・1つは、人間の脳の睡眠ホルモンの分泌を促して、眠らせてしまうための胞子・・・もひとつは・・・」

 陽奈は、神妙な面持ちで言った。

 

「人間を媒体に、妖魔を繁殖させるための因子を持つ胞子」

 

 

「・・・・・・・・は?」

「ちょ、ちょっと待て!・・・その胞子を浴びてしまったら、どうなるのだ!?」

「まず、第一ステップで、身体の五次元感知能力に反応して、菌が働き始める。体の抵抗力を奪って体温を下げ、菌が全身にいきわたりやすいようにしていく。そうして全体の抵抗力が弱くなったら、いよいよ本格的に因子菌をばらまきはじめ・・・・苗床になった人間は死に至る」

「じょ、冗談言うな!そんなデタラメ、信じられるわけなかろう!」

 二穂は、思わず声を荒げていた。

「信じたくないならいーよ。ほんとに死んじゃってもいいんならね」

「・・・・・・・」

「まあまあ、二穂ちゃん。・・・ただ、ほんとにそんな万能なものではないんだろう?」

 アインスが言った。

「そーそー。話は最後まで聞くことっしょ。あいつは、その恐ろしい菌の能力を持ちながら、開発途中で計画が中止になって、未完成なまま適当な境界に放り込まれた・・・失敗作」

「失敗作?」

「あれは、強力すぎる力を持つ反面、ある一定の気候条件を満たさないと菌が働かなくなる。菌が働きやすい湿気の多くて涼しい環境でしか菌が生きられないから、使える季節が限られてんの」

「・・・つまり、湿度と気温を調節すれば、菌は死滅するということか!」

「そういうことっしょ!ただ、菌が死滅するのはかなり熱い35度以上の湿度の少ない場所じゃないといけないから、そこなんとかすればたぶん大丈夫じゃん?」

「そうか・・・・・・そのような場所・・・砂漠の境界にでも連れて行けばいいのか?」

「・・・・・いや、二穂ちゃん。もっといい方法があるよ」

 

 

「・・・隊長様・・・・・隊長様ぁ・・・」

 依咲里は、薄れゆく意識の中で、隊長を呼んでいた。

「・・・んっ」

 依咲里は、ゆっくりと目を開けた。

「こ、ここは・・・・」

 依咲里のいた場所は、木造の小さな部屋の中。そこに、布団ごと自分が移動させられていた。

「・・・・それにしても、暑い・・・」

 依咲里は、この室内が火照るように暑いことに気が付いた。カラリと乾いて、まるで砂漠の中にでもいるようだ。

 

「あ、依咲里ちゃん。気が付いた?」

「隊長様・・・?」

「おお、依咲里。いやあ、いいものだな、サウナとは」

 タオル一枚の姿の二穂が、にこやかに笑いかけた。

「に、ににに二穂様!? い、いけませんわそのようなお姿・・・!?」

 依咲里は慌てて鼻を押さえる。

「気にするな。アインスも気にしてはおらぬし、昔はお前たちともよく一緒に風呂に入った仲ではないか。変にかしこまらなくてもよかろう」

 二穂は、手拭いで汗をぬぐった。

「ここは、我が緋ノ宮家が運営する施設、いわゆる温泉ランドだ。温泉にドライサウナ、ここなら依咲里の冷え切った身体も、よく温まるだろう」

「・・・・そういえば、寒気が幾分治まったような・・・?」

 依咲里は、自分の身体の変化に気付いた。

「菌の働きで、体温を強制的に下げられていたんだよ。だったら、菌が苦手な高温の場所で、体を暖めていれば、治るだろうと思ってね」

「アインスがドライサウナでの治療を勧めてきたときには、耳を疑ったが・・・・どうやら効果はあったみたいだな」

「隊長様・・・二穂様・・・!」

「ほれ、水分補給もしっかりしておけ。乾きやすいからな。もう少し経ったら休憩して、何回かこのサウナ治療をしてみよう。あたしも付き合うからな」

「あと、お肌の保湿も忘れちゃだめだよ。はい、化粧水」

「・・・・・お二人のそのお気持ちだけで、依咲里は感激ですわ・・・・」

「うむ、しっかり休めよ。あたしのためにも、お前のためにもな」

 二穂がそう言うと、依咲里はうなづいて布団に入った。

 

 

 それから、1週間。依咲里は、二穂と共に懸命に治療した結果、見事マタンゴオブリの病気を克服した。

「皆さま、ご迷惑をおかけしましたわ」

「いいんですよ~。治ってよかったね、依咲里さん!」

「ほんと、どうなることかと思って、心配したわ」

「お姉様が元気になって、ほんとによかったですわ❤」

 ビスケット・シリウスのメンバーも、安心して笑顔を浮かべた。

「それから………隊長様」

「ん?俺?」

「あとで………わたくしのお部屋で、お待ちしていますわ・・・」

 依咲里は、意味深にそう言うと、そそくさとその場を後にした。

「・・・・なんだろ」

 

 

 そして、しばらくしてから、アインスは依咲里の部屋を訪ねた。

「とんとん。依咲里ちゃん、いる?」

「・・・どうぞ」

「入るよー」

 アインスは、扉を開けると、中に入った。

「・・・・ッ!」

 ぴたり、とアインスは足を止めた。

「・・・どうかいたしましたか?隊長サマ・・・・❤」

 依咲里は、なぜか『アニメ記念水着』を身にまとい、頭にはウサギ耳、尻にはウサギの尻尾を身に着けていた。

「依咲里ちゃん・・・・その恰好は?」

「以前・・・・隊長様がお好きだと言ってくださった服ですわ・・・・この服が、私の羞恥心と魅力を、引き出してくれるのですわ・・・・❤」

「あ、なるほど・・・・な、なんか今日は積極的だね?」

 アインスは、「何を己惚れていらっしゃるんですの?」とお茶を濁してくれることを期待して言った。

 

「はい。わたくし・・・・隊長サマには、此度の件で返しきれないほどのご恩をいただきました。ですから・・・・・依咲里の身も心も、隊長サマに捧げて満足していただきたいのです・・・❤」

 

依咲里の目は、まるでハートマークが浮かんでいるかのように、とろんとしていた。

 

「・・・・・・・ッ!」

 アインスは、慌てて背を向けて目線をそらした。

「どうしたんですの?もっと、その手で、その舌で、いじめてください・・・❤」

「(まずい・・・・それ以上は隊長さんの理性が色々な意味でマズイ!)」

 隊長は、頭の中で35人の女の子たちのことをよぎらせながら、必死で頭で考えた。

「・・・・なら、こっちのバニースーツに着替えるんだっ!」

「あら。この格好はお気に召しませんでしたの・・・?わかりましたわ❤」

 依咲里は、ためらうことなく目の前で着替え始める。

「ッッッ!馬鹿!目の前で着替えるなよ!この痴女!」

 アインスは目をそらしてとにかく罵倒してみることにした。

「はあぁぁ~~❤」

「(やべえ、思わず口走ってしまったが逆効果だこれ!)」

 本人が罵倒の言葉が大好きすぎる極度のドⅯなので、これでは喜んでしまう。

「(・・・・てか、これは彼女を喜ばせるのと悲しませるの、どっちが正解だこれ・・・?)」

 アインスは、まだ36人の女の子たちの告白に、返事を出してはいない。そして、全ての戦いが終わるまで、その返事を出すことも許されてはいない。つまり、ここでダイレクトアタックを食らって理性を崩壊するわけにも、手を出して寝取られてしまうわけにもいかないのだ。なんとしても興奮状態の依咲里を説得し、思いとどまらせなくてはならない。

 

「(・・・なら、いつもの攻撃で!)」

 アインスは、駆けだした!

 

 むにっ。

 

「あんっ❤」

「この!平らな!乳しやがって!こらっ!」

 ぺしぺし。ぺしぺし。何度も依咲里の胸を携帯画面のようにタッチを繰り返す。

「申し訳ありませんわっ。はぁぁ・・・❤」

「この!この!」

 もはやアインスも半分ヤケになっていたが、とりあえず、彼女に一番効く方法は、一度飴を与えること。

そして、

「あッ・・・❤」

「お~っと!今日はここまでだ!」

 アインスは、触るのをやめた。

「えっ・・・・・隊長サマ、もっといじめてください・・・・❤」

「今日のところはお預けだ!5日間!待てたらもっといじめてやる」

「・・・・・・くぅん、わかりましたわ・・・・」

 

 飴を与えた後でお預け。とりあえず、これで一旦は、彼女の興奮を止めることができる。

「じゃあ、俺はいったん帰るから・・・」

「隊長サマ・・・・・今宵、せめて一緒に寝るのはいけませんの?」

「・・・・・ダメ。じゃあ、5日後の夜になったら、考えてあげるから」

「わかりましたわ・・・・隊長様。お慕い申し上げております・・・・」

「・・・おやすみ」

 アインスは、部屋を出た。

 

「・・・・・・すごい、女の子の柔肌・・・・甘い、匂い・・・」

 隊長は、依咲里を触った自分の手を見ていた。

「・・・・・・・いかんいかん。ちょっと吐いてくるか」

 アインスは、茂みに隠れて冷静になることにした。

 

 

 

 

 

 それから、5日間。アインスは、いつもと変わらない日常を過ごした。

そして、その夜。

 

「・・・ねえ、隊長様」

「・・・ん? なぁに、依咲里ちゃん」

 アインスと依咲里は、依咲里の部屋にいた。

「二人っきり、ですわね・・・」

「・・・嫌だった?」

「いえ、そうではないのです。そうではなくて・・・」

 灰島依咲里は、隊長に顔を近づけた。

「・・・・今日は、イジメてくださらないんですの?」

「・・・・!」

 アインスは、どうしてこんなことになったのか、経緯を全部思い出すのだった。

 

「・・・・ねえ、依咲里ちゃん」

「はい、なんでしょう?」

「依咲里ちゃんは、どうしてそんなに刺激的なのが好きなの?」

 アインスは、質問してみることにした。

「・・・・・そんなの、考えてみたこともありませんでしたわ・・・やはり、いけないことなのでしょうか・・・」

 あ、自覚あったのか。

「・・・依咲里ちゃん。その、従者の生活って、そんなに毎日刺激がなくて退屈なの?」

「・・・そうかもしれません。小さな頃、二穂様と木の上に上って遊んだ時には大目玉を食らって叱られましたし、いつもお作法や言葉遣い、その他の知識ののお勉強などばかりでしたし・・・・」

「そっか。それがずっと嫌で・・・・刺激が欲しかったんだ」

「そんな、嫌だなんて・・・・わたくしは、二穂様の従者でいられることが、この上ない幸せで・・・・」

「・・・・そっか」

 彼女も、わからないんだろう。完璧な従者として、二穂につき従い、二穂に愛されて従者として生きる道を選んで割り切っていた自分の人生に、不完全な自分を認め、可愛がってくれる一人の男に愛されて生きる道が突然見えてきたのだ。どちらも、依咲里が必死で押し殺してきた小さな子供の頃の感情なので、自分では選べないほど悩んで苦しんでいる結果なのだ。

 

「・・・・依咲里ちゃん」

「隊長様・・・・」

 依咲里は、アインスを抱きしめた。

「隊長様・・・・わたくしは・・・・この胸の中のモヤモヤする思いが、熱が、抑えきれないんですわ・・・・どうしたら、どうしたらよろしいのでしょう・・・・?」

 

 

「依咲里ちゃん、ちょっとごめんね」

 隊長は、依咲里の涙を舐めると、腕を払いのけて背を向けた。

「隊長様・・・?」

「えいっ!」

 アインスは、戸棚を動かして秘密の本棚の扉を開けた。

「それは・・・・・」

「これ、読んでみようよ」

 アインスが取り出したのは、少女漫画雑誌『はにかみ』だった。

「依咲里ちゃん。これ読んでるときは、自分がどうしたらいいか、自分で分かるんじゃない?」

「・・・・・ふふっ、そうですわね」

 依咲里は、本を受け取ると、ページをめくり始めた。

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

 依咲里は、ページをめくるたび、柔らかな笑顔を浮かべながら、頭の中で色んな妄想をしていた。

誰かから愛される、そんな気持ちを思い出していた。

 

「・・・どう?依咲里ちゃん」

「・・・隊長様は、不思議なお方ですのね・・・・貴方と話していると、この漫画を読んでいるときのような気持になるのです」

「ほう

「貴方だけじゃなくて・・・・二穂様に、褒められた時も・・・・華賀利に頼られた時も・・・他の皆と、お話しできた時も・・・不思議と、心の中があったかくなって、柔らかなのにたまらない刺激が、胸の中に沸き起こるのです・・・・この、刺激の名前、隊長様は知ってらっしゃるんですの・・・?」

 依咲里は、隊長を見つめ、目に涙をためていた。

 

 

「・・・・それが、『好き』になること、なんじゃないかな」

 アインスは、静かにそう言った。

 

「好き・・・・・恋のそれ、とはまた違うもぼなのですか?」

「一緒でもあるし、違うともいえる。好きって感情はいろんな形をしてるし、そして、それは『愛』と呼ぶこともできる」

 アインスは、ベットの上から降りた。

「依咲里ちゃんはね、自分で好きになったものを好きになってもいいんだよ。自分が愛したい、大切にしたいって思うことを、大切にしてもいいんだよ」

「・・・・・大切な・・・もの・・・・」

 依咲里は、はにかみを閉じた。

「君の意志で、君のやりたいように決めたらいいよ。これから先の未来は、君のものだ」

「隊長様・・・・」

「幸せになるんだよ、依咲里ちゃん。じゃ、また明日ね」

 そういうと、アインスは部屋を出て行った。

「・・・・・わたくしは・・・・・・・・」

 

 

 

 

 数日後。

 

「珍しいな。依咲里の方から、休みの日にハイキングに行きたいだなんて」

 ビスケット・シリウスのメンバーは、任務休みを利用して、高原の境界にハイキングに来ていた。

 

「二穂様。冬場で寒くなったとはいえ、部屋で一日中テレビゲームはいかがなものかと思いますわ。ですから、健康のために必要な運動を、普段から取り入れるべきではと思いまして」

「とはいえ、依咲里ちゃんって普段はインドアな子だと思ってたから・・・私も意外だわ」

「・・・・・わたくしも、もっと体力をつけなくてはと思いまして。ビスケット・シリウスの一員として、足手まといになるわけにはまいりませんの」

「まあ、さすがお姉様❤ 今でも十分御強いのに、なんという向上心!」

「ふええ、私も見習わなくちゃなぁ・・・・ひぇぇ」

「雪枝!高原の向こうに、なんとホウオウがいるらしいぞ!」

「ええっ!?ほんとに!?」

 二穂と雪枝は、端末を取り出す。

「あらあら、こんなところでも、ゲームが忙しいわね~」

「・・・さ、どのみちもう少し歩きます。行きましょう、二穂様」

 依咲里は、歩いて汗をかきながら、一人考えていた。

 

 

「(隊長様・・・・・依咲里は・・・・・どんなときでもそばにいてくれた華賀利や二穂様を、とても愛しております。それは、簡単に忘れられるほど淡いものではない、深く結ばれた絆でございます。二穂様が世界制覇を成し遂げ、お与え下さった恩をすべてお返しするまでは、わたくしひとりだけが幸せになるために二穂様を捨てていくことなど、できないのです。わたくしが、刺激を求めなくても・・・・二穂様や華賀利たちが、飽きることない幸せな笑顔と暖かい愛の刺激をくださります。わたくし、もう寂しくなんてありませんわ。ですから、隊長様・・・・自分ばかり満たされて隊長様に尽くすことができない不忠の依咲里をお許しください。そっけなく当たるときもありますが、どうか・・・・隊長として、わたくしたちと共に、戦ってください)」

 

 

 

 さらり、と温かい風が、アインスのひげをなでた。

「・・・・分かってるよ」

 

~終わり~

 

 

 

 

 

 

 




 どうも、お久しぶりです。アインスと申します。
 サンクリのスクスト合同誌で小織ちゃんと依咲里ちゃんのお話を書かせていただけたこともありまして、今回は依咲里ちゃんのお話を書いてみました。半年以上更新をサボって申し訳ありませんでした❤

 ・・・やっぱり、灰島姉妹ほど描写が難しいキャラっていないかもしれない・・・自分なりに解釈して依咲里ちゃんを書かせてしまいましたが、どうしても親愛編を見てしまうと過激になってしまうので、普段のツンツン口調が好みの隊長様にはそぐわない形になってしまったかもしれません。普段のツンデレも好きです。
 かなり私もプライベートでポケモン実況動画を作っていたりと忙しいので、更新がやはり遅くなってしまうかもしれないことをご了承ください。ここまで読んで下さりありがとうございました。
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