あの一件から一ヶ月がたった。いつも通りベッドで寝ていると看護婦さんがニコニコしながらやってきた。
「ど、どうかしたんですか?」
「橘君にとってとてもいい話を持ってきたの!実は橘君の義手が届いたの!」
「義手?でも俺そんなこと知りませんけど」
「あなたのお父さんとお母さんが頼んできたのよ」
「義手って凄く高いんじゃ……」
「そこまで高くないよ。そんなことより義手をつけるからついてきて」
看護婦さんについていき、俺はある病室に入った。そこには他の看護婦さんと先生がいた。
「やあ、そこに座って右腕を出して。義手をつけるから」
俺は先生の言う通りに右腕を出した。看護婦さんが本物の腕そっくりの義手を持ってきて、先生と一緒に俺の右腕につけた。義手の使い方を教えてもらった。
「君がある女の子に義足を作っていた技術を参考にしたよ。ニューロリンカーで制御すれば大丈夫。使いにくいけどすぐに慣れるよ」
「ありがとうございます」
「あとはリハビリかな」
「退院までに使いこなせるように頑張ります…」
それからリハビリを繰り返し、義手にも慣れることができた。そして退院の日がきた。俺は今まで世話をしてくれた先生と看護婦さんに礼を言って家に帰っていた。一年間も入院してたから勉強とか大変だろうな。そんなこと考えてると家の前に着いたみたいだ。
「ただいま」
「おかえり奨真君!」
「ただいま母さん。楓子は?」
「楓子はまだ………部屋に閉じこもっているわ。ご飯は一緒に食べるけど食べ終わったらすぐに部屋に行くの」
「楓子のことなんだけど俺に任せてくれないかな。時間はかかるかもしれないけど絶対にいつもの楓子に戻してみせるから」
「父さんの言ってた通りね。わかったわ。奨真君に任せる」
「そうそう、義手のことなんだけどありがとう」
「いいのいいの」
ガチャッ
二階の部屋のドアが開いた音が聞こえた。階段を見ると楓子が降りてきていた。
「楓子」
「っ!?」
楓子は俺の顔を見ると早足でリビングに入り、数秒で出てきて部屋に戻って言った。
「楓子!……もう。あの子喉が渇いたらああやって降りてくるけどすぐに部屋に戻るの」
「そうか。俺もとりあえず部屋に戻るよ」
部屋に入って机の上を見ると、去年俺が楓子にあげたネックレスのレプリカがあった。
「自分が受け取る資格はないってことなのか」
俺はネックレスを引き出しに直してベッドに寝転んだ。
「アンリミテッドバースト」
俺は無制限フィールドでエネミーを狩り続けていた。
「駄目だ!この程度じゃ全然駄目だ!もっと強いやつと戦わないと!」
「どうしたんだ?」
「っ!?」
振り向くと黒く尖ったデュエルアバターがいた。こいつ見たことがある。
「
「私のことを知っているんだな。無限の剣製」
あれから俺はレベルも上がり、レベル7まで上がった。死に物狂いでエネミーを狩り続け、対戦に勝ち続けていたらいつの間にかレベル7になっていた。そして俺についた二つ名が
「俺に何の用だ」
「君は以前、私のレギオンのメンバーと戦ったと聞いてな。君と戦って以来様子がおかしいから君に聞きにきたんだ。単刀直入に言うが、レイカーとリアルでも知り合いなのか?」
「ああ」
「君は楓子のことをどう思っているんだ?」
「決まってるだろ。楓子は俺の大事な家族だ。それ以外何もない」
「そうか。なら君に楓子のことを頼んでも構わないか?」
「ああ。楓子は俺がなんとかする」
「楓子と接触したいなら私のレギオンに入らないか?実は前から君をレギオンに勧誘しようと思ってたんだ」
「俺をレギオンに入れるために楓子を利用する気か!!」
「そんなことするわけがないだろう!!私は親友として本当に心配しているのだ!でも私ではどうすることもできなかった。だから君に頼るしかないのだ。楓子の件とレギオンの勧誘は全く関係ない。それにレギオンに入るのも無理強いはしない。入るかどうかは君次第だ」
俺は悩んだ。
悩み続けた。
悩み続け、俺は答えを出した。
「レギオンには入らない。けど用心棒としてなら構わないがそれでもいいか」
「構わない」
「わかった。じゃあ改めて自己紹介をしよう。俺はブラウンクリエイト。レベル7だ」
「私はブラックロータス。レベル9だ。これからよろしく頼む」
俺たちは互いに自己紹介をし終え、帰還ポータルに帰って行った。
「白夜にも相談するか」
俺はニューロリンカーを操作し、白夜にメッセージを送信した。
ニューロリンカーの時計を見るともう7時を回っていた。
とりあえず晩御飯を食べよう。俺は部屋を出て下に降りた。
学校の宿題をやっていると奨真からメッセージがきた。
『明日の午後、無制限フィールドに来てくれ。話はそこでする」
奨真のやつ急にどうしたんだ。まあいいか。
『わかった』
俺は宿題を終わらせて晩飯を食いに下へ降りた。