アクセル・ワールド 君の隣にいるために   作:フラっぴー

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第6話 副担任。初めての恥じらい

 

 

いつものように目覚ましの音で起き上がり、伸びをしてから制服に着替える。机の上に置いている鞄を持ち、部屋を出る。

 

 

「あ、起こさなきゃ」

 

 

下に降りる前に必ず楓子の部屋をノックする。返事がなかったら部屋に入り、布団の中を確認する。いつもは俺よりも先に起きてるみたいだが、今日は目覚ましを合わさなかったのか、まだ寝ていた。

 

 

「おーい、朝だぞー」

 

 

「ううん……ふあぁ……おはよう」

 

 

「おはよう、早く着替えてこいよ。下で待ってるから」

 

 

「はーい」

 

 

部屋を出ると、ちょうどジャンヌと会った。もう着替えてるみたいだった。

 

 

「おはよう、楓子ちゃんは寝てるの?」

 

 

「今起こしてきた。先に下に行っておこう」

 

 

「そうだね」

 

 

下に行き、リビングで母さんが作った朝ごはんを食べていると、着替えた楓子がリビングに入ってきた。

 

 

「今日はお寝坊さんなのね楓子」

 

 

「目覚ましかけるの忘れちゃってたわ」

 

 

「楓子も早く食べろー」

 

 

「はーい」

 

 

朝ごはんを食べて、顔を洗って歯を磨き、俺は玄関で楓子とジャンヌが準備を終えるのを待った。2人はやってきて、玄関を出て、学校に向かう。

 

 

「「「いってきまーす!」」」

 

 

3人で歩いてると、楓子がある話題を振る。

 

 

「そういえば今日新しい先生が来るらしいよ」

 

 

「そうなのか?」

 

 

「うん、クラスの子が言ってたわ」

 

 

「どんな先生なんだろうね?」

 

 

「噂だと凄い美人なんだって」

 

 

「「へえ〜」」

 

 

美人か……。何故かあの人が頭に出てきた。あの人は美人だったし、高校の教師をやってるって言ってたからな。

 

 

「ま、そんな偶然ないか」

 

 

「何が?」

 

 

「いや、なんでも」

 

 

そんな話をしてると、学校につき、俺たちは教室に入る。

 

 

「あ、橘!お前あれ知ってるか?」

 

 

「もしかして新しい先生のことか?楓子から聞いたよ」

 

 

「すっげえ美人らしいぜ!この俺が言うんだ!間違いない!」

 

 

「どこからそんな自身が出て来るかは知らんけど、俺は特に興味ないよ」

 

 

「うるせい!倉崎さんがいるからか!嫌味か!」

 

 

「あ、ちなみにスタイル抜群だってよ!」

 

 

「だから興味ないって」

 

 

「どうせ家でもイチャコラしてんだろ!目に見えるよ!」

 

 

ったく……こいつらはこんなんだから彼女もできないんじゃないか?

 

 

「男子は何やってんだか……」

 

 

「あはは……」

 

 

「席につけー!ホームルームを始めるぞー」

 

 

先生の声で俺たちは席に座る。ホームルームでは、俺たちのクラスに新しい副担任が来るらしいからその自己紹介らしい。

 

 

「入ってきてください」

 

 

「はい」

 

 

その声はどこか聞き覚えのある声で、扉の方を見ると、栗色の長い髪の女性が入ってきた。

 

 

「初めまして、桐ヶ谷明日菜です。今日からこのクラスの副担任を勤めることになりました。よろしくお願いします」

 

 

「あ、明日菜さん!?」

 

 

俺は不意に立ち上がって大きな声を上げてしまった。そのせいでみんな俺の方を向く。

 

 

「おい橘……お前なんでこの人のこと知ってんだよ!!」

 

 

「どういうことか説明しろおおおお!!!」

 

 

せ、説明しろって言われても……。なんて説明したら……。

 

 

「橘君には以前道案内をしてもらったのよ」

 

 

明日菜さんがなんとかカバーをしてくれた。その言葉に納得したのか男子たちは静かになる。

 

 

「このホームルームの間に聞きたいことを聞いておけよー。ただし、不純な質問は無しだぞ」

 

 

「桐ヶ谷先生は結婚してますか!」

 

 

「け、結婚は……まあ……はい」

 

 

結婚はしてるのか……。初耳だな。ま、そりゃそうか。俺も明日菜さんのことはまだ何も知らないしな。

 

 

「担当科目は何ですか!」

 

 

「担当科目は国語です。一応どの教科も出来るから分からないことがあったら何でも言ってね」

 

 

それからホームルームの間はずっと質問攻めだった。短い時間でよく大量の質問をしたな。

 

 

「ねえ奨真君」

 

 

「ん?」

 

 

「いつ道案内したの?」

 

 

「あ、あーいつだったかな?忘れちゃった」

 

 

「そ、そう?」

 

 

実際会ったのはギルガメッシュのことで楓子と喧嘩した後だから、このことを説明すると、楓子もあのことを思い出してしまう。だから俺は嘘をつくことにした。ごめんな楓子。

 

 

「よし、質問タイム終わり!桐ヶ谷先生、今日は初日ですので、このクラスでの授業態度を見ていてください」

 

 

「わかりました」

 

 

1時間目は数学だから、俺はニューロリンカーの学校用のファイルの中から数学のファイルを表示する。明日菜さんは教室の後ろで待機していた。

 

 

「あれ?ここどうだったっけ?」

 

 

「どうしたの?わからないところがあったらデータをコピーして送信して」

 

 

「あ、はい」

 

 

データをコピーして指を明日菜さんの方にスライドしてデータを送る。明日菜さんは問題を理解してわかりやすく説明してくれた。

 

 

「ありがとうございます」

 

 

「どんどん質問してね」

 

 

「桐ヶ谷先生ー!ちょっときて欲しいです!」

 

 

「はーい」

 

 

「むぅ……」

 

 

「ん?どうした楓子?」

 

 

「なんでもないわ」

 

 

楓子は俺から顔を逸らす。怒らせちゃったのかな……。そして、1時間目が終わり、休憩時間になると明日菜さんのところにクラスのみんなが集まる。俺と楓子はまだ席に座っている。

 

 

 

「な、なあ楓子」

 

 

「……何」

 

 

「もしかして怒ってる?」

 

 

「怒ってない」

 

 

いや、絶対怒ってるだろ……。もしかして明日菜さんとのやりとりのせいか?もし、そうなら楓子の機嫌を直さないと。

 

 

「なあ楓子。さっきの明日菜さんとのやりとりのことで怒ってるのか?」

 

 

「ふん……デレデレしちゃって……」

 

 

「いや、してないよ……。それに俺には楓子がいるから他の人にデレデレなんかする必要がないよ」

 

 

「じゃあ証明して」

 

 

「へっ?」

 

 

「は・や・く!」

 

 

「こ、こんなところでいいのか?」

 

 

「いいの!」

 

 

みんなは明日菜さんのほうに集中してるから見られる心配はないな。俺は楓子の顔に近づき、キスをした。あまり構ってあげてなかったから、楓子も寂しかったんだろうな。そんなことに気づけなかった俺は……楓子の彼氏失格かもな。

 

 

「ごめん……俺彼氏失格だよな」

 

 

「えっ?」

 

 

「あまり構ってあげられなかっただろ。だから楓子に寂しい思いをさせてしまった」

 

 

「そ、そんなことないわ!私も今日は……怒りすぎちゃった……。ごめんなさい」

 

 

「あー楓子が謝ることはない!全部俺の責任だ」

 

 

「あ、謝らないで!私も悪いから!」

 

 

「…………」

 

 

「…………」

 

 

無言になる俺と楓子。数秒後。

 

 

「「……ふふ」」

 

 

同時に笑ってしまった。

 

 

「あはは、俺たちってどこか似てるよな」

 

 

「そうね。あ、奨真君」

 

 

「今度はなんだ?」

 

 

聞き返すと、楓子は俺の耳元にやってきて、小声で話した。

 

 

「帰ったらまた楽しもうね」

 

 

「仰せのままに、お姫様」

 

 

なんて言ってみたけど、かなり恥ずかしいな。

 

 

「きゃっ!?」

 

 

「えっ?うお!?」

 

 

楓子はバランスを崩して、俺に倒れかかった。俺も後ろに倒れて大きな音がなった。背中に痛みが走るけど、前には柔らかい弾力があった。

 

 

「あらあら、橘君も男の子ね」

 

 

「倉崎さん大胆!」

 

 

「橘ぁぁ……」

 

 

前が見えないけど、見られてるのはわかる。これは非常にまずい。

 

 

「ご、ごめんね!大丈夫!?」

 

 

「あ、ああ」

 

 

それから学校にいる間、俺と楓子はみんなにあの場面を見られてしまったせいか、恥ずかしくて話すことができなかった。ていうかよく考えたら俺も楓子もこんなに恥ずかしい思いをしたのは初めてだと思う。サッチたちの前でも楓子は平気だったが、流石に今回はダメだったみたいだ。理由についてだが、俺にもわからない……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後。

 

 

 

家に帰った俺と楓子は、俺の部屋のベッドに座り込んでいた。

 

 

「な、なあ楓子」

 

 

「な、何?」

 

 

「ええっと……今日の弁当も美味しかったよ」

 

 

「そ、そう。ありがとう」

 

 

会話が続かない。いつもはなんともないんだけど、流石にあれをみんなに見られてしまったらこうなるか……。

 

 

「な、なんでこんなに恥ずかしいんだろ……。奨真君!」

 

 

「っ!?は、はい!?」

 

 

「キスして!」

 

 

「は、はいい!?」

 

 

「濃厚なキスをお願い!それぐらいしないと頭からあのことが離れないの!」

 

 

「わ、わかった!いくぞ」

 

 

俺は今までなったことがないくらいカチカチになって楓子の顔に近づく。けど、キスする寸前で止まってしまった。こ、こうなったらヤケだ!俺は楓子を抱きしめて押し倒し、キスをする。長い長いキスをして、俺は楓子を見る。激しくしたせいか、楓子の制服が乱れていた。

 

 

「なあ楓子。俺こんなにガチガチになったのは初めてだ」

 

 

「わ、私も……いつもならなんともないのになんでなんだろう」

 

 

「こんな状態でもいいのか?」

 

 

「も、もちろん!それに時間が経てば治るわ!」

 

 

「わかった」

 

 

俺は楓子を押し倒したまま、一緒に倒れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後。

 

 

「た、確かにいつのまにか治ったよ」

 

 

「でしょ?」

 

 

今日は父さんと母さんは帰ってこれないんだよな。晩御飯は自分たちでやれって事か。

 

 

「ねえ奨真君。ちょっとだけ未来の話をしよ?」

 

 

「未来?」

 

 

「ええ、いつ結婚するとか、どんな家に住むとか、子供は何人ほしいとか」

 

 

未来……か。

 

 

「未来の話なんてし出したらキリがないんじゃないか?」

 

 

「そうかな?じゃあ将来子供は何人ほしい?それだけ聞かせて」

 

 

「子供……か。1人だと絶対に寂しいと思うから、2人以上は欲しいかな」

 

 

「ふふ、じゃあ私も頑張るわ」

 

 

「ってまだ先の話だろ?」

 

 

「それもそうね」

 

 

晩御飯は……まだいいか。今はこの時間を堪能しよう。楓子は俺の胸に顔を埋めて幸せそうな顔をしていた。俺は頭をそっと撫でて眠りに落ちた。

 

 

 


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