加速世界から現実に戻ってきた。俺は約束通り、楓子に話を聞いてもらうように言った。
「約束だもんね。ちゃんと聞くわ」
「楓子、俺の右腕のこと自分のせいだと思ってるのか?」
「ええ、私があの時すぐに体を動かして入れば奨真君が私を助けようとして右腕がなくなることはなかったもの」
「確かにお前を助けて腕は無くなったけど、俺はお前のことを恨んでなんかない。それにお前じゃなかったらあそこまで必死に助けようとしなかった」
「でも!!私のせいで奨真君は大事な腕がなくなって奨真君の好きな物作りもできなくなった!!」
「楓子の命が無事なら腕の一本くらい安いもんだよ。あと新しい腕も貰えたしな」
「え?」
「楓子も気づいてるだろ。俺の右腕があること」
「ごめんなさい。全く気づかなかった」
「二年間この腕で過ごしてたのに……。まあいいや、これは義手だよ」
「義手?」
「そう、義手」
「これが義手」
そう言って楓子は俺の右腕の義手にそっと触れた。すると楓子の目から涙が出ていた。
「ごめんなさい、ごめんなさい。奨真君を私と同じようにしてしまって」
「え?」
「私は足がなかったから奨真君に作ってもらった義足をつけてる。私の場合は産まれた時からだからしょうがないけど、奨真君は違う。私が奨真君を私と同じようにした。本当に私は最低よね。奨真君も本当はこんな私嫌いよね」
「そんなこと!」
「ないって言い切れるの!!私は奨真君の大事な腕を奪った!!それだけじゃない!二年前病院で私はあなたの話を聞かずに頰を引っ叩いた!この三年間あなたのことをずっと避け続けた!!こんな私をあなたは嫌いじゃないって言い切れるの!!」
「言い切れるよ!!」
「っ!?」
「確かに楓子は俺に酷いことをし続けたかもしれない。頰を引っ叩かれたしずっと避けられた。でもそのおかげで俺は気づいたんだ。俺は楓子がいなかったらダメなんだってこと。楓子がいないだけで心が壊れそうだった。だから俺はお前がいなかったら何もできない人間なんだ!俺にはお前が必要なんだ!!だから!!いつもの楓子に戻ってくれ!!」
気づいたら俺は泣いていた。
「……しも」
え?
「私も!この三年間辛かった!!自分から避け続けたのに奨真君がいないと心が壊れそうだった!!私も奨真君と同じ!!奨真君がいなかったら何もできない人間なの!!今までのことを許してとは言わない。でも!!私にはあなたが必要なの!!」
俺はその言葉聞いて楓子思い切り抱きしめた。楓子も俺の背に手を回して抱きしめてきた。
「楓子!!楓子!!」
「ごめんなさい!!ごめんなさい!!奨真君!!奨真君!!!」
それから俺たちは抱き合いながら泣き続けた。一時間後、俺たちはお互い体を離した。
「ねえ奨真君。その……本当にごめんなさい」
「何度も謝るなよ。それに俺はお前のことを怒ってなんかいないから」
「……ありがとう」
「……なあ楓子」
「何?」
「前さ……幼馴染という関係を終わらせようって言ってただろ。前までは終わらせたくないと思ってた。今日で幼馴染を卒業しよう」
「どう……いう……こと?」
「その……これからは恋人としての関係になりたいと思って」
「ごめん。聞き間違えたと思うからもう一回言って?」
「ああもう!俺はお前のことが好きだからこれからは幼馴染としてじゃなくて恋人として付き合いたいんだよ!」
二回も言いたくなかったんだよ。告白なんて初めてだし……恥ずかしいし。
「ありがとう。私もこれからは恋人としてあなたと付き合いたいです!」
俺はその返事を聞いて、思わず楓子に抱きついた。
「きゃっ!?奨真君?」
「ありがとう。俺を受け入れてくれて」
「こっちの台詞よ。こんな私を好きだって言ってくれてありがとう」
俺は楓子から体を離したが、俺たちはすぐに体をくっ付けた。そしてそのまま俺たちの顔は近づいていったが。
「なんだか騒がしいけど何かあった?」
母さんが部屋に入ってきてしまった。ていうかこの状況かなりマズイんじゃ……。
「ええと……。母さんは見なかったことにするからごゆっくり……」
「「ちょっと待ってええ!!!」」
俺と楓子は母さんのところへ急いで向かった。