アクセル・ワールド 君の隣にいるために   作:フラっぴー

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第32話 バベルの塔

新たに『エルキドゥ』を加えた奨真たち。塔の中に入ると、そこは今までのダンジョンとは全然違う感じがした。

 

白夜「なんだここ?」

 

チユリ「なんかダンジョンというか……別の空間みたい……」

 

キリト「えっと……ダンジョン名は……『バベルの塔』」

 

各々で周囲を見回していると、黒雪姫はあることに気づき、キリトたちALOプレイヤーやイリヤたちに伝える。

 

黒雪姫「キリト。我々バーストリンカーには虚無を扱うものがいる」

 

アスナ「虚無?」

 

黒雪姫「この世界には来てないと思うが、そのバーストリンカーの体内では、時間経過がなく、自身の感覚すらも消える」

 

黒雪姫の言葉に白雪姫が追加で答える。

 

白雪姫「その中で過ごすことで、周囲の時間を感じることなく、いくらでも時間を飛ばすことができるのです」

 

キリト「それって、お前らにとってかなり脅威なんじゃ……」

 

キリトのその問いにはハルユキとタクムが答える。

 

ハルユキ「はい、現実世界で加速してバーストリンクする僕らにとっては、その力は脅威です」

 

タクム「待ち伏せという行為ができてしまうのです。もちろん、簡単にPKを可能にしてしまいます」

 

シノン「もしかして、この空間がその虚無空間ってことかしら?」

 

藤乃「この塔の扉が閉じてる時はそうだったみたいです。現に微かにその感覚は感じますが、今は効果がなくなってます」

 

アスナ「なら、ユイちゃんの時間はずっと止まってたってことになるのね」

 

黒雪姫「ああ、そういうことになる」

 

キリト「なら都合がいいぜ。ユイに『パパ、ママ、遅すぎます!』ってどやされないで済むからな!」

 

エルキドゥ「でも、彼女の元にたどり着くのが遅かったらどやされるかもね」

 

余計な一言を言ってしまうエルキドゥ。それを言われたキリトは一瞬黙ってしまい、困った表情をする。

 

レイン「エルキドゥ君、それは言っちゃダメだよ」

 

美遊「皆さん、あれを見てください」

 

美遊は何かを見つけたらしく、その方へ指差す。その先にあったのは上へと繋がるワープゾーンのようなものだ。それをシノンが視力を上げて見てみると、あの中に入ると無重力になるように見えた。

 

シノン「あの中に入ると体が無重力になるみたいね。あれで上に上がっていきましょ」

 

ワープゾーンへと向かおうとする奨真たち。その途中でカムイが立ち止まり、後ろを振り返る。気になったユウキはカムイの元へ駆け寄る。

 

ユウキ「カムイ?」

 

カムイ「いい加減姿を見せたらどうだい?」

 

ユウキ「誰かいるの?」

 

カムイが声をかけると、物陰から人が出てきた。その人物は黒と紫をメインにしたドレスを身に纏い、顔には仮面をつけた女性だった。そう、ペルソナ・ヴァベルだった。

 

カムイ「君がペルソナ・ヴァベルだね。まさかそっちから来てくれるとは思わなかったよ」

 

ユウキ「ヴァベル!」

 

ヴァベル「とうとうここまで来てしまったのね」

 

カムイ「ユイちゃんを助けるためだからね」

 

ヴァベル「そのユイがそれを望んでないとしたら?」

 

カムイ「何っ?」

 

ヴァベル「あの子が助けてほしいなんていつ言ったの?妾はずっとあの子と一緒にいたけど、一言もそんなこと言ってない。だから『それは彼らに心配をかけさせないためじゃないのかい?』……誰?」

 

ヴァベルの言葉を横から挟んだのは、皆と先に進んでいたはずのエルキドゥだった。ゆっくりとヴァベルのほうへと歩み寄るエルキドゥは敵意こそ出してないが、不思議な圧を放っていた。

 

ヴァベル「っ!?お前は……エルキドゥ!?何故お前がこの時代に!?」

 

エルキドゥ「僕を知ってるのかい?あぁそっか。知ってて当然だよね。千年もこのVR世界にいればね」

 

ユウキ「エルキドゥ、君はいったい」

 

エルキドゥ「彼女の正体がわかった気がするよ。たぶん彼女は千年後の」

 

ヴァベル「黙れ!!」

 

言いかけのところをヴァベルは大声で阻止する。彼女の正体に気づいたエルキドゥにそれを言わせないために。

 

エルキドゥ「…………まあ今は黙っておくよ。けど、この塔の最上階でまた会えば、君自身も言わざるを得なくなるよ」

 

ヴァベル「それは妾が決めることだ」

 

それだけ言うと、彼女はうっすらと消えていった。その場に取り残されるようになった3人。ユウキはエルキドゥにさっきの話を聞こうとした。

 

ユウキ「ねえエルキドゥ。君はなんでヴァベルの正体がわかったの?」

 

エルキドゥ「んーそうだなぁ。答えは最上階で言うとして、ヒントを言うなら僕はこの世界でずっと生き続けてるからかな」

 

そう言うと、エルキドゥは皆のもとへ戻るために足を進める。ユウキとカムイも続いて足を進め始める。

 

カムイ(この世界でずっと生き続けてる?まさか彼は……エルキドゥというエネミーは奨真君のいた未来で誕生したんじゃなく、それ以前から存在したのか?)

 

ユウキ「カムイ。たぶんだけど、ボクもカムイと同じことを考えてる」

 

カムイ「エルキドゥ。君はいったい何者なんだ」

 

そう囁いたカムイだが、その声は決してエルキドゥに届くことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方奨真たちはワープゾーンで上にあがり、先へと進んでいた。途中でエネミーと遭遇するが、難なく倒していく。

 

クライン「この中のモンスターはとびきり強いわけじゃねえな」

 

ハルユキ「そうですね。先に進みやすいですしラッキーですね」

 

中にいるエネミーは『ヴォークリンデ』『フロスヒルデ』『ヴェルグンデ』の3エリアにいるのと同じだった。先に進み続けてると、新しいワープゾーンが見えてきた。

 

白夜「おっ?見えてきたぞ」

 

クライン「よっしゃあ!俺様が一番乗りだあ!」

 

キリト「あ、おい待て!」

 

クラインを追いかけるようにキリトも走り出す。その時、ワープゾーン付近に違和感を感じた蓮が糸を伸ばして止めようとする。だが間に合わず、キリトとクラインは見えない壁のような物に激突する。

 

キリト「ぶっ!?」

 

クライン「ゲボッ!?」

 

蓮「間に合わなかったか……」

 

アスナ「キリト君!?大丈夫!?」

 

ロニエ「キリト先輩!?」

 

シリカ「キリトさん!?」

 

続々とキリトを心配する者は増えていくが、クラインの心配は全くされてなかった。クラインは激突のダメージよりも心のダメージの方が大きかった。

 

クライン「そりゃねぇぜ皆……」

 

ストレア「大丈夫?おっぱい揉む?」

 

クライン「ええっ!?」

 

ストレア「うっそぴょーん!」

 

クラインをからかい、笑顔でキリトの元へいくストレア。その光景を見ていたバーストリンカーたちはクラインにジト目を向ける。

 

クライン「な、なんだよ……」

 

チユリ「いやぁ……なんか単純な人だなぁ〜って」

 

オルタ「エロに反応しすぎ」

 

レミ「オブラートに包んでキモいです」

 

クライン「包めてねえよ!?皆俺の扱い酷くねえか!?」

 

クラインは泣きながら隅っこで拗ねはじめる。それを見たエギルは慰めにいき、復活したキリトは壁の解除方法を探す。

 

キリト「何か方法は……」

 

リーファ「あ、お兄ちゃん!?ここ見て!?」

 

リーファは壁の横にある柱に文字を見つける。キリトは皆に聞こえるように声を出して読み始めた。

 

キリト「なになに?装置の解除方法『異性同士でキス(5組)』以上」

 

全員「「「「はっ?」」」」

 

内容はダンジョンの雰囲気をぶち壊すような内容だった。それもそうだ。バベルの塔は暗い空気が漂うダンジョンなのに、この内容はあまりにも似合わなさすぎる。

 

しばらく固まっていたが、その空気を破る者がいた。それは小刻みにプルプルと震えていたオルタだった。

 

オルタ「な、な、な、なんなのよこれ!!!???」

 

ニコ「ふざけすぎだろ!?しかも5組ってなんだよ!?」

 

クロエ「なら私はイリヤと美遊とすればOKね。普段からやってるし」

 

アスナ「ま、まま待って!?ここに異性同士って書いてる……けど」

 

イリヤ「そ、そうだよクロ!あとさりげなく皆に暴露するのやめて!?」

 

リズ「あんたら普段からんなことやってるの?」

 

イリヤ「ややややってませんよ!?ねっ!美遊!!」

 

美遊「えっ!?えっと……うん」

 

顔を赤くし、目を逸らしながら美遊は頷く。実際イリヤたちがやってるゲームでは魔力供給のためにそういう行為をやったりしている。だがいくらゲームでもこのことは知り合いにバレたくない。だからイリヤは必死に嘘をつくが、イリヤと美遊の反応を見て、全員が気づく。

 

ストレア「んーとりあえず3組は確定じゃない?」

 

フィリア「というと?」

 

ストレア「キリトとアスナ、奨真と楓子、白夜とあきら!」

 

キリト・アスナ「「ええっ!?」」

 

白夜「恥ずかしいが、まあいっか」

 

あきら「なの」

 

奨真「先に進むためだ。恥ずかしがってる場合じゃない……よな」

 

楓子「私はいつでもいいわ♪」

 

キリトとアスナはストレアの発言に驚き、奨真と白夜は恥ずかしがる。あきらと楓子に至っては4人と正反対の反応をする。

 

早速キリトとアスナはキスしようとするが、途中でやめてしまう。2人はギギギッと首を動かして他の皆のほうへ振り向く。皆はドキドキしながらその光景を見ようとしていたのだ。

 

キリト「あの………できれば見ないでほしいんだが……」

 

リズ「別にいいじゃない。さっさとしちゃいなよ!」

 

アスナ「リ〜ズ〜?あと皆も後ろを向いてよ〜ね〜?」

 

全員「「「「は、はい……」」」」

 

アスナの黒い微笑みを見て、恐くなったのか全員言う通りにした。そして2人は気を取り直して、ゆっくりと顔を近づける。お互い唇を軽く触れさせる。そしてゆっくりと離していった。

 

アスナ「つ、次は……誰?」

 

楓子「では私と奨真君が」

 

入れ替わりで見えない壁の前に立つ奨真と楓子。キリトとアスナと同じようにしようと考えていた奨真だが、楓子がそうはさせなかった。楓子は舌で奨真の口の中をこじ開け、自分の舌を奨真の舌に絡めさせた。

最初こそ驚きはしたが、奨真はそれを受け入れて、自分からも舌を絡めさせた。1分ほど繰り返して、ようやくお互い離れた。

光景こそは見られてないが、音や声は聞こえるため、聞いていた人は顔を赤くしていた。

 

楓子「そこまで激しくしなくても」

 

奨真「最初にやってきたのは誰だ?」

 

アスナ「ふ、2人とも!もう大丈夫!?終わったの!?」

 

奨真「はい、終わりましたよ。じゃあ次は白夜たちだ」

 

白夜「おうよ!」

 

次の白夜とあきらは奨真と楓子のようなことはせず、軽く唇を当てる程度のキスで済ませた。3組はなんとか終わるが、まだ問題はある。残りの2組はどうすればいいのか。

 

リーファ「どうしましょう?」

 

ユウキ「なになに?皆どうしたの?」

 

後ろから遅れてやってきたユウキとカムイ、そしてエルキドゥ。3人に事情を説明すると、ユウキたちは皆と悩み始める。

 

ユウキ「んーあと2組かぁ」

 

エルキドゥ「僕は別にやっても構わないよ。それに僕は性別という概念がないから誰とやっても条件はクリアさ」

 

リサ「なんか私の師匠を思い出す」

 

式「あとデオンだな」

 

リサの師匠、それはシャルルマーニュ十二勇士の1人『アストルフォ』。理性が蒸発してる色々とぶっ飛んでる英霊級エネミーである。性別がわからないのはシュバリエ・デオンも含まれる。

 

アリス「私はそういうことをするならユージオとしかしません」

 

ティーゼ「わ、私もです!」

 

オルタ「どんだけそいつのこと好きなのよ」

 

エルキドゥ「ユージオってこの人のことかい?」

 

そう言ってエルキドゥは自分の身体から鎖を出す時と同じように、自分の身体から青い服を着た少年を取り出した。

 

???「痛っ!全く……災難だよ。急に見たことないところに飛ばされるし、緑の髪の子に連れ去られるし、キリトやアリスとも逸れるし……」

 

その人物とはキリトやアリスがエギルの店で言っていた戦死したはずのユージオだった。そのユージオが死人として復活して戦った人もいるため、また蘇ったのかと疑い始める。

 

アリス「ユージオ!?」

 

ユージオ「あっ!アリス!それにキリトも!無事だったんだ!」

 

キリト「ま、待て!お前本当にユージオか?お前はあの時死んだはずじゃ……」

 

ユージオ「えっ?酷いこと言うなぁ。僕はこの通り生きてるじゃないか。ってなんでロニエとティーゼが!?カーディナルと一緒にいたはずじゃ……」

 

5人が会話してる別の場所で、奨真はエルキドゥに話しかける。奨真はユージオと戦っているため、倒したはずのユージオが何故この場にいるのかが疑問で仕方ない。

 

奨真「エルキドゥ、あいつはキリトたちが言うには死人のはずだが」

 

エルキドゥ「うん、知ってるよ」

 

奨真「ならなんで生きてるんだ」

 

エルキドゥ「簡単だよ。こう考えればいい。別の世界(・・・・)のユージオと」

 

ユウキ「つまり、別の世界線ということだね」

 

理解できた奨真たちはもう一度キリトたちの方を見る。彼らは彼らにしかわからない会話をしている。

 

ユージオ「全く、カセドラルは危険だってあれほど言ったのになんで付いて来ちゃったの!カーディナルと一緒にいれば安全なんだよ!」

 

キリト「ちょちょちょっと待ってくれ!一度説明してくれ!」

 

ユージオ「キリトまで何言ってるの?僕らは禁忌を犯してセントラルカセドラルに連れていかれたじゃないか。それでアリスを探すために脱獄して、整合騎士と戦って、やっとアリスを見つけたら何故かロニエとティーゼがその場にいて、別の整合騎士に襲われてるところをカーディナルに助けられたじゃないか」

 

キリト(過去にあった出来事と全く同じだ)

 

ロニエ「その後のこともお願いしてもよろしいですか?」

 

ユージオ「えっ?あとはカーディナルに色々と聞かされて、アリスも僕らと一緒に戦うって言ってくれて、再出撃までの一週間はゆっくり過ごしたくらいだけど」

 

ティーゼ(本物の先輩だ。でもそれなら剣が反応するはずなのに)

 

奨真「キリト、彼は別の世界線のユージオだ」

 

キリト「別の世界線?」

 

エルキドゥ「パラレルワールドだよ。だって君たちの世界線ではたしかに彼は死んだからね。その証拠にティーゼの剣が反応してないだろ」

 

ティーゼが持つ青薔薇の剣は本来の持ち主が近くにいると強く反応する。持ち主であるユージオがすぐそばにいるのに反応しないのはそのユージオがティーゼが持つ青薔薇の剣の持ち主ではないからだ。

 

エルキドゥ「とりあえず彼にも事情を説明するから、ちょっと借りるよ」

 

エルキドゥは鎖でユージオを拘束して別のところに移る。しばらくして戻ってきた。

 

ユージオ「事情は色々聞いたよ。どうやら僕は君たちとは違う世界線から来たらしいね。とにかく、僕も協力させてくれ。親友の危機は放って置けないからね」

 

キリト「ああ!お前がいれば心強い!!」

 

ユージオという強力な助っ人も加わり、さらに勢力は増していく。一方、別の場所では白雪姫が何かを真剣に考えている。

 

白雪姫「未来から来た私たちと別の世界線からやってきたあの人。この時代のVR世界に一体何が起きてるの?」

 

蓮「お嬢、あくまで俺の勘だが、ヴァベルが関わっているんじゃないか?ヴァベルが突然現れるようになって、俺たちも未来からやってきた。ありえないことがどんどん積み重なっていって、このVR世界の世界線までも歪んでいった」

 

白雪姫「ありえなくもないですね。あとはあのエルキドゥというエネミー。強さだけじゃなく、素性も全くわからない」

 

蓮「一応警戒しておく」

 

白雪姫「お願いね」

 

こうしてユージオが加わり、そしてますます謎に包まれていくエルキドゥ。だが皆忘れていた。まだあと2組残ってることに。

 

 

 




ということで死人詐欺をしてたユージオ君に来てもらいました。

ユージオ「あの、僕死んでないから。生きてるから」

まあ別の世界線でのユージオ君ですからね。でも本格的に参戦しましたね。

ユージオ「そうだね。でも別の世界線のキリトたちかぁ。なんかワクワクしてきたよ」

それは良かった。作者である私も参戦させて良かったと心から思ってます。さあユージオ君、最後にあの宣伝よろしく。

ユージオ「わかったよ。いつになるかわからないけど、キリトとアリス、ロニエとティーゼ、そして本来の世界線の僕の5人のドタバタな一週間の話を番外編でやるから、楽しみにしててね!」

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