アクセル・ワールド 君の隣にいるために   作:フラっぴー

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こんにちはこんばんは!

フラっぴーです!

2020年で初の投稿ですね。
もう2月ですが……。
ここのところスランプがありまして、なかなかいい感じに書けませんでした。



第34話 精神世界

アリス「巡れ花たち!!」

 

ユージオ「エンハンスアーマメント!!咲け!!青薔薇!!」

 

キリト「ヴォーパルストライク!!」

 

 

 

アリスとユージオは後方からキリトを支援し、キリトは片手剣上級ソードスキル『ヴォーパルストライク』でクロムディザスターに突進する。

 

 

キリトの剣はクロムディザスターの胸に当たるが、装甲が硬いため貫くことができなかった。腕を掴まれて自由を奪われたキリト。だがこれがキリトたちの狙いだった。後ろからユージオの青薔薇の剣の氷がクロムディザスターを覆い始める。このままではキリトまで凍ってしまうが、その前にアリスの花がキリトとクロムディザスターを分離させた。

 

 

 

キリト「黒雪の言う通りだったな」

 

アリス「ええ、奴は相手を捕食して力を蓄える。なら誰かがわざと捕まり、捕食される前に動きを止めればいいだけのこと」

 

ユージオ「そして囮の人は巻き込まれる前にもう1人が助ける」

 

3人「「「俺(僕)(私)たちにかかれば敵はいないも同然!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3人がクロムディザスターと戦っている他所では奨真が災禍の鎧の侵食を必死に耐えていた。浄化の力を持つ謡でも、これだけ強力なら抑えられないようだ。

 

 

 

楓子「奨真君!負けないで!!」

 

エルキドゥ「メイデン、僕と代わるんだ」

 

ういうい「で、でも!」

 

エルキドゥ「いいから、代わるんだ」

 

ういうい「……はいなのです」

 

 

 

エルキドゥは謡と交代し、倒れてる奨真の隣に座り、手を奨真の胸のあたりに置く。すると、エルキドゥの身体から鎖が現れて奨真を拘束していく。

 

 

 

ういうい「エルキドゥさん!?」

 

エルキドゥ「まずは彼自身を動けないようにしなきゃいけない。大丈夫、この鎖は浄化の力も持ってる。あとは誰かが彼の精神世界に行けばかなり楽なんだけどね」

 

 

 

エルキドゥはそう言って楓子の方を見る。彼がしてほしかった内容をすぐに理解した楓子は頷き、奨真の隣に寝転んだ。

 

 

 

楓子「エルキドゥ、お願い」

 

エルキドゥ「君ならすぐに理解してくれると思ってたよ。さあ、彼を助けてやるんだ」

 

黒雪姫「何をするつもりだ?」

 

エルキドゥ「レイカーの意識をエイトの精神世界に移すんだ。僕の鎖は人の意識を他の人に移すことができるからね」

 

白夜「それで楓子に奨真を助けに行かせるということか」

 

エルキドゥ「理解が早くて助かるよ」

 

 

 

エルキドゥは楓子の額に手を置いて、楓子を眠らせた。そして奨真の身体に巻いている鎖の一部を楓子の腕に巻きつけた。

 

 

エルキドゥ「僕が抑えてる間に彼を助けるんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奨真「……ここは……?」

 

 

 

周りを見回す奨真。だが今自分がいるところがどこなのかが全く理解できてなかった。わかっているのは今いる場所はバベルの塔の中ではないということだけだ。

 

 

ピチャッ……ピチャ……と水溜りの上を歩いているような感覚。その感覚がどこを歩いてもずっとし続ける。

 

 

 

奨真「どこを歩いても水浸しだな」

 

 

 

しばらく歩き続けると、目の前にあるものが目に入った。それは奨真自身の中に眠っている災禍の鎧だった。

 

 

 

奨真「なんでこいつがここにあるんだよ!?とにかく早く壊さねーと!!」

 

 

 

奨真は心意技で武器を投影しようとするが、何故か投影できなかった。何度もなんども試すが、武器の形が出来上がる前に消えてしまうのだ。

 

 

 

奨真「な、なんで……」

 

???『無駄だ。今のお前では儂を壊すどころか得意の投影すらできん』

 

奨真「っ!?誰だっ!?」

 

 

 

どこからか聞こえてくる声。聞いたことのない声を聞いて焦り始める奨真。周りを見るが、どこにも人影はない。

 

 

 

???『目の前にいるだろう?』

 

奨真「まさか……災禍の鎧?」

 

 

 

奨真に語りかけていたのは、目の前の災禍の鎧『クロムディザスター』だったのだ。災禍の鎧に言語能力があったとは誰も思わないだろう。

 

 

 

奨真「今の俺に投影すらできないってどういうことだ!」

 

災禍の鎧『なら教えてやろう。今のお前は儂に支配されてるからだ』

 

奨真「な、何言ってんだ!俺はお前なんかに支配されない!!」

 

災禍の鎧『現実ではお前は儂と一体化しつつあるのにか?こうして儂がお前の前に現れたのはただあの小僧たちが戦っている偽物の儂と共鳴したからではない。お前自身の中にある憎しみもある』

 

奨真「俺自身の憎しみ?」

 

災禍の鎧『あの白いやつ……名前は忘れたが、あの女を助けられなかった時、金ピカに全く歯がたたなかった時、お前は自分の弱さを憎んだはずだ。そういう憎しみから消滅したはずの儂を呼び戻したんだよ』

 

奨真「それは……」

 

 

 

否定できなかった。何故なら災禍の鎧が言ったことは全部事実なのだから。ズバズバと正論を言われて、奨真はだんだん追い込まれていく。

 

 

 

災禍の鎧『小僧。力が欲しいか?誰にも負けない力が欲しいなら、儂に全てを任せてみるがいい。お前が守りたいものも守ってやる』

 

奨真「俺は……」

 

 

 

災禍の鎧は形を崩して、ドロドロになって溶けていく。泥となった災禍の鎧は奨真の身体を少しずつ覆っていく。奨真自身、抵抗するのもやめて全て災禍の鎧の意のままにしていた。

 

 

 

奨真(……ごめん皆………………ごめん…楓子)

 

 

 

何もかも諦めて、全部災禍の鎧に任せようとした時、一瞬だが光が見えた。その光は徐々に大きくなっていき、奨真を災禍の鎧から守るように覆った。寄生しようとしていた災禍の鎧は強制的に奨真と分離させられた。

 

 

 

災禍の鎧『何っ!?』

 

???「はぁ……はぁ……なんとか……間に合った……」

 

災禍の鎧『き、貴様は!?創風神ヘズ(・・・・・)!?いや、そんなはずない!!あいつら6人は封印されたはず!!』

 

???「誰と勘違いしてるのかは知らないけど、あなたに奨真君は渡さない」

 

 

 

分離させられた災禍の鎧は元の形に戻るが、まだ動揺していた。鎧が言う『創風神ヘズ』というのが何なのかはわからないが、鎧にとっては驚異的な存在なのだろう。

 

 

 

???「奨真君、大丈夫?」

 

奨真「……だ……誰………だ」

 

???「私よ、楓子よ」

 

奨真「楓子…………楓子!?」

 

 

 

思わず声を荒げて叫んでしまい、薄れていた意識が完全に覚醒した。それもそうだ。自分の精神世界に楓子がいるのは普通はありえないからだ。奨真は立ち上がり、楓子の元へ駆け寄る。

 

 

 

奨真「げ、幻覚なのか?それとも本物?」

 

楓子「もう、何言ってるの?本物よ」

 

奨真「でもどうやってここに……?」

 

楓子「エルキドゥが手伝ってくれたの。もう少しすれば彼の鎖が鎧を拘束するはずよ」

 

災禍の鎧『貴様……よくそいつといる女か。何故貴様にヘズの加護があるんだ!!』

 

楓子「さっきから何を言ってるの?そんな人知らないわ」

 

災禍の鎧『忌々しい六神(・・)め!封印されてもなおそいつらの味方をするのか!!!』

 

 

 

さっきから災禍の鎧が言ってることは奨真も楓子も理解ができなかった。『創風神ヘズ』や『六神』など知らないワードがあったからだ。災禍の鎧が声を荒げていると、突然鎖が現れて鎧を拘束する。

 

 

 

災禍の鎧『ぐぉ……この鎖は……エルキドゥか!!』

 

奨真「さっきはお前に支配されそうになったが、今度は俺の番だ」

 

災禍の鎧『ふん!貴様ごとき人間が儂の力をコントロールできるはずがなかろう!!』

 

奨真「ああ、今の俺ならな。でも、全てじゃなく少量の力ならできるかもしれない」

 

楓子「奨真君……」

 

奨真「さっきお前が俺に言ったことは全部正解だ。俺は自分の力の弱さを何度も憎んだ。その結果、お前を呼び戻してしまった。お前は俺の憎しみで呼び戻されたってことは、お前と俺の憎しみは同じってことだろ?つまり、同じ憎しみを持つもの同士なら力もコントロールできると思うんだ。まあほぼ賭けだがな」

 

 

 

一歩ずつ、少しずつ拘束された鎧に近づく奨真。目の前で止まり、話を続けた。

 

 

 

奨真「お前が俺たちバーストリンカーを憎む気持ちはわかる。憎しみや怒りなどの負の心意で勝手に呼び戻されて、倒されてを繰り返せば憎まないはずがないからな。でも俺はお前のその憎しみをどうにかしてやりたいと思い始めた」

 

災禍の鎧『ふざけんじゃねぇ!!そんな綺麗事並べて儂の機嫌をとる気か!!』

 

奨真「綺麗事と捉えてもいい。でも俺は本気だ。やり方はわかんねぇけど、絶対に見つけてやる。だから、それまでは大人しく眠っててくれ」

 

 

 

奨真は自分の心意で檻を投影し、その中に災禍の鎧を封じ込めた。さらに鎖で繋がれているから、身動きも取れないだろう。動かなくなった災禍の鎧の頭部に奨真は手を伸ばす。触れると、少しずつ災禍の鎧の負の心意が奨真の中に流れていく。5秒ほど触れてから離すと、少量の負の心意が奨真の全身を覆った。その時の奨真のデュエルアバターには少しだけ黒が混じっていた。

 

 

 

楓子「奨真君、その体……」

 

奨真「不思議な感覚だ。体に負の心意が混じってるのに自我を保てるし、力も感じる」

 

楓子「……飲まれたりしないよね?」

 

奨真「大丈夫だ。心配はいらない」

 

 

 

奨真は楓子の頭を優しく撫でる。すると今度は楓子の体に異変が起き始めていた。奨真の精神世界での活動時間に限界がきたのか、体が薄くなり始めた。

 

 

 

楓子「限界みたいね」

 

奨真「先に戻っててくれ。すぐに戻るから」

 

楓子「うん、待ってる」

 

 

 

そう言葉を交わすと、楓子の体は完全に奨真の精神世界から消えていった。奨真もその場から離れるように歩き始めていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先に戻ってきた楓子は目を覚ますと、すぐに体を起こした。そのまま奨真の方を見ると、奨真の体は先ほどと同じように茶色のアバターに黒色が混じっていた。楓子が目を覚まして数秒後に奨真は体を起こして目を覚ました。

 

 

黒雪姫「ほ、本当に奨真君なのか?」

 

白夜「ああ、奨真だ。アバターの色は変わってるが、間違いなく奨真だ」

 

エルキドゥ「なんとか制御できたみたいだね」

 

奨真「一時的だがな。でも、もう大丈夫だ」

 

 

目覚めた奨真は手をグーにしたりパーにしたりして、感覚を確かめていた。その時、奨真の前にメニューウィンドウが現れ、画面にはこう書かれていた。

 

 

奨真「オルタナティブモード?」

 

アルトリア「なんですかそれは?」

 

奨真「わからない、たぶんこの状態のことを言うのかもしれない」

 

 

試しに心意で武器を投影してみる。いつも使ってる『干将・莫耶』を投影すると、見た目はいつもと同じだが、その質はかなりの物となっていた。

 

 

奨真「心意が強化されたのか?」

 

クロエ「わかんないけど私のものよりもいいものだってことはわかるわね」

 

奨真「よし、試してみるか」

 

 

剣を構えて、檻の前に立つ。剣を思い切り振りかざすと、檻は一瞬で切断された。耐久値が無くなった檻は粉々に砕け散った。

 

 

ハルユキ「す、凄いです!誰も壊せなかったのに一瞬で粉々です!」

 

奨真「キリトたちのところにいってくる」

 

 

奨真は災禍の鎧に苦戦してるキリトたちの加勢に向かう。駆けつけてきた奨真をみたキリトたちは驚きを隠せなかった。

 

 

キリト「奨真!?」

 

アリス「もう大丈夫なのですか?それにその姿は……」

 

奨真「説明は後だ。こいつは俺がやるから、3人は下がってるんだ」

 

ユージオ「1人でなんて危険すぎる!!あいつは桁違いの力を持ってるんだよ!!」

 

奨真「心配するな。あいつの相手は慣れてる。それよりも早く下がって休むんだ!」

 

ユージオ「でも!」

 

キリト「ユージオ、奨真の言う通りにするんだ。疲れてる俺たちじゃ奨真の足手まといにしかならない」

 

ユージオ「…………わかったよ」

 

アリス「奨真。何かあったらすぐに応援を呼んでください。すぐに駆けつけます」

 

奨真「そうならないようにするさ」

 

 

ユージオは渋々了承し、3人はその場を離れてアスナたちヒーラーに回復をしてもらいにいった。1人残った奨真は災禍の鎧と向き合う。

 

 

奨真「よう、さっきぶりだな」

 

災禍の鎧「…………」

 

奨真「ってこっち側じゃ喋れないんだったな。さっきはお前の好きなようにされかけたけど、今度はそうはいかねえぞ」

 

災禍の鎧「グルァァァァ!!!!」

 

 

叫び声を上げて襲い掛かろうとする災禍の鎧だが、奨真は来るのがわかってたかのように攻撃を避けた。避けただけじゃなく、すぐに反撃できるように体制も整えていた。

 

 

奨真「人の話は最後まで聞きやがれ!!」

 

 

干将・莫耶で災禍の鎧の背中を思い切り斬りつける。装甲の硬い災禍の鎧がいとも簡単に傷跡がついた。それほど奨真の心意は強くなったんだろう。だが災禍の鎧は負けじとワイヤーを伸ばし、奨真の腕に絡ませる。そのまま自分の方へ引っ張り、HPを吸収しようとする。

 

 

奨真「舐めるな!!」

 

 

喰われる寸前でワイヤーを斬り落とし、なんとか回避する。災禍の鎧の両足の間をスライディングで通り抜けて背後へ周り、何度も斬りつける。

 

 

奨真「先を急いでるんだ。もうこれで終わらせる!」

 

 

『体は剣で出来ている。血潮は鉄、心は硝子。幾たびの戦場を越えて不敗。ただ一度の敗走もなく、ただ一度の勝利もなし。担い手はここに独り。剣の丘で鉄を鍛つ。ならば、我が生涯に意味は不要ず。この体は、無限の剣で出来ていた!!』

 

 

unlimited blade works(アンリミテッドブレイドワークス)!!!」

 

 

辺りは一瞬で荒野へと変わり、地面には無数の剣や斧、槍などが突き刺さっていた。必殺技もオルタナティブモードになったことで強化されたに違いない。干将・莫耶をポリゴン状に変換して、そのまま災禍の鎧に突っ込む。

 

 

キリト「まずいぞ!素手でいく気だ!?」

 

アスナ「待って!近くの武器が奨真君の手に吸い寄せられてるよ!?」

 

リズ「ちょ、ちょっとあれって!?レジェンド武器の『魔斧アイムール』じゃない!?」

 

 

奨真の手にはリズが言った武器『魔斧アイムール』があった。両手で持ち直し、思い切り災禍の鎧に振り下ろした。だがその攻撃は見切りやすく、簡単に避けられてしまう。斧は地面に叩きつけられると、その周りで軽く地震が起き、災禍の鎧は衝撃で浮き上がってしまう。

 

空中ではまともに動けない災禍の鎧に奨真はさらに追い討ちをかけるように斧で下からかちあげた。吹っ飛んだ災禍の鎧に大量の剣の雨を降らせた。まともに避けれない災禍の鎧は串刺しとなり、そのままピクリとも動かなくなった。

 

 

レミ「もうチートですよねあれ」

 

シノン「完全に無双してたわね」

 

アルトリア「倒したのでしょうか?」

 

楓子「ちょっと行ってくるね」

 

 

楓子はそう言って、1人で奨真のところへ向かう。辿り着く前に災禍の鎧は消えていったのが見えたため、安心する。奨真のところへ辿り着くと、彼のアバターは元の色へと変わっていった。

 

 

奨真「オルタナティブモードの効果は数分が限界か」

 

楓子「凄い力ね」

 

奨真「楓子?」

 

楓子「なんだか……私たちよりも先にいきすぎて見えなくなっちゃうくらい……」

 

 

寂しそうな目をして俯く楓子を見た奨真は、そっと彼女のことを抱きしめる。優しく頭を撫でて安心させるように囁く。

 

 

奨真「大丈夫だ。どんなことがあろうと、俺は皆が見えるところにいるし、遠くにもいかないよ」

 

楓子「……そうよね」

 

 

2人はデュエルアバターからダミーアバターになり、そのままキスをした。十数秒ほどのキスをして、2人は離れる。遠くから見えていたキリトたちはもちろん顔を赤くして、クラインは地団駄を踏み、エルキドゥはニコニコとしていた。

 

 

アスナ「ねえ……あの2人っていつもあんな感じなの?」

 

黒雪姫「ああ。我々黒のレギオンでは日常茶飯事さ」

 

あきら「見慣れたの」

 

イリヤ「なんていうか……高校生って凄いですね」

 

 

それぞれ感想を述べていると、ユージオが天上を見て円盤が降りてくるのを見つける。すぐにみんなに伝えて、全員円盤に乗って上へと登る。

 

 

 

だがこの時、誰も思ってなかっただろう。この後にキリトたちにとって絶望的な未来が待ち受けていることに。

 

 

 


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