アクセル・ワールド 君の隣にいるために   作:フラっぴー

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第15話 決着

 

 

 

 

目眩もなくなり、意識も元に戻ってきた僕は奨真さんのところに駆け寄った。

 

 

 

「奨真さん!どうしてここに?」

 

 

 

「ん?サッチに言われてきたのもあるが、途中であいつを見つけてな」

 

 

 

奨真さんの目線にはフードを被った灰色のデュエルアバターがいた。

僕はあいつを見た瞬間目眩がして……。

 

 

 

 

「あいつは人を操る力を持っている。気をつけろ」

 

 

 

 

「は、はい」

 

 

 

 

「全く……次から次へといろんな人が来ますね」

 

 

 

 

「クロウ。お前にこれをやる」

 

 

 

奨真さんは靴型の強化外装をストレージから取り出し、僕に渡してきた。

 

 

 

「これは?」

 

 

 

「ジェットレッグだ。ゲイルスラスターと一緒に使えばさらに早く飛べるはずだ」

 

 

 

「ありがとうございます!」

 

 

 

僕はジェットレッグを受け取り、空に飛んでいる能見のところに向かうために装着した。

 

 

 

 

「着装!!ゲイルスラスター!!ジェットレッグ!!」

 

 

 

「決着をつけましょう!!この世界に飛行能力者は二人もいらない!!」

 

 

 

 

僕は腕を前に出し、銀色の腕から光を放った。

 

 

 

 

「レーザーランス!!」

 

 

 

「くぅ!!」

 

 

 

まだだ!!もっとだ!!

イメージだイメージ!!

 

 

 

「イメージ!!!」

 

 

 

あと少しで届くところでゲイルスラスターの出力が下がり、速度が下がってしまった。

ゲージがチチチッと下がっていき、エネルギーゲージを輝かせていた最後の1ピクセルが、消えた。

能見はチャンスと思い、笑みを浮かべて右腕を振りかざそうとした。

もうダメだと思ったけど、師匠と先輩、奨真さんの声が聞こえた。

 

 

 

 

『………さあ、鴉さん。もう少し』

 

 

 

 

『………ほら、頑張れ。もう少しだけ』

 

 

 

 

『………お前の力はこんなもんじゃねえだろ』

 

 

 

 

三人に右腕を引かれ、背中と肩を押された感じがしてゲイルスラスターのゲージがチチチッとまた増えていった。

そして残る力の全てを右手に集中させた。

 

 

 

「なにっ!?」

 

 

 

「いっけえええ!!!」

 

 

 

僕は相打ちになっても構わない。

タクが勝って僕のポイントを渡して、僕の全てを託されるなら僕の戦いは無駄にはならない。

だが、あともう少しというところで最悪なことが起きてしまった。

 

 

 

 

「シトロン・コール!!!」

 

 

 

 

 

チユがベルから放った光を能見に浴びせて、HPを回復させた。

ひび割れ、焼け焦げた装甲を癒して、やがて全てが元どおりになってしまった。

 

 

 

 

「……なんで………なんでなんだよ!!チユ!!」

 

 

 

 

「………く、くは、ははは」

 

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

 

「見ろ、全く健気な忠誠じゃないか!?どうだ……これが、力!これが、支配するということだッ!!友情!?絆!?そんなもの要るか!略奪による支配!!それこそが、唯一、絶対的な力なんだ!!ははは………ははははははははは!!」

 

 

 

 

もうだめだ。

僕のHPはもう少ない。

満タンの能見に勝てるわけない。

 

 

 

 

「さあ………、決着の時だあああ!!!」

 

 

 

 

僕は目を瞑り、体が分散される覚悟をした。

その瞬間……。奇跡が起きた。

目を瞑っててもわかるくらいの光が能見から放たれていた。

僕は目を開け、能見を見ると翼が光、そして消えていった。

 

 

 

 

「な…………」

 

 

 

 

能見は両眼を見開き、喘いだ。

 

 

 

「な………ぜ……なぜ、僕の翼が、消えて……」

 

 

 

能見は翼を無くしたことにより、地面へと落下していった。

すると今度は僕の背中に何かが生えた。

この感覚は………。

 

 

 

 

「お……おかえり、ありがとう」

 

 

 

 

僕の背中から銀翼の翼が生えた。

そして落下している能見に突進した。

僕はゲイルスラスターとジェットレッグ、そして翼を使い、猛スピードで急降下した。

翼は無くなったけどHPは満タンだ。もうこれで決めるしかない!!

 

 

 

 

「レーザーランス!!!」

 

 

 

右手から放った光線が能見を貫いた。

そのまま落下した能見は地面に激突し、クレーターをつくった。

僕はスピードを落とし、地面にゆっくりと着地した。

僕とタク、チユは砂埃ができているところに向かった。

そこを見ると頭と胸郭、左手から再生しかけた短い触手だけの能見だった。

 

 

 

 

 

「…………なぜ。なぜ……僕の翼は消えるんだ」

 

 

 

 

「それは、あたしの力が『回復』じゃないからよ」

 

 

 

 

「ど、どういう………ことだ」

 

 

 

 

「あたし、バーストリンカーになった時からずっと不思議に感じてた。何であたしに『回復』なんて力を与えられたんだろう、って。でもね、この間ハルとタッくんがあんたと戦った時に、あんたをヒールした時気付いたの。あの時、回復したのはアバターと傷だけじゃなかった。右手の武器まで復元した。そんなのヒールじゃなくて修理だ。それでわかったんだ」

 

 

 

 

チユは息を吸い、能見にはっきりと告げた。

 

 

 

「あたしの力は『回復』じゃない。時間を巻き戻す力なの。技をかけたアバターの時間をさかのぼらせる。だからこの力を使えば、きっとハルの翼を取り戻せる。ダスクテイカーがシルバークロウのアビリティを奪う前まで時間を巻き戻して、全部なかったことにできる、って」

 

 

 

 

「そう…だったのか」

 

 

 

 

「……何だと……。裏切ったのか。この僕を裏切ったのか!!」

 

 

 

 

「裏切ってなんかない。最初は動画のことで脅されたから仲間になったけど、それ以降のことは動画と関係ない。自分の意思で従い、必殺技をレベルアップして巻き戻せる時間を延ばすため……そして今日のこのワンチャンスを狙うためよ。だからあたしは、あれからあんたの仲間になってなんかいない!!」

 

 

 

 

「全く……どいつも、こいつも、馬鹿ばかりか。お前らにはもううんざりだ。僕は帰るよ。全員のリアルをばら撒いて、始末は誰かに任せるさ。僕は転校して、また僕の王国を創る。さあバイス!僕を連れて離脱しろ!」

 

 

 

 

「それは無理な話だよ。この状況でできると思う?」

 

 

 

 

「なら……マインド!!僕を連れて」

 

 

 

 

「無理だな。無限の剣製に隙を作ることがどれだけ難しいか」

 

 

 

 

「……なら努力しろ!主力の僕がいなくなれば『研究会』だって困るだろう」

 

 

 

 

「それは違うな。お前は主力じゃない。主力はこの俺だ」

 

 

 

 

「じゃあそろそろ帰ろうかマインド君」

 

 

 

 

「ああ」

 

 

 

 

黒いアバターは地面の影に潜り、マインドは透明になって消えていった。

残された能見は自力でそこから逃げようとしていた。

 

 

 

 

「くそ、くそくそくそ!!認めない!!絶対に認めない!!」

 

 

 

 

「………哀れだな」

 

 

 

 

「誰か……誰でもいい。僕を助けろ!そうだ、ポイントをやるぞ。なんならレギオンにも入ってやる。だから」

 

 

 

 

「ハル……終わらせよう」

 

 

 

 

「………ああ」

 

 

 

 

僕はゆっくりと能見に近づき、右手に光を纏った。

 

 

 

「っ!?嫌だ!!失いたくない!僕の加速だ!!僕の力だ!!」

 

 

 

僕は右手を振りかざし、能見を真っ二つにした。

能見のアバターは消えて、空を舞って散った。

長いようで短かった戦いは幕を降ろした。

 

 

 

 

 

 


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