「よく眠ってるな」
「君の洗脳のせいでしょ？」
「そうだけど、この力は最高だ」
「でも、2人だけで大丈夫かい？」
「平気だ。あいつらは間違いなく追ってくるが、それまでには終わるさ」
「なら早速取り掛かろうか」
コスモスを助けるためにだいぶ奥に進んだが、まだ最深部が見えてこない。早く行かなきゃコスモスが危ないっていうのに！それに洞窟だからエネミーも襲ってくる。
「邪魔するなあああ！！！！」
「っ！？落ち着けエイト！！」
誰かが俺に話しかけてくるが、そんなことは耳には入らなかった。エネミーを倒すことしか頭にない。もっとだ……もっと力を……一撃で倒す力を！！！
「まずいな……。エイトの様子がおかしくなってきた」
「グラフも気づいたか。少しだが、エイトの心が闇に染まっていってる。まるで……災禍の鎧みたいに……」
「災禍の鎧！？でも先輩！鎧は確かに消滅したはずじゃ！」
「確かにストレージにはなかった。けど、鎧を壊した時に、その破片が付いていたとしたら」
「破片が自身の一部になる……ということですか……」
「そういうことだ」
「っ！？ぐう……うぅ……ぁぁぁああ！！！」
突然体が悲鳴をあげだした。それ以外に憎しみも生まれてきた。加速研究会が憎い。力のない自分が憎い。憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い！！！！！
その瞬間、俺の意識は消えてしまった。
奨真side out
楓子side
「何あれ…………あれがエイトさん？」
「あれはもうエイトさんじゃない……。災禍の鎧だよ……」
「そんな……エイトさんが……あんまりなのです……」
「エイト！エイト！！」
「待てレイカー！！死ぬ気か！！」
「離してグラフ！！あのままじゃエイトが！！」
「1人で突っ込むんじゃねえ！！俺も手を貸す！ベル！お前って時間操れるんだよな！お前も残ってくれ！あとはデンデンも頼む！」
エイトが……クロムディザスターになるなんて…………。あんまりだわ……。なんでエイトが……奨真君が……。
「4人では危険だ！私も」
「いいから行け！！」
「っ！？……わかった。パペット！案内を頼む！」
「よし！ついてこい！」
ロータスたちは隙をみて、エイトを抜いて、先に進んだ。私たちがエイトを助けなきゃ！
「デンデン！お前は後方から弓で援護を！ベルは回復を頼む！」
「はいなのです！」
「わかりました！」
「なら私とグラフで」
「我が旗よ、我が同胞を守りたまえ！
必殺技を発動した声が聞こえて、そっちを見ると、先に進まずに残ってくれたフランがいた。フランのおかげでステータスが一時的だけど上がったわ。
「2人では危険です！私も一緒に！」
「いや、お前はベルの護衛を頼む！」
「ですが！」
「フラン！お願いね！」
「レイカーまで！も、もう知りませんよ！」
ベルの護衛をフランに任せて、私とグラフが突っ込んで、エイトを止めにいった。災禍の鎧になってもやっぱりエイト自身が強いから、かなり苦戦する。
「はああ！」
私は後ろからスライディングして、足を引っ掛けようとしたけど、軽く避けられて足を掴まれてしまった。私は宙吊りになり、身動きが取れなかった。
「バーチカルスクエア！！」
「フレイムトーレンツ！！」
グラフは正方形の形をした斬撃を飛ばして、メイデンは複数の矢を放った。エイトは怯んで、私の足を離した。私は尻餅をついて、グラフが私を抱えて一旦離れた。
「大丈夫か！」
「私は大丈夫。それよりも早くエイトを」
「皆さんくるのです！」
「「っ！？」」
「がああああ！！」
エイトは禍々しい剣で私たちに襲いかかってきた。咄嗟に避けたけど、すぐに私の方に襲いかかってきた。
「ヴォーパルストライク！！」
グラフの攻撃をまともに受けたのに全然ビクともしてなかった。ゲイルスラスターで避けたいけど、こんな狭い空間じゃ使えない。だから私は腕でガードしたけど、衝撃で吹っ飛ばされてしまった。
「きゃあ！」
壁に追い詰められた私は、動こうにも、衝撃が強すぎてまともに動けなかった。エイトはそれをみて剣を振りかざしたが、私には痛みがなかった。恐る恐る目を開けると、ギリギリで剣を止めたエイトがいた。
「レイ……カー……」
「エイト？エイト！！」
「意識が戻ったのか！？」
「なら私のシトロン・コールで！」
「グ……グルアアアアア！！！」
「ベル！下がって！」
エイトはまた剣を振りかざしたが、私はすでにそこから離れていた。その隙に、私は心意技を放った。
「スワールスウェイ！！」
「ヴォーパルストライク！！」
エイトは膝をついて、チャンスと思い、そのまま心意技を放ち続けた。その時、みんなが進んだ方からバイクの音が聞こえてきて、その方向からミサイルが飛んできた。
「師匠ー！アニキー！」
「アッシュ！？」
「アッシュさん！？」
アッシュがバイクで戻ってきて、エイトに突進した。エイトは突然の衝撃で、後退した。
「どうしてきたの！」
「師匠！俺だってアニキが心配なんすよ！！こんな姿になったアニキを放っておくなんて俺にはできねえっす！！」
「アッ…………シュ……」
「っ！？アニキ！！」
「ロー……タスを……連れ…て……こい………
「アッシュ！ダメよ！連れてきちゃダメ！！」
「アニキ……それはできねえっすよ………。それに、そんなのアニキじゃねえ。アニキは…こんなところで諦めちまう男なんすか……」
「アッシュ……」
「もう……自我を……保て……ない…早く」
「アニキのニセモンがああ！！てめえみたいなやつがアニキになるなんてワンハンドレッドイヤー早えんだよ！！ハウリング・パン・ヘッド！！」
バイクから何発ものミサイルを放ったアッシュはエイトに喝を入れていた。何発も喰らったエイトは足を滑らして倒れた。もう今しかない！アッシュが作ってくれたチャンスを無駄にするわけにはいかない！！
「ベル！！お願い！！」
「シトロン・コール！！」
ベルは必殺技をエイトに放ち、エイトはHPを回復した。けど、私たちの目的はそれじゃない。時間をさらに巻き戻して、エイトがクロムディザスターになる前にすること。私たちの作戦はうまくいって、エイトは元の姿に戻った。
「エイト！！」
「おいおい大丈夫か？」
「アニキ！」
「「エイトさん！」」
「エイト君！」
私はすぐにエイトに駆け寄り、彼の体を抱えた。でも、どれだけ揺すっても意識は戻らなかった。
「意識が戻る前に、災禍の鎧の破片を探そう」
私たちはエイトの体のどこかにある破片を手当たり次第探した。すると、エイトの背中にキランと光った何かが見えて、私はそれをエイトから引き剥がすと、それが災禍の鎧の破片だということがわかった。
「貸してくれ」
「ええ」
災禍の鎧の破片をグラフに渡すと、グラフは剣で破片を粉々にした。もうこれでエイトがクロムディザスターになることはないわ。
「ん……」
「エイト！」
「レイカー？あれ……なんで俺……」
「心配しなくていいわ。もうあなたはクロムディザスターになったりしないわ」
「アニキ！！大丈夫なんすか！！」
「アッシュ……ごめんみんな……迷惑かけたな」
「迷惑ぐらいかけろよ。その分俺たちがいくらでも面倒見るさ」
「そうよ。夫の面倒を見るのが妻の役目なんだから」
私はエイトを抱き寄せて、ぎゅっと抱きしめた。
「さて、お邪魔虫は退散するとしようぜ」
「はいなのです！」
「そうですね！」
「俺はいますよ！アニキのそばにいてえっす！」
「はいはい、アッシュさんはこっちー」
「は、離してくれベル！俺様はアニキのそばにいぃ！」
ベルがアッシュを引っ張って、フランがバイクを押して、みんな先に進んでいった。私はずっとエイトを抱きしめ続けた。
「レイカー、苦しい」
「嫌、離さない。心配したんだよ」
「ごめん……」
「許さない」
「どうすれば許してくれるんだ」
「もう……私たちの前から……いなくなろうとしないで」
「もしかして……
私は頷き、エイト抱きしめる力を強めた。もう離したくないという気持ちが私をそうさせた。
「あんなこと……私が許すと思ったの……。……バカ」
「ごめんな」
「もう、そればっかり」
「それしか言えないからさ」
「ふふ、もういいわ。けど、今日の夜」
「わかったよ………好きにしてくれ」
「ふふ、じゃあ進もっか。早くコスモスを助けなきゃ」
「ああ、そうだな！」
私はエイトに肩を貸して、ゆっくりと先に進んだ。エイトを回復させつつ、無理をさせないために。コスモス、少し遅れるけど、絶対に助けるから。