黒雪姫side
エイトをレイカーたちに任せて、残った私たちは先へと進んでいた。だいぶ奥へ進んでようやく最深部へとたどり着いた。そこには縛られて身動きが取れなくなった姉さんがいた。
「コスモス!!」
「やあ、遅かったね。ここまで来たのは褒めてあげよう。けど、もう手遅れさ」
「どういうことだ!」
「もうすぐで聖杯が復活するということさ」
「ああああああああ!!!!!」
バイスがそういうと、同時にマインドが姉さんを操り、苦しめはじめた。姉さんは悲鳴をあげて、とても苦しそうだった。その上を見ると、無数の光が集まり、形になっていた。
「完全に復活する前に白の王を助けるぞ!」
「ヴォーパルストライク!!」
「ライトニングシアンスパイク!!」
「レーザーランス!!」
「束なれ糸!ストリングランス!!」
「エクスカリバー!!」
私たちは遠距離技でバイスとマインドに攻撃し、聖杯の復活を止めにいった。だが、バイスが体の一部を盾にして、自分とマインドを守った。
「接近戦なら、ライトニングジゴスラッシュ!」
「スクラッチ!」
「ふん!」
「「えっ?」」
バイスはガードしてるのに、2人の攻撃を避けて蹴り飛ばした。その行動に2人も驚いて、避けることも防ぐこともできなかったみたいだ。その間にマインドは姉さんの力を利用し、聖杯を完全に復活させてしまった。
「先輩……あれが……」
「まさか……聖杯?」
「そのまさかさ!もうこの女には用はねえ!」
聖杯を手に取ったマインドは姉さんを放り投げた。地面に激突しそうになるが、クロウが飛行アビリティで地面に激突する前に、抱き抱えた。そしてマインドはまた聖杯を空に投げて、今度は呪文のようなものを唱えた。
「――――告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ
誓いを此処に。
我は常世総ての善と成る者、
我は常世総ての悪を敷く者。
汝三大の言霊を纏う七天、
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」
呪文を唱え終えると、聖杯からは無数の光を放ち、その光は外へと向かっていった。その中の一つが私たちの前に落ちて、少しずつ人の形になっていった。
「さてと、俺たちは退散しようぜ」
「そうだね、ネガ・ネビュラスの諸君。健闘を祈るよ」
「待て!……くそ!」
「黒の王。まずはこいつだ」
「動かないですね」
「しもべ、下手に動いたら死にますよ。あれは封印されたはずの英霊級エネミーの1人、クラスはバーサーカー『ヘラクレス』です」
英霊級エネミー?そんなものは聞いたことがない。でも、わかるのはメタトロンの言う通り、下手に動いたら確実にやられる。ここは……。
「みんな!撤退だ!今の我々ではこいつには勝てない!」
「ヴアアアアア!!」
ヘラクレスは声を上げて、私たちに襲いかかってきた。でも相手をしたらダメだ。今は逃げることに専念しなければ!
きた道を通って脱出するが、ヘラクレスの足が早すぎる。このままじゃ追いつかれて全滅だ。こうなったら。
「キング!エクスカリバーで洞窟を崩せないか!」
「出来ますが!崩すならそれなりに時間は必要です!」
「なら、クロウ!キングを抱えて、先に進め!キングは私たちが来るまでに準備をしていてくれ!」
「は、はい!」
姉さんをパイルに任せて、クロウはキングを抱えて、飛行アビリティで先へと進んだ。私たちの視界から見えなくなるくらい遠くへ行ったみたいだ。逃げ切るにはもうキングに託すしかない。
「マスター!どんどん追いつかれてきてます!このままじゃ!」
「みんな頑張るんだ!キングのところまでなんとしてでも走り切るんだ!」
「で、でもやばいですよ!」
「チッ!」
パペットは手につけた強化外装から糸を出し、後ろに糸で壁を作った。だが、ヘラクレスは力で薙ぎ払い、スピードも遅くなることはなかった。やはり、どんなことをしてもあのエネミーには通用しないみたいだ。
「パペット、何をしてももう無駄だ!逃げることだけを考えろ!」
私たちは走り続けると、ようやく力を溜めたキングが見えてきた。これに賭ける!全員がキングを追い抜くと同時に、力を溜めた全力のエクスカリバーか放たれた。
「エクス!!カリバー!!!」
あまりの威力のせいで、洞窟は崩れ始めた。あとはここから脱出するだけだ。走っていると、グラフたちと遭遇して逃げるようにいった。その先ではエイトと、エイトを抱えたレイカーも見えた。あとはルークたちだけだ。
走り続けて、入り口が見えてきた。洞窟に異変を感じたのか、ルークたちは洞窟の外に出ていた。全員なんとか洞窟を脱出することができたみたいだ。ヘラクレスも当分出てくることはないみたいだ。
「何があった?」
「聖杯が復活したのだ」
「はい、それでエネミーが出現して……」
「っ!?おい、あれはなんだ?」
グラフが空に指を指して、その方を見ると、聖杯から放たれた無数の光がこの加速世界全体に落ちていった。まさか……あんな怪物みたいなやつが次々に出てくるのか……。その一部が、また私たちの近くに落ちた。そこから赤い服をきた女の子が歩いて出てきた。変なことを言いながら……。
「ナーイス!ナーイス!ナーイスバディ!余はローマの皇帝だー。見よ!そこの者たちよ!このナイスバディな余を!」
「…………あれって?」
「エネミー……なのかな?」
「ただの女の子にしか見えませんね」
クロウとベル、パイルは順番にそう言った。パイルの言うようにただの女の子にしか見えない。まさかこの子も英霊級エネミーなのか?
「む?ポカーンとしててどうしたのだ?余はローマ皇帝『ネロ・クラウディウス』だぞ?嬉しくないのか?」
「いきなりそんなこと言われても頭が追いつかないの」
「で、あんたはエネミーなのか?」
「余を知らないのか!?余は英霊級エネミー、クラスはセイバー、ローマ皇帝の『ネロ・クラウディウス』なのだぞ!」
「んなこと急に言われても知らねえよ……」
エイトの言う事はもっともだな。あきらがさっき言った通り、頭が追いつかない。とにかくこの子は味方なのか?
「君は我々の敵なのか?それだけ聞きたいのだ」
「敵?なぜ余が主らの敵なのだ?」
「何もしないところを見ると、敵ではなさそうよ」
「ローねえ、フーねぇの言う通りなのです」
「そうか…。変なことを聞いてすまなかった。とりあえず我々は行くよ」
「離脱ポータルにか?すぐそこにあるからそこから帰ると良いぞ!」
「わざわざすまない。じゃあ我々は失礼するよ」
「礼には及ばぬ!」
私たちは英霊級エネミー『ネロ・クラウディウス』と別れ、現実世界に戻った。帰ったあとは英霊級エネミーについて調べなくてはな……。