「グアアアアアア!!!!」
なんだ……頭が……意識が持っていかれそうだ……。
あれは…………楓子…?おい……どこ行くんだよ……?待ってくれよ……置いてかないでくれよ!
楓子は俺から少しずつ離れて言っていた。俺はそのあとを追いかけ続けたが、楓子は止まらなかった。追いかけてる時、また頭が痛くなってきた。この感じは……クロムディザスターになった時みたいだ。
待てよ……待てって言ってるだろ!!!どこ行くんだよ……なんで俺を置いて行くんだよ……。
俺はいつのまにか手で楓子を押さえつけていた。その姿の俺は醜く最悪だった……。
「っ!?…………はあ……はあ……はあ……」
眼が覚めると、俺はいつもいる自分の部屋のベッドの上にいた。さっきのは夢だったのかもしれない。けど、あんな夢を見たせいで、呼吸は荒くなっていた。とりあえず落ち着くために、息を整えていた。
「とりあえず水を飲もう」
俺はベッドから降りて、部屋を出て水を飲むために台所に向かった。リビングに入ると、ソファに座った楓子がいた。楓子はリビングのドアが開いたときに俺に気づいて、こっちにやってきた。
「おはよう奨真君。よく眠れた?」
「…………ああ」
「奨真君?」
台所に向かって水を一杯飲むと、俺は楓子から逃げるようにリビングから出て行った。楓子はそんな俺を心配して追いかけてきた。
「大丈夫?顔色悪いよ?」
「少し……1人にしてくれ…」
俺は心配してくれた楓子を放って、階段を登り、部屋の中に閉じこもった。楓子に会うのがこんなに怖く感じるなんて……。俺は.いつのまにか楓子に会うことに恐怖を感じていた。俺から離れてしまうかもしれない。嫌われるかもしれない。そんなネガティブな思いが、俺を少しずつ変えていった。
楓子side
奨真君…………。なんだか様子がおかしかった。まるで、私から逃げてるみたいに。でもなんでそんなことをしてるのかがなんとなくわかっていた。きっと……クロムディザスターになってしまったから、また他の人を傷つけてしまうかもしれない。そういう思いが出てきて、奨真君は誰ともいたくないのかもしれない。
「ねえ楓子ちゃん、奨真君の様子がおかしかったよ?」
「きっと、昨日のことのせいね」
「ちょっと見てきますね!」
「待ってジャンヌ!今は…………そっとしておきましょう」
「でも!」
「その方が奨真君のためよ。今いっても、彼を無意識に傷つけてしまうかもしれない。お昼になったらまた様子を見にいくわ」
「わかりました……」
ジャンヌを説得して、とりあえず朝は様子を見ることにした。朝は過ぎて、お昼になっても奨真君は降りてこなかった。流石に放っておけなくなって、私は奨真君の部屋に向かった。ドアを優しくノックして奨真君に声をかけた。
「奨真君、入るよ」
ドアを開けて中に入ると、ベッドの上で体を縮こませた奨真君がいた。目元をよく見ると赤くなっていた。たぶん泣いてたのね……。私はゆっくりと奨真君に近づくと、奨真君は少しずつ離れていった。
「奨真君。ご飯くらい食べなきゃ体に悪いよ。奨真君の好きなものでもなんでも作ってあげるわ」
「放っておいてくれ……」
「そんな状態の奨真君を放っておけないわ。部屋から出たくないならおにぎりとか作ってあげるわ」
「頼むからもう放っておいてくれ!!」
奨真君は大きな声で私に怒鳴ってきた。昨日のことでここまで酷い状態になるなんて……。でも、こんな状態の奨真君を尚更放っておけない。私はまた声をかけようとしたが、奨真君は大きな声で話し続けた。
「怖いんだよ!もうクロムディザスターにならないとしても、誰かを傷つけてしまうかもしれない!レギオンのみんなを、白雪や綸を……誰よりも大事な楓子を傷つけたくないんだよ!!」
「奨真君、私の話を聞いて」
「だから!もう放っておいてくれ!!」
パチンッ!
私は見ていられなくなり、奨真君の眼を覚ますために頰を思い切り引っ叩いた。突然のことで奨真君も驚いていた。
「いいから話を聞きなさい!!奨真君は昨日あんなことが……クロムディザスターになってしまったから、またあんなことが起きるかもしれない。そう思ってるのね」
私が奨真君に聞くと、彼は小さく頷いた。
「確かに怖くなるのはわかるわ。けど、こんな状態になった奨真君を放っておくなんて私は出来ないわ!それにね、グラフも言ってたじゃない。迷惑ぐらいかけろってその時は私たちが面倒を見るって。あと、奨真君が思ってるより、私たちは弱くないよ。だから、何も怖がらなくていいの」
私は言いたいことを言って、奨真君を優しく抱きしめた。子供をあやすように頭を撫でて、奨真君の乱れた気持ちを落ち着かせた。やがて、奨真君は落ち着いて、顔を上げた。
「ごめん…………色々とありがとう」
「何かあったらいつでも私を頼って?私の胸ならいつでも貸すわ」
「わかった……。早速だけど、おにぎりを作ってくれないか?少しだけ腹減って…」
「はいはい♪塩でもいい?」
「なんでもいいよ」
「わかったわ」
私は台所に向かって、炊飯器からご飯を取り出して、3つほどおにぎりを作った。私はおにぎりを両手で持って、奨真君の部屋に入った。
おにぎりを渡すと、奨真君はばくばくとがっついていた。数分で食べ終えて、私は奨真君の隣に座って、デザートが欲しいか聞いた。
「奨真君、デザート欲しい?」
「そう……だな…」
奨真君は何故か顔を赤らめて欲しいと言った。私は何が欲しいか聞いた。
「何が欲しい?あ、もしかして私?」
冗談半分でそう言うと、奨真君は私に抱きついてベッドに押し倒してきた。突然のことで、私は頭が追いつかなかった。
「えっと……奨真君?」
「楓子だって言ったら……どうする?」
「へっ?」
私は思わず間抜けな声を出してしまった。奨真君は私の顔をジッと見つめていた。
「楓子に励まされてから、君が欲しいという感情が収まらない。だから……その……」
「……いいよ。いつもは私からだけど、今日は奨真君の好きにして?」
私は奨真君を抱きしめて、唇を重ねた。その後、私は奨真君の好きなようにされた。でも、1日で奨真君を元どおりにさせてよかったわ。