アクセル・ワールド 君の隣にいるために   作:フラっぴー

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第6話 構ってほしい皇帝様

聖杯が復活してから、いたるところに英霊級エネミーが現れるようになった。普通のエネミーと違うといえば、エネミーの方から襲いにきたりはしないことだ。ただ、こっちから仕掛ければ攻撃をしてくるが。まあこれはどのエネミーも変わらないな。

 

 

 

だが、英霊級エネミーの力はまだまだ謎だらけだ。そんなエネミーでもわかってることは、セイバー、バーサーカーというクラスがあること。けど、この2つだけじゃない気がする。

 

 

 

「ま、直接この目で確かめればいいか」

 

 

 

俺は塔から飛び降りて、ジェットレッグでうまく着地した。辺りを歩いていくと、待ち伏せしてたかのようにこの前のエネミーが出てきた。

 

 

 

「また会ったな!」

 

 

 

「お前はこの前の……」

 

 

 

「ほれほれ、言ってみるがよい!」

 

 

 

「確かネロだったか?」

 

 

 

「大正解なのだ〜!覚えてくれて余は嬉しいぞ!」

 

 

 

「っていきなり抱きつくな!」

 

 

 

「エイト……?」

 

 

 

っ!?この声は……

 

 

 

俺はブリキ人形のように首を回して後ろを見ると、黒いオーラを放ったレイカーがいた。アバターで表情はわからないが、ニッコリと笑ってるのだろう。その笑顔がものすごく怖い……。

 

 

 

「何してるのかな?」

 

 

 

「むっ?其方はこの前の」

 

 

 

「スカイレイカーです。よろしくネロさん。エイト、早くその子から離れて」

 

 

 

「「ひっ!?」」

 

 

 

俺は咄嗟に離れようとすると同時に、ネロもレイカースマイルに恐怖したのかすぐに離れた。そして近くのオブジェクトの陰に隠れた。

 

 

 

「こ、怖いのだ……」

 

 

 

「あらあら?怖がってるの?」

 

 

 

「はあ……、ネロ、こっちにこい。何か話があるんだろ?」

 

 

 

「う、うむ!そうであった!其方、余と1つ勝負しないか?」

 

 

 

「勝負?あのなぁ、神獣級エネミーとあまり変わらないお前と戦っても勝てねえよ」

 

 

 

「余はこの世界に来てからずっと暇だったのだー!相手してほしいのだー!」

 

 

 

「駄々っ子かお前は!!」

 

 

 

ネロは地面に転がって駄々をこねていた。その様子は本当に子供にしか見えなかった。

 

 

 

「わかったよ……。勝負すればいいんだろう?」

 

 

 

「本当か!なら早速戦うぞ!」

 

 

 

「レイカー少し離れていてくれ」

 

 

 

「わかったわ」

 

 

 

レイカーが離れたのを確認して、俺はガンブレードを持った。ネロも同じように赤い剣を出していた。

 

 

 

「では、こちらからいくぞ!」

 

 

 

「っ!?早い!?」

 

 

 

咄嗟に剣を交差させてネロの剣を防いだが、そのまま吹き飛ばされてしまった。なんて力なんだよ……。

 

 

 

「ガードしなかったらやられてた……」

 

 

 

「余は強いであろう!まだまだいくぞ!」

 

 

 

ネロは何度も剣を振りかざし、俺はそれを防ぐことしか出来なかった。力だけじゃなく速さもある。けど、必ず隙はあるはずだ。

 

 

相手を観察するために、ガードしながら相手の様子を見ていった。…………なるほど、ここが隙だらけだな。

 

 

 

「そこだ!」

 

 

 

俺はネロが剣を振りかざすタイミングに合わせてしゃがみこみ、足を引っ掛けた。すると、ネロはうまく引っかかり、体が地面に激突した。

 

 

 

「なぬ!?しまった!?」

 

 

 

俺はそのままネロを上に蹴り上げて、ガンブレードで地面に叩き落とした。これにはネロも驚いた様子を見せていたが、まだピンピンしていた。

 

 

 

「痛いのだ……。今のは油断したのだ…」

 

 

 

「その割にはピンピンしてるじゃねえか」

 

 

 

「それでも痛いものは痛いのだ!其方だってそうであろう!」

 

 

 

「その気持ちはわかるが……ってなんの話だこれ」

 

 

 

「そんなことはどうでもよい!」

 

 

 

「お前から始めたんだろ!!」

 

 

 

「とにかくいくぞ!」

 

 

 

俺は次の攻撃に向けて体制を立て直した。ネロの攻撃がくる直前で空から剣が降ってきた。

 

 

 

「誰なのだ!余は今この者と戦っておるのだぞ!」

 

 

 

「それは済まない。いや、そこの少年が気になってね」

 

 

 

「さっさと姿を見せるのだ!」

 

 

 

「君は怒りやすいのかな?まあいい、今そちらに行く」

 

 

 

辺りを見ると、ビルの上から赤い服をきた男が現れた。その男は俺を見ると、何か納得していた。

 

 

 

「なんだ?」

 

 

 

「なるほど、君だったのか」

 

 

 

「だから何が?」

 

 

 

「エイト、ネロ。その人は?」

 

 

 

「わからないんだよ。いきなり俺を見て何か1人で納得するし……」

 

 

 

「君は私と同じ力を持っている」

 

 

 

「同じ力?」

 

 

 

「こちらでは心意と言うのかな?こういうものだ。投影開始(トレース・オン)

 

 

 

「「っ!?」」

 

 

 

「おおー!剣が出てきたぞ!其方は手品師か!」

 

 

 

「君もこういうことをできるのだろう?」

 

 

 

「余のことは無視か!」

 

 

 

確かにそれは俺の心意技と同じだ。でもエネミーがプレイヤーと同じ技を使えるなんてありえるのか?いや、絶対にありえないはずだ。

 

 

 

「なんでお前が俺の技を……」

 

 

 

「これだけじゃないさ。君の必殺技も使えるよ」

 

 

 

unlimited blade works(アンリミテッドブレイドワークス)か?」

 

 

 

「そうさ。君は今なぜ自分と同じ技を使えるのか気になってるはずだ」

 

 

 

「ああ。普通はありえないからな。プレイヤーとエネミーが同じ技を使えるなんて」

 

 

 

「それはだな…………」

 

 

 

エネミーはそう言うと、少し間を置いた。そしてもう一度口を開くと、とんでもない答えが出てきた。

 

 

 

「正直私にもわからないのだよ。心意技が同じなのはあり得るが…」

 

 

 

「なんだそれ!!さっきの間はなんだったんだよ!!」

 

 

 

「あの、ずっと気になってたんですが……貴方は?」

 

 

 

あ、忘れてた。そういえばまだこいつの名前を聞いてなかった。人型で喋るということは、もしかしたら英霊級エネミーなのかもしれない。

 

 

 

「私の真名はまだ教えないが、クラスだけ教えておこう。私はアーチャーだ。今はアーチャーと呼んでくれ」

 

 

 

「アーチャー?ってことは弓兵なんですか?」

 

 

 

「ん?ちょっと待て、剣を作っていたのにアーチャーなのか?」

 

 

 

「私はアーチャーだが、どちらかというと白兵戦が得意なのでね」

 

 

 

なるほど、そういう英霊級エネミーもいるんだな。これで3つ目のクラスが明らかになったな。だが、まだアーチャーの目的を聞いていない。

 

 

 

「で、あんたの目的は?」

 

 

 

「君の必殺技を見せて欲しい」

 

 

 

「理由を聞こうか」

 

 

 

「君は私と同じ技を持っているからね。どんなものなのかこの目で見たいのだよ」

 

 

 

俺の技を見たい……か。それぐらい構わないが、それなら俺もアーチャーの技を見る権利ができるわけだ。まずはそれを伝えないとな。

 

 

 

「そのかわりお前の技も見せてくれ」

 

 

 

「構わないよ」

 

 

 

よし、これで成立だな。さっきのネロとの戦いでゲージが溜まっていた。ネロ……そういえばネロの声が聞こえないな。

 

 

 

「なあレイカー。ネロは?」

 

 

 

「ネロならあそこで……」

 

 

 

レイカーが指差した方を見ると、ダンボールの中に入って、『構ってください』と書かれた札を持ったネロがいた。何してるんだあいつ……。

 

 

 

「何してるんだ?」

 

 

 

「構ってほしいのだ……」

 

 

 

「はっ?」

 

 

 

「そこの者が出てきてから余の相手をしてないではないか!余のことは無視するし、結構辛いのだぞ!!」

 

 

 

「君を無視したつもりはなかったのだが……」

 

 

 

「思い切り無視してたではないか!!」

 

 

 

「ネロ、落ち着いて。ネロもこっちにきて会話に参加しよ?」

 

 

 

レイカーはしゃがんでネロと目線を合わせて、そう言った。すると、ネロはダンボールから出てきて、俺とアーチャーのところにきた。だが、何故か札はまだ持っていた。

 

 

 

「それで何の話なのだ?」

 

 

 

「今からエイトがアーチャーに必殺技を見せるのよ。ネロも見てみる?」

 

 

 

「うむ!」

 

 

 

さてと……始めるか。

 

 

 

 

 

 


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