聖杯が復活してから、いたるところに英霊級エネミーが現れるようになった。普通のエネミーと違うといえば、エネミーの方から襲いにきたりはしないことだ。ただ、こっちから仕掛ければ攻撃をしてくるが。まあこれはどのエネミーも変わらないな。
だが、英霊級エネミーの力はまだまだ謎だらけだ。そんなエネミーでもわかってることは、セイバー、バーサーカーというクラスがあること。けど、この2つだけじゃない気がする。
「ま、直接この目で確かめればいいか」
俺は塔から飛び降りて、ジェットレッグでうまく着地した。辺りを歩いていくと、待ち伏せしてたかのようにこの前のエネミーが出てきた。
「また会ったな!」
「お前はこの前の……」
「ほれほれ、言ってみるがよい!」
「確かネロだったか?」
「大正解なのだ〜!覚えてくれて余は嬉しいぞ!」
「っていきなり抱きつくな!」
「エイト……?」
っ!?この声は……
俺はブリキ人形のように首を回して後ろを見ると、黒いオーラを放ったレイカーがいた。アバターで表情はわからないが、ニッコリと笑ってるのだろう。その笑顔がものすごく怖い……。
「何してるのかな?」
「むっ?其方はこの前の」
「スカイレイカーです。よろしくネロさん。エイト、早くその子から離れて」
「「ひっ!?」」
俺は咄嗟に離れようとすると同時に、ネロもレイカースマイルに恐怖したのかすぐに離れた。そして近くのオブジェクトの陰に隠れた。
「こ、怖いのだ……」
「あらあら?怖がってるの?」
「はあ……、ネロ、こっちにこい。何か話があるんだろ?」
「う、うむ!そうであった!其方、余と1つ勝負しないか?」
「勝負?あのなぁ、神獣級エネミーとあまり変わらないお前と戦っても勝てねえよ」
「余はこの世界に来てからずっと暇だったのだー!相手してほしいのだー!」
「駄々っ子かお前は!!」
ネロは地面に転がって駄々をこねていた。その様子は本当に子供にしか見えなかった。
「わかったよ……。勝負すればいいんだろう?」
「本当か!なら早速戦うぞ!」
「レイカー少し離れていてくれ」
「わかったわ」
レイカーが離れたのを確認して、俺はガンブレードを持った。ネロも同じように赤い剣を出していた。
「では、こちらからいくぞ!」
「っ!?早い!?」
咄嗟に剣を交差させてネロの剣を防いだが、そのまま吹き飛ばされてしまった。なんて力なんだよ……。
「ガードしなかったらやられてた……」
「余は強いであろう!まだまだいくぞ!」
ネロは何度も剣を振りかざし、俺はそれを防ぐことしか出来なかった。力だけじゃなく速さもある。けど、必ず隙はあるはずだ。
相手を観察するために、ガードしながら相手の様子を見ていった。…………なるほど、ここが隙だらけだな。
「そこだ!」
俺はネロが剣を振りかざすタイミングに合わせてしゃがみこみ、足を引っ掛けた。すると、ネロはうまく引っかかり、体が地面に激突した。
「なぬ!?しまった!?」
俺はそのままネロを上に蹴り上げて、ガンブレードで地面に叩き落とした。これにはネロも驚いた様子を見せていたが、まだピンピンしていた。
「痛いのだ……。今のは油断したのだ…」
「その割にはピンピンしてるじゃねえか」
「それでも痛いものは痛いのだ!其方だってそうであろう!」
「その気持ちはわかるが……ってなんの話だこれ」
「そんなことはどうでもよい!」
「お前から始めたんだろ!!」
「とにかくいくぞ!」
俺は次の攻撃に向けて体制を立て直した。ネロの攻撃がくる直前で空から剣が降ってきた。
「誰なのだ!余は今この者と戦っておるのだぞ!」
「それは済まない。いや、そこの少年が気になってね」
「さっさと姿を見せるのだ!」
「君は怒りやすいのかな?まあいい、今そちらに行く」
辺りを見ると、ビルの上から赤い服をきた男が現れた。その男は俺を見ると、何か納得していた。
「なんだ?」
「なるほど、君だったのか」
「だから何が?」
「エイト、ネロ。その人は?」
「わからないんだよ。いきなり俺を見て何か1人で納得するし……」
「君は私と同じ力を持っている」
「同じ力?」
「こちらでは心意と言うのかな?こういうものだ。
「「っ!?」」
「おおー!剣が出てきたぞ!其方は手品師か!」
「君もこういうことをできるのだろう?」
「余のことは無視か!」
確かにそれは俺の心意技と同じだ。でもエネミーがプレイヤーと同じ技を使えるなんてありえるのか?いや、絶対にありえないはずだ。
「なんでお前が俺の技を……」
「これだけじゃないさ。君の必殺技も使えるよ」
「
「そうさ。君は今なぜ自分と同じ技を使えるのか気になってるはずだ」
「ああ。普通はありえないからな。プレイヤーとエネミーが同じ技を使えるなんて」
「それはだな…………」
エネミーはそう言うと、少し間を置いた。そしてもう一度口を開くと、とんでもない答えが出てきた。
「正直私にもわからないのだよ。心意技が同じなのはあり得るが…」
「なんだそれ!!さっきの間はなんだったんだよ!!」
「あの、ずっと気になってたんですが……貴方は?」
あ、忘れてた。そういえばまだこいつの名前を聞いてなかった。人型で喋るということは、もしかしたら英霊級エネミーなのかもしれない。
「私の真名はまだ教えないが、クラスだけ教えておこう。私はアーチャーだ。今はアーチャーと呼んでくれ」
「アーチャー?ってことは弓兵なんですか?」
「ん?ちょっと待て、剣を作っていたのにアーチャーなのか?」
「私はアーチャーだが、どちらかというと白兵戦が得意なのでね」
なるほど、そういう英霊級エネミーもいるんだな。これで3つ目のクラスが明らかになったな。だが、まだアーチャーの目的を聞いていない。
「で、あんたの目的は?」
「君の必殺技を見せて欲しい」
「理由を聞こうか」
「君は私と同じ技を持っているからね。どんなものなのかこの目で見たいのだよ」
俺の技を見たい……か。それぐらい構わないが、それなら俺もアーチャーの技を見る権利ができるわけだ。まずはそれを伝えないとな。
「そのかわりお前の技も見せてくれ」
「構わないよ」
よし、これで成立だな。さっきのネロとの戦いでゲージが溜まっていた。ネロ……そういえばネロの声が聞こえないな。
「なあレイカー。ネロは?」
「ネロならあそこで……」
レイカーが指差した方を見ると、ダンボールの中に入って、『構ってください』と書かれた札を持ったネロがいた。何してるんだあいつ……。
「何してるんだ?」
「構ってほしいのだ……」
「はっ?」
「そこの者が出てきてから余の相手をしてないではないか!余のことは無視するし、結構辛いのだぞ!!」
「君を無視したつもりはなかったのだが……」
「思い切り無視してたではないか!!」
「ネロ、落ち着いて。ネロもこっちにきて会話に参加しよ?」
レイカーはしゃがんでネロと目線を合わせて、そう言った。すると、ネロはダンボールから出てきて、俺とアーチャーのところにきた。だが、何故か札はまだ持っていた。
「それで何の話なのだ?」
「今からエイトがアーチャーに必殺技を見せるのよ。ネロも見てみる?」
「うむ!」
さてと……始めるか。