骸の翼   作:亜美

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第2章「幼年期の話」
少女は語る


ワタシはシンタのことを愛していた。

シンタもワタシのことを愛していた。

—そう、"あの時"までは。

 

「シンタ!ねえシンタ‼︎ どうして、どうしてワタシの前から居なくなっちゃうの‼︎ ワタシこれからどうすればいいの⁉︎ 父さんも母さんも■■■に殺されちゃったんだよ‼︎ ねえ、どうして、どうしてなの…。なんでワタシがこんな目に会わなきゃいけないの⁉︎ ねえ、シンタ、ワタシのこと、助けてよ…!」

 

シンタはワタシの前から姿を消した。

分からない。

なんで、どうして、()()()()()()()()()()()

 

でも、"神様"はワタシにチャンスをくれた。

シンタは程なくして帰ってきた。

でも、様子がおかしい。

気になって、知り合いに相談した。

 

『何、簡単なことさ。彼から()()を取り除けばいい。そうすれば、きっと元に戻るはずだ。』

 

ワタシは言われた通りにした。

何度も。

何度も何度も。

何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も、

 

終わるわけがなかった。

満たされなかった。

—否、理解の範疇を超えていた。

 

だって、その()()は、ワタシからシンタを奪った存在そのものだったから。

 

憎い。

憎い、憎い憎い憎い!

 

ワタシは怒りに任せて()()を排除した。

ああ、我が両祖よ。誇り高き無間の空白(ノーンブランク)救済の幸福(グラシアス)よ。

ワタシの罪を、お許しください。

 

そうして、2年が経った。

ワタシは、もう疲れ果てていた。

今まで、何度も何度も、シンタを、シンタではない"ナニカ"を、壊し続けてきたのだから。

正直、シンタと一緒に死ぬことも考えた。

 

そこに、()()()が現れた。

紛れもなく、一切の偽りなく、シンタだった。

だから、

—だから、ワタシは許したのに。許してあげたのに。

 

また、()()が邪魔をした。

 

「あ…、ワタシ…。また、シンタを…。」

 

殺してしまった。

衝動的に。

最早怒りすらなく。

ただ、まるで流れ作業のように。

 

ワタシの"運命"は、シンタがシンタでない限り、ずっとこのままだろう。


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