この素晴らしいキャンセルに祝福を!   作:三十面相

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今回も駄文ですが、温かい目で見ていただけると、幸いです。


走り鷹鳶とドMクルセイダー

 今日はウィズの店に来ていた。

 

「おぉ、貧乏店主かと思ったか? 残念我でした!」

「ぶっ殺されてぇなら、そう言えよ。ぶっ殺してやるからさ」

「何? 貧乏店主に良からぬ劣情を抱いてる少年よ、汝が我輩を倒せるのか?」

 

 刀を引き抜きながら、俺は本気でコイツを殺そうと決めた。

 というか、ああいうのに劣情を抱くのって結構普通じゃない? 俺は鈍感系主人公のように、何の劣情もなく、女性に話しかけるやつは絶対におかしいと思う。

 

「……それで? 今日はいかような用事があるのだ?」

「いいや、普通に暇だから来た」

「そうか……まぁ、今のオススメはこの『バニル人形』夜中に笑いだすという欠点があるが、悪霊を寄せ付けなくなる効果があるのだ」

 

 へぇ、結構凄いな。というか、お前、買えってか。

 

「この店の売れ筋の一つでもある。ちなみに余計な事をした貧乏店主は今、私の『バニル式殺人光線』を受けて、気絶している」

 

「お前、あんまりやり過ぎるなよ……あ、そういえば、アイツらが、確か、水の都のアルカンレティアに行くとか言ってたな?」

 

「ふむ、なるほど……だったら、この店主を連れてってはくれないか? じゃないと本当にお金が溜まらず、お前達に金を渡せない」

 

 そういえば、カズマが作ってる道具がすげぇ、売れるらしいな。ま、いいや。

 確か、今日行くらしいし、俺はウィズを背負いながら、先に進んでいった。

 

「……ふわぁ」

 

 欠伸をしているアクアを見つけ、俺達は馬車の待合場に行く事になった。

 そんな訳で、どんな馬車に乗ろう、最低でも六人乗れなきゃ困る……。 いろいろと探していたら、背中に居るウィズが透けだしてきていたので、カズマに。

 

「おい! ドレインタッチ!!」

「お、おう!」

 

 焦りながら、俺にドレインタッチをしながら、ウィズに送る。意識を取り戻したウィズは俺に何度も。

 

「ありがとうございます! ありがとうございます! でも、どうして私に、旅行なんて……」

 

「なんか邪魔だからっつってたな」

 

 なんて、一切、隠さずに言ったら。

 

「もう、バニルさんは素直じゃないですから……」

 

 とどうやら、別の捉え方をしたようだ。だが何も言わずにおこう。俺は無言で下ろして、なんというか、なんというかね……みたいな顔をしていた。

 

「……?」

 

 ウィズはどうやら意図を理解してないようだった。

 

 

 

 

―――――

 

 

 

 馬車の六人乗りがあったのだが、どうやら一つだけ席が先に取られていたようだ。なんでもレッドドラゴンの雛らしい。

 だから、一人だけ、荷台に乗らなきゃいけないのだ。俺は別に荷台でもいいのだが、とりあえずアクアの提案のじゃんけんにする事になった。

 

 結果。カズマがヤバい。確かに、カズマの運の良さは知っていたのだが、それでもあり得ない。

 今まで負けた事が無いと言っていた。あり得無くない? 俺は普段のじゃんけんは普通だけど、何かが掛かると途端に弱くなる。本当にこうなるのは、なんでだろう。

 

 ちなみにアクアが『ブレッシング』という運を上げる魔法を使ったが、結局、無意味だった。

 

「なんでよー!! チートよ! そんなのチートよ! アンタ、最初からのチート持ちだったの!? だったら、返してよ、こんな素晴らしい恩恵を授かった事を!! 私を天界に帰してぇぇ!!」

 

 なんて駄々を捏ねだすアクアに対して、カズマがブチ切れた。

 

「バカかお前!! 俺のチートはじゃんけんに勝つ能力か!!? バカか!! こんなのでどうやって魔王を倒すんだよ!!?」

 

「もういいわ! リュウトじゃんけんよ!!!」

 

「えぇ? 俺、ジャンケン弱いんだよな……」

 

 そう言い、俺とアクアがじゃんけんをした――――。

 

 

 

 

―――――

 

 

 

 ゴドンゴドン、と馬車が揺られている。レッドドラゴンと戯れるめぐみん。膝にちょむすけを乗せるウィズ。

 身を乗り出しながら、外を眺めるダクネス、その隣にカズマが居て、ウィズの隣に俺が居る。ちなみに荷台にはアクアが居る。

 

 俺達のいつも居る街から大分離れ、なんというか、冒険というのは、こういうのだろう。

 ずっとはじまりの街にいるのに、どうしてなのか、幹部が現れたり、機動要塞が現れたりして、正直に言えば、おそらく他の場所に移ったとしても、多分、怖い事に巻き込まれるんだろうな。

 なんて事を普通に考えていた。実際、絶対そうなるに決まってる、むしろ、そういう事に巻き込まれない事が無かった。

 

 ちなみに今回、水と温泉の都アルカンレティアに向かっているのは、湯治が目的だ。カズマが最近、死んで、生き返ったので、凄くねぇか、この言葉、生きてる内に絶対に言わない言葉だろ、これ。

 まあいいや。死んだので、それで生き返ったカズマの湯治が目的だ。

 

 そんな訳で、俺は心地よく揺らされながら、瞼が重たくなってきたような気がしてくる……朝が少し早かったからな……。眠そうに目を擦っていると。

 

「大丈夫ですか?」

「ん? 大丈夫……眠いだけ」

「あの、ドレインタッチで私に生命力を渡したからですよね……本当にすみません」

「いいや、ウィズの所為じゃねぇよ。俺は、俺の好きで――ふわぁぁ……」

 

 むっ、マズイ……眠くなってきた、本格……的に…………ん? なんか、柔らかい……枕? 何これ、凄い心地良い……。

 

「……あ、あの、リュウトさん……その……」

「ん……?」

 

 なんだろう、目の前に居るカズマの視線が凄く、羨ましそうにしている。なんだろう、何が羨ましいんだ? 眠ってるだけだぞ……。

 

 でも、ウィズもなんか、困って感じだったな……どういう事だ? ちょっとだけ、視線を変えてみよう。

 俺の視線の先にウィズの豊満な胸があった。つまりだ、俺の頭にはウィズの、たゆんたゆんがあるわけだ。

 

「…………まぁいいか」

「良くねぇよ!!!」

 

 カズマに突っ込みを受けて、逆の方に体重を預ける事にした……。それから、しばらく時間が経ち、カズマが何かを見つけたようだ。

 俺はカズマに聞いてみると、どうやら御者のおっちゃんが走り鷹鳶だと言っている。

 

「……おい、おっちゃん。それは――」

「っと、早とちりしないでくださいよ、お客さん、私が名づけた訳じゃないですからね」

 

 どうやら、おっちゃんの話によると、走り鷹鳶は、タカとトンビの異種間配合の末に生まれた、鳥類界の王らしい。

 ちなみに繁殖期に入ると、硬いモノに突撃する寸前で、避けるという求愛行動を取るらしい。

 

 だから、大体が、勝手に岩に激突したりして、特に何も心配は無いらしいし、もし、何かがあっても、後ろに俺達を護衛する為に冒険者も居るので、特に心配は無いのだ。

 

 そうして、どんどん土煙が俺の目から見ても、見えてきた。そして、俺はちょっとだけ焦りながら、おっちゃんに言う。

 

「おい! なんかあれ、こっちに向かってきて無いか!?」

 

 そうしていると、後ろの方から、ダクネスの声が聞こえてくる。

 

「あれ? おかしいな、アダマンタイトとかの凄まじい硬度の鉱石があるのかもしれないな」

 

 なんて言っていた。硬い、硬い、硬いかぁ……ちょっと待てよ……?

 

「おい! 見ろ! カズマ、リュウト! 何か、熱い視線で私を見て、凄い早さで襲い来るモンスターが居るぞ!!」

 

「お前の所為だぁぁぁ!! てめぇの硬ってぇ、筋肉の所為で、走り鷹鳶みてぇな、ふざけたモンスターが来てんだぞォ!?」

 

「おい、リュウト、私だって乙女の端くれなんだぞ。そんな風に言われては、ちょっと……この鎧には、アダマンタイトを少しだけ含んでいる、だから、そんな目で私を見るなぁ――!」

 

「お客さん! 止めさせてもらいますよ!!」

 

 と馬車を止めて、俺達は本来は戦わなくても良いのだが、この責任はどうやら仲間にあるのだから、戦わなきゃいけねぇだろ。カズマに目配せしながら、俺達は降りる。

 

「……チッ、降りるぞ!」

 

 そう言い、俺達は一斉に降りて、戦う。ウィズには馬車の中に居て貰う。おそらくこの中じゃ一番の戦力だ、だったら、御者のおっちゃんの護衛に回って貰う。

 

 戦うためにはそれなりのスペースというものが必要だ。ちなみに、そんなものを普通に無視して、飛び出そうとしてるクルセイダーが居る。

 凄く嬉々として、走り出した、元凶を見て、戦士風の男が。

 

「お、おい!!! そこのクルセイダー! アンタは関係ないんだ! 下がってろ!!」

 

 だが、歩みを止める事など、あるはずがないクルセイダー。

 

「あれは『デコイ』!! あのクルセイダーは護衛でも無いのに、それを使って、自らを囮にしてるんだ!!」

 

 アーチャー風の男がそう叫んでいる。

 正直に言えば、かなり申し訳ない気持ちで一杯だ、そんな風に賞賛しないで欲しい。ちなみに『デコイ』は一切使ってない。

 

「あ、あれだけの敵を前にして一歩も引かない……! どれだけ勇敢なクルセイダーなの!!」

 

 まったく違う理由で、褒め称える女魔法使い。やめて、本当にやめてください。

 ダクネスは頬を火照らせながら、後ろ姿だから、確認できないが、きっと凄い笑顔なのだろう。嫌だ。本当に嫌だ。

 

「護衛じゃない冒険者ばかりに危険な目に遭わせる訳にはいかねぇ!! 援護は任せろ! 『バインド』!」

 

 盗賊風の男がそう言い、援護とばかりに『バインド』を放つ。

 

「何っ!!」

 

 とっさに、本当にとっさにダクネスはその言葉に反応して、走り鷹鳶を庇うように、『バインド』を喰らう。

 『バインド』とは盗賊スキルで、縄で相手を縛るスキルだ。ダクネスはあっという間に手足を縛られ、地を這う。

 

「くう!! なんという事だ! このままでは、あのモンスター達に蹂躙されてしまう!!」

 

 嫌だ、聞きたくない。勿論、冷めた目でそれを見る。そして、盗賊風の男は。

 

「まさか! 俺が『バインド』でモンスターの群れに俺がターゲットとならないように……!? 援護のつもりが、かえって邪魔になっちまった!! ゆ、許してくれぇぇ!!!」

 

 悲痛に叫ぶが、決して、そんな理由ではない。

 言ってみれば、凄く自己中心的な考えで、そうなっているのだ。だが、状況が状況なだけに、おそらくそういう風に見えているのだろう。

 

 仕方ない事だ。だが、勘弁して欲しいという所である。

 

 本当になんというか、かえって邪魔して、すみませんでたぁぁぁぁ!!!




ここまで読んでいただきありがとうございます。


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