俺達三人はブラブラと歩いていた、正直に言おう、というか叫びたくなるぐらいに――。
「うぜぇ……アクシズ教……」
右を見てもアクシズ教、左を見てもアクシズ教。どこを見てもアクシズ教。一人みたら三十人は居ると思え、アクジェットとか無いのかなぁ……なんて思ったり、勘弁してもらいたい……。
なんでさっきから、執拗に勧誘してくるんだ? それに勧誘の仕方も仕方だ、友達のフリをしたりとか、襲われてるフリをしたりとか、小さな女の子がしたりとか……なんつーか、トラウマになるわ。
しかもというべきか、ダクネスがエリス教徒のお守りを出したら、いきなり唾を吐いたりするし、やだもう。
ちなみに、アクシズ教とは、マイナーな宗教らしいが、野盗や魔王軍に対して、自分はアクシズ教徒だと言うと、見逃して貰えるらしい。
それぐらいにイカれてる宗教団体だと思われてるのだ。なんというか、彼らはきっと悪気は無いのだろう、ただ、そうなるとよりいっそう性質が悪いという事に気付いて欲しい。
そうこうして、カズマも俺も我慢の限界というのが、あるので、ちなみにダクネスは喜んでるが、コイツは例外だ、気にしない。
教会の扉を開き、大声で叫んだ。
「「責任者だせーっ!! 説教してやるっ!!」」
そうしたら、掃除をしていた女性が。
「あら、どうなさいました、入信ですか? 洗礼ですか? それとも私」
「わ、私って……」
「何ちょっと照れてるんですか、冗談ですよ、初対面の女性に対して、何を本気にしてるんですか、頭大丈夫ですか?」
握り拳を作ってるカズマを傍目に俺はこの女性に対して。
「ここに眼帯つけた魔法使いと青髪のアークプリーストが来なかったか? 俺の仲間なんだ」
「あら、お連れ様でしたら、二人とも、奥にいますよ」
奥? なんで奥?
「それよりも、後ろのお連れさん大丈夫ですか? 子供達に石を投げられてますけど」
「は? あ、おい!! クソガキ共!! 何やってんだぁ!! シッ! シッ!!」
カズマが追っ払って、俺はとりあえず、しゃがみ込んでいたダクネスに対して。
「大丈夫か?」
「リュ、リュウト、カズマ。ここは本当にレベルが高いな、女子供にいたるまで……ハァ、ハァ……」
「お前……ちょっとエリス教のお守りしまっておいてくれないか?」
「断る」
そんなどうしようもないエリス教徒を無視して、再び、教会内へ。
すると、ほうきを掃いていた、女性が。
「お連れ様の一人はあちらにおられます。只今、当教会のプリースト達は出払っておりますので、あのアークプリースト様に懺悔室をお願いしております」
「カズマ、リュウト、私はめぐみんの方へ行ってくる」
「だったら、俺は一度、宿に戻ろうかな……」
「なんでだぁ!! お前も来るんだよ!」
ちょっと、だんだん面倒になってきたので、宿に戻って、温泉に入りたい俺。
耳を引っ張られながら、進んでいく、結構痛い。
懺悔室は二部屋あって、アクアが居る場所はどうやら鍵が掛かっているようで、仕方なく、普通に入らなければならない。
まず一人一人入らなくてはならないだろうから、カズマが入る。俺は待っていた。
しばらく時間が経ち、中から叫び声というか、泣き声が聞こえてきた。俺はなんとなく察したので、めぐみんの様子でも見てくるか、という訳で、そちらに向かっていくと。
「リュ、リュウト……早くここから出ましょう。早く!! 一刻も早く!!」
「わ、わかった! わかったから! その必死さは十分理解できるから!」
うん、確かに、こりゃトラウマもんだ。あのめぐみんですら、こうなんだからな……あのめぐみんですら、あの頭のおかしい爆裂娘ですら、アクシズ教徒のおかしさには勝てなかった。
「……カズマが戻ってきたら、もう宿に行くか」
それからしばらくして、カズマが疲れた顔で戻ってきた。
まあ先程、別の人が懺悔しに来てたりと、いろいろと大変だったのだろうなぁ、なんてちょっと思ってたり。
「んじゃ、俺そろそろ戻りたいんだけど、みんなもそうするんだろ?」
「そうですね、私はもう早く、宿に帰りたいです……」
「うむ、私も、今日はもう満足だ」
「それじゃ、行くか」
「私は、ここの温泉に入ってから、行くわ」
アクアだけ残り、他のみんなは帰る訳だ。
宿に戻る道中も、また宗教勧誘がしつこかったが、無視をし続けて、なんとかした。
もうしつこくて怖かった。そうして、宿に戻ると、ホカホカしたウィズが居た。
「あ、皆さん。お帰りなさい! ご心配をお掛けしました、先程、お風呂を頂いてきました。店員の方が教えてくれたので、入ってきたんですが、混浴の方はとても広いですよ。人が居なかったので、貸切みたいでした」
………………。つまり、もう少し、早く宿に戻っていれば……今頃、もしかしたら、背中を流してもらったり、できたかもしれなかったのかよ、もしかしたら、もしかしたら、どうにかなったのかよ!?
うわぁぁぁぁぁああああッッ!!
ガクッと膝から落ちる俺。
「……あ、あの、どうしたんですか? 今日の観光がそんなに疲れたんですか……?」
「……いや、そうじゃねぇけど……俺は正直、明日から宿から出たくない」
「あぁ、この街はいろいろとおかしい」
「アクシズ教徒……怖いです。紅魔族並みに恐れられてる理由が良くわかりました」
「わ、私は、明日も観光しようかなぁ……」
何言ってんだよ。もう嫌だ。それより、風呂に行くか……。
さっさと下着を取りに行って、そういえば、カズマと俺は同じ部屋だったな。
「カズマ、俺達、風呂に入るか」
「ん? あ、あぁ。入るか」
「聞こえましたよ。早く行ってください」
「お先に入らせて頂きましたので、カズマさんとリュウトさんもどうぞごゆっくり」
ウィズとめぐみんが答えてくれた。仕方ない……ダクネスの方をちらりと見て。
「俺達!!」
「早く行け」
ダクネスが冷たく言い放った。あぁ……。仕方ない……。
―――――
下着を取りに部屋へ戻り、そして用意をした後、俺達は寂しく温泉へ。誰も付いてきてくれなかったが、初めから期待などしてないし、関係ねぇし。それよりも、本日のメインイベント。
俺の目の前には、三つの入り口が存在している。
右から、男湯、混浴、女湯。
俺達は本能のまま、真ん中へと突き進む。混浴、そう混浴なのだ。
ようは合法的に覗きが――こほん、確か、広かったから、入りたいだけなんだからね!
脱衣場に入っていったら、服の入ったかごがあった。すーはー、落ち着け。この世界、俺をいつだって騙してきた……。
今回もおばあちゃんとか、そんなイメージなんだろう?
わぁってんだよ。
そうして、全裸になり、いざ中に入ろうとした瞬間、扉の前に行くと、声が聞こえてきた。
「忌々しい教団もこれで終わりだ……秘湯の破壊工作が終われば、あとは待てばいい……何、十年や二十年ぐらい、俺にとっては問題ない」
――なんだ? この悪の組織的な……。
あるある? それにしてもこの言葉だけでいくつかわかる事がある。
まず、忌々しい教団、これは言わずもがな、アクシズ教団だろう、間違えない。そして、十年や二十年ぐらい、と言っていた。
おそらく人間ではない誰かなのだろう。
「ハンス、いちいち、そんな報告しなくてもいいわ。それに私は湯治に来てるのよ? あんまり私を巻き込まないで欲しいわね?」
聞こえてきたのは、女の、それも間違いなく若い声だった。俺はタオルを腰に巻き。
「そう言うなよ、ウォルバク。正攻法じゃ、どうにもならないこの教団を潰せるんだぞ? 引き続き、報告するから、この宿で湯治しててくれよ?」
ガラガラ!! と勢い良く、俺達は入った。
「「ッ!?」」
突然、入ってきた俺達に驚愕していた男女二人だが、俺も驚いた。
何にって? あの女……たゆんたゆんがウィズと同レベルだったのだ! すげぇぇぇぇ!!!
男の方は湯船に浸かっておらず、腰にタオルを巻いて、お姉さんのそばで片膝をついていた。
茶髪で短く揃えた髪で筋肉質な男だったが、こっちはどうでも良い。
それよりも、赤髪のショートカットでスタイル抜群のこっちの方が、気になる。
俺達は即座に体を洗い終え、ジィー。とお姉さんの方を見ていた。
(バ、バレたのか?)
(さ、さぁ? どうかしら……)
ジィーと見続ける。
(ねぇ、私の方ばかり見てる気がするんだけど……)
(あぁ、ありゃ、疑いの目じゃなくて、好奇の目だな……)
その小声でボソボソと喋ってる男の言葉でお姉さんの方が湯船に深く浸かった。
チッ、余計な事を言いやがって、まあいい。そのしぐさはどちらかと言えば、グットだ。
(ね、ねぇ……)
(ま、まぁ疑われるよりは良いだろう! 俺、先に行って、仕事してくるから!!)
そのまま一切、湯船に浸からないまま男の方は温泉から出て行った。
勿体無い。少しぐらいは入れば良いのに、もしかしたら、入れない理由でもあるのかもな、まあ良い。
そんな余計な事を気にするよりも、あっちの方が重要視すべきだろう。
で、でも……なんかちょっとだけ、恥ずかしくなってきた……。
「あの、あなた達、ここの住人じゃなさそうね? もしかして旅行?」
「旅行と言えば、旅行ですかね……コイツがちょっと怪我をして、今回はその湯治に仲間と一緒に行ったんですよ」
「そうですよ、歴戦の傷と言いますか……」
その言葉にクスクスと笑いながらお姉さんは。
「私は、自分の半身と戦った時に、力を完全に奪いきれなくてね、それで、本来の力を取り戻すために、こうして湯治をしてるの」
「へぇ、ウチのアークウィザードが聞いたら喜びそうな単語ですね」
「ふふふ、あなた達の仲間って、もしかして紅魔族? そういえば、私が魔法を教えた紅魔族の子、元気にしてるかしらー? あぁ、そこら辺に私の半身が転がっていれば、こんな事しなくて、済むんだけどねぇ……」
……? なんか不穏な空気? いや、気のせい……か?
「あ、あと、君達、もうこの温泉には入らない方がいいわよ?」
と言い残してから。
「じゃあ、私はそろそろ上がるわ…………あ、あの、上がる時の無防備な時を見るのは、勘弁して欲しいかなぁ……」
「「お構いなく」」
ちょっとだけ、涙目になるお姉さん。仕方ない……二人して、後ろを向く。その後、ありがと、と言い残して――。
「はぁ、せっかく湯治してたのに、また別の場所探さないと……」
……今までの言葉を思い出せ。もしかしたら、この街をぶっ壊すような、そんな危険な施しをしてるかもしれないな……でも、今回は旅行に来たんだし、無視するべきだな。
忌々しい教団。正直、俺もそう思うし。
「ほう! 私達の屋敷も結構広いですが、やはり高級宿! 泳げるぐらい広いじゃないですか!!」
「おいめぐみん! 泳ぐのは、マナー違反だぞ。お、おい!? なんでタオルを剥ごうとする!?」
「ここは混浴じゃないですよ!! 何、今更恥ずかしがっているのですか。荒くれ稼業の冒険者の私達がそんなに女々しくてどうします!!」
「いや、その理屈はおかしい! というかめぐみんが男らしすぎる! あ、タオルがっ……!」
聞き覚えのある声が聞こえてくる。めぐみんがどうやらダクネスのタオルを剥いでるらしいな。もっとやって欲しいが、いかんせん見えないからな……。
スイスイと泳ぎ、女湯の方へ向かう。
女湯を隔ててるのは、天井の開いた壁。つまり、覗こうと思えば、覗けるのだ。だけど、俺はそこまで変態じゃない。
しっかりと節度を守る。だから、耳をたてる。
「それにしても、本来は物臭なあの三人を連れ出して、アクアがアンデットを引き寄せて、二人に討伐させたりしたかったのですが、こちらに来て、正解でした」
本来的にはそういうのが目的だったのか……カズマの方を見てみると、拳を握り締めていた。
「そういった理由で湯治に……まあ、あのまま街に居ても、そうはならなかっただろうしな、本当にアイツらどういう男なのだ……基本的に自堕落な癖に、魔王軍幹部と渡り合ったり、私が貴族とわかっても、態度が変わらなかったり……」
「シッ! ダクネス、それ以上は言うのは待ってください。この隣は混浴です。あの二人なら、男湯と混浴、どちらを選ぶか、すぐにわかるでしょう?」
「確かに、カズマは混浴だな。リュウトの方は微妙だが、おそらく混浴だろう。二人とも、大義名分があれば、堂々としてるヤツらだからな」
アイツら、ぶっ飛ばしてぇ!! だが、一切間違ってないから、文句も言えない。
「二人ともー! 居るんでしょう!! 壁に耳を当てて、ダクネスがどこから体を洗うか、想像して、ハァハァしてるのでしょう!!」
「お、おいめぐみん! どうして、私を引き合いに出す!!」
……答える義理は無い。カズマも何一つ、喋らず、無言で居ると――。
「おかしいですね……返事がありません……でも居ないはずが……」
「むっ、だが一向に返事が無いな……」
そのままずっと静かにして、やがて――。
「どうやら本当に居ないようですね、私とした事が、一方的に決め付けてしまいした、あとでジュースでも奢ってあげましょう」
「そうだな。アイツらはなんだかんだ、頼りになるヤツらだ、それに困ってるヤツは放っておけないようなヤツらだしな……」
二人がちょっとだけ沈んだ声音で話している、どうやら反省してるようだ。俺はちょっとだけ罪悪感に駆られ、離れようとした時だった。
「それにしても、めぐみん気になっていたのだが、その尻にある――」
「おっと、いくらダクネスでも、それ以上言うのなら、勘弁しませんよ!!」
バシャバシャと水の音が聞こえてくる。
「私のお尻を気にする前に、この自己主張の激しいモノをもっとコンパクトにする方法を考えてください!!」
「め、めぐみん、そこは、や、やめぇぇぇ――!」
その瞬間の動きは凄まじかった。
再び、戻り、俺達は耳を当てていたら――。
「今です!!」
「ふんっ!!」
「「ぐあっ!!?」」
突然の衝撃。俺達は一斉にぶっ飛ばされ、湯船へドボンッ! と落ちた。
「ほれ、見た事ですか! やっぱり居ましたよ!!」
「フッ、私の目に狂いは無かった、やはりアイツらは混浴に居た!!」
コイツらぁ……!!
「『クリエイト・ウォーター』!!」
「「ひゃああっ!」」
「いいぞ!! やったれぇぇ!!!」
俺が便乗して、笑っていると。めぐみんとダクネスが桶やら何やらを投げてきた、あとちょむすけも来た。
俺はとっさにキャッチすると、必死に落ちないように、俺にしがみ付いている。やっぱり水が怖いのか。
「おい、お前ら! 猫を投げるなよ!! 危うく湯船に落ちるところだったぞ!」
「その子はお湯を嫌がるので、私の代わりにたまには洗ってやってください!!」
水を怖がって、必死に爪を立てて、しがみ付く。正直に言えば、痛いが……。
「なんだよ、せっかくの温泉旅行なんだし、一緒に入ろうぜ。何、俺達は仲間、家族みたいなものじゃないか! それに二人とも、俺と一緒に風呂に入った事あるんだし」
「ああ、そういえばそうだったなぁ……」
知ってる、知ってる。
「この男! 普段は厄介者扱いしてる癖によくもぬけぬけと!!」
「お前は本当にヘタレなのか、度胸があるのか、さっぱりわからん!!!」
騒がしい風呂から上がり、ジュースを買って、飲みながら、皆の部屋へ戻ると。
「あんまりよおおおおおお!!! 私、ただ温泉に入ってただけなのにいいいいいいい!!!」
「ア、アクア様、災難でしたね、というかその、お願いですから、泣き止んでください……アクア様の涙がピリピリして痛いんです……」
「なんだ、なんだ。今日はどんな厄介事をしたんだ」
「厄介事ってどうして、私が悪いみたいに言うの! 私は悪く無いわ!!」
「その、アクア様が教会の温泉に入られたら、どうやら浄化してしまったようで……ただのお湯に変えられたようで……」
あぁ、そういえば、触れただけで、浄化するんだもんな、コイツ……。
「それよりも一番腹立つのは、管理人のおじさんが、『温泉を浄化した事は謝るわ! でもそれは仕方ないことなの! なぜなら私は水の女神アクアだから!!』……って言ったら、『フッ』って鼻で笑ってええ!!!」
俺とカズマがアクアの方を見て……。
「「フッ」」
「うわあああああああ!!」
「カズマさん! リュウトさん!」
ウィズに怒られちゃった。
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