この素晴らしいキャンセルに祝福を!   作:三十面相

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 久々の投稿です。


魔王軍幹部は敵ではありません

 謎施設をあとにし、めぐみんが寄りたい場所があると言って、服屋に来ていた。

 そこにいた、服屋の店主がマントを翻しながら、紅魔族らしく。

 

 

「我が名はちぇけら! アークウィザードにして上級魔法を操る者。紅魔族随一の服屋の店主!」

 

 

 またかよ……てかあれなんだろうな。こういう人種なんだろうな。この里の連中って。こう言わなきゃならない使命感にでも襲われているのだろうか、そんな支離滅裂な事を考えていると、カズマがしっかりと反応する。

 

 

「俺は佐藤和真と申します。というか紅魔族随一の服屋って凄いですね」

 

 

「まぁ、ウチしか服屋が無いからね」

 

 

「バカにしてんのか」

 

 

 キレあるツッコミだな、おい。まあこういう種族だってのは、結構前から知ってたろ? だからそこまで気にするなよ。という事を伝えると、カズマもなんだかんだ、順応してるのか、ため息を吐くだけで終わった。

 

 

「それで、どうしたんだい? 何か入り用なのかな?」

 

 

「実は、今着てるローブの代用が欲しくてですね。昔、ゆんゆんから貰ったローブなのですが、これ一着だと不便で」

 

「あぁ、丁度、染色が終わったのが、あるよ」

 

 

 そう言って、ズラリと並んだローブがある。めぐみんはそれを見て。

 

 

「とりあえず全部ください」

 

 

「お、随分とブルジョワに、冒険者として成功したみたいだねぇ!」

 

 

「まあ、そろそろ私の名前がこの里に響いてもおかしくない頃ですよ。というわけでお金持ちになる予定のカズマ、お金を貸してください」

 

 

「お、お前……まあいいけどさ」

 一気に商品が売れて、随分と機嫌の良い店主。そのまま物干し竿から、ローブを…………? ん? ちょっと待ってくれ。これは……。

 

 

「カズマ、俺の目はどうもおかしくなったみたいだ。あの物干し竿。どう見ても、ライフルにしか見えねぇんだけど」

 

 

「奇遇だな。リュウト。俺もだ」

 

 

「というか、どう見てもライフルでしょ」

 

 

 アクアが現実を突きつけてきた。へぇ、ライフルなんてあるんだ。へぇー。こっちの世界でもあるんだぁ。うん……絶対にアレだよね。ここに居たよね。日本人。

 俺はそんな事を思いながら、せっせと運ぶローブを見ているのだった。

 

 

 

 

 

―――――

 

 

 

 

 

 里をあちこち巡り、小高い丘で休憩していたご一行。

 

 

 俺は心地良い風に吹かれながら、ゴロンと寝転がっていた。これは日本ではなかなか味わえない気持ち良さだ。というか、日本にこんな場所あんのか。やっべぇんだけど、ちょっとずつテンションが上がってくる。今なら本気を出せば、もしかしたらソードマスターヤマトになれるかもしれない……。

 

 

「見晴らしの良い場所ね? お弁当でも持ってくればよかったわね!」

 

 

「景色を見たいなら、山の頂上に展望台がありますよ。超強力な遠見の魔道具がありますから、オススメのスポットは魔王の娘の部屋です」

 

 

「ろくでもねぇな」

 

 

「魔王すらも稼ぎの対象か……」

 

 

 軽く魔王に同情すらしてしまう。

 

 

「ねえめぐみん。景色はいいけど。私はムーディーな場所に連れてってって言ったんですけど」

 

 

「ムーディーな場所ですよ? この丘の名は『魔神の丘』。丘の上で告白したカップルは魔神の呪いによって、永遠に別れる事ができないと言われている。恋人達に人気のロマンチックスポットで――」

 

 

「どこがじゃ!?」

 

 

「ロマンチックの欠片もねーじゃねーか!? ってあれは……?」

 

 

 とカズマが里の方に目を向ける。なんだ? そんな事を思っていると、カズマが焦ったように。

 

 

「おいめぐみん、あんな所に魔王軍の連中が居るぞ! ていうか、あれめぐみん家の近くじゃないか!?」

 

 

「マジか」

 

 

 また魔王軍か。性懲りもなく。というかよくあんな変人集団を相手にあそこまで頑張れるな。何気にブラック企業なのか、魔王軍って。いやそんな事はどうでもいい。

 

 

「どれどれ……ふむ、あんな風にコソコソしてるって事は里の襲撃が目的ではなさそうですね、もしかしたら里の施設を狙っているのかも」

 

 

 里の施設……まあ、面白そうなのはいくつかあったが――。

 

 

「確か、邪神が封印されてる墓があるんだっけ? 魔王軍の目的っちゃ、目的っぽいが……もう封印は解けてるんだよな?」

 

 

「はい解けちゃいましたね……ハッ、もしや猫耳神社のご神体……!?」

 

 

「そんなんが目的だったら、この里も魔王軍も根絶やしにしてやる」

 

 

 そんな物騒な事を言いながら、さっさと魔王軍の方へと行く。道中。紅魔族の人を連れながら、めぐみんの家へと向かった。

 

 

 

 

―――――

 

 

 

 

 

「なんだこの女はっ! どこから出てきたんだ!? というか何がしたいんだ!?」

 

 

「シルビア様、お下がりください! 助けを呼びに行くでもなく、強力な攻撃手段も持ってない、コイツの目的がわかりません!」

 

 

 大剣を構えたダクネスが魔王軍と対峙している。

 どうやら、魔王軍の進攻を阻止していたようだ。ダクネスの意外な活躍に少しだけ驚いている。まあ、とりあえず。

 

 

「助けに来たぞ。ダクネス」

 

 

「! なんだ、もう来てしまったのか……」

 

 

 ガックリきてるダクネスを見て、いつも通りすぎて、安心してしまう自分が居る。どんな時でも残念なのが、このパーティメンバーだ。それこそ活躍を根こそぎ無くしていくような。

 

 

「へえ……わざと剣を当てないように、演技をしていたのね? 私達の攻撃を耐えてるという事は高レベルクルセイダーみたいだけど、攻撃を当てれば、それが相手に伝わってしまうから、こうして時間稼ぎをしていたのね? なかなかやるじゃない……」

 

 

「あ、あぁ、バ、バレてしまっては仕方ないな……」

 

 

 嘘が苦手なクルセイダーはこちらをチラチラ見ながら、そう言う。そのキョドり方で相手にバレるんじゃね? なんて思ったが、まあいいだろうそんな事は。

 

 

「確かシルビアとか言ったか? まあ、ウチのクルセイダーはかなり頑丈だからな。そちらさんの攻撃なんて大して効かないだろうさ。それだけじゃない。俺の隣に居るコイツだって、数多のスキルを駆使して、魔王軍と対等に渡り合ってきたんだぜ? 最弱職の冒険者でありながらな、それにこっちのめぐみんって紅魔族だって、魔王軍幹部を倒せる実力を持ってる。その隣に居るアクアもそうだ。実際、デュラハンを倒した実績があるしな……あれ? これだけ聞けば、超すげぇパーティじゃん。どうなってんの?」

 

 

 本気で疑問に思う。なんでこんな優秀なパーティっぽいのに、こんなに残念な感じなの……一体どういう事なの……? そう唸っていると、向こうさんの反応もなかなか気持ちいいモノが返ってくる。

 

 

「な、なんですって……!?」

 

 

 驚きを露にしていた。

 

 

「あ、アンタがこのパーティのまとめ役なの……?」

 

 

 俺の方を見て言ってくるが、それは違う。

 

 

「コイツだ……」

 

 

 とカズマを前に突き出す。

 

 

「な、名前を聞かせて貰ってもいいかしら?」

 

 

 そう言ってくる。カズマは堂々と名前を言い放つ――。

 

 

「何を隠そう、俺がこのパーティのまとめ役にして、リーダー。数多の魔王軍幹部を葬り去ってきた……ミツルギ・キョウヤだ」

 

 

 そう堂々と他人の名前を騙った。

 まあそういうヤツだ。コイツは何も間違ってない。名前をわざわざ敵に知らせるなど愚の骨頂。さすがというべきだろう。いや格好悪い上に最低という事は変わり無いが。

 

 

「ミツルギ・キョウヤ……いい男って聞いてたんだけど、随分とパッとしないわね。でも腰に差してるそれは確かに変わった形の剣ね……という事は間違いないって事かしら。あなたまで居ると、厄介ね。今日の所は見逃して貰えないかしら」

 

 

 俺のは、いつも背中に携えてるのに対して、カズマは腰に差してるからな、確かにパッと見て、同じには見えないか。まあ刀にもいろんな種類があるからな、ちゅんちゅん丸とは違うからな俺の。

 

 

「それじゃ、今日の所は見逃してやるよ。まあ後ろに控えてる紅魔族が良いって言ったらだけど」

 

 

「感謝するわ。ミツルギ……私は魔王軍幹部のシルビアよ。それじゃ、撤退!!」

 

 

 そう言って、去っていくシルビアを追いかける紅魔族達。実験台にしてやるとかそんな物騒な事を言っていた。捕まったら文字通りジ・エンドだろうなぁ。完全に他人事だからこそ、このテンションだ。

 

 

 

 

 

―――――

 

 

 

 

 まあ結果から言うと、そのあと、来た紅魔族の人たちに結構な目に遭わされていた。一応逃げる事はできたようだ。

 その後、めぐみんの家にもう一泊する事になり、ダクネスの今日の活躍で褒め称えられていた。普段から褒められ慣れてないダクネスは恥ずかしそうに照れている。

 

 

 なかなか貴重な場面と言えるだろう。

 

 

 その後、めぐみん母が、口早に今日の部屋割りで、カズマとめぐみんを同室にさせようとする。まあ、主に金が目的なのだろうが、俺は特に何も考えずに、適当にゴロゴロしている。

 

 

「えぇっと、あ、そうだ。ひょいさぶろーさんは?」

 

 

「あぁ、主人なら、仕事が溜まってると、家の工房で寝ると、それでは私はお風呂を沸かしに行きますね」

 

 

 またか。ひょいさぶろーさん。心配だからと俺達と同室にさせろって言ってたよな。まあなんというか、力関係がわかりやすいよな。

 

 

「しかし、あの啖呵はなかなかカッコ良かったですよ。カズマ。シルビアとの決着が楽しみですね」

 

 

「そうだな。実は私も、近日中に鎧が出来上がるらしいから、鎧とシルビアどちらも楽しみだ」

 

 

「シルビアねぇ、もっと強くなってくれりゃぁ、多少は骨があるヤツになるかもしれねぇけど。あのままじゃ、即座に倒しちまうよ」

 

 

「いや、シルビアとは戦わないよ。観光も終わったし、朝一で帰る予定だったしな」

 

 

「「えぇっ!?」」

 

 

 めぐみんとダクネスが驚きを露にしているが、正直な話、カズマっぽいと言えばカズマっぽい。そもそもあそこで啖呵切ったのもなかなか、珍しい体験だった気がする。魔王軍相手にあんな態度を取ったカズマを不思議に思ったが、ようやく謎が解けた。

 

 

「なるほどねぇ、でもシルビアは再戦する気満々だったけどな?」

 

 

「美人幹部だったから、ちょっと後ろ髪引かれるけど、安全策を取ろうぜ。そもそも家帰ったら、ニート生活できるんだ。わざわざ危険冒す必要性がなさすぎる」

 

 

 とカズマは完全に帰る気満々だった。二人はそのカズマに食って掛かる。

 

 

「この男、最低です! 酷すぎますよ!」

 

 

「お前、人としてそれは良いのか!?」

 

 

 どうやらお風呂も沸いたようで、カズマは耳を塞いだまま、風呂に向かっていった。

 

 

「まあ、アレだよ。カズマってああいうヤツだろ?」

 

 

「そ、それも……そうだが」

 

 

「いくらなんでも……あれでは」

 

 

 二人が納得いかないという感じだ。

 

 

「そういや、アクアどこ行った?」

 

 

「ああ、アクアなら近くの温泉に行くと言ってましたよ」

 

 

「温泉? 近くにそんなのあったのか」

 

 

 温泉か、異世界の温泉ってあんまり良い思い出が無いのは、アルカンレティアの所為か。

 俺はそんな事を感慨深く思いながら、カズマが上がるのを待っていた。

 

 




ここまで読んでいただき、ありがとうございます。



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