意識が飛んでからどれぐらい経っただろうか、俺は目を覚ますと、近くにおぞましい顔があった。俺はとっさに叫んだ。
「うぎゃぁああああああああああああああああああああああああああッッ!!」
「キャッ!? な、何突然っ!?」
「て、てめぇ! シルビア!! 俺に何するつもりだ、ぶっ殺すぞッ!!?」
「ちょ、ちょっと落ち着きなさい!? 別に何もするつもりはないわ!! そ、それに昼間は逃がして貰ったしね」
その言葉に多少の警戒心を抱きつつも、俺はとりあえず状況を整理するために辺りを見回すと、そこは真っ暗な地下室のような場所だった。
だが、一瞬でピンッとくる。
ここはあれだ。あの……『世界をほろぼしかねない兵器』を隠してる場所だろう。
「なるほど、お前が無謀にも何度も何度も紅魔族に挑んでたのは、これが目的だったのか」
「そうよ、それにこれ……この結界殺しで、この封印をとけば……あ、あれ? おかしいわね?」
どうやら封印をとく事はできないようだ。そもそも封印というのがどういうものなのかを知らない俺にとっては、どうでもいい事だ。
だが封印自体に興味がないわけではない。なかなか面白そうだし、と俺は横から覗きこんでみると、そこにはアルファベットと数字、それに十字キーがあった。そしてそこにはこう書かれている。
「『小並コマンド』……」
つい小さな声で呟いてしまった。そしてその瞬間目を光らせるシルビア。俺はとっさに身の危険を感じ取り、距離を置く。
「まさか、あなたこの古代文字を読めるわけ!?」
古代文字って……俺達の居た場所に普通にある文字だが、古代文字じゃないぞ、日本語だぞ、それ。
「……封印って、こんなことかよ」
あの有名な裏技コマンド。それが封印をとく事ができるとは、完全にお遊びである。逆にふざけすぎて、ちょっとだけイラッとするレベルの。
「……あなた、どうやらこの封印をとくことができるようね……」
それに目をつけたシルビア。
「あぁ、そうみたいだな……」
特に焦った様子も見せない。おそらくこれをとけなんて言われるかもしれないが、俺はそんな事は絶対にしない。
「おいおい、俺だって冒険者なんだぜ? いくらなんでも魔王軍の言う事なんて――」
「あら、別にあなたを脅すのに、暴力なんて必要ないのよ、色仕掛けだってあるわけだし」
俺はその一言を聞いた瞬間に小並コマンドを入力していた。どうやら俺は屈服してしまったようだ。
「あ、あなた……」
シルビアからも若干呆れられているが、知るか。俺は俺が一番大事だ。
その後、ゴゴゴと扉が開き、シルビアがその扉の中へと入る。シルビアは俺に対して、一切危機感を見せていない。
どうやら完全に舐められているようだ、確かに武器はどこかに落としたのか持ってないが、ここまで舐められていると、さすがに腹立つな。
俺自身、一応は『フルキャンセル』というチートを持っているというのに、いや、今は使えないが。
「……よく見えないわね。ここまで真っ暗だと……ねえ、灯りか何かないかしら――」
「ねぇよ」
俺はそう言って、シルビアの様子をただ眺めていた。どうやら中には世界をほろぼしかねない兵器があるらしい、それを一応、この目で確かめでもしておこうかと思ったのだが――。
「あら、これは――」
シルビアがそう呟いて、自身に『何か』を取り込んだ。するとシルビアが――。
―――――
シルビアが暴れまわっている。
里は燃えさかり、それを見て、紅魔族のめぐみんと同じように眼帯をつけている女の子が――。
「……里が、燃えていく……」
そう悲しそうに呟いた。
俺は胃がきゅぅと縮こまる感じがした。それと同時に手足が痙攣し、背中が凍りつくような感覚に陥る。これがなんというか、なんとも言えない罪悪感というやつだろうか……。
シルビアは『魔術師殺し』というものをどうやら取り込んだらしく、それを使われると、魔法攻撃がほとんど効かないらしい。魔法を主とする攻
撃をする紅魔族にとっては天敵とも言えよう。
俺はもしかしたらとんでもない事をしたのかもしれない。
すぅーはぁ……と俺は呼吸を整え。
「おい、カズマ」
「ん? な、なんだ?」
逃げる気満々だったカズマを引きとめ、俺は一言。
「確か、世界をほろぼしかねない兵器って言うのが地下の格納庫にあるらしいから……それを取ってきてくれ」
「で、でもその間、アイツはどうするんだよ?」
俺は近くに落ちていた木の棒を拾い。
「俺がアイツを食い止める」
「バ、バカ野郎!? そんな事できるわけないだろっ!? つか、そもそも刀はどうしたんだよっ!?」
「どっかに落としてきたらしい、ただまあ剣っぽいものがあれば、スキルでなんとかなっからよ、頼んだぜ」
俺はそう言って、シルビアの方へと向かっていく。その姿はまさしく主人公と言えるかもしれない――ただ、こうなった原因が俺でなければ……だが。
シルビアがまるで今までの恨みを込めているかのように、里を破壊し尽くしてるところへ向かう。
「あら、あなたは……私はあなたを見逃したのよ? さっさと逃げないと、死ぬわよ?」
「いいや、死なねぇよ。まがりなりにもこうなったのは俺の責任だし、お前にはここでやられてもらわねぇとな……」
「あら? いいのかしら? あなた程度で私に勝てるとでも?」
「あぁ」
俺が木の棒を構える。するとニヤリと口角が上がるシルビア。
「ふふ、面白いわ。特別にこれをあげるわ」
そう言って、俺の刀を投げて、渡してくるシルビア。
「落ちてから、拾ってあげたわ。まああなたじゃ、これを持ってたとしても、また私にやられるのが――」
「サンキューな……これで負ける可能性は0になったよ……」
『フルキャンセル』はおそらくまだ使えない。一体、スキルバインドがどれだけの時間効果があるのかわからないが、感覚的におそらく使えないのはわかる。
だったら。
「――『瞬斬』」
とてつもない速さでシルビアの胴体を切り裂こうとしたが、頑丈すぎてそれは叶わず、切り傷程度の傷ができるだけだった。
「なんつー硬さ……ッ!」
「あら、その程度?」
ニヤリと笑みを浮かべると、シルビアの攻撃が俺の全身を襲い、その衝撃で俺は背中から地面へと叩きつけられた。
(こ、こいつ……マジでつえぇ)
今まで、なんとかなって来た事が多かったが、それは俺の実力というよりも『フルキャンセル』の実力である事をはっきりと告げられる感じだっ
たなんというか、使えないというのがここまでマイナスになるとは思わなかった。所詮、俺もミツルギをバカにできないってわけか。
「あら、その程度なの? やっぱりたいした事ないわねぇ、さて他の連中もさっさと嬲り殺し――」
「舐めんな……『風斬り』」
遠距離攻撃。その速度は『瞬斬』には遠く及ばないが、威力においては、こちらの方がやや上である。
その攻撃でシルビアの胸に先程よりも深い傷をつけた。舐めているシルビアはこちらの攻撃を避けない。だからこそ、俺の確実に強い一撃を喰らわせてやった。
「ぐっ……ちょっとだけ効いたわ……でも本当にちょっとよ?」
シルビアが口から炎を吐き出す。さすがにこの一撃はまずい。俺はとっさに横に転がるように移動する。その威力で辺りが焼け野原になった、おそらくこれを喰らえば、俺はこんがりと焼けていただろう、何それ怖い。
「おいおいおいおいおいおい!!!?」
「さぁ、もっとやるわよ!!」
くっそ、この野郎、調子に乗りやがって、俺はシルビアに背を向け、一気に走り去る。
「あら、あなたも結局逃げるのかしら?」
「どうかな!?」
俺はスキルカードを見る。そこで攻撃力に今までためていたスキルポイントを全振りした。もったいない事をしたかもしれないが、正直、レベルなんてまた上げればいいだけの話、それにスキルポイントはポーションであげる事もできるらしいし。
そして、俺はすぐさまシルビアの方を向き。
両手で剣を持ち。
「喰らえ――『閃光斬り』」
光り輝く太刀がシルビアに襲いかかる。その威力は先程とは比べ物にならないだろう。
「あら、最後の一撃かしら――?」
そう余裕を持っていたのも束の間だった。その一撃で胴体に深い傷がつく。俺はニヤリと口角をあげた。
「どうした? シルビア……? お前にとってはその程度……じゃなかったか?」
「ぐぅ……こ、このっ……!」
「誰が一回だけと言った?」
連続で、何度も何度も攻撃を繰り返す。確かに、シルビアは強い。
だが――。
「俺はもっと強い」
シルビアは血だらけの状態で、こちらを睨み付ける。そして――同時に。
「お……戻った」
「?」
その一言にキョトンとした顔をしていたシルビアだったので、俺はおかまいなしに――。
「『フルキャンセル』」
シルビアが取り込んだ魔術師殺しを完全に消し去った――。
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