ポチポチッとゲームを一人でボーっとやっていた。正直このゲームの難易度はそれほど高くない。ゲーム自体は結構いろいろなジャンルをやっていたからこそ、このゲームでもなんとなく次にやってくる事が予想できる。
「……にしても、うるさいなお前ら」
「うるさいってねぇ、リュウト! アンタに貸すと悉く、ノーミスでクリアしちゃうじゃない! 私たち三人が必死になってやってたステージだって、ちょっと貸したら、2,3分でクリアしちゃうし!!」
「まあ、仕方ないだろ。できちゃうんだし」
「わ、私達だって頑張っているんだぞ! その努力の結晶を……」
「お前らが上手くなりゃ、そういう愚痴はでなくなるんだがな……カズマみてぇに。アイツ俺より上手いぞ」
「しかし、本当になんでそんなに上手いんですか?」
「え? いや、まあ慣れ……?」
そんな事を言いながら、カズマの方を見ると、カズマは口を開く。
「妹が欲しい」
「なんだ? 通報案件か?」
「違う!! 俺は様々な美女、美少女と出会ってきた。年上の癒し系ウィズ、活発系の元気娘クリス、クール系お姉さんセナに、幸薄いゆんゆん! それこそ王道派ヒロインのエリス様に至るまで!」
「カズマさんカズマさん。私は? 私は何系の美女になるの?」
「ペット枠か色物枠だな」
俺が口を挟むと、カズマは縦に頭を振る。俺はアクアに掴みかかられ、取っ組み合いをしていると、カズマは話を進める。
「俺は大事な事に気づいた……まだ足りない枠がある……! 俺の生まれた国、日本には一応幼馴染も居た! ならあと足りないのはわかったな?」
「……それが妹って事か」
「はぁ、仕方ないですね。つまり私に妹代わりになれと……」
めぐみんが積極的な事を言っているが、カズマは即答する。
「何言ってんだ。お前はロリ枠だろ」
「あれっ!?」
驚いているめぐみん。俺はダクネスの方を見ると、おずおずとして手を挙げ。
「じゃあ、私は何系なのだろうか?」
「「エロ担当だな」」
「エロ担当ッ!?」
ショックを受けているダクネスやらめぐみんを尻目にとりあえず話を続けるカズマ。
「ほら、こないだ紅魔の里に行った時にさ、めぐみんの妹がいたろ? そこであらためて思ったわけだ、ああ、やっぱ妹がほしいなって」
「分かりたくないが……まあ、言わんとすることはわかる」
そう答えた俺に対し、カズマは続ける。
「王女様かぁ、俺より年下らしいけど、妹キャラかなあ」
カズマは期待していたのだ、手紙をくれた第一王女に対して、しかも結構失礼な期待の仕方だ。
「おい、カズマ……お前な、仮にも王女様だぞ? 下手なことしたら、打ち首になるかもしれねぇんだぞ」
「まあ、そこらへんは大丈夫だろ」
王女様の年齢は12歳とカズマのストライクゾーンからは外れているらしいが、それでも仲良くなりたいという気持ちは変わらないらしい、大方、お兄様とかなんとか呼ばれたいとか思っていることだろう。
リュウトはチラリとダクネスの方を見ると、ダクネスはあたふたしながら。
「なあカズマ。今からでも遅くない、この話は断ろう! な? 相手は国のトップなのだぞ? 会食といっても、お前が期待しているようなものではない。きっと堅苦しいものになる。な? 今からでも断ろう!」
おそらく、今一番危機的状況であろうダクネスがそんな事を言っている。
「つか、向こうから誘ってきて、断ったら逆に失礼にならないか? 仮にも王女様なんだろ? ここでの王女様がどんな感じかは知らねぇが、12歳なら、まだまだ子供って事だろ? 変に機嫌を損ねて、とんでもねぇ事にならねぇだろうな?」
俺がそんな心配をしているが、ダクネスはむしろ会食をして、俺含め、四人がとんでもない事をしでかさない事のほうが怖いらしい。まああんな事を言っているカズマを前にそんな状況になるのは、仕方ないといえば仕方ない。
だが、カズマはカズマで、その態度に対し。
「お前、俺が王女様に無礼を働くとか思ってるだろ?」
面白くないようで、そんな事を言う。
ビクリと肩を震わせ、ダクネスが目を泳がせながら。
「そ、そんなことない……ですよ?」
慣れてない敬語を使い、目を逸らすダクネスに追及するように責めたてるカズマ。
「俺達がダスティネス家の顔に泥を塗るとか、そんな心配してるんだろ!? その慣れない敬語をやめて、俺の目を見て言ってみろぉッ!!」
「そうなのっ!? ダクネス酷い! 私だって礼儀作法ぐらい知ってるんだから!!」
「そうですよ! 私達は仲間でしょう! もっと信頼してください!」
「うぅ、お前達をよく知っているからこそ、心配してるんだが……」
「ま、今更この状況だ。もう意見は覆らねぇから、諦めようか」
「うぅぅううう!」
泣きそうになりながら、唸るダクネス。不安いっぱいという顔をしているダクネスにカズマが。
「俺だって身分の違いはちゃんと理解しているし、最低限の礼儀は知ってるさ、俺が浮かれているのは、上流階級のお嬢様に会えるから、ただそれだけさ」
「お、おい! わ、私だって上級階級のお嬢様なんだが!」
「そこはしっかりと反論するのかよ……」
俺はついそんな事を言い。
そんなこんなで、ドレスやらタキシードやらを仕立てる話に移り変わっていた。ドンドン盛り上がってカズマは着物やら袴やらの話まで出していた。
「お、おい頼む! なんでもするから! 聞いたこともない奇抜な格好はしないでくれっ!!」
―――――
翌日。泣いて縋っていたダクネスがカズマの願いを何でも聞いてくれるとの事で、色々と家事をやってくれるらしい。
ダクネスは小さめのメイド服を着用し、丈の短さが、まさにエロ担当という名にふさわしい色気がある。ダクネスは何もかもを諦めた表情をしながら、カズマの前に待機していた。
「それじゃ、一週間家事を頼むな」
「分かった……」
「そこはかしこまりました、ご主人様だろ?」
「ん……くっ! か、かしこまりましたご主人様っ! 私は卑しいメス豚ですっ!」
「誰がそこまで言えと言った……」
つい、口を出してしまった。
赤い顔で震えだしたダクネスに待ったをかけるカズマ。それをソファーで寛ぎながら俺は見ていた。眼福というのはこういう事だろう。丈が短いダクネスが顔を赤くして震えている、まあまあ悪くない。どうしようもない変態であることも、まあ目を瞑ろう。
「では、何からしたらいいだろう、正直家事などしたことがないから、何から始めれば良いのかさっぱりわからん。とりあえずカズマのズボンの股間部分にお茶でもこぼして、それを慌てながら拭けばいいのか」
あの変態は一体何を言っているんだ? 俺はそんな事を思いながら、カズマは言う。
「お前、お茶いれ禁止な?」
アイツの頭の中ではメイドという職業は一体どんなものなのだろう。
「とりあえず、掃除でもしといてくれ、食器洗いはいいから、割るだろうし、そんな非経済的な約束はいらない」
「……むっ、わかった……」
あからさまにガッカリした様子で、居間へ向かっていく。アクアとめぐみんはウィズの店へ出かけているため、今日は俺とカズマとダクネスだけだ、おそらくカズマは今日はこき使ってやろうと、考えているだろう、顔に出ている。
「きゃあああっ!」
わざとらしい悲鳴と共に陶器の割れる音が響いてきた。そして何か破片を抱えたダクネスがこっちに向かって駆けてきた。
「申し訳ありませんご主人様! ご主人様が大切にしていたツボを割ってしまいました! この仕置きはどんな事でも!」
「俺はツボを大事にしてないし、もし本当に大事なものを壊したら、その格好で冒険者ギルドまで行ってもらうからな」
「!?」
埃まみれになるのも構わず、ダクネスはせっせと掃除していた。思ったよりも綺麗に掃除しているダクネスに軽く感心していると、カズマが姑のように窓枠などに指をなぞっていたが、どうやら一切埃はなかったようだ。
「くっ! 器用度は低いくせに、どうしてこんなに綺麗に!! 文句つけてメイド服クルセイダーララティーナの名をギルドに定着させてやろうと思ってたのに!」
願望駄々漏れである。
「ふっ、そんな簡単に仕置きなど受けてやるものか、というか、ララティーナと呼ぶのは本当にやめてくれ、お願いします」
頬を赤くして、掃除をしていたララティーナは掃除においては及第点のようだった。
「暇だな、俺もウィズの店行くか……」
見るものも見たしと思い、俺もウィズの店に行く事にした。
―――――
「あれ、リュウトさんじゃないですか! いらっしゃいませ!」
「おいーっす、遊びに来たぜ」
茶菓子を食っておとなしくしてるアクアといろんな魔道具を見ているめぐみん。一番厄介なヤツは留守のようだ。
今日は日本にあった数々の便利グッズを店に売り出す日。どうやらまだカズマ考案の着火具はきてないようだ。まあライターのことなんだが。
「まだきてないのか、楽しみにしてたんだがな……」
「はい、あともう少しで到着すると思うんですが……」
ウィズが申し訳なさそうにしていたので、俺が慌てて言う。
「いやいや、気にしなくてもいいから。んじゃ、俺もちょっと魔道具でも見とくか」
「あ、はい。ごゆっくり!」
めぐみんが目をキラキラさせながら、魔道具を見ている横で、品を見ている。俺がめぐみんを横目でチラリと見て、俺はボソッと呟くように言う。
「なあ」
「……ん? なんですか?」
「お前さ、紅魔の里でカズマとなんかあった?」
「なななっ! なんですか突然ッ!?」
「いやね、帰ってきてから、なーんか、気になるなぁって思って……ま、なんでもいいけど」
「い、一体何ですか、まったく……」
顔をほんのり赤くしながら言う。俺は別の魔道具を見て、そこまで興味を示さない。別にそこまで深く興味があるわけでもないし。ただ気になるからちょっとだけ聞いてみたが、あまり深く掘り下げるのもよくないだろう。こっちの精神を削られる可能性もあるし。
「……はぁ」
「どうかしたんですか?」
「いや、なんというか、遅咲きの青春かなぁって……」
「? どういう事ですか?」
「気にするな」
そんな会話をしながら、適当に暇を潰していたら、どうやらライターが届いたようだ。俺はそれを見ながら、一本だけ手に取る。そのタイミングで、私服のダクネスとカズマが来た。
「あれ? ダクネスはメイド服じゃねぇのか?」
「さすがにやめてくれって泣きつかれてな、まあ仕方なく」
「そか、それより来たみたいだぞ、これ」
ライターを持って、カズマに見せる。どうやらカズマもこれを見にここまで来たようだ。
「カズマカズマ、早く見せてください、この魔道具の力を!」
「魔道具じゃないって、俺の国の便利アイテムって言ってるだろ。リュウトつけて見せてやれよ」
「中にオイルは入ってるみたいだな」
俺がライターに火をつけると。
「「「おおっ!?」」」
俺の灯した火を見て、めぐみん、ダクネス、ウィズ三人が同時に声をあげる。どうやらそれほど驚きがあったようだ。俺自身は、この道具を見慣れている為、驚きは一切ない。当たり前だが。
「それにしても、こっちの世界でもこういうのは、再現できるもんなんだな、そっちの方に驚いたぜ」
「これは凄く便利なものですね、まんまティンダーの魔法じゃないですか! これは売れますよ!!」
ウィズが興奮した面持ちではしゃいでいる。まあ、実際こういった物が売ってないのが不思議でならない。まあ、チート持ちなわけで、こういったものを普及する必要がなかったのか。
「それにしても、こんな簡単な構造なのに、魔道具ではないのが信じられないです。大事に使えば、長く持ちそうですし」
「そうだな、火打石を使うよりも簡単そうだし、火種も濡らさないように持ち歩くのも面倒だが、それらの問題がこれだと一発で解消だ。ウィズこれは幾らだ? 私も欲しい」
「お金なんていりませんよ。カズマさんが考案してくださって、皆さんにも協力してもらったんですから。好きなものを持っていってください」
既に一本手に持っていた俺は、それを貰うことにした。ライターを弄っ
ていると、アクアが肩を竦めながら。
「ライター一本にそこまで喜んじゃって、これだから未開人は、こんなの本当に簡単な構造なのに、まったく」
そういって、ライターを取ろうとしたら、ぱしんっと手を払われるアクア。払ったのはカズマだ。
「……ちょっと、何すんのよ、私にも選ばせてよ」
「いや、お前は金を払えよ」
「ちょっとなんでよ? どうして私にばっかり意地悪するのよ! めぐみんとダクネスはよくて、どうして私だけ!! ウィズも良いって言ってるのに! 私だけを仲間はずれにしないでよ!」
「いや、お前がからかったりしなきゃ良かったんだけど、つか、この件で、お前は何もしてないだろ。リュウトは俺と一緒に考案してくれたし、めぐみんは魔道具の製作の仕方を教えてくれて、ダクネスは大手卸売り業者のコネを紹介してくれたんだぞ。お前は食っちゃ寝してただけだろうが、分け前が欲しいってんなら、外で客引きの一つでもしてこいよ!」
カズマの言葉に涙をぐみながら、吐き捨てるように言葉を残して出て行った。
「うわあああ! カズマの甲斐性なし! せっかく私達が脱ぎ散らかした洗濯物クンクンしてるの黙ってあげようと思ったのに!」
「お、おい! 俺はそんなことしてないぞ!? 滅多な事言うなよ! な、なんだよめぐみん、ダクネス。本当だって! ウィズまでっ!?」
「まあ、あんまりバレないようにしろよ?」
「おい、お前までふざけんなよっ!?」
店から出て行ったアクアがひょこっと入り口から顔だけをのぞかせて。
「人いっぱい集めたら、一つくれる?」
「やるから、まずこの誤解を解いてから行けッ!!」
―――――
なんだこれは。帰ってきたバニルがそんな事を言いながら、店の前に立っている。アクアが宴会芸を使い、客をいっぱい集めたまでは良かったのだが、それらすべてがアクアの宴会芸目的の為、どれだけ集まったところで、ウィズの店には一人も入らない。何なら、チラシを見て入ろうとした客すらも、その人だかりに興味を示し、入っていく。
そしてアクアがウィズの店から持ってきたであろう、大量のポーションを消し去ろうというマジックをやろうとしていた。
「やめろ!! たわけがっ!! 貴様、ドアノブに聖水を振るだけに飽き足らず、とうとう真正面から営業妨害をしにきたなっ!!?」
あぁ、よくアクアが出かけてたけど、それやってたんだ。
そんなこんなで、アクアとバニルのいざこざは終息し、ウィズが。
「皆さん、本日は便利な商品が数々揃っております、ぜひ、ご覧になっていってください!」
ウィズが店主っぽい事してる……初めて見たかも。
山のようにあった商品だったが、もう既に底を突きかけている。月末まで三億エリスを用意してくれるとバニルは笑いながら、そう言った。
「いやぁ、飛ぶように売れるとはまさにこの事! 改めて礼を言うぞ、旅先で仲間といろいろあったが、戻ってきてから何もなくてソワソワしている小僧よ!」
「なぁああ!? し、し、してねぇし! めぐみんもこっち見るなっ!?」
「み、見てませんよ!? あ、悪魔の戯言を真に受けないでください!!」
「貴様らが、つがいになろうが、子作りしようが、どうでもよいがそのソワソワしているのは非常に鬱陶しいので、さっさと宿屋に行くのが吉だぞ!」
「さすがに、そういうのはやめねぇか?」
「むっ、貴様にそんな事を言われるとはな! 貴様も先ほどそのような事を聞いていたではないか」
「お前みたいにぶっこんでねぇよ」
「それはそうと、月末まで待たせる代わりというわけではないが、巷で密かに人気なこの量産型バニル仮面を渡そう! 月夜につければ、謎パワーで魔力上昇、血行促進、お肌つるつるになり、絶好調になるぞ! これはその中でも、レアな商品だ。近所の子供達に自慢すると良いぞ」
あんなのをつけて呪われないのだろうか……。そんな事を考えながら、俺はカズマが貰った仮面を見ていた。
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