この素晴らしいキャンセルに祝福を!   作:三十面相

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今回も駄文ですが、暖かい目でお願いします。


義賊を捕まえよう

 どうやらカズマは義賊を捕まえるらしい。貴族達を困らせているという、その義賊を捕まえる為、カズマが一肌脱ごうと言ったのだ。

 

 

 無論、これは正義感から来るものではない。それは理解している。おそらく城への滞在期間延期を考えての事だろう。

 

 

 それにもし、義賊を捕まえることができれば、城の滞在も許されるかもしれない。カズマの考えそうな事だ。

 

 

 だが、あては外れたようで。城ではなく、現在最も狙われそうなアルダープの屋敷に来ている。

 

 

「――迷いもせず、ワシのところに来たのか」

 

 

 あからさまに不機嫌な態度を隠しもせず、ダクネスの身体を舐めまわすように見ていた。その次にアクアに視線を移す。ひぃと悲鳴をあげてカズマの後ろに隠れるアクア。

 

 

「領主様は、随分と欲望に忠実でいらっしゃる」

 

 

 俺は、呆れながらそう言うが、その言葉を無視し、領主はアクアを褒めちぎる。まるで女神のような美しさだと。

 

 

「まるで女神のようなじゃなくて、女神なんですけど!」

 

 

 カズマの後ろから頭だけ出して、そう言うが、それを冗談と受け取られる。次にめぐみんの方を見る、そして何か言葉を綴ろうとした瞬間に護衛の男が何か耳打ちをする。

 

 

「……には、お気をつけを……、あれが……噂の……頭が……」

 

 

「……あれが……おかしい……危険な……」

 

 

 聞き取れるワードだけで、おおよそ何を言おうとしてるのが分かる。俺ですら分かるのだから、めぐみんならば――。

 

 

「おい、私から目を逸らしたのは、どういう意味か聞こうじゃないか! 返答によっては、その男が言った噂どおりの力をお見せしますよ!!」

 

 

「いや、その……あなたもその、可憐で美しく……」

 

 

「ほう、それでそれで? 日頃からアクセルの街を守っている功労者へのお褒めの言葉が少ないのでは? 今から爆裂魔法の凄さをお見せするのでちょっと、庭を貸してください!」

 

 

 ギョッとした顔をしたアルダープは俺とカズマの方を見て、助けを求めるような眼差しを送る。

 

 

「いや、あなたの凄さは十分分かったので……!」

 

 

 なんというか、ウチのパーティメンバーは強かだな。

 

 

「し、しかしダスティネス卿は、私を義賊に狙われる悪徳領主だと言いたいのですか? それにワシの家に泊まりたくもないのだと思っていましたが、案外嫌われていなかったご様子だ。だがダスティネス様ともあろう方が、巷に流れる悪い噂を鵜呑みにされ、ワシに疑惑を抱いているのだとしたら心外ですな、どうぞワシが義賊に狙われる男と思っているのならば、いつまでもご滞在ください」

 

 

 こうした嫌味混じりな事を言われ、しどろもどろしているダクネスに続く。

 

 

「火のないところに煙はたたない。悪い噂が流れるということは、それだけ疑惑があるという事ですよ、領主様。これも捜査ですので、手がかり一つないとなると、こうした巷の噂に頼るしかないので、まあ好きなだけ泊まれるとおっしゃるならば……」

 

 

 ここで部屋の争奪戦が始まった。カズマが一番大きい客室を選択し、アクアは食堂から近い部屋を所望する。次にめぐみんは一番天辺の部屋と好き勝手言い合っている。

 

 

「待てコラァァ!! 俺も混ぜろやぁぁああ!!」

 

 

 もちろん俺も参戦する。

 

 

「す、すみません。お世話になります」

 

 

「あ、あぁ……構いませんとも、ダスティネス様も大変そうで……」

 

 

 若干の憐れみ目をダクネスに向けていた。

 

 

 

 

 

●●●●●

 

 

 

 

 巷で噂の義賊は単独犯らしい。貴族の屋敷に侵入しては、その盗んだ金を孤児院にばら撒くという、まあ典型的な義賊といえるだろう。しかもかろうじて捉えた目撃者の話では、どうやらその義賊はかなりのイケメンとの話だ。

 

 

「義賊のやってることは犯罪であり、褒められたことではないのだが、正直に言って、あまり気は進まないな」

 

 

「ま、犯罪っつっても、やり方がやり方だから責めにくいってのがあるよな。悪い事と良い事併用してやってっからそう見えるだけだけど」

 

 

 カズマの部屋でそうした話をしていると、カズマが。

 

 

「だが盗みは盗みだ。俺は弱者の味方とか、困ってる庶民を救うとかそういう大層な大義名分を掲げるイケメンが大っ嫌いだ!」

 

 

 カズマがそう言い放つと、ダクネスとめぐみんが微妙な顔をする。

 

 

「なんというか、お前の顔もそこまで捨てたもんじゃないからあまりいじけるな。以前から感じていたが、イケメンという言葉にコンプレックスでもあるのか?」

 

 

「私はカズマはそこそこ格好良い顔立ちだと思ってますよ。そこまで自分を卑下しないでください」

 

 

「や、やめろよ。そこで優しくされると俺がちっぽけに見えてくるからやめろよ! なんだよアクアまで、いつになく真剣な顔で」

 

 

「汝、迷える引き篭もりよ。あまり自分を責めることなかれ、頑張れないのは世間が悪い、性根が悪いのは環境が悪い、見栄えが悪いのは遺伝子が悪い。自らを責めずに他人の所為にするが良い」

 

 

「ふざけんな! そこまで卑下してねぇーよ!! 見てくれはともかくとして性根の方は……おい、なんだよその目は、やめろよ! これ以上俺に優しくすんじゃねぇー!」

 

 

「カズマ、お前の性根は悪くねぇよ」

 

 

 俺が優しい笑みを浮かべてそう言うと、カズマはまるで一筋の光を見つけたかのような顔になり。

 

 

「ただちょっとひねくれてるだけだ」

 

 

「味方するなら、最後までしろよぉぉおお!!?」

 

 

 そう言われてしまった。

 微妙に優しくされたカズマは俺達を振り払い、考え込む。おそらく義賊を捕まえる作戦を練っているだろう。

 

 

 この屋敷に泊まることになった翌日。

 

 

 カズマは義賊が忍び込めそうな場所を探していた。一人では面倒だと、俺も付き合っている。するとカズマがキッチンの窓の立て付けが悪い事に気づく。簡単に外れるようにできているようで、忍び込むならここだろうと予測する。

 

 

 そして、カズマは次に中に入り、そこからどう行くかを予測する。壁に手を当ててそれに沿って歩いていく。おそらく忍び込むなら夜と考えての事だろう。そこから歩いていくと、こぢんまりとした部屋の扉にたどり着く。

 

 

 そこには何もなさそうだが、義賊ならば入り込むだろうと、そこを開くと、そこは大きな鏡があるだけの部屋だった。

 

 

「むっ? なんだ貴様らか、どうした、この部屋には何もないぞ? 用もないのにウロウロするな」

 

 

 領主様の足元にはバケツとタオルがあり、どうやらこの鏡を拭いているようだった。

 

 

「なんだよ、この部屋は……試着室か何かか?」

 

 

 俺はそう言いながら、鏡に近づくと、そこから奥が見えてくる。その映っている先は浴槽。どうやら隣の風呂場と繋がっているようだ。風呂場にメイドさんが入ってくる。どうやら掃除をするようだ。そのメイドさんはこちらに気づく様子もなく、掃除を続けている。

 

 

 ここはどうやらこちら側からしか見る事のできない、所謂マジックミラーのようになっているようだ。

 

 

「領主様さぁ……」

 

 

 俺は呆れたようにそう言うと、領主様は顔を背けながら。

 

 

「お、お前達も覗くか?」

 

 

「俺達がそんな話に乗ると思うか? まったくダクネスが泊まることになったから鏡の手入れに来たんだな? せめてもの情けだ。ここの事は内緒にしておいてやる。その代わり俺達が滞在している間はこの部屋は使わせないぞ? その間は俺がこの部屋で寝泊りする。ほらさっさと出て行った」

 

 

 シッシッとカズマが手で払うと、領主様は悲しそうに肩を下げながら、出て行こうとするが、扉の前で止まり。

 

 

「ちょっと待て! 貴様がこの部屋で寝泊りするという事は……?」

 

 

「おっと、ゲスの勘繰りはやめてもらおうか! 俺は仲間が心配だからここで寝泊りするだけだ!」

 

 

「ならば、入浴時間中にワシを見張ればいいだけの話ではないか! わざわざ寝泊りする必要はない! 貴様のような小僧にララティーナの裸は拝ませんぞ!」

 

 

「残念でしたー! 俺はもうダクネスと一緒に風呂に入ってました!」

 

 

 見苦しい言い合いである。

 

 

「それに、メイドさんたちにこの事を知られて嫌われたくないだろ! これは皆が幸せになれる取引なんだよ!」

 

 

「お前しか幸せになってねぇだろうが、俺も混ぜろや」

 

 

「ウチのメイドはセクハラされるのも仕事の内だ! だがやつらは脱いだら凄いぞ? どうだ、お前らからはワシと同じ臭いがする。お前らこそ取引しないか? 仲良く一緒に幸せになろうではないか?」

 

 

「そ、そんなに凄いのか?」

 

 

「あぁ、すんごいぞ」

 

 

「ぐ、具体的にどれぐらい……」

 

 

 俺がそう聞くと、扉の外から声が聞こえてくる。

 

 

「面白そうな話だな、なにがすんごいのか聞こうではないか」

 

 

 ほとんど反射的な動きだった。俺達三人は一斉に指差して、俺とカズマは領主様に領主様は俺達二人に。

 

 

「「「コイツが覗きをしようと……」」」

 

 

 マジックミラーは叩き割られました……。

 

 

 

 

 

●●●●●

 

 

 

 

 

 

 

 

 この屋敷に泊まって一週間が経過しただろうか。そうすればいい加減この生活にも慣れてくる。めぐみんは一日一爆裂を欠かさず続けており、そして武勇伝をメイドさん達に、果ては領主様にもしていた。

 

 

 アクアはこの屋敷にある酒をすべて飲み干さんばかりに飲んで、飲んで、飲み漁っていた。

 

 

 カズマも贅沢とワガママの限りを尽くしている。

 

 

「いやぁ慣れたもんだなぁ……」

 

 

 俺が屋敷に入るや否や、こんな感じ。ちなみに俺は軽く外に出てモンスターを狩っていた。ここら辺はアクセルの街にも出ないようなモンスターが見られたので、俺はそれを見物がてら倒して回っていた。クエストとかではない。

 

 

「あ、メイドさん俺に何かつまめるものとお酒頂戴」

 

 

「はい、かしこまりました」

 

 

 そう言いながら、俺はソファーで横になって、おつまみとお酒を待つ。そんな贅沢三昧をしていた俺達。部屋の隅にはダクネスが小さくなっていた。

 

 

 そこに領主様が現れる。一週間前よりちょっとだけ痩せたような――やつれたような顔をしながら、ダクネスに声をかけていた。

 

 

「ダスティネス様。その……遠慮なくいつまでもと、そう言っておいて何ですが……」

 

 

「分かってます! すぐに出て行かせます!!」

 

 

 ダクネスが恥ずかしそうに今にも泣き出しそうな顔でそう言って頭を下げていた。

 その日の深夜にふと、俺は目を覚ました。ぶるりと身震いをする。

 

 

「トイレトイレっと」

 

 

 俺は尿意に襲われ、トイレに駆け込んだ。トイレで用を足した後、自室へ戻ろうとした時だった。大きな物音がキッチンの方から聞こえてきたので、俺はすぐさまそちらに向かう。

 

 

 そこには縄で拘束されたカズマが横になっており、すぐさま俺はキッチンの窓を覗き込む。そこには人影は見えずに、おそらく既に立ち去った後なのだろう。

 

 

「大丈夫か、カズマ」

 

 

「あ、あぁ……俺とした事があと一歩のところで義賊を取り逃がしちまった」

 

 

 カズマが対人戦闘で負けるとは……なんて考えてると、後ろからダクネスが入ってき、それに続いてアクア、めぐみんが来る。

 

 

「無事か、カズマ! リュウトもいたのか! 二人とも無事か!?」

 

 

「あぁ、俺はこの通りだけど、カズマがな」

 

 

「義賊は仮面をつけた男だった。あれはかなりの手練れだった。下手すれば魔王軍幹部なんて目じゃないぐらいの……」

 

 

「そ、そこまでの相手だったんですか!?」

 

 

 めぐみんが驚きの声をあげていた。

 そこからずっと黙っていたアクアがカズマの前に出てくる。

 

 

「ねぇ、そのミノムシみたいな状態のカズマさんって身動きできないの?」

 

 

「あぁ、『バインド』のスキルでこうなっちまってな。そういやお前ってこういうスキルを解除する事できないのか?」

 

 

「私を誰だと思ってるの? できるに決まってるじゃない」

 

 

「だったら早くなんとかしてくれ」

 

 

 カズマがそう言うと、アクアは。

 

 

「その前にカズマさん。一つ聞いてほしいことがあるの……」

 

 

「なんだよ、言ってみろよ」

 

 

 そこからアクアはカズマの居ない間に、カズマの部屋にあったフィギュアを壊した事、カズマの部屋で飲み散らかして、さらには他にもいろんなモノを壊したことを話していた。

 

 

「ごめーんね?」

 

 

 アクアはそう謝ると、カズマはあからさまにこめかみに青筋を浮かべながら。

 

 

「おい、リュウト! お前の『フルキャンセル』でこれを解いてくれ! 今からコイツを張っ倒してやる!!」

 

 

「あ、ああ……」

 

 

 俺が『フルキャンセル』を放とうとした瞬間に、俺はダクネスに止められる。

 

 

「そういえば、随分と面白い状態じゃないか」

 

 

「今、気づきましたがそうですね……」

 

 

 ダクネスとめぐみんがニヤリと顔を歪めた。まあ今回はやりすぎってのもあるかも。

 

 

「ちょ、おい……待て! リュウト助けてくれ! やめてくれぇぇえええ!」

 

 

 騒ぎを聞きつけた領主様がキッチンに駆けつける。

 

 

「おい、何の騒ぎだ! まさか本当に賊が……!?」

 

 

「助けてぇ!!」

 

 

「助けてぇはないだろう! ほら、今回散々迷惑をかけてごめんなさいと! 調子に乗ってごめんなさいと! 恥をかかせてごめんなさいと言ってみろ!!」

 

 

「迷惑かけてごめんなさい! 調子乗ってごめんなさい!! 恥をかかせてごめんなさいっ!!!」

 

 

「カズマ! あの格好良いセリフをもう一度お願いします! ほら、何点ですか!? 私の爆裂魔法は何点!?」

 

 

「ああいうのは一回しか言わないからいいんだろうが!! 何回も言わせるな恥ずかしい!!」

 

 

「助けてくれ、リュウト!! 助けてくれぇええええ!!」

 

 

 さすがに可哀想になってきた。俺はそこで皆を止めて、カズマを解放してあげた。




ここまで読んでいただきありがとうございます。


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