ハズされ者の幸せ   作:鶉野千歳

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無事に戦闘が終わって、今日は、宴会日和。
ただ・・ちょっと違った意味合いが・・・



宴~告白事件~

作戦終了から2日。

呉隊の各艦の最低限の修理が明日には終わる、との報告がきた。

この日は、大本営で緊急の会合が行われていた。

秋吉の推測通り、今後の体制の話だった。

重体の元帥はそのまま療養に入ることになった。

重傷の参謀たちは何とか仕事に付けそうであったが、いかんせん、ほとんどが武蔵被弾時に死亡したため、急な配置転換で大本営の人員刷新が図られることになった。

秋吉は先の話のとおり、病気治療に入り、横須賀の提督を秦に任せる事になった。

呉は・・しばらく空席となり、一時的に大本営が直轄することになった。

 

で、横須賀の鎮守府では・・・・

明日には大湊隊、呉隊の各艦が帰るため、今日はお別れ会として宴会が行われることになっていた。

食堂での大パーティである。

しかも昼の1時から。

秋吉は呆れていた。まったく、酒飲みどもめ、と。

秋吉と赤城は会議のため、遅れて参加することとなったが、酒飲み艦娘にとっては、その辺はどうでも良かったらしい。

 

「うぃぃいい! 酒が飲めるぞぉ!」

 

「隼鷹? 待ちな! あっ! もう呑んでる??」

 

「うへへへっ、いいじゃんかぁあ。 どうせ呑むんだしぃ!」

 

もうすでに出来上がっているヤツもいる。

傍からは、いいじゃん、いいじゃんと煽る奴も。

食堂には、横須賀、呉、大湊の艦娘たちが勢ぞろいしていた。

もちろん、提督も。

総勢50人にはなろうか。

テーブルには、間宮と鳳翔の手による料理が・・・もとい、酒のアテと化すであろう料理が並んでいた。

料理は、和洋中なんでもござれ。

揚げ物、焼き物、煮物、フルーツなどのデザート類も。

酒類は、日本酒、ビール、ウイスキー、焼酎などなど、こちらもなんでもござれ、だ。

さすがに鳳翔と間宮の2人で料理を用意するのは大変だろうと思い、秦は楠木隊の各艦娘に手伝いをさせていた。

卯月はぶーぶー言っていたが、秦は楠木隊だけであとで慰労会をやるつもりだと言うと、みんな素直に手伝ってくれることになった。

一通りの料理の用意が出来ると、宴の始まりを告げた。

 

「え~、僭越ながら開会のあいさつをさせてもらう。 呉と大湊のみんなは初めてだね。 横須賀の副提督をやっている楠木だ。 以後、よろしく。 で、堅苦しい挨拶はなし、でいこう。」

 

そう秦が言うと、あちこちから、おぉぉぉーー! と声が上がった。

 

「とは言え、まずは今日ここに参加できなかった、沈んでいった者たちに哀悼の意を表させてもらう。」

 

この瞬間だけは、皆静かになった。

今回は、呉隊に多大な損害が出ていた。

もちろん、救助された艦娘もいたが、全員の救助はならなかった。

 

「その犠牲の上に、今があることを認識してもらいたい。 と、悲しい話はこれくらいにして、と。 みんな、グラスは持ったか? では、今日この日に集ったみんなに感謝して、乾杯!!」

 

【かんぱぁぁぁい!!】

 

画して、宴が始まった。

我先に料理に飛びつく輩、酒に飛びつく者、それを遠目に呆れて見ている者、いろいろだ。

 

「うぅぅん、この煮物、いい味しみてるぅ」

 

「このお肉、やわらかぁい」

 

「こっちのスープ、冷たくておいしぃぃぃ!」

 

みな料理に舌鼓を打っている。

特に駆逐艦たちは料理に夢中だ。

隣をみると加賀を始めとする空母娘が大皿の料理を平らげていく姿が見える。

(もうちょっと、味わったら?)と思うほどのスピードで料理が消えていく。

瑞鶴も結構な食いっぷりであった。

翔鶴がそんな瑞鶴を「急いで食べないでも沢山あるんだから」と注意していた。

秦はそんな中で大湊の提督と話し込んでいた。

 

「支援頂いて、助かりました。 あれが無ければ、今頃は海の底でしたよ。」

 

と苦笑して言っていた。

 

「いや、君の連絡が的確だったから、上手くいったんだよ。 にしても、少ない航空機で空母をよく攻撃しようと思ったもんだ。 そこん所は感心するよ。」

 

そう言われて秦は、はははっと苦笑していた。

 

「あの時は必至でした。 とにかく、なんとかしなければと。 鳳翔の飛行隊が良くやってくれました。」

 

そう言って、頭を掻いた。

 

「ところで・・・立華提督の秘書艦は・・・確か・・・」

 

「ああ、彼女だよ。 曙。 綾波型8番艦の。」

 

小柄なセーラー服の少女がこちらを向いていた。

 

「曙よ。 よろしく。」

 

「楠木です。 こちらこそ、よろしく。」

 

「あら? 楠木提督の秘書艦は、どうしたの? 一緒じゃないの?」

 

「秘書艦? 鳳翔なら、あそこですよ。」と指を指す。

 

厨房で調理の真っ最中だった。

 

「楓ちゃん、これ持って行ってちょうだい! あ、由良さんはこれ、お願いね!」

 

大忙しのようだった。

その姿を、目を細め、微笑ましく見ている秦に、

 

「信頼しているのかね? 彼女を。」

 

と立華が聞く。

 

「ええ。 信頼、よりも愛情、でしょうか。 既に我が家の一員、ですしね。」

 

「なかなか、恥ずかしい事を言うねぇ。 聞いてるこっちまで恥ずかしくなるわ。」

 

「はははっ。 ですが、立華提督は、既に指輪を渡しているのでしょう? 」

 

曙の左手には、銀色に光る指輪があった。

 

「ああ。 俺の最愛の秘書艦様さ。 いつも傍に居てくれるし、な? 曙。」

 

「よく人前でシャーシャーと言えるわね。 だからクソなのよ。」

 

曙の頬が赤くなっていくのが分かる。

 

「まあまあ、二人とも落ち着いてよ。 噂通りの仲の良さですな、立華提督?」

 

そんな会話をしているうちに、厨房での作業がひと段落ついた鳳翔がやってきた。

 

「ああ、鳳翔? 一区切りついたの?」

 

「ええ。 何とか、みんなに手伝ってもらって、やっとです。」

 

と二人はにこやかな顔をしていた。

 

「紹介するよ。 こちら大湊の立華提督とその妻艦の曙。」

 

秦の一言で立華と曙の顔が一気に赤くなる。

 

「ま、そうですの? よろしくお願いいたします。 鳳翔です。 楠木提督の秘書艦をしています。」

 

「こ、こちょらこそ。」

 

(咬んだ・・・ )

 

今度は、立華からの攻撃だ。

 

「そ、そういえば、楠木提督。 岸壁では大胆な行動でしたなぁ。」

 

ニヤニヤした笑いで秦を攻める。

 

「あ・ 見られていましたか・・ お恥ずかしい。」

 

秦の頬が赤くなる。

鳳翔は両手で顔を覆って「や、だ・・・」と秦の後ろに隠れてしまった。

 

「で、楠木提督は、ケッコンはするのかな?」

 

との質問に秦が答える。

 

「んんっ??  そう思ってますが、今はまだ。   いずれは、と思っていますが。」

 

「なら、今はっきりすればいいじゃないか?」

 

立華の顔が、ニヤける。

 

「「はい??」」

 

二人が同時に声を上げて驚いていた。

 

「今ここで、君が鳳翔を妻にする、と言うんだよ。 ここにいるみんなが見届け人だ。 どうだい?」

 

それを聞いていた艦娘たちが便乗する。

 

「お? なになに? 告白?」

 

「ヒューヒュー!! 新婚さん、いらっしゃぁぁいいってか!!」

 

冷やかしの目が秦たちに集中する。

 

「どうだい? 楠木提督? てか、早くしないと、この場は収まらないぞ。」

 

立華が急かす。

 

「いや、こういうのは、雰囲気も大事だから、ここではね? ね?」

 

と秦がおろおろしながら答えるが、鳳翔は・・・両手を胸の前で重ねて、目を潤ませて秦を見つめていた。

それを見た秦は・・・ (可愛い・・・)と思ってしまったが、 逃げ道は・・無かった。

そして・・・覚悟した。

皆の視線の中、秦は、鳳翔に向き、口を開いた。

 

「こんなところで、こういうのは場違いだとは思うが・・・ 鳳翔、俺とケッコンしてくれるかい? 」

 

鳳翔の目から、涙がこぼれ落ちていくのが見えた。

 

「はい。 お受けします。」と。

 

次の瞬間、拍手と歓声が上がった。

 

「ヒューヒュー!! 新婚さん誕生!!!」

 

「よっ いいよぉ、ご両人!!!」

 

「お母様、おめでとうございます。」

 

秦は、優しく鳳翔を抱きしめた。

秦の胸の中で泣く鳳翔に、「こんな形でゴメンね」と囁いていた。

 

「つぎは、ケッコン式だぁ!!」

 

なんて騒ぎ立てられていた。

 

「よく言ったな。 楠木提督。 お幸せに。」

 

と立華は笑っていた。

そんな賑やかな、騒がしい宴会は進んでいく。

昼過ぎに始まった宴会は、ゆうに5時間続いていた。

すでに酔いつぶれているヤツもいた。

未だ食い足りないのか更に食い物を求めているヤツもいた。

各自の部屋に帰っているヤツもいたが、呉や大湊の連中はそのままテーブルに倒れ込んで寝ていた。

秦は、宴会の終了を宣言し、名目上は終わったことになった。

 

そんな連中を横目に、片付けを終えた秦と鳳翔、由良をはじめとする楠木隊の面々は、秦の執務室に居た。 

そこにようやく帰ってきた秋吉と赤城が間宮を伴ってやってきた。

 

「壮大な宴会だったようだな?」

 

「はい。 そうりゃあもう、大変でしたよ・・。」

 

「お疲れ様、父さん。」

 

睦もやってきていた。

 

「間宮さん、鳳翔、お疲れ様。 由良や卯月たちもありがとう。 」

 

朝霜や卯月たちは、どう見てもへとへとな様子だ。

 

「みんな、好き勝手言って、ちっとも楽じゃないぃ。 あんなの相手に間宮さんも鳳翔さんも疲れないの???」

 

「あれくらい、大丈夫ですよ。 私なんか、みんなが手伝ってくれたから、楽な方ですよ。」

 

そう聞くと、ふぇぇぇっとへたり込んで脱力する駆逐艦たちだった。

 

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