真・恋姫†無双~日の本の恋姫~   作:ゲーター

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2025追記
リメイク前の五話を一話目にひとつに纏めました。
話の繋がりは無いですしリメイク後よりさらに拙いですが、昔読んだ作品を懐かしみたい方へ残しておきます。
規約違反だったり運営さんに注意されたりしたら消します。



テストの結果が悪くて書いた。反省はしている。後悔はしていない。

作者は演義も史実もよく知らない上、原作知識は二次創作のみなので色々至らない所もあると思います。ですので温かい目で見守っていただけたら幸いです。


リメイク前
プロローグ(統合)


 四季の移ろいはいつの世にあっても変わることなく。住吉から鯨海を臨めば、潮の香りが東風に乗って遥か西の大陸へと流れ去っていく。

 

 「壱与(いよ)様。出立の用意、全て滞り無く終了して御座います」  

 

 側に控えた侍従の言葉に、感慨深いものを感じる。遂に、私の悲願を為す時が来た。 

 

 「ああ、分かった。私もすぐに行こう」

 

 ーー私が産まれて速十五年。この国も随分豊かになったものだ。

生まれたての頃は、この国はまだ統一国家には程遠い、小さな国の連合に過ぎなかった。この時代、まだ馬などの家畜や作物、技術、文字すら大陸から伝わってはいない。使節を送ろうにもそもそも造船・航海技術も未熟なため、せっかく送った使節が還らぬ事もあった。

 それを私が改善した。まずは造船技術を向上させ使節の生還率を上げた上で、季節を選んで渡航させた。そして大陸の文明・文化を吸収し、この国の風土に合った物へと昇華。更に私の知識を用いることで、先進技術を擁したこの国は列島全土にその支配を広げ、大陸の国家すら従える大国となったのだ。

 

 「ろくに勉学にも励まず雑多な知識を漁っていたのが、こんなところで役立つとはな……」

 

 ああ、あの頃を思い出すと頭が痛くなる。思えばとんだ馬鹿息子だったものだ。毎日遊び呆けて、ろくに親孝行もしないで。机の引き出しに入れたあの本も見つかっていたら、さぞかし幻滅していることだろう。……今ではその本を使う側ではなく、その本で姿を晒す側になっているとは思いもしないだろうが。

 初めはこの体にもずいぶん悩まされた。流れるような黒髪に、華奢で細い女の体。何の因果かこの世界に生まれる前の記憶を持った私では、どうにも慣れなかった。そして時には自分の体に何を想像しているのかと、激しく自己嫌悪に陥ったりしたものだ。

 今ではもうこの体にも慣れて、私自身、女として生きようと決めているのだが。幸か不幸か、十五年の人生の中で未だ言い寄る者は現れていない。

 

 

 

 軍港に着けば、報告に違う事無く、既に用意は終わっているようだった。数々の軍船がその偉容を誇る中、皆整然と並び、私の言葉を待っている。

 悠然とした足取りで進み、彼らの前へ。少しだけ深く息を吸い、ゆっくりと口を開く。

 

 「皆、まずは出立の準備、大義であった。予定通りに終わって何よりだ」

 

 誰も、何も言わない。当然だ。彼らが待っているのは、労いの言葉などではない。

 

 「して、諸君。この国は豊かになった。国土は数倍にも広がり、民も増えた。今やどんな貧民も餓死するものは居らず、どんな無学の者も読み書きを覚え、嘗ては考えられなかった程の生活を享受している。この国は、まさしく昇りゆく太陽なのだ。

 ……しかし、だ。この国には、まだ不足している物がある。それはーー『名誉』だ」

 

 「今この世界で、最も権勢を誇っているのは、西の大陸にある漢だ。彼等は多くの先進文化を創生し、広大な領土に長い歴史を誇る偉大な国家だ。

 だが、かの国は我等を見下している。東方の未開の地に住む蛮族だと。取るに足らない東夷であると。

 ……ならば、それが間違いだということを思い知らせてやろう!」

 

 誰も、何も言わない。けれど、彼等から熱い闘志が伝わってくる。皆解っているのだ。この戦いが、今まで発展の一途を辿ってきたこの国の試金石なのだと。この戦いによって漸く、名実ともにこの国が大国となるのだということを。

 息を大きく吸って、声を張り上げ号令をかける。この国の、『大和』の歴史は今ここから始まるのだ。

 

 「皆の者! 我らはこれより、大陸へと出兵する! 彼の地では、官僚が汚職にまみれ私腹を肥やす一方で、民は重い税と賊の襲撃に喘いでいる! このような非道、到底許してはおけぬ! けれど統治者たる皇帝は、毎日優雅な宮暮らしだ!

……最早今の漢王朝に中華を統べる力は無い! ならばどうして我らが服属していられようか!

 雌伏の時は終わったのだ! 我らを倭と呼び蔑んできた輩に、この国の力を見せつけてやれ! そして彼の地で涙を流す民を救い! 彼らを虐げる悪を討て!我らの名を世界に知らしめよ! さあ、皆の者! 出陣だ!!」

 

 『おおおおおぉぉ!!』

 

☆☆☆☆☆

【揚州上陸】

(まえがき

大陸までの日数はネットから。ですので間違い等ありましたらご指摘ください。)

 

 「陸地だー! 陸地が見えたぞー!」

 

 一人の水兵が叫ぶ声が聞こえる。

 出航より七日。ようやく陸地が見えてきたのだ。

 

 「なかなかに長い旅路だったな……」

 

 七日の海上生活は、思ったよりも快適であった。

 船団は順調に進み、少々大きな波が来た時も難なく乗り越えていた。だがそれも、我が軍の水兵の尽力があってこそだ。陸地で一段落ついたら酒でも振る舞ってやろう。

 

 ーー? ふと、磯の香りに混じって、焦げるような臭いがした。

 

 「煙だ! 陸の方で煙が上がってるぞー!」

 

 再び張り上げられる声。どうやら酒は、もうしばらくおあずけのようだ。

 

 

*****

 

 

 「ハアッ、ハアッ、ハアッ……」

 

 逃げる、逃げる。焼け落ちる家屋から。断末魔の叫びを上げる皆から。そしてーーー

 

 「ほらほらぁ、もっと頑張って走らねえと死んじまうぞ~?」

 

 ーー襲って来るあいつらから。

 

 「どうして、どうしてこんな事に……」

 

 揚州のはずれにあるこの村は、普通の小さな漁村だった。毎日の生活は慎ましやかだけれど、今まで平和に暮らしていたのだ。

 

 ーーそれが崩壊したのは、つい先ほどのこと。黄色い布を体に巻いた屈強な男達が、突然村を襲ったのだ。奴らは私達の家を焼き、村の仲間を殺し、金目の物や女の人をどんどん略奪していった。私も攫われかけたけど、両親が身を挺して逃がしてくれた。…でも、それももうここまでかもしれない。

 

 「おいおい、遅くなってるぞ~? お嬢ちゃん、だいじょうぶでちゅかー? うひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!」

 

 「くっ……あっ!」

 

 「へっへへ……つ~かま~えた!」

 

 男に腕を掴まれて、地面に引き倒される。

 

 「そんなにこわがんなよ~。ただ、ちょーっといいことするだけだからさ?

 だいじょうぶだって、皆で可愛がってやるよ」

 

 「いや……お願い……やめて……」

 

 怖くて思わず目をつむり、弱々しく懇願してしまう。…そんなの無駄だって分かっているのに。

 

 「ひゅー、か~わい~! 食べちゃいたいくらい。こっちの意味でな!  うひゃひゃひゃひゃ!「黙れ」ご、ぶ……!?」

 

 凛とした声が男の笑い声を遮り、直後に聞こえるぼとり、という音。

 恐る恐る目を開くと、そこには首を切られた男の体。そしてーーー

 

 「賊共は全員始末した。……もう大丈夫だ」

 

 

 ーー不思議な紅白の着物を纏い、不思議な形の剣を携えた黒髪の女性の姿が、あった。

 

 「立てるか?さあ、村に戻ろう。村人たちが君の帰りを待っているぞ」

 

 「は、はい……えと、あ……あなたは……?」

 

 私の問いかけに、彼女はーー

 

 「私か?私の名は壱与。邪馬台国改め、大和国の初代女王だよ」

 

 ーーそう、言った。

 

 

 

 この日。この国の在り方を決定付けたと後の世に長く語り継がれる戦が、始まったのだった。

 

☆☆☆☆☆

【拠点確保】

 

 女王だというお姉さん(そう呼んでくれと頼まれた)に連れられ村に戻ると、村の皆が出迎えてくれた。……いくつか、足りない顔もあった。

 

 「ああ、高樺(こうか)ちゃん!無事だったんだね!」

 

 私の名前を呼ぶ声に振り向けば、そこには見知った顔の人が。

 

 「お隣のおばさん……」

 

 「無事で良かったよぉ、あたしゃ高樺ちゃんが追いかけられてるのをこの目で見てねぇ。大和……だったかしら、とにかくそこから来たって言う人たちが助けてくれた時、すぐ高樺ちゃんのこと話して助けに行って貰ったんだけど、気が気じゃなくてねぇ……」

 

 「そうだったんだ……ありがとう、おばさん。

あ、そうだ!お母さんとお父さんを知らない!?」

 

 「奥さんは無事だよ。でも、村長さんが怪我したらしくてね、今大和の人たちに治療してもらってるよ。奥さんもそこで付き添ってる」

 

 「お父さんが……!?」

 

 「負傷者の治療はあっちでやってる。急ごう」

 

 呆然と立ちすくむ私に、お姉さんはそう言った。

 

 

*****

 

 

 破壊されなかった、海岸近くの漁師小屋。それらは今、見たこと無い格好の人たちによって治療院へと姿を変えていた。

 

 「お父さん!」

 

 その中の一つ、お父さんの居る小屋に飛び込んだ。中には、白い清潔そうな服を着た男の人と、振り向いたお母さんと、そしてーーーー

 

 「高樺……」

 

 ーーーー体にたくさん包帯を巻いて、驚いた顔でこっちを見る、お父さんの姿が。

 

 「お父さん!」

 

 思わず駆け寄って、思い切り抱きついた。

 

 「痛たたた……痛いよ、高樺」

 

 「だって、だってお父さんが怪我したって聞いて。もしかしたら、死んじゃうかもって思ってっ……」

 

 「高樺、私を誰だと思ってるんだ。私はお前のお父さんだぞ?そう簡単に死ぬものか!

 ……それより、お前が無事で良かった」

 

 優しく、抱き返される。……目から、雫がこぼれる。

 

 「先生、ありがとうございます。おかげで主人も大事なく……」

 

 「いえ、そんな。私はただ当然の事をしたまでですよ」

 

 お母さんと白い服の人が話すのを聞いて、私もお礼を言うべき人がいるのを思い出した。

 

 「お姉さん、ありがとう。私達を助けてくれて、本当にありがとう!」

 

 「……なに、彼の言うように、私達は人として当然の行いをしたまでだよ」

 

 お姉さんは、少しだけ恥ずかしそうにしていた。

 

 「しかし、あなた方が助けてくださらねば、この村は崩壊していたでしょう。何かお礼をさせていただきたい。……もっとも、こんな田舎の村にできることなどたかがしれていますが」

 

 「そんな、お礼などしてもらうほどの事はしていないよ。……ただ、実は一つ頼みたいことがあるのだが、聞いて貰えないだろうか?」

 

 「ええ、もちろんですとも。我々にできることなら、何なりとお申し付けください」

 

 「そうか。ありがとう、感謝する。……で、頼みなのだがーー」

 

 お姉さんは、少し悩むそぶりをして、言った。

 

 「ーーこの村を、我等の拠点にさせて貰えないだろうか?」

 

 

☆☆☆☆☆

【友誼】

(まえがき 

文字数まさかの約三倍。その上二話連続で壱与視点じゃないです。けれど次回は必ず壱与視点ですので、もう少しお待ちください。)

 

 最近、揚州に謎の集団が現れた。

 

 曰く、規律正しい統率された軍隊。

 曰く、精強な鍛え抜かれた戦士。 

 彼等こそ、蓬莱の地から中華を救いにきた天の御使いなのではないか。

 

 そんな噂をよく耳にする。

 なんでも、彼らは三ヶ月ほど前から東方より船で遣って来て、各地の賊を次々と討伐しているらしい。そして近隣の村や豪族を懐柔し、勢力圏を拡大していると言うのだ。

 でも、それは言うほど簡単じゃない。賊だって大小様々な集団がいるし、近頃は黄巾党とかいう大規模な集団も各地で暴れ回っているのだから、それをこの短期間で討っていくのは、並大抵の事ではない。それに、今でこそ袁術……美羽ちゃんの支配下にあるけれど、元々揚州は私達孫家の領域で、今でも孫家を慕う者は多い。それを新参の勢力が、武力制圧ではなく平和的に従えるということは、彼等に信頼に値する価値があるということ。

 

 「ね、そうでしょ?冥琳」

 

 そう、幼なじみの筆頭軍師に問いかける。

 冥琳。性は周、名は瑜、字を公瑾。私達孫呉の知嚢であり、戦では何度もその策謀に助けられた当に孫呉の王佐の才。私はいつも勘頼みで頭脳労働はからっきしだから、彼女の存在はとてもありがたい。

 ……でも、少し融通が利かない所があって、私が政務をさぼるとすぐ叱る。うう、ちょっとくらい良いと思うんだけどなー。

 

 「ああ。所詮噂ではあるが、もしそれが本当なら私達の計画に支障を来すかもしれないからな。一度集団の長と会ってみるべきだろう」

 

 ーー計画。美羽ちゃんの配下という立場から脱却し、呉の地を再び孫家が統治するという、私達孫呉の悲願。そのため私達は、美羽ちゃん達に感づかれないように、密かに準備してきたのだ。それを邪魔するというのなら、全力で排除しなければならない。

 冥琳はまだ半信半疑だけど、私の勘は、噂は本当だと強く訴えている。彼等の目的がはっきりしない今、敵となるか味方となるかは分からない。でも、不思議と悪いようにはならないと思えた。

 

 

*****

 

 

 私達は今、謎の集団が拠点にしているという漁村にやってきている。美羽ちゃんは、所詮噂と全く気にしていなかったけれど、頭の中がお花畑な彼女でもこれを見ればその考えを改めるだろう。

 何せ、村には武装した兵が滞在しており、村に入る者を検査して賊や盗人の類が入り込まないようにしているし、海には巨大な物から小型の物まで多種多様な船が停泊している。その上村人は、この現状に全く不満が無いどころか歓迎しているようですらある。休憩中なのか、兵と村人が談笑しているのが良い証拠だろう。

 

 「これは……凄いな」

 

 隣で冥琳も驚いている。やっぱり噂は強ち間違いではなさそうね。

 

 警備中の兵に彼らの長と話がしたいと言うと、船上になりますが構いませんかと言われたので構わないと答える。

 当然、彼らが敵かもしれない以上、船上という閉鎖された空間にたった二人で乗り込むのは危険だけど、私の勘は平気だと言っている。それに、村の現状から考えて、彼らは例え敵でも、話し合いに来た者を攻撃するような人々ではないと思うから。今の兵も紳士的だったし。

 数ある船の中で、最も大きな物へと案内される。船にはなんと城のような物まで建ててあり、その中の一室……密談にはもってこいな、小さな部屋で待っているよう言われた。

 

 「ねえ冥琳。彼らは一体何者なのかしらね?」 

 「そうだな……兵や船を見る限り、彼らがどこかの国に属していることは間違いない。東から来たというが、高句麗や三韓の者ではないようだし、恐らく……倭の者ではないだろうか」

 

 「倭?確か、高句麗よりも南東にある島国で、女王が支配しているって言う国よね?」

 

 「ああ。彼の地は中華から遠く、朝貢の使者もあまりやって来ない。そのため倭の事はあまり知られていないし、私達の知らない物や技術があっても不思議じゃない」

 

 「ご名答。だが、『倭』というのは訂正してくれ。その字は意味がよろしくないからな。現在は『大和』だよ」

 

 「なっ!?」

 

 いつの間に入ったのか、扉の前には紅白の見慣れない服を纏った、十五歳くらいの黒髪の少女が立っていた。

 

 「すまない、驚かせたようだ。そう警戒しないでくれ」

 

 「警戒するなと言われてもね、あなたが誰か分からない内は、それはできない相談よ」

 

 なんせ相手は、この私に気付かれず動ける程の実力がある。相当な手練れなのは間違いない。……まあ、もう誰なのかは殆ど確定してるけど。

 

 「ああ、自己紹介が遅れたな。私の名は壱与。大和国の女王だよ」

 

 やっぱりね。冥琳は精々将軍くらいと思っていたのか驚いているけれど、私はなんとなくそんな気がしてたもの。

 

 「お初にお目にかかります、女王陛下。私は性は孫、名は策、字は伯符。孫家の当主をしておりますわ」

 

 「同じく、私は性は周、名は瑜、字は公瑾。孫家の軍師を務めております」

 

 「そんな畏まらないでくれ。私は一国の王とはいえまだ齢十五の若輩者。歳なら貴女方の方が上だし、江東の虎の子にそんな姿は似合わない」

 

 「あらそう?なら、そうさせてもらうわ。けど結構物知りなのね。実力もあるみたいだし、若輩者なんてとんでもないわ」

 

 「ふふ、自分が滞在するところの君主くらいは把握しないとな。今は地に伏していても、陰で牙を研いでいるであろう虎の子を無視などできないよ」

 

 本当に物知りね……江東の虎と呼ばれたお母様のことも、私達の現状も掴んでいる。

 

 「貴女方の用件は分かっているよ。大丈夫、私達は揚州を奪うつもりもないし、孫家に敵対する気もない。今は、賊から守ったり大和の品を渡したりする代わりに、少し滞在させてもらっているだけさ」

 

 「……全部お見通しってわけね。でも、その言葉を聞いて安心したわ。……だけど、侵略じゃないなら何故中華に?それも女王自らなんて」

 

 「それは中華の者の方がよくわかるはずだ。今中華の地は荒れ果てている。官僚が民の血税を貪り、賊が跋扈している中で、無辜の民が苦しみ死んでいくのが我慢ならなかったのさ。

 ……とだけ言えたら私は聖人なのだろうが、生憎それでは国王はやっていけない。当然打算もある」

 

 「では、それは一体……?」

 

 冥琳が油断ならないといったふうに聞く。

 

 「なに、いつまでも倭と見下されては正常な外交はできないし、ここらで大和の名を売っておこうと思ったのさ。漢との付き合いは長くはないだろうが、中原にはまた新しく王朝が興るだろう。それが滅んだらまた新しく国が建つ。そしてその次も。

 あなた方は私に礼をもって接してくれたが、今の中華にそんな人間がどれほどいることか。ただの民草ならともかく、官位の有るものや名門の出はそのほとんどが我らを蛮族と蔑むだろう。だからここで知らしめるのさ。

 大和はもう中華の王朝に服属する必要がない。我々は化外の民ではなく、もう一つの中華(文化の中心)であると宣伝し、大和は中原の国と対等なのだと世界に発信する。そうすれば、大和は高い名声を得て、国の内情に沿った大国としての威信を手に入れ、蛮族呼ばわりする輩もいなくなるというわけさ。

 後は、これから中華の覇権を握るであろう者と友誼を結んでおく、といったところか」

 

 「へえ……じゃあ、私達なんかどうかしら?」

 

 私達の目的は孫呉の地を取り戻すこと。だから別に、中華全てを統治したいわけじゃない。天下統一は孫呉を守るための手段の一つだと考えていた。けど私も妹も、十分に中華の王の器足り得るとは思う。ならここで大和と関係を結び、天下を統一するのが最も良い選択肢だろう。それに天下を統一しなくても、彼等はそれを咎めたりはしない。きっと他の王の器とも結ぶだけだ。

 

 「ふむ……確かに孫家なら、その可能性もあるか。事前に調べたが家臣にも恵まれているようだし、当主の器の大きさも見せてもらった。それに、私達を信用して船に乗ってくれたからな。

 ……よし、此方もあなた方を信じよう」

 

 「じゃ、決まりね?」

 

 「ああ。これからよろしく頼むぞ。孫策殿、周瑜殿」

 

 もう、殿なんてつけなくていいのに。……そうだ、彼女には教えても構わないわ。冥琳、貴女もそうでしょ?

 

 「殿なんていらないわ。あと、私のことは雪蓮って呼んでちょうだい」

 

 「私にも尊称などつける必要はないよ。あと、私は冥琳と呼んでくれ」

 

 「……良いのか?それは真名だろう。確か中華の者にとって特別なもので、本人の許可なく呼べば即座に切り捨てられても文句は言えぬ程のものだと記憶しているが」

 

 「良いのよ。だって私達、もう友達でしょ?」

 

 「!……分かった。私には壱与という名前以外、性も字も真名もないけど、好きに呼んで。これからよろしくね、雪蓮、冥琳!」

 

 ーーそう、王としてではなく一人の少女として答えた彼女は、とても可愛らしくて。

 

 「か、可愛い~!」

 

 「わっ、ちょっと雪蓮、苦しっ」

 

 ーー思わず抱きしめてしまったのは仕方ないと思うのだ。

 

☆☆☆☆☆

【家臣】

(まえがき

オリキャラが五人登場します。ご注意ください。

それと名前を使わせていただいた武将ファンの皆様、申し訳ありません。)

 

 「うう……ひどい目にあった……」

 

 「ご、ごめんってば~。だって壱与ちゃんがすごく可愛かったからつい……」

 

 揚州上陸より三ヶ月。各地の村や豪族を懐柔し揚州での地盤を固めていた時に訪ねてきた、孫家の当主と筆頭軍師。話し合いの結果、孫家とは友誼を結んだのだけれど。

 

 「だからって、そのまま押し倒そうとするのはやりすぎだと思うぞ?雪蓮」

 

 「うう、冥琳まで~」

 

 どうやら私の心からの笑顔は、同性まで魅了することがあるようだ。……今世では生まれが王族だったから友達なんて言ってくれる人がいなくて、すごく嬉しかったからつい顔が綻んでしまった。

 

 「はあ……これからは自重してよ?」

 

 「分かったわ。できるだけ我慢する」

 

 「できるだけって……ま、いっか。

  それより、今度は孫家と大和がどのように協力し合うのか話し合いたいんだけど、いい?」

 

 これはとても重要な話だ。協力といっても、片方が戦になった時に軍を率いて増援に行くのと、物資や情報の提供に留めるのでは大分違う。戦時でなくとも、技術の提携や貿易など明確にしておくべき事は多いのだし。

 

 「ああ、構わない。だが、此方は家臣にも話をしないといけないから即決はできない。だから、今日のところは相手方にしてほしい事を述べるだけに留めて、また後日話し合いたいのだが、いいか?」

 

 「うん。大丈夫。というより私も独断で決める訳にはいかないから、その提案は願ったりかなったりだよ」

 

 当然だけどうちにも家臣はいるし。……でも、大和はまだ歴史が浅くて有能な人物が少ないから、大陸で名を轟かせるほどの者は五人ほど。その五人とも軍の重要な立場にいるから、彼らにも話を通さないといけない。

 

 「よし、じゃあ先に孫家からお願い」

 

 「うーん、そうね……孫家としては、とりあえず袁術から独立して孫呉の地を再び統治するまでの援助が欲しいわ。兵糧や矢とかの物資支援に、できれば大和軍も共に戦って欲しいわね」

 

 「ふんふん。じゃあ、今度は大和側の要請。

  まず、孫家の統治する地での大和軍の駐留を認めてほしい。大和は中華の土地は欲しくないし、積極的に戦うことは無いと思うから、援軍は必要ないよ。ただ、もしも大和が中華で逐われる身になった時は見逃して欲しいな。流石に敵地で孤立するのは避けたいからさ。

 ああ、それと孫家の所持する書物を分けてもらいたいな。……大和は軍師や学者が少なくてね。書物もあんまり無いし、教養が全体的に低いんだ。戦闘技術とか礼儀作法は叩き込んだんだけどね。だから、孫家の文官に先生役としてうちの家臣を教育しにも来てほしい」

 

 なにしろ、大和の発展はここ十五年ぐらいのものだから、まだ未熟なところも多い。その中で最も優先して改善すべきなのが、家臣の教養なのだ。

 

 「ふうん……なるほど。なら、私達の方には大和の武官を送ってもらいたいわ。うちの兵も弱くはないけど、袁術の目があるからしっかり鍛えられなくて、ここの兵達と比べたら少し見劣りするからね。勿論袁術には私が話を通しておくわ。だから大和の武官に鍛え上げてほしいのよ。見たところ兵の練度は高いようだし、壱与ちゃんのところの武官が半端なのに務まると思えないもの」

 

 「当然。さっきも言ったけど、うちの配下には戦闘技術を叩き込んであるからね。将から雑兵にいたるまで弱い奴はいないよ。その中で武官を務めるんだ、強いよ」

 

 特にあいつは桁違いだ。誇張表現でなく、飛将軍と名高いあの呂布とも互角に渡り合えると思うくらい。

 

 「では、今日はここまでとしよう。後は、双方家臣に話を通してからだ」

 

 「ふふふ、今日は楽しかったわ。壱与ちゃん、またね」

 

 二人はそう言って席を立った。

 

 「もう帰っちゃうの?もう少しゆっくりしていけばいいのに」

 

 「ははは。気持ちは嬉しいが、あまり遅くなっては皆に心配をかけるからな。」

 

 「そうそう。それに今日は、皆にここへ来ることを伝えずに来ちゃったからね。……はっ!」

 

 え、えと雪蓮。それって結構拙いと思うの。じゃなきゃ冥琳があんな顔するはず無いもんね?

 

 「……雪蓮。早く帰ろう?帰ってから皆に話すことが増えた。皆暇ではないし、その時間を確保しないと」

 

 「あ、あのね冥琳?私もわざと伝えてこなかった訳じゃなくて、ちゃんと伝えるつもりだったのよ?それで忘れちゃっただけなのよ」

 

 「では、私達はこれでお暇させてもらおう。壱与、また来るぞ」

 

 「う、うん。またね」

 

 「ちょ、冥琳首掴まないで、壱与ちゃん助けてえぇぇ……」

 

 閉じられる部屋の扉。……ごめんね雪蓮、これもきっと貴女のためだから。

 

 

 

*****

 

 

 「……ということがあったんだ」

 

 雪蓮達が帰ってすぐ。私は孫家との同盟について話し合うため、五人の家臣を召集していた。

 そして私が話し終わると同時。話を聞いていた五人は実に彼ららしい反応をしてくれた。

 

 「それはそれは、実に仲のよろしいことで。結構な事にございます」 

 

 天然気味に話す、隻眼の執事然とした青年。

 

 「いやいやいや!?その感想はおかしいと思いますよ勘助殿!なんか孫策殿お説教で済みそうにないのですが大丈夫ですか!?」

 

 常識的に返す、中性的な顔立ちの少年。

 

 「そんなことより!主、何故、何故私めを呼んでくださらなかったのですか!?美人二人を、それも巨乳を見逃すなど、この久秀一生の不覚!」

 

 腰まである髪を頭の後ろで結んだ、下半身に忠実な優男。

 

 「まあまあ、落ち着けよ与一。多分そんなのは二人にとって日常茶飯事なんだろうさ。ちょうどお前と久秀みたいにな。久秀もそう嘆くなって、きっとかわいそうなお前のために、壱与様が自らつるぺたを堪能させてくれるだろうよ」

 

 一見周りを諫めるかのような言動に戯れを混ぜる、身の軽そうな若者。

 

 「…………」

 

 ただ沈黙する、鎧に身を包んだ巨躯の男。

 ……実に個性的な面子である。だが彼らこそ、大和が誇る五人の名臣なのだ。

 

 「皆様。我々は孫家との同盟について話し合いをするために集まったのですよ?これでは話が進みません。忠勝殿を見習って、少しは静かにいたしましょう」

 

 「くっ、同意だけどなんだかもやもやするのは何故でしょう」

 

 この二人は山本勘助と那須与一。それぞれうちの軍師と武官として務めている。

 勘助は片目片足が不自由だが、それを補って余りある程の軍才の持ち主だ。……少し腹黒いところがあり、素直な与一をからかって遊ぶ事がよくある。

 与一は大和一番の弓の名手で、その性格も矢の如くまっすぐな少年だ。基本いじられ役。

 

 「そうそう、勘助の言うとおりだ。だからお前も少し落ち着け」

 

 「ぐぐ……しかし巨乳が……」

 

 「同盟結べば会う機会だってあるって。ここでのろくさしてたら会えるものも会えないぜ?」

 

 「さあさあ、会議を始めましょう。皆様静粛にお願いしますよー」

 

 こっちのわかりやすいのは松永久秀。うちの技術監督。そして大和軍に少量配備されている火薬の第一人者でもあり、日夜硝煙の匂いに包まれている。……女好きなのが玉に瑕で、座右の銘は「揺りかごから墓場まで」だと言うのだから恐ろしい。

 

 四人目、このお調子者は猿飛佐助。おちゃらけた雰囲気だが、これでも大和の隠密頭を務める実力者だ。いつもは暴走しがちな久秀を抑えてくれているが、勘助に悪乗りしたりするのが困りもの。

 

 そして最後、この豪傑は本田忠勝。無口だが途轍もない武人であり、間違い無く大和最強の男だ。

 彼はこの中では最も古参で、私の生まれる前から我が家に仕えていた。私の武術指南役も務めてくれ、私をここまで鍛え上げてくれた恩人でもある。その実力は折り紙付きで、恐らくはかの名高い飛将軍呂布ともまともにやり合えるだろう。

 

 「さて、どうやら皆様落ち着かれた様ですし、軍議を始めると致しましょう。壱与様、お願いします」

 

 「ああ、わかった。……今回の議題は孫家との同盟について。詳しいことは先程話した通りだ。皆の率直な意見を聞かせてほしい」

 

 大和の政は基本、こうやって六人で話し合って決める。日本の地では各地の代表者も交えて話していたが、彼らは今大和で留守を護ってくれている。お陰で私も安心して軍務ができるというものだ。

 

 「うーん、僕はこのまま結んでしまって良いと思います。元々孫家との協力関係を築く予定で揚州にきたわけですし。武官文官の交流は相手によっては考え物ですが、孫家は信用できる相手かと。壱与様が人を見誤るとも思えませんし」

 

 「俺も与一と同意見です。ただ、此方には渡すわけにはいかない技術が山ほど有ります。火薬然り方位磁針然り。島国で人の行き来が制限される本国ならいざ知らず、大陸は敵地も同然。いつ盗まれるか分かりませんから、常に警戒はしておくべきかと。孫家を疑う訳ではありませんが、彼らに紛れて他勢力の間者が来ないとも限りません」

 

 「確かに。孫家の御当主自ら動くって事は、予定通り相当噂が広まってるって事だしな。間者が来る可能性はかなり高いはずだ。 ……そうだな、俺の部下をいくらか警備に廻しておこう 。どいつも腕利きだから、これなら大丈夫だろ?」

 

 「そうですね。あとは現地の人々に怪しい人物を見かけたら伝えて貰うようお願いしておくのも良いと思います。人間というものは、余所者に対して驚くほど敏感になるものですからね」

 

 ふむ、基本的には皆賛成か。で、目下の課題は間者対策と。まあ確かに、この世界じゃまだ火薬なんてオーバーテクノロジーだからなあ。他にも水車製鉄ノーフォークに千歯扱きとか、此方にとって大きなアドバンテージになる技術は沢山ある。そしてもしも相手にその技術を奪われたら、地力で大陸に劣る大和はいつか苦しい戦いを強いられる事になる。それは絶対に避けたい。

 

 「なるほど。それじゃあ間者対策はそういうことで。……忠勝は何かあるか?」

 

 「……我は、派遣する武官を誰にするか問いたい」

 

 あー……確かにそれは問題だな。ただでさえ将官が少ない今、まさか忠勝や与一を行かせるわけにもいかないしなぁ。

 

 「うーん、じゃあ忠勝と与一で数人見繕ってくれ。判断は二人に任せる」

 

 「「御意」」

 

 こういうのは専門家に任せた方がいい。現場を知らないお上があれこれ指図しても混乱するだけだ。まあ、現場が信用できることが前提だが。

 

 「そういえば主、確固たる拠点も得られましたし、これからは政商も大陸に呼び寄せることになりますが、貿易するといっても何を輸出するのですか?これから戦で物資が乏しくなれば、余所に売る余裕なんてないと思いますが」

 

 「ああ。そのことだが、心配しなくても大丈夫だ。基本、輸出するのは嗜好品の予定だから。具体的には、石鹸や装飾品を予定してる。……何故か中華では、武官も文官も名のある者達は桁並女性だし、孫家や袁家、馬家に公孫家なんかは当主が女性だからよく売れる筈だ」

 

 特に今の中華に石鹸はないからね。さぞかし人気が出ることだろう。

 

 「輸入するのは主に動植物を考えている。家畜類はまだまだ必要だし、果樹や作物も種類を増やしておきたいからね。……他に何かあるか?」

 

 五人の顔を見るが、もう何も無いようだった。

 

 「よし、じゃあこれで軍議は終了とする。各々自分の任務を果たすように。では、解散!」

 

 

 一礼して持ち場へと戻っていく五人。人気の無くなった部屋で一人、私はこれから起こるであろう戦乱に思いを馳せた。 

(あとがき                   

本当に長らくお待たせしました……!

最近テストが終わって、なんとか留年を避けれそうなので漸く執筆できました!

魔竜も次話はある程度書けているので来週には投稿したいと思います。

こんな私ですが、これからもお付き合い頂けたら幸いです。)

 

 




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