真・恋姫†無双~日の本の恋姫~   作:ゲーター

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 前話投稿から3ヶ月経つので初投稿です。
 もう7月も終わりとかうせやろ?
 
  


方針

 

   

 孔融との面談に向かった菫から吉報がもたらされ、暫く。

 目下の問題が解決したのと時を同じくして、東莱各地に散っていた大和軍が遼東から派遣されてきた官僚達へ無事統治を引き継ぎ、続々と当利城へと結集してきた。 

 

 軍の統治、と言うとなにやら軍政みたいで物々しい雰囲気だが、シビリアンコントロール?なにそれおいしいの?状態のこの時代では別におかしくなかったりする。

 この世界ではどうか知らないが、劉備や関羽、あの脳筋のイメージが強い張飛だってデスクワークやってるのだ。それに曹操やら袁紹やら他の群雄達だって、軍を率いる将であると同時に地域の政を担う政治家(と言うよりは官僚とか国家公務員か)なわけだし。

 

 そんなワケで、ここに我が大陸派遣軍の面々が揃ったのだけれども。

 

 

「──主様(あるじさま)!お会いしとう御座いましたああ!!」

「おう、元気してたか狗古(クコ)

「主様のお姿を拝見することが適わぬ日々は真寂しゅう御座いましたが、毎夜再びお会いする日を夢見て過ごしておりました……こうしてもう一度相見えましたこと、この狗古智卑狗(クコチヒコ)、感無量に御座います!」

「別れてまだ一月も経ってない癖に、そんなに俺が恋しかったか。ははは、可愛いやつめ」

「あぁ……あるじさまぁ……」

難升米(なしめ)、只今馳せ参じました。壱与様も卑弥弓呼殿もお変わりないようで、何よりです」

 

 混沌としていた。

 

 嘘みたいだろ……これ、私の部下のトップスリーが集った様子なんだぜ……。幹部ってなんだよ(哲学)。

 しかもまるで新米カップルみたいに睦まじい空間のこの場にいるのが、私以外皆男というね。伯父上、そんな仲良いならもう狗古智卑狗と結婚すりゃいいじゃん。そしてもう私を誑かそうとするのを止めろ。

 

「お二人とも、仲睦まじいのは良いことですが、上司たる壱与様をあまりお待たせするのは如何なものかと」

 

 抱擁を交わす二人に対し、難升米がにこやかな顔を崩さず注意する。

 難升米の優しさに全私が惚れる。難升米ー!私だー!結婚してくれー!

 

「なんだ難升米、焼き餅か?何ならお前も壱与も一緒に俺の胸の中に来るといい」

「親睦を深めるということでしょうか?ええ、それならば喜んで」

 

 難升米ェ……。

 

「ふん、貴様らが抱かれる場など主様の胸には無いわ! そして我が主君は後にも先にも主様ただ一人! 豊鍬、私が貴様に協力するのは偏に主様の為だということを忘れるな!」

「相変わらず独占欲の強いことだな。我が子房」

「あ、主様……」

 

 他人にツンツンしまくりの狗古も、伯父上が何か言えばすぐデレる。これがツンデレですか(すっとぼけ)。

 あ、それと狗古、伯父上。薔薇が日本に齎されるのはあと数百年先です。自重してください。

 

 

 爛熟した匂いに咽せ返りつつ、その元をじとりと見やる。

 騒がしい、ほんっとに騒がしいこの面々。名前をそれぞれ卑弥弓呼、狗古智卑狗、難升米という。この字面からしてキャラの濃すぎる三人が、私の部下……つまり、大陸派遣軍の首脳。

 

 この醜態からは想像できないが、これでも正史の倭では特大級のビッグネーム。難升米は邪馬台国が魏に遣わした使者だし、狗古は邪馬台国の宿敵狗奴国の宰相兼神官。そして伯父上はその狗奴の王なんだから、現実は分からないものだ。その上三人ともタイプの違うイケメン揃いとかやっぱこの世界おかしい。

 

 ちなみに、難升米は穏和な天然優等生、狗古は策士タイプでツンツン系アホの子、そしてホm……忠義の士。伯父上はほんとスタンダードなワイルド系イケメン。

 そんな中に女(中は男だけど)一人とか、乙女ゲーか何か?(偏見)

 

 

 ところで、邪馬台国=大和の臣の難升米は兎も角、狗古と伯父上は宿敵狗奴の支配者。何故その二人を従えているのかと言うと、話は倭国大乱期にまで遡る。

 

 数年前、大和がいよいよ倭の統一に乗り出した頃。

 大和は都から北東・南東・北西・南西の四方にそれぞれ将軍を派遣し、まつろわぬ国々を平定させた。当時軍務にも手を伸ばしていた私も同様に外征に向かい、その先……今で言う毛野で狗奴国を征伐したのがきっかけだ。

 

 狗奴を降した後、二人は虜囚の身となり大和に連行された。だけど狗奴の民から助命嘆願は続出するし狗古はともかく伯父上は大和の皇族だし、立場を悪用して設立した征夷大将軍のポストに収まったばかりでまだ家臣の少ない私を案じた父上の取り計らいとか、それら諸々の事情を鑑みた結果、倭国統一祝賀の大赦という名目で二人とも釈放され、今に至る。

 

 

 

 いや、ね。こんなでも本当に有能なんだよ三人とも。武将、軍師、政務と適性も上手く分かれていて、国家ぐるみの戦略だった辰韓攻略でもこの三人の果たした役割は非常に大きい。大和の方面軍三つに弁・馬二韓の軍が参加した大戦の中で、常に私の軍が論功一位を勝ち得てきたのも偏に彼らの多大な貢献あってこそだ。あの圧倒的な勝利が無ければ、今頃私はここにいないだろう。きっと元々の私の想定以上にはならなかったと思う。

 

「おい豊犂の、人を集めておいて何を呆けている。さっさと議を始めんか!」

 

 と、現実逃避気味に感慨に耽っている間に、漸く狗古が落ち着いてくれたらしい。

 ただ落ち着いたら落ち着いたでこの飲兵衛が、もう銚子を出してお酒飲みながら会議する気満々だ。咎めようにも酒精が入らないと十二分に力が出せないとか五月蠅いし、あんまり焦らすと熱燗の入ったまんまの銚子を投げつけてくるので、しょうがない諦めて大人しく軍議を始めることにする。

 

 

「えー、こほん。まず皆知っての通り、菫が孔融との会談を成功させた。お陰で青州は事実上公孫の勢力圏に入り、此度の戦における大和の戦略目標、黄巾本軍の討伐に向かえるようになった。とは言え流石に多勢に無勢ゆえに我々だけでの攻勢はしないため、決戦の時は、いずれ鉅鹿に攻め入る漢の動向に左右される。逆に言えば鉅鹿討伐戦までは自由に動ける訳だけれど、それまで我々は何をすべきか、青州に来てからのことも踏まえて忌憚の無い意見を聞かせて欲しい」

 

 選択肢は大きく分けて三つ。

 

 一つ目は、青州に留まりとにかく青州領内の黄巾を討伐する、青州統治ルート。

 二つ目は、黄巾党の本拠地鉅鹿の属する冀州へ向かい、来る決戦で黄巾首領張角の首級を上げるため下準備に励む決戦ルート。

 最後の三つ目は、青州を出て徐州・兗州・豫州などの各地を転戦し、広い地域で名を売り繋がりを作る合従ルート。

 

 三つそれぞれに違った利点があり、現実的な方策としてこの中からきっかり一つ選ぶと言うよりは、それぞれを折衷して中間策をとることになるだろう。

 

 銚子を傾け、狗古が口火を切る。

 

「青州に引きこもっているのは論外だな。我が方の被害は軽微、孔融以下青州を味方に付けたことで隣州ぐらいなら補給も賄える。諸侯が勃興していくのを指を咥えて見ているなど話にならん、その手柄を奪い取ってでも名を売ることが先決であろう」

 

 相変わらずの好戦的な物言いだ。奇襲伏兵ゲリラ戦と、とことんキルレシオの良い効率の良い作戦が得意な狗古は、守勢に回るより相手に痛撃を与えることを重視する傾向がある。 

 

「それは些か早急に過ぎるかと。青州を下したと申しましても、統治下にある東莱群と協力関係となった孔融殿の北海国以外は、未だ黄巾の賊徒が活発に行動しています。まずは青州に確固たる勢力圏を築き上げ、その後冀州鉅鹿へ向かうべきでしょう」

 

 それに難升米が待ったを掛ける。攻勢向きな狗古に対して、難升米は安定志向で慎重派。根が内政屋なためか、戦略も基本最小の被害で済ませようとする。

 

 対峙する二人。こうして正反対な方針の二人が議論を戦わせて、それを吟味した上で最後に、未来知識のある私が決定を下す。それがうちの基本だ。

 

 ……伯父上?伯父上は敵は斬れば良い思考の脳筋だから。

 

「何を悠長なことを。そもそも他郡の長は自力で事態の解決もできん無能共だ。孔融と公孫に任せておけば、自然に青州は強きに靡く。他州への道すがら討伐していくならともかく、青州全域の鎮定なぞしていたら折角の機を逃すことになる。貴様、黄巾討伐は我等の名声を高める為の踏み台に過ぎんことを忘れてはいないだろうな」

「無論ですとも。いくら正義を標榜したとて、我々は聖人君子の集団ではありません。単なる慈善事業の為に国策を誤ることは許されない。しかし、煌びやかな旗を掲げるからには、またそれなりの手入れも必要になるのですよ」

「……東莱だけでは飾りが足りん、か。信頼を得るのに難儀するとは、余所者の辛いところだな。ならば青州全域をひとまず巡り、手柄になりそうな目立った集団を討伐していく。ただし完璧な鎮圧はせん、ある程度間引いたら他州に出る。これで充分だろう」

 

 忌々しげに顔を歪め、狗古が譲歩する。いくら好戦的と言っても軍略家。守勢でも利を説かれれば、作戦を見誤ることはない。

 

「欲を言えば完全な信頼関係を築きたいところですが、別に我々は青州を領土としたいわけではありませんからね。住民の依存先は公孫に任せるとしましょう」

 

 それに難升米も歩み寄る。これで、まずは第一段階が決まった。

 

「青州を出たら何処に行く?敵の多い所の方が、俺達にとってはいいと思うんだが」

 

 青州の接する州は、北西に黄巾の本拠地のある冀州、南に陶謙が治める徐州、西に曹操が支配する兗州。そして、接してはいないものの近くにあるのが豫州。

 まず豫州だが、正史の豫州には黄巾軍の波才に官軍の皇甫嵩、朱雋、そして連環の計で有名な王允らがいたりしたから、ちょっと遠出をしてでも豫州に行って、彼らと繋がりを作っておきたかったけれど、生憎今から向かっても着く頃には殲滅戦に移行しており彼等は去った後。無理に行く価値はどこにも無い。

 じゃあ残りの三州のうち何処に行くのか。敵が多いのは当たり前ながら冀州。徐州と兗州はどっこいってところで、どちらにせよ冀州には劣る。

 賊を討ったと名声を高めることを考えれば、伯父上の言うとおり当然敵を多く倒せる冀州が一番良い。ただ、一般的な民衆からの名声以外にも名声はある。

 それは、名士や官僚からの名声。こっちは単に敵を倒してれば手に入るものじゃなく、実際に彼らと出会い、関係を築いていないと得られない重要なもの(コネ)だ。民衆からの評判だけ高くても上流階級に認められなければ、辿る道は黄巾と変わりない。逆に、上流階級に持て囃されても民衆にそっぽを向かれれば、今の腐敗した漢と同じ。どちらにせよ理想的な形じゃなくなってしまう。

 

「敵がそこまで脅威足り得ない以上、確かに黄巾の多い所に行くのが得策ではあるでしょう。しかし、冀州には未だに官軍が入ったという情報はありません。我々の確かな力を見せつける為には、漢朝の正規軍が冀州入りするまで待つべきではないでしょうか」

「先に冀州で討伐していても、ただの将如きではそう易々と異民族の我等の戦果を認めないだろうからな。それまでは兗州かどこかで地道にやるしかあるまい」

「やっぱり要は漢次第、というわけか。ただ、豫州に差し向けていた主力が自由になった今、そこまで時間はかからないと思う。揚州に向かう分もあるにせよ、より都に近い敵本拠地に一切戦力を差し向けないってことはないだろうからね。むしろ戦勝に乗って早期の決着を目指してもおかしくない」

「なら、徐州は無しだな。何時その時が来るか分からない今、好機を逃さない為にはできるだけ冀州に近い所に居た方が良いからな」

「決まりだね。青州を出たら、我が軍は一路兗州に向かう。全員異論は無い?」

 

 三人から異議は出ない。明確な方針ができたことを確認して、言葉を継ぐ。

 

「よろしい。官軍冀州入りの情報が届き次第冀州に向かうのが第一だから、難升米と狗古は細作の管理を怠らないように。そしてできれば州都陳留に出向いて名君と名高い曹操と繋がりを作っておきたいから、各人の迅速な対応を期待する。以上」

 

 さて、これからどうなるやら。まず目指すは曹操。かの歴史の大英雄、この世界で女になって、正史や演義以上に立場の高いあの刺史殿と無事会えればいいけれど。

 

  

 

 

 





 (書き溜めは)ないです
 まずうちさぁ、マイナー人物……ばっか出てくるんだけど、名前覚えてかない?
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