現在ゆうやんが落ち込みゴーグルモード。マジにメンタル弱いな、ゆうやん。
私は中島さんの説明を受けた後、こっそり遊勝塾にやってきて零児君と一緒に不審者してた。場面的にはますみんが柚子りんボコして「あなたの目、くすんでるわ」とかカッコつけてたところ。あとでいじったろ。
私は立場的にどっちにも参加しづらいかったので、一勝一敗一分でもう一回デュエルとなったところに零児君と同時に登場してから黙って観戦してた。んで、ゆうやんと零児君のデュエルが零児君優勢――盤面的にはアーマゲドン全部吹っ飛んだ零児君が不利に見えたが、雰囲気と零児君の台詞的に――で中断された。
そのデュエルで零児君にペンデュラムを使われたのがこたえたらしい。"俺だけのペンデュラム"じゃなくなったのがそんなにショックか……。うーん、手品師が自分の最高のトリックのネタバレされたようなものだろうか?ゆうやんの目指すエンタメにもよるよね。ゆうやんはペンデュラム独占して俺TUEEEってしたかったのか?
うん、まあ、トラブルがあったらしき
◆ ◆ ◆
「ペンデュラム召喚は俺だけの……」
「大丈夫?おっぱい揉む?」
「何いってんのよ!?」
思わずハリセンでぶっ叩いちゃった。いや、励まそうとしてるのはわかるけど、本当に何言ってるのよ、この子!?
「冗談だよ、冗談。励まそうと思っただけだって」
「青春だな!」
「いや、違うから。お父さんちょっと黙ってて」
「(´・ω・`)……」
遊矢も一瞬驚いた顔をしてたけど、すぐに元の顔に戻っちゃった。うう、励ましてあげたいけどかけられる言葉も思いつかない。
「柚子りんも心配しなくても、私はゆうやんを取ったりしないって」
「は、はあ!?わわわ、私と遊矢はそっそ、そういう関係じゃななな」
「そういう関係って?」
「恋人同士って意味だよ、フトシくん!前から怪しいと思ってたけど……」
「ちょっと、アユちゃん!?」
「カオリ姉ちゃんと話してる遊矢兄ちゃんを見る目つきが怖かったもんね」
「うむ」
「タツヤ君と権現坂まで!?」
味方がいない!
「柚子、負けるな!熱血だ〜!」
「お父さん、うるさい!」
「(´・ω・`)……」
今それどころじゃないでしょ!?
「柚子りんが揉ませてあげればゆうやんも元気出るよ」
「なっ!?」
「ほら、ゆうやんもこっち見て期待してるよ?」
「ち、違う!そういう意味で見てたんじゃないって!」
あ、遊矢がゴーグルを上げた!
「隠さなくても大丈夫だって。男の子はみんなそんなもんだよ。ね、素良っち」
「え、そこで僕に振るの!?」
「羨ましそうに見てたから」
「違うよ!そういう意味じゃないから!」
「大丈夫、他の人には黙っといてあげるよ」
「誰に!?こっちの知り合いはほとんどここにいるんだけど!」
……やっぱり外国の子なのかな、素良君。それより、もう完全にカオリのペースね。遊矢も少し元気が出たみたいだし。
……あーあ、何嫉妬してるんだろう、私。本当はデュエルで負けて役に立たなかった私が励まさなきゃいけないのに。あの遊矢によく似た人のことが気になって何にも集中できない。
「柚子、どうした?」
「あ、うん、ごめん。何でもないよ、お父さん」
「大丈夫?おっぱい揉む?」
「何でそうなるのよ!?」
あっ、また叩いちゃった。もうツッコミが癖に……。っていうか、何で私にも同じネタをブッ込んで来るの!?
「いや、ゆうやんとはそういう関係じゃないって言うから、もしかしたら
「そ、そうだったのか。大丈夫だ、柚子。お父さんはどんな時でも柚子の味方だぞ!」
「……」
ああ、自分でもわかる。さっきまでは恥ずかしさで顔が真っ赤だったけど、今は別の意味で真っ赤になってる。
◆ ◆ ◆
スパァーン、と今日一番のハリセンの音がする。うん、私と修造さんのライフポイントを引き換えに柚子りんが元気になったようで良かった。まだゆうやんも柚子りんも完全回復ではないけど。
「さて、ゆうやん」
「な、何だよ?」
「これからどうしたい?」
「どうしたいって……」
「ペンデュラム、独占したいみたいだったけど零児君に使われちゃったよね?」
「それは……って、零児君て……。一緒に出てきたから気になってたけど、赤馬零児と知り合いなのか?」
「今朝知り合った」
「ああ、うん……そういえばカオリは初対面の時もこんな感じだったな」
「で、ペンデュラム独占して俺最強!っていうのを目指してたのかもしれないけど、できなくなっちゃったでしょ?」
「いや、俺はそもそもそんなことするつもりは……」
「あれ、違ったの?」
じゃあ何で落ち込んでるんだろ?
「違うよ!俺は父さんみたいに、みんなを笑顔にするエンタメデュエルをしたいんだ!」
「ふーん、そうか……」
そういやゆうやんはペンデュラムを手に入れるまで弱小デュエリストだったんだっけか。ペンデュラムを他の人も使うようになったら自分はまた弱小デュエリストに逆戻り、エンタメデュエリストから遠ざかるんじゃないかって怖くなってるんだね。
「んー、そうだなあ。うーん……よし、ゆうやん!デュエルだ!」
「え?何でそうなるんだよ」
「デュエルのことなら言葉よりデュエルで語った方が伝わりやすいと思ったのさ。さあ、行こう!」
腕を引っ張って強引に行く。今のゆうやんにはゴリ押しの方が効果があるはず。
「俺、まだデュエルするとは言ってないけど」
「おおっと、エンタメデュエリストがファンからのデュエルの申し込みを断るの?」
「……っ」
お、どうやらゆうやんの琴線はエンタメというワードらしいね。ここを攻めるか。
「榊遊勝はどんな時に誰にデュエルを挑まれても拒まなかったそうだけど」
「……くっ、わかった!」
釣れた。ちょっとチョロすぎて心配になるなぁ。
◆ ◆ ◆
「いつのまにか遊矢とカオリがデュエルをすることに……」
柚子、不安なのか。いや、遊矢が心配なんだな。
「二人がデュエルするのって初めてだよね?少なくとも僕は初めて見るけど」
「うむ。なんだかんだ予定が合わなかったからな」
「楽しみだね」
「……私は心配よ」
「柚子……」
「だってさっき赤馬零児にペンデュラムを使われてショックを受けたばかりで……カオリはデュエル強いし、ここで手酷くやられちゃったら……」
「いや、大丈夫だ」
「お父さん?」
本当は俺がやるべきなんだろうが、口下手な俺より彼女の方がよっぽど上手く伝えてくれるだろう。俺が考えている以上のことを考えているかもしれない。
「目を見ればわかる。カオリは……熱血している!」
熱血だ〜!
「……意味がわからないんだけど」
「柚子、案ずるな」
「権現坂……」
「カオリはデュエルを通してエンタメとは何かを遊矢に教えようとしているのだろう」
「……それで、遊矢は立ち直れるのかな」
「それはわからん。カオリはあくまで遊矢に道を示そうとしているのだ。もし遊矢が立ち直れなければ……」
「……うん、わかったわ。昔から私たちが遊矢を支えてきたんだもの」
……青春だな!
◆ ◆ ◆
アクションフィールド、オン 『マジカル・ブロードウェイ』
「ここは……」
修造さん、流石。私の伝えたいことを一番伝えやすいフィールドを選んでくれた。
「ゆうやんのお父さん、榊遊勝の得意なフィールドだね」
「父さんの……」
「行くぞ、ゆうやん!このフィールドでお前のエンタメに足りないものを骨の髄までわからせてくれる!」
「俺のエンタメに足りないもの?」
「戦いの殿堂に集いしデュエリストたちがぁ!」
「モ、モンスターとともに地を蹴り、宙を舞い!」
「フィールド内を駆け巡る!」
「見よ!これぞデュエルの最強進化形!」
「アクション…」
「「デュエル!」」
遊矢 LP 4000
カオリ LP 4000
「……先攻は俺だ。手札からEMオールカバー・ヒッポを召喚!」
EMオールカバー・ヒッポ レベル3 ATK 800
「オールカバー・ヒッポの効果発動。召喚に成功した時、手札からEM1体を特殊召喚できる。EMスプリングースを特殊召喚!」
EMスプリングース レベル5 DEF 2400
「さらにオールカバー・ヒッポの効果発動。自分のモンスターを守備表示にする」
EMオールカバー・ヒッポ ATK 800 → DEF 800
「遊矢、ペンデュラムカードが手札にないのかな?」
「……いや、ペンデュラム召喚を赤馬零児に使われたことがショックで、無意識的に避けてしまっているんだろう」
「そんな……」
「遊矢兄ちゃん……大丈夫かな」
「心配ない。遊矢なら必ず立ち直ると、俺は信じている」
「権現坂……」
「……ペンデュラムを使わないんだね」
「うっ……、ペンデュラムを使うか使わないかは俺の勝手だろ」
「そうだね、ゆうやん。自由にしたらいいんじゃない?」
ペンデュラムはあくまで召喚法の一つ。使いたければ使えばいいし、それは本人の自由だよね。
「えっ?」
「どうしたの?説教でもされると思った?」
「い、いや……」
思うに、ゆうやんはペンデュラムに縋り過ぎている。だから零児君にペンデュラムを使われてショックを受けた。まずはその凝り固まった思考を解す必要がある。
「ゆうやんの目標は最高のエンタメデュエル、でしょ?じゃあ必ずしもペンデュラムに頼る必要はないよね」
「そ、それは……」
「それにゆうやんのお父さんはペンデュラムを使ってたわけじゃない。それこそペンデュラムがなくてもエンタメデュエルができる証拠でしょ?」
「くっ……お、俺はこれでターンエンド!」
自分の特技の価値を失うのは誰でも怖いもんだけど、ゆうやんはペンデュラムの輝きに目を奪われて自分を見失ってる感じだね。これを修正するのは骨が折れそうだけど……まあ何とかなるさ。何せ彼は主人公。私が失敗しても柚子りんや権ちゃんがいる。
「私のターン、ドロー!私は永続魔法、魔法吸収を発動。このカードが場にある限り、魔法カードが発動されるたびに500ライフを回復する。そしてアロマージ―ジャスミンを召喚!」
アロマージ―ジャスミン レベル2 ATK 100
「速攻魔法、ご隠居の猛毒薬を発動!二つの効果の内、相手に800のダメージを与える効果を選択!」
「ぐっ!?」
遊矢 LP 4000 → 3200
「魔法吸収でライフを回復」
カオリ LP 4000 → 4500
「そして自分のライフが回復したことにより、ジャスミンの効果発動。カードを一枚ドローする。……自分のライフが相手より多い時、ジャスミンの効果で植物族をもう一度召喚できる。おいで、アロマージ―ローズマリー!」
アロマージ―ローズマリー レベル4 ATK 1800
「流石だね。回復と攻撃、手札増強を一挙にこなしただけでなく、モンスターの展開にまで繋げてるよ。憎々しいくらいに綺麗な流れだ」
「LDSのジュニアユースの中でも抜きんでているな……」
「痺れる~!」
「何度かデュエルをしてるのを見たこともあるし、デュエルについて教わったこともあるからわかってたことだけど……やっぱりカオリ姉ちゃんは強い!」
「遊矢お兄ちゃん……」
「遊矢……」
「まだまだ、手札から永続魔法、超栄養太陽を発動!自分のレベル2以下の植物族をリリースし、そのレベル+3までの植物族を特殊召喚する。ジャスミンをリリースしてローンファイア・ブロッサムを特殊召喚!魔法吸収の効果でライフを回復」
ローンファイア・ブロッサム レベル3 DEF 1400
カオリ LP 4500 → 5000
「ライフを回復したことでローズマリーの効果発動!表側表示のモンスター一体の表示形式を変える!対象はスプリングース!」
「しまった!」
ローズマリーが杖を振ると、花の香りが辺りを漂う。その香りに誘われてスプリングースはふらふらと前に出てきた。
スプリングース DEF 2400 → ATK 1100
「まだ終わりじゃないよ。私はローンファイア・ブロッサムの効果発動!自分の植物族をリリースして、デッキから植物族を特殊召喚する。ローンファイア自身をリリースして、アロマージ―ベルガモットを特殊召喚!」
アロマージ―ベルガモット レベル6 ATK 2400
「ローンファイアがフィールドを離れたことで超栄養太陽は破壊される。行くよ、ゆうやん!バトルだ!ローズマリーでEMスプリングースに攻撃!」
「くっ……」
遊矢 LP 3200 → 2500
「ベルガモットでオールカバー・ヒッポに攻撃!ベルガモットの効果により、私のライフがゆうやんのライフより多い時、味方の植物族に貫通効果を与える!」
「アクションマジック、回避を発動!攻撃を無効にする!」
「ふふふ、躱されちゃったか。でも魔法吸収でライフを回復。さらにベルガモットの効果発動!ライフの回復をトリガーに、相手のエンドフェイズまで攻撃力を1000ポイントアップ!」
カオリ LP 5000 → 5500
アロマージ―ベルガモット ATK 2400 → 3400
「私はカードを二枚セットしてターンエンド」
「俺の、ターン」
「どうした、ゆうやん。しかめっ面しちゃって」
「……それは、だって、今は負けてるから」
「そんなんじゃダメだよ、ゆうやん。エンターテイナーでしょ?観客を笑わせるにはまず自分が笑顔でデュエルを楽しまないと」
ワクワクを思い出すんだ(キモイルカ並感)!
「笑顔?」
「そうそう。デュエルは勝って楽しいのはもちろん、負けても楽しいものなんだからさ」
「負けても楽しい……」
「正確には、そう思えたらいいってことかな。互いの全力のデュエルをぶつけ合って、お互いに楽しんで最高のデュエルにする。それができて初めてエンタメデュエルのスタートラインに立てるんだよ」
「……」
「ほら、みんなを見てみなよ。ゆうやんが暗い顔をしてるから、みんな心配そうだよ?」
「遊矢……」
「……大丈夫だ、柚子。顔を上げろ。お前が見てやらないでどうする」
「「遊矢兄ちゃん!」」
「遊矢お兄ちゃん、頑張って!」
「早く元気出してエンタメってよ~」
「元気出せ遊矢、熱血だ~!」
「柚子、権現坂……みんな……」
「エンタメデュエリストがデュエルで皆を不安にしちゃだめだよ」
「でも、さっきまでのデュエルは負けられないデュエルで……」
「それでもだよ。ゆうやんはプロになるための負けられないデュエルでエンタメ放り出して相手をボッコボコにするつもり?」
「そ、それとこれとは……」
「同じだよ。遊勝さんだって、デュエルはゆうやんとゆうやんのお母さんを養うための負けられないデュエルは何度もあったはずだよ。それでもデュエルを楽しんで、相手も観客も巻き込んで
仕事を仕事としてやる人も多いけど、仕事を楽しめたらそれが最強だと思う。特にエンタメデュエリストはそれが最低条件だと思うんだよね。私は別にエンタメデュエリストというわけじゃなく自分が楽しんでるだけだけど、観客が楽しんでくれてる時は私も楽しんでる時だ。
「プロのエンタメデュエリストを目指すなら、まずはどんな時でも笑顔を絶やさないこと!人生の先達である私からのアドバイスだよ」
「ははっ、人生の先達って……同い年じゃないか」
しかし人生一個分私の方が長生きなんだよね。知らないから無理もないけど。
「だけどありがとう。まずは俺の全力で、このデュエルを楽しむ!」
というわけでカウンセリングデュエルです。修造さんとは違った方向性でカウンセリングします。
前中後編に分かれてしまったのはデュエルが長いというより会話をちょいちょい挟むせいです。