遊戯王ARC-V 転生少女の決闘   作:YM

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後編です。前編からお読みください。


第十八話 鉄の意思 後編

「マスター・ダイヤのもう一つの効果を発動!墓地のラピスラズリを除外して、エンドフェイズまでその名前と効果を得て、発動!EXデッキのラピスラズリを墓地に送り、500にマスター・ダイヤの攻撃力の半分、1750を加えて2250のダメージで!」

「やった!」

「勝った!」

 

 黒咲 LP 300 → 10

 

「……それで終わりか?」

「!?」

「ライフが……残ってるだと!?」

「墓地のRR―レディネスを除外し、その効果を発動した。ライフを10にして、効果ダメージを無効にする!」

「くそっ、踏みとどまりやがった!」

「だけど、このターンからバトルも解禁されてる!」

「バトルよ!マスター・ダイヤでダイレクトアタック!」

 

 マスター・ダイヤが襲撃犯を切り裂く。これで――

 

「……」

「ライフが……減らない……」

「レディネスの効果を発動したターン、俺が受ける戦闘ダメージは全て0になる」

「うっ……」

「これじゃ、戦闘ダメージも……」

「……私はカードを二枚セットして、ターンエンド」

「……やはり、この程度か」

「!!!」

「貴様らのデュエルには鉄の意思も、鋼の強さも感じられない!」

 

 くっ……この凄みは……!

 

「何だと!?」

「崖っぷちまで追い込まれていながらよく言うよ!」

「そう。俺たちは正に崖っぷちに追い込まれている」

 

 俺たち……黒マスクのこと?……いや、それだけじゃないような気がする。

 

「俺たちだぁ?」

「何言ってんの?こいつ」

「貴様らは地獄を味わったと言ったな。だが、本当の地獄というのは……平和に暮らしていた所を突如襲われ、街も家も容赦なく砕かれ、親しい友や家族が為す術もなく失われていくことを言う」

「何だよ、それ……。まるで、戦争じゃないか」

「戦争ですらない。宣戦布告もなく、嗤いながら行われるそれは、正に狩り(ハンティング)だった」

 

 そ、そんなことが――

 

「だが必ずこの地獄から這い上がり、仲間を奪い返し――最後は圧倒し、殲滅する!俺のターン!俺は魔法カード、ディメンション・エクシーズを発動!ライフが1000以下で場・手札・墓地のいずれかに同名カードが三枚揃っている時、それを素材にエクシーズ召喚する」

 

 この土壇場で……墓地からエクシーズ!?

 

「俺は墓地のバニシング・レイニアス三体でオーバーレイ!雌伏の隼よ。逆境の中で研ぎ澄まされし爪を上げ、反逆の翼、翻せ!エクシーズ召喚!現れろぉ!ランク4、RR―ライズ・ファルコン!」

 

 RR―ライズ・ファルコン ランク4 ATK 100

 

「攻撃力100?」

「このモンスターは場に特殊召喚されたモンスター一体につき一度ずつ攻撃することができる」

 

 攻撃力は低い……いや、攻撃力の低いモンスターを攻撃表示で晒すという事は……次のターンまで回す気はないという事。そして全体攻撃の効果という事は――

 

「ライズ・ファルコンの効果発動。オーバーレイユニットを一つ取り除き、エンドフェイズまで相手の場の特殊召喚されたモンスター全ての攻撃力を自らの攻撃力に加える」

 

 セイクリッド・オメガ ATK 2400

 セイクリッド・プレアデス ATK 2500

 XX―セイバー レイジグラ ATK 200

 XX―セイバーフォルトロール ATK 2400

 XX―セイバーフォルトロール ATK 2400

 XX―セイバー ガトムズ ATK 3100

 ジェムナイトレディ・ラピスラズリ ATK 2400

 ジェムナイトマスター・ダイヤ ATK 3500

 

 RR―ライズ・ファルコン ATK 100 → 19000

 

「い……19000!?」

「マジかよ!?」

「バトルだ!RR―ライズ・ファルコン!全ての敵を引き裂け!ブレイブクロー・レボリューション!」

 

「「「うわあああ!!」」」

 

 北斗 LP 4000 → 0

 刃 LP 4000 → 0

 真澄 LP 4000 → 0

 

◆ ◆ ◆

 

 終わったか。この詰めの甘い感じは……ユートの言う通り、こいつらはアカデミアには関係なさそうだな。いずれにしろ赤馬零児を誘き出すためにカードにはなってもらうが。

 

 いや、LDSの連中が連絡を受けてもうじき来るはずだったな。カードにする意味はないか……。しかし――

 

「……連絡がないが、ユートはどうなった?それに連絡を受けているはずのLDSの連中は、まだ来ないのか?」

 

 ん?これは……足音か。それも複数。

 

「今頃お出ましか。だがもうザコどもの相手はたくさんだ。お前らのボスを連れて来い」

「私ならここにいる」

「!ということは……貴様が赤馬零王の息子、赤馬零児か」

「その通りだ」

「……この時を待っていた。さあ来い!俺とデュエルだ!」

「待て……隼……」

 

 この声は――

 

「ユート!?何故そちらに……いや、その傷は何だ!?」

「傷の話は後だ……」

 

 いや、明らかに深い傷だ。応急処置は受けているようだが……。

 

「それよりも隼。彼らは……敵ではない」

「なっ!何を根拠に!?」

「手当をしてくれたのは彼らだ……。俺とカオリのデュエルが終わった後、カオリともども応急処置をしてくれたんだ」

「そもそもその傷はそいつらのせいじゃないのか!」

「先も言ったが、その話は後だ……長くなる。とにかく彼らは味方だ」

 

 ……洗脳などをされているわけではないようだな。目を見れば正気の、いつものユートであることがわかる。しかし――

 

「そいつらがアカデミアではないとしても……やることは変わらない。赤馬零児の身柄を人質に――」

「赤馬零児を人質にとっても仲間は……瑠璃は帰ってこない」

「何!?」

「赤馬零王は……息子である赤馬零児のことを、家族のことを捨てて次元戦争を始めたらしい。それに……詳しい話は省くが、瑠璃は偶々ではなく、必要だから連れ去られたようなんだ。恐らくは次元戦争に深く関係する理由で。だから……彼を人質にしても、帰ってこない」

 

 抽象的でよくわからないが……この落胆ぶりを見ると、少なくともユートはそれを確信しているようだ。だが――

 

「それでも、諦められるものか……!」

「彼は――赤馬零児は、次元戦争に備え、反撃するための備えをしているらしい。俺たちもそこに加わるのが一番現実的だ。そうすればきっと瑠璃を取り返すチャンスも――」

「備えだと!?あの程度の講師を据えて、ぬるま湯でデュエリストを育成してきたことが備えだというのか!?それでアカデミアに勝てるわけがない!」

 

 俺たちが一番よく分かっているはずだ。俺たちだって、デュエルの腕を磨くことを怠っていたわけではない。デュエルは生活に密着しているものだったし、何よりプロのデュエリストに憧れてデュエル三昧の日々を送っていたのだから。

 

 だが、エンターテイメントとしてのデュエルと実戦は、わけが違うのだ。アカデミアは、真正面から一人ずつ、正々堂々とデュエルを仕掛けてくるわけではない。昼夜問わず不意打ちで、数を以て攻めてくる。そして何より、敗北すればカードにされるという恐怖は判断を狂わせる。エンターテイメントとしてのデュエルがいかに得意でも、実戦では何もできずに敗北し、カードにされる。それが当たり前の光景だったのは、誰よりも俺たちが知っている。

 

 アクションデュエルだのエンターテイメントだのと言っている温室育ちをいくら育てようが無意味だ。

 

「今も、三体一でこの様だ!」

 

 これでアカデミアと戦えるわけが――

 

 

 

「マルコ先生と……北斗と刃を……馬鹿に、するな……!」

 

 背後から、誰かが立ち上がる音と、女の声。この声は……。

 

「……ライズ・ファルコンの攻撃を受けて……まだ立ち上がるとは……」

 

 融合使いの女か。存外、タフだったようだな。

 

「だが、事実だ。ライズ・ファルコンの攻撃を受けきれず、バトルフェイズが解禁されてからワンターンで決着はついた。その程度で――」

「いや、まだだ……!」

「……何?」

 

 その時、デュエルディスクから音が鳴り、思わずデュエルディスクを確認した。そこにはターンプレイヤーが交代したことを示す文字。……デュエル継続中だと!?

 

「バカな……ライフは0になったはず……!」

「罠カード、魂のリレーと……ハーフ・アンブレイク。魂のリレーは手札からモンスターを特殊召喚する。そのモンスターがいる限り私の受ける全てのダメージは0になり、代わりにそのモンスターがフィールドを離れるとデュエルに負ける」

 

 ジェムタートル レベル4 DEF 2000

 

「デュエルの勝敗をモンスターに託すカードだと……!?」

 

 ダメージが無効になったにもかかわらずライフが0なのはそのためか……。ダメージ無効というより、ライフを超えるダメージを受けようとも、そのモンスターがいる限り敗北にならない効果と言うべきか。

 

「ハーフ・アンブレイクはそのターンの間、対象の戦闘破壊を無効にする……」

「そいつで、敗北を防いだのか……」

「北斗と刃のお陰で……攻撃を終えても私の手札に余裕ができた。だから、攻撃を凌げた……」

「……」

「待つんだ、君」

 

 ユート……。

 

「俺たちのデュエルディスクはアカデミアから奪った物をチューンした、特殊なものだ。デュエルのダメージが現実にフィードバックされる。ましてや君はライズ・ファルコンの強力な攻撃を受けて、ライフが尽きてすらいる。これ以上デュエルを続けるのは危険だ」

 

 いや……説得は無駄だな。

 

「ユート。デュエルは続ける」

「隼……!」

「ヤツの目を見ろ。あれは……俺と同じだ。地を這ってでも追いすがり、獰猛に喉笛に食らいつかんとする……反逆者の目だ」

 

 さっきまでとはまるで違う。追い詰められたことで、目が覚めたのか。それとも……まあいい。いずれにしろ、答えは一つだ。

 

「ヤツに諦めるという選択肢はあり得ない。俺と同様にな」

「……」

「デュエルを……続けるわよ……。私のターン、ドロー。……ターンエンド」

 

 ヤツのモンスターの攻撃力は0。ライズ・ファルコンは倒せない、か。だが、ヤツは諦めたわけではない。そして攻撃力が0ということは、ライズファルコンの効果も無意味という事だ。今の状態、俺にもあのモンスターを倒す手段はない。

 

「俺のターン!カードを一枚セット。……ターンエンドだ!」

「私のターン!……墓地のジェムナイト・フュージョンの効果発動!アメジスを除外して、手札に戻す。ジェムナイト・フュージョンを……発動!手札のジェムナイト・ルマリンと、ジェムナイト・サフィアを融合。雷帯びし秘石よ。堅牢なる蒼き意志よ!光渦巻きて新たな輝きと共に一つとならん!融合召喚!現れよ!レベル6、勝利の探求者、ジェムナイト・パーズ!」

 

 ジェムナイト・パーズ レベル6 ATK 1800

 

「バトル!パーズでライズ・ファルコンに攻撃!」

「……俺はRUM(ランクアップマジック)―エスケープ・フォースを発動!」

「ランクアップマジック……?」

「その効果でエクシーズモンスターへの攻撃を無効にする」

「まだよ……!パーズは一ターンに二回攻撃できる!」

 

 二回攻撃でより確実に仕留める算段だったか。だが――

 

「エスケープ・フォースの効果はそれだけではない。エスケープ・フォースはそのエクシーズモンスターを一つ上のランクのエクシーズモンスターにランクアップさせる!」

「!?」

「俺はライズ・ファルコン一体でオーバーレイ!獰猛なるハヤブサよ。激戦を切り抜けしその翼翻し、寄せ来る敵を打ち破れ!ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!現れろ!ランク5!RR―ブレイズ・ファルコン!」

 

 RR―ブレイズ・ファルコン ランク5 DEF 2000

 

「くっ……ターンエンド」

「……前言は、撤回しよう。ライフが尽きても立ち上がる貴様は、確かに鉄の意思の持ち主だった。だが……これで終わりだ。ブレイズ・ファルコンの効果発動!オーバーレイユニットを一つ取り除き、相手の特殊召喚されたモンスターを全て破壊する!」

「っ……きゃああああ!!」

 

 翼から放たれた爆撃がフィールドを覆う。煙が晴れると……そこにモンスターはいなかった。

 

 ……今度こそ、終わったか。

 

「中島、彼女たちの応急処置を」

「はっ!」

「……フン」

 

 地獄の修行とやらのせいか知らないが、温室育ちだけというわけでもないらしい。融合使いの女……いや。

 

「あの女の名前は何という?」

「……彼女の名前は、光津真澄という」

「真澄、か。……名前と、その鉄の意思は記憶に留めておこう」

「隼……」

「赤馬零児。貴様の下につくわけではない。だが……共同戦線を張るというのなら、考えておく」

「承知した。受付には話を通して置くから、アポイントメント無しで来てもらって構わない。……その場合は、必ず時間を取れるかは確約できないがな」

「……」

「それと彼は私の指定する病院に入院してもらう。彼は顔が知れているから、他では騒ぎになるかもしれない。病院の場所は、この紙に書いてある」

 

 ユート……俺の思っているより傷が深いのか。

 

「ユート。怪我をしているところ悪いが、詳しく話を聞かせてもらうぞ」

「ああ」

 

 瑠璃を助けるための手立てが、一つなくなってしまった。いや、最初からこの手段は失敗だったのか。……俺は、焦りすぎていたのかもしれない。今は雌伏の時だ。耐えなければならない。これまでと、同じように。

 

 だが、俺は決して諦めない。……瑠璃を取り戻す、その日まで。




魂のリレーの処理が滅茶苦茶ですが、演出です。

進行に影響はないので許してください……。
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